株式会社バンカブル 代表取締役社長 髙瀬 大輔

世の中の新たな価値創造を目指すベンチャー・スタートアップ企業に対し、運転資金を気にせず挑戦することをサポートする株式会社バンカブル。今回は、代表取締役社長の髙瀬氏にインタビュー。

 

インタビュー中は、冷静かつ丁寧な物腰でありながら、胸に秘めたパッションが垣間見られ、そのギャップに魅了されました。新しい金融サービスを展開するなかでの壁やモチベーションの保ち方、今後の展望などについて、さまざまな経験談を交えて詳しくお話ししてくださいました。

 

 「攻めの一歩」を踏み出すきっかけになるサービスを

事業の内容をお聞かせください

ベンチャー・スタートアップ企業を主な対象として、広告費や在庫の仕入費に対して分割・後払いができるサービスを提供しています。

弊社のサービスは2つあります。

1つ目は、広告費の分割・後払いができる「AD YELL(アドエール)」、

2つ目は、仕入費の分割・後払いができる「STOCK YELL(ストックエール)」 です。2つ目はまだ始めたばかりの新しいサービスです。

 

2つのサービスを通して私たちが目指すのは、キャッシュフローを軽減することと、アップサイドに投資できる状態を作り出すことです。サービス自体に資金調達機能があるわけではありませんが、借入の枠を削ることなく攻めの一歩を踏み込む土壌を整えることが可能です。この点は、多くのお客様から評価していただいています。

 

また、これまでの経験を踏まえると、もともとの商品の良さがあるからこそ、私たちのサービスが効果を発揮できているように感じます。他の人に知られていないような磨かれた商品や、ファンがいらっしゃる商品を持つ企業ほど、新たなチャンスをつかみやすい傾向にあるようです。

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

バンカブルの所属するデジタルホールディングスは広告事業で創業し、来年で30年目を迎えます。ただ、「新たな価値創造を通じて産業変革を起こし、社会課題を解決する。」というパーパスの起点となる想いを当時から持っており、他の事業を立ち上げ、社会課題の解決に向けた対応領域の幅を広げていこうとする流れがあったんです。

 

そこで、広告関連のノウハウや知見、ソリューションと何かを掛け合わせた事業を検討しました。ファイナンスとの掛け合わせで新しい会社が作れるのではないかという起案があり、形にしていき、2021年1月18日に登記をしてスタートしました。

 今この瞬間の人生をかけた挑戦を応援したい

仕事におけるこだわりを教えてください。

「下町ロケットのような町工場や小さなお団子屋さんのような商売を手助けしたい」という想いを持っています。

 

お客様のためになる商品やサービスを人生かけて作り上げたいと思っていても、資金的な問題によりお客様に届けられないというのは、非常にもったいないことだと思うんです。

 

国内には、みなさんの預貯金などを合わせて約990兆円くらいあります。そのうち、約370兆円は実は使われないまま眠っているんです。しかし、今すぐお金が必要な人がいる、というのが日本の現状です。

 

このギャップを埋めるために仕事をするという軸は、今後も絶対にブラしません。そこに紐づくミッションやビジョンに基づいた行いを大切にしています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

大きく分けて4つありました。

 

1つ目は、起案段階です。準備含めて始めるのに1年半くらいかかっています。ビジネス構想や事業スキームは理解していましたが「世の中にとって本当に価値があるものなのか」「金融はそんなに甘くないのではないか」など考えをめぐらせました。

 

弊社は、ガバナンスを効かせた健全な事業運営を推進しており、社外取締役含めて金融出身者が多いです。その方々に、蓋然性をもって合意を得るまでには時間を要しました。

 

合意を得られた要因は2つです。1つ目は、外部のフィンテック業界の名だたる有識者の方々から、事前に賛同を得ていたことです。2つ目は、取引事業者からの合意を先に取り付けていたことです。今回の事業は、メガバンクやそこに紐づくクレジットカード事業会社との提携なしには成り立たないものであったため、一番のボトルネックになる金融機関、ローン会社のスキームへの合意を得られていたことは、大きなポイントでした。

 

2つ目の大きな壁は、取引実績を見つける前の期間です。自信を持って「AD YELL」を展開しつつも、取引実績がでるまでは「本当に受け入れられている」という手触り感がなく、多少の不安を感じていました。そして3つ目の壁は、想定以上にお客様に喜んでもらえたことによって、サービス拡大に臨んだ期間です。社内の体制やフローを整えることが壁でしたね。この対応は、今後も継続的にやり続けることになると思っています。

 

最後の4つ目の壁は、「AD YELL」を必要としている方々へしっかり届けることでした。知ってもらえていなければ、そもそも検討の俎上に載せてもらえませんので、必ず突破しなければならない壁でしたね。 

業種やサービスの幅を広げて目標とする社会を

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

サービスをご利用いただいたお客様から、お喜びの声をたくさんいただけることが、モチベーションにつながっています。「神サービス!」というようなお声を直接いただいており感無量です。

 

そして私自身が「新たな金融のカタチを創り出す」というミッションに全身全霊で共感していること、そして同じように共感している仲間と共に働けていることが、モチベーションの源泉だと感じています。

 

また、ミッションに紐付く「誰もがチャレンジできる世界を。」というビジョンを掲げ、まさに創り続ける日々の活動そのものもモチベーションにつながっています。より多くの企業がバッターボックスに立ってバットを振ることができるよう、私たちの使命を全うしたいです。

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

仮に広告費と在庫の仕入費を支援し切ったとしても、目標とする世の中にはなっていないような気がします。だからこそ、業種やサービスを将来的に拡大する必要があります。

 

また、将来的には、お金に関するお悩みを抱える企業の方々へ支援を拡大したいと考えており、金融サービスを持たない企業にも弊社の仕組みを提供したいと考えています。これにより、間接的な形になったとしても、より多くの方へ弊社のサービスや仕組みをお届けすることができ、結果的に、支援の拡大につながると考えております。

 

さらに、定量的な話になりますが、某日本一の金融事業会社の流通総額が年間約2兆円だといわれていますので、ここを超えていきたいですね。世の中に貢献できたかどうかの、一つの指標としたいと思います。

 始める時点で結果は誰にも分からない

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

私の場合はイントレプレナーであり、アントレプレナーとは状況が環境など違う部分もありますが、もし、起業を通じて成し遂げたいことがあるなら、ぜひ意思を持って行動することを大切にして欲しいと思います。

 

「こうしたい」と思っていることが正しいかどうかは、その時には誰にも分かりません。1年後、5年後と遠くない未来に振り返ったとき、初めて正しかったことかどうかがわかります。

 

ですので、自分が今考えていることが正しかったと証明するために、信じて走り続けてみてください。結果は、自分次第で変わります。自分を信じ切って、1つ1つの課題を乗り越えて前に進んでもらえたらと思います。

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:

事業会社のマーケターを経験後、株式会社デジタルホールディングス傘下の株式会社オプトへ入社。同グループのインハウス支援コンサルティング会社である株式会社ハートラス(旧エスワンオーインタラクティブ)代表を経て、2021年4月より株式会社バンカブルの代表取締役社長に就任。“新たな金融のカタチを創り出す”をミッションに掲げ、広告費の4分割・後払い(BNPL)サービス「AD YELL(アドエール)」と仕入費の4分割・後払い(BNPL)サービス「STOCK YELL(ストックエール)」を展開中。 Twitter:@d_takase

企業情報

法人名

株式会社バンカブル

HP

https://vankable.co.jp/

設立

2021年1月18日

事業内容

金融関連サービス事業

沿革

2021年1月18日  株式会社バンカブル設立

2021年9月21日 「AD YELL」テスト運用開始

2022年5月12日 「AD YELL」正式提供開始

2023年3月09日 「AD YELL」正式ローンチから9ヶ月で広告費取引総額100億円突破を発表

2023年7月31日 「STOCK YELL」正式提供開始

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