株式会社ストロングジャパンホールディングス 代表取締役 CEO 寺本 雄平
セブ島を拠点とした留学斡旋事業者としてスタートした、株式会社ストロングジャパンホールディングス。現在では、学校法人、コールセンター、BPOセンターなども設立し、さまざまな事業を展開しています。代表取締役CEOを務めるのは「セブ島の総合商社になることを目指す」と話す、寺本雄平氏です。営業職からキャリアをスタートした寺本氏が起業家に転身した経緯とは。事業内容やこれまでに直面した壁なども含め、詳しくお話しを伺いしました。
留学斡旋事業を軸に幅広い事業を展開
事業の内容をお聞かせください
現在メインとして展開しているのは教育事業ですが、他にもかなり色々なビジネスを手がけています。教育事業の内容は、セブ島を拠点とした学校法人の運営と留学斡旋事業です。留学斡旋事業では、現在世界265都市への留学斡旋をおこなっています。
セブ島の学校法人はもともと、日本人が英語を学べる場所として立ち上げました。しかし円安の影響もあり、最近では中国、韓国、タイ、ベトナム、アラビア圏からの生徒も増えてきています。
ほかにも「グローバル転職ナビ」という転職エージェントサービスも提供しています。主に日本人の方々を対象としたサービスで、海外で働きたい人や英語を使って仕事をしたい人の転職のサポートをしています。
また、セブ島にはBPOセンターを設け、ITオフショア開発やSNSの運用代行、SEOライティングなどの案件を請け負っているほか、コールセンターとBPOセンターとして、セブ島で3拠点の運営をしています。コールセンター事業は急速に伸び、現在では福岡、沖縄、宮崎にも拠点を置いています。
他にも、不動産賃貸および売買の仲介や、不動産投資事業、不動産管理業を主にフィリピンでおこなっている事業部もありますし、宮崎県の都城市ではブロイラー事業と呼ばれる、食育用の鶏を育てて出荷する事業も手掛けています。
さらに海外、特にフィリピンに進出したい企業の進出コンサルティングや、親子移住をしたい人の移住サポート、そして今動いているのはセブ島における託児所と飲食店の立ち上げです。託児所はいずれ、幼稚園にする予定です。
幅広い事業を展開されていますが、どのような経緯で数多くの事業を手掛けられることになったのでしょうか?
当社は当初、留学斡旋事業のみをおこなっていました。世界256都市の語学学校と提携し、生徒さんを紹介したら、紹介料をいただくシステムでした。しかし、代理店として生徒様の送客を続けているうちに、自分たちでも我々にしか出来ない学校運営がしたいと考えるようになり、学校法人を立ち上げることになりました。コロナが流行る前、セブ島には300校以上の学校があり、戦国時代といわれるほど競争が激しい市場でした。
そこで我々は他校と同じ土俵で、多額の広告費をかけたりSEO対策を頑張ったりするのではなく、尖ったアプローチを取ろうと考え「0円留学」というサービスを立ち上げました。この留学プランは、1日の半分お仕事をしてくれたら、留学費用を半年から最大で2年間、0円にする、という留学プランです。無給のインターンシップに留学がついてくると言ったほうが早いかもしれません。
当初、コールセンターを作ったのは、0円留学生にお仕事を提供するためです。そんな中、突如コロナ禍がやってきてしまって・・・学校運営と留学斡旋事業は2年ほどストップせざるを得ませんでした。0円留学生には帰国してもらうことにしたのですが、我々は会社として生き延びるためにコールセンター事業に力を入れることにしました。
コールセンターの案件を探していくなかで、有り難いことに他の仕事のオファーも多く入ってきたため、BPOセンターも立ち上げることにしました。そこから、我々がセブ島に拠点を置く日系法人ということもあって、セブ島での転職や不動産の相談を数多くいただくようになりました。最初はボランティアでサポートをおこなっていたものの、需要があることがわかったため事業化したというのが経緯です。
メインで展開されている留学斡旋事業の強みを教えていただけますか?
我々が運営しているCBEA(セベア)こと「Cebu Business English Academy」は、英語を学ぶというよりも、英語でビジネスを学ぶ学校です。(ビジネス英語を学ぶ学校ではありません。)語学力のみでなく、海外で稼いで、生活していく力を養えるという点が大きな特徴です。
また、他校だと日本人スタッフは多くても5名以下ですが、当校には40人ほどの日本人スタッフが働いています。手厚いサポートを提供できることも強みの一つです。
もう一つ当校の強みといえるのが、アラビア圏からの生徒様が多いことです。普段交流する機会の少ないアラビア圏、特にさらなる成長が期待されるサウジアラビアやアラブ首長国連邦からの生徒様とも交流する機会を持てるのは、我々日本人にとって大きなメリットになると思います。
以前は会社員として働かれていたそうですが、当時から起業を考えられていましたか?
はい。新卒で働きはじめて、数ヶ月経った頃から起業を考えてました。当時、営業として大きな成績を出せていたのですが、役職が付くまでに数年も待たなくてはならなかったのと、上司を超えられる立場になれるのは早くても20代後半、30〜40代になってからだと気付き「そんなには待てない!もう起業するしかない!」と思ったことがきっかけです。
それから漠然と起業を考えていたのですが、どういった事業で起業したらいいのかがわからず、モヤモヤとしていました。そのまま2年近く会社員として働いていたのですが「とりあえず海外に出るしかない!」と思い、海外セブ島で転職することにしました。
最初はアメリカンドリームに憧れてアメリカで転職しようと思いましたが、英語力や経験がない私がアメリカで職を得るのは難しいのだと思い知らされました。そこで、英語力がなくても働ける海外の職場を探していたら、セブ島に辿り着いたんです。
留学斡旋事業と教育事業に出会ったのもセブ島に行ってからです。事業の面白さを知っていくうちに「この事業なら自分でできる!」と確信を持てたこともあり、起業に踏み切りました。元々、学生時代に教員免許を取得して、教員を志していたことも、きっかけの一つでした。
こだわりは「やり抜くこと」
仕事におけるこだわりを教えてください。
こだわっているのは、とにかくやり抜くことです。私自身のみでなく、社員にもやり抜く姿勢を大切にして欲しいと伝えています。
当社は幅広い事業を手掛けていますが、これほどの事業が成り立っているのは、皆が諦めずにやり続けた結果だと思っています。社内の独立支援制度においても、やるからにはどれだけ利益がマイナスになったとしてもやり続けるように社員に伝えています。もちろんその分、利益回収のプレッシャーと戦わなければなりません。
ただ会社員の場合、自分が担当している事業で利益がマイナスであっても、給料が0になるということはありません。だからこそ、社内では最後までやり切って欲しいと伝えています。
それらのマイナスを全て被る、そして打開するために動くのは経営層の仕事であり、1%でも可能性がある限り、信じて突き進んで欲しいと思っています。大変なことが多かったコロナ禍ですが、やり抜くことの大切さを実感したエピソードがあります。
コロナが流行る前、セブ島には300校以上の語学学校がありました。しかし、いま残っているのは約20校程度です。周りの学校が次々に閉校していくなか、我々は規模の小さい学校ながらも約2年半の間、何とか耐え抜きました。
その時諦めなかったからこそ、現在はこうして通常通り学校を運営できていますし、コロナ前にレッドオーシャンと言われていたセブ島留学業界はいま、完全にブルーオーシャンになっています。かつ、円安やフィリピンの経済成長により、参入障壁も以前と比較して、格段に上がりました。
改めていま、諦めずに約2年半、従業員を解雇することなく、耐え抜いて良かったという気持ちです。
起業から今までの最大の壁を教えてください
やはりコロナ禍が一番大変でした。私はポジティブなので、2ヶ月位でコロナは終わるだろうと最初は楽観視していたのですが、なかなか終息せず一生続くのではないかと不安になることもありました。
コロナ禍で学校を閉めていた期間も、当然学校キャンパスの家賃を支払わなければなりません。また、コロナを理由に従業員を解雇したくないという強い想いもあり、利益が一切無くとも、家賃と給料を払い続ける必要がありました。
思い返すとそれが一番きつかったですね。しかしポジティブな私は、常に2カ月後には終息するだろうと思い続けていました。
どのように壁を乗り越えられたのでしょうか?
やりたいことではなく、やれることを必死に伸ばすしかないという判断に至りました。
当時は「0円留学」のために作った、コールセンター事業を伸ばすことに注力しました。0円留学生には帰国していただき、コロナ禍初期の頃は、正社員のみで運営していたのですがコロナを理由に日本への帰国を選ぶ社員も少なくありませんでした。
新たにスタッフを採用しても、日本からセブ島に来てもらうのは非常にハードルが高く悩んでいたところ、コロナを理由に撤退をした日系企業で働いていた日本人スタッフの多くが、まだセブ島に残っていることを知りました。
「仕事はなくなってしまったけど、セブ島に残りたい」という日本人に声をかけて採用し、一気にコールセンター事業を拡大させました。厳しい採用基準もなく、基本的に希望者はすべて受け入れるという状態でしたね。
それでも約1年後には、フィリピン国内での採用による増員の限界を迎えたタイミングで、福岡と沖縄にもコールセンターを立ち上げることにしました。セブ島でコールセンターを運営できているのだから、日本でも絶対にできるはず!という想いで拠点を増やし、大変な時期を凌ぎました。
政治家となり ”強い日本を取り戻す”
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
私の夢は、政治家となり「強い日本を取り戻す」ことです。その夢はブレずに持ち続けています。政治家になることはあくまでも過程であり、「強い日本を取り戻す」ことが私のゴールです。
社名に「ストロングジャパン」と名付けているのも、教育事業を中心として、若者の海外進出支援や起業支援、ボランティアなどの社会貢献に携わっているのも、「強い日本を取り戻す」という夢に基づいての行動です。
企業理念にも「強い日本を取り戻す」を掲げています。
「日本は昔すごかった」と過去の栄光のように思われることが多いのですが、日本には再び強くなれるポテンシャルがまだまだあると私は信じています。
その強さを取り戻すためにもまずは、人口減少を止めなければなりません。アメリカが変わらずに強いのは、人口が増え続けていて、GDPも上がり続けているからです。どのような困難があっても私の夢は変わりません。夢を達成することが進み続けるモチベーションになっています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
目下の目標は、2024年末までにセブ島の総合商社になることです。直近では託児所のオープンを控えていて、次は飲食店のオープンも控えています。
その後には、ツアーアクティビティ事業の立ち上げも計画しています。
将来的にはセブ島において、衣食住を総合的にサポートできる会社とする予定です。日本人がセブ島に行く前の段階から、セブ島を出ていくまでをトータルサポートできるのが理想ですね。
その後は、セブ島で運営をしている学校法人を他国にも展開する計画があります。2025年にはマルタ共和国、2027 年にはセルビア、2029年にはジョージア、2030年にはインドに進出する予定です。
世界中に教育機関を設立し「0円留学」を事業の柱として、「日本人が海外へ出る上でのハードルを最大限0に近付ける」ことを企業ミッションとして掲げています。
お金や語学力、経験やスキルが無くとも、誰でも海外に気軽に挑戦が出来る世の中を実現させます。
起業を考えているのなら今すぐに動き出そう
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
もし起業したいという想いがあるのであれば、今すぐにでも動き出した方が良いと思います。
「今日から法人登記の準備を進める!」くらいの勢いを持って動いていると、一気に人生が変わってくるものです。落ち着いてから、や、●●が●●となったら起業しようと思っている、のでは動きが遅すぎます。
社会人を経験してから起業した方が良いという考え方もありますが、私は良いアイデアがあるのであれば、すぐにでも動いた方が良いと思っています。情報が得やすい昨今では、社会人経験で学べるのは、メールの書き方や名刺交換のマナー、敬語などYouTubeなどでも学べることが大半ではないでしょうか。
社会人経験が無くとも、営業先の部長や社長と話しているうちに、自然にビジネスマナーは身に付けられます。社会人経験がない人でも、起業への熱い想いと自信、アイデアがあるのであれば、すぐに行動に移して欲しいと思います。
いま思い付いている素晴らしいアイデアや、やる気と情熱も、時間と共に常に過去のものになっていくという認識を持ち、「今」この瞬間を常に大切にしていただきたいと思います。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:寺本 雄平氏
大学卒業後、国内の不動産ディベロッパー、商社、外資系金融に勤務。どの仕事もイメージとは違って長続きせず、「これはもう海外で働くしかない!」と思ったのを機に、フィリピン・セブへ渡る。セブでは一時アウトバウンドのコールセンターで勤務した後、日系語学学校に転職。留学カウンセリング業務や現場マネジメントに従事した後、最終的には留学エージェント事業を社内で立ち上げ、留学先の斡旋業務にも携わることに。セブでの経験を活かして、2017年に留学比較Styleを立ち上げ、現在は事業を統括するストロングジャパンホールディングスを設立し、国内外8拠点130名体制で、多角的に事業展開を進める。
企業情報
法人名 |
株式会社ストロングジャパンホールディングス |
HP |
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設立 |
2019年 3月 |
事業内容 |
【教育事業】 留学エージェント事業 外国人材教育および紹介事業 セブ島学校法人事業 0円留学事業 オンライン英会話サービス事業 オンライン英会話講師派遣サービス事業
【海外不動産事業】 フィリピン不動産売買の代理・仲介事業 フィリピン不動産賃貸の代理・仲介事業 フィリピン不動産投資事業 海外インフラ整備コンサルティング事業 【コールセンター事業】 営業代行事業 カスタマーサポート代行事業 オフィスコンサルティング事業 通信サービスおよび固定回線事業 【BPOセンター事業】 オフショア開発支援事業 フィリピンメディアサイト事業 Webおよび動画制作事業 SNS広告および運用代行事業 SEOライティング事業 リスト作成およびデータ入力代行事業 翻訳および各種辞書作成事業 【人材事業】 求人媒体事業 人材紹介事業 人材派遣事業 ブロイラー事業 |
沿革 |
2017年 4月:フィリピン セブ島で留学エージェント事業を創業。 2019年 2月:セブ島学校法人事業を開始し、セブ本社とCebu Business-English Academy Inc.を設立。 3月:株式会社ストロングジャパンホールディングスを設立。寺本 雄平が代表取締役に就任。 10月:BPO・コールセンター事業の開始を受けて、セブ支店を開設。 2020年 6月:コールセンター拠点として福岡支店を開設し、インフィニア株式会社を設立。 10月:海外不動産事業を開始。 11月:コールセンター拠点として沖縄支店を開設。 2022年 12月:グループの資本金を4,500万円に増資。 2023年 2月:Strong Japan Partners Inc.を設立。 5月:宮崎県都城市でブロイラー事業を開始。 7月:Strong Japan Partners Inc.で人材事業を開始。 |