Cloudbase株式会社 岩佐晃也 氏

日本で使用されているセキュリティソフトのほとんどが海外製であることに疑問を抱き、自社でクラウド利用時におけるリスクを統合的に監視・管理できるセキュリティプラットフォームを提供するCloudbase株式会社。

 

今回は、「世の中に大きな価値を提供したい」と語るCloudbase株式会社の代表岩佐晃也 氏に、具体的な事業内容や起業した経緯、今後の展望について伺いました。

AWS・Azureなどのクラウド利用時におけるリスクを管理

さっそくですが、事業内容をお聞かせください。

当社の事業は、日本の大企業向けのサービスになっています。クラウドがどんどん進化していくなかでAWSやMicrosoft Azureなどが注目され、多くの方々が使用し始めるのですが、「セキュリティが原因で活用できない」「リリース前に半年間のチェックが必要です」「200サービスあるなかの1つしか使用してはいけない」などの理由で上手く使用できていないのが現状です。

 

そこで当社は、これらを解決するのはもちろん、AWS・Azureなどのクラウド利用時におけるリスクを統合的に監視・管理できるセキュリティプラットフォームを提供しています。単にセキュリティサービスを提供するのではなく、リリースまでにチェックを実施し、セキュリティに関して知識のない現場の方々でも理解できるように工夫してお伝えしているのが強みです。

 

海外製品はセキュリティリスクを可視化するだけですが、それでは普段馴染みのない方にとっては理解しがたいでしょう。そのため、当社では「今すぐにでもハッキングされる経路はここですよ」とお伝えして、どのくらいのリスクがあるのか、どう解決するのかをリテラシーの低い方にも分かるように伝えることを大事にしています。

 

例えると医者と同じで、「肝臓と腎臓から血が出ています。まずは肝臓から治してください。」という感じで優先して直すべき箇所を伝えるイメージです。

 

日本で起きているセキュリティ事故の事例を教えてください。

イメージしやすいようにGoogleドライブでお話しますが、例えば個人情報を100万件ほど管理しているときに、これが誰でも見られる状態になっていることがよくあるのです。なぜこういうことが起こるかというと、社内にストレージが数十万あったとしても何か1つでも操作を誤ることですべての情報が開放されてしまうからです。巨大なビルにたくさんの窓があった場合に、1つでも窓が開いて入れば侵入できてしまうのと同じです。

 

未然に防げたセキュリティ事故の事例はありますか?

当社ではAWS・Google Cloud・Azureなどを利用しているお客様の情報に簡単にスキャンをかけられるため、健康診断のように悪い部分を見つけられます。そういった意味では未然に防げたのではないかと思います。

 

「お客様はどのようなことに困っているのだろう?」現在の事業に至るまでのピボットの歴史

現在の事業を始めた経緯を教えてください。

現在の事業を始めるまでに2年間で6回のピボット、細かいのを含めると10回のピボットをしています。私は10歳からプログラミングを始めていたのですが、偉大なサービスを作りたいと考え、大学4年生の10月に東京に出てきました。紹介してもらったEast Venturesの金子さんという方が「明日から東京に来るなら1,000万円でも出資するよ」と言ってくれて、それがきっかけです。

 

とはいえビジネスセンス0の学生エンジニアが偉大なサービスを作りたいと宣言しているだけだったので、金子さんから「AR流行っているし良いんじゃない?」とお声がけいただいて、渋谷の屋外広告の観察とソフトバンクの5Gの広告をチェックしていました。

 

しかし、コロナが流行ったのでARは難しいと判断し、人狼ゲームができるビデオチャットを作りました。結構使用されたのですが収益化の方法が分からず、次は音声に注目したサービスやクローズドSNSを作ったのですが、同じく収益化の方法が見つけられないといった感じでずっとその状況を繰り返していました。

 

偉大なサービスを作りたいと考えていた当時の私は「良いものを作れば勝手に世の中に広まっていく」と思っていたのですが、なかなかビジネスは難しいもので、次第に「お客様はどのようなことに困っているのだろう?」と考えるようになり、解決案も自問自答するようになりました。課題解決寄りのサービスに変化していきました。

 

また、セキュリティ教育のサービスを行ったときに回りのエンジニアを見ていて、ハッキングは好きだけどリテラシーが低い方がいることに気づいたのです。そのため、ハッキングできる環境を整えたところ売上が上がりました。

 

学生時代にインターンをしていたアイフルさんにこのセキュリティ教育のサービスを提供させていただけることになり、サービス自体は好評だったのですが「クラウドのセキュリティは見てくれないの?」と質問を受けました。

 

クラウドセキュリティ領域は課題がとても多く、市場としても急成長していたため、この質問をいただいたときに事業化できそうだとひらめいたのです。そしてその後、現在の事業にたどり着きました。

 

ただのエンジニアだった私が大きく変わったのは、セキュリティ教育のサービスからピボットする際に、起業家の先輩であるHOKUTO代表の五十嵐北斗さんからの「大きな問いを持ってひたすらにリサーチしろ」というアドバイスやアイフルさんからいただいた「クラウドのセキュリティは見てくれないの?」というお言葉に3ヶ月間向き合った結果だと感じています。

 

偉大なサービスとは具体的にどのようなサービスでしょうか?

相対的な観点が大きいです。私は小学生の頃からパソコンが大好きで、その当時はサクラエディタなどの日本のエディタを使用するのが主流でした。それが今では海外ものが普及していてセキュリティ系のサービスはほとんどが海外製です。”本来ならば日本のサービスがあってもいいはずなのにない”そういった制約を取っ払って、自分がサービスを提供したいと思ったのです。

 

つまり、私にとって偉大なサービスとは、世界で使用してもらえることや、世の中の人々にとってどれだけの価値を提供できるかということです。

 

自分が世の中にどれだけの価値を提供したか

仕事におけるこだわりや譲れない軸を教えてください。

人は情熱を失えばいつでも職を手放せるものだと考えています。一方で開発したサービスがヒットして会社が急成長していくかもしれません。様々な選択肢が出てきますが、人はそうなるとどう生きていけばいいか思考し始めるでしょう。

 

人生の終わりを迎える前にどのような生き方をしていれば最高かと考えたときに、自分が世の中にどれだけの価値を提供したかが私にとっての大きな軸になると思うのです。ただ、世界となるとまだ想像が追いつかないので、”沈みゆく日本をいかに上向きにできるか”ここに人生を捧げたいと思いまして、そのための手段として起業をして事業を手掛けています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください。

大学受験は誰しもが壁だったと思うのですが、合格したら忘れてしまうようにパッとは思い浮かばないですね。私は壁だと感じたときにこうしたら登れそう、あるいは迂回できそうといった風に乗り越えてきました。壁はあったと思いますし、これからもあるとは思うのですが、これまでのように乗り越えていきたいですね。

 

マリオで1-1のステージにずっといることはない

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

私は前提として、最悪仕事を辞めてもいい、生きていれば何でもいい、どのような人生でも肯定されると考えています。モチベーションといえるか分からないですが、マリオで1-1のステージにずっといることはないように、何もなくても歩みを止めることはないんじゃないかと思うのです。

 

とはいえ大きなベクトルは、世の中に大きな価値を提供することです。ミクロで見ると「今日は辛いかも」という日があるかもしれません。しかし、マクロで見たときに「ここに進んでいくぞ!」という強い思いがあるので、そこを上手く切り分けながら仕事をしています。

 

社員のモチベーション向上に関して工夫されていることはありますか?

社員同士の仲が良いというのもありますし、”誰が”言うかよりは”何を言うか”を大切にしています。人生は長いので落ち込む日もあれば楽しい日もあります。そのため、頑張るときは頑張って、休むときはしっかり休むというようにメリハリを付けることを大事にしています。

 

休むという観点では、土日に社員みんなで釣りに行ったりキャンプをしたりしています。この前は合宿も行いました。当社はそういう社内行事が多いかもしれません。

 

今後の展望をお聞かせください。

 

前提として、とんでもないことをしたいと考えています。現在セキュリティソフトを提供している会社は日本に数えるほどしか存在しないのですが、いかに当社が世界に通用するソフトウェアを提供できるかが見せ所です。

 

当社の創業者メンバーとは会社にとって当たり前に必要なことももちろん話し合いますが、「3年で100億の売上を出すにはどうしたらいいか」という夢のあることもテーマに出し、話し合い、試行錯誤を続けています。

 

私たちのバリューは「昨日より違う明日を実現しよう。できない理由よりできる理由を探そう」です。3年で百億の売上を出すのは難しく思えますが、できる理由を探し続けた先には何か大きなものが待っているのではないかと期待しています。そういうことを考えるのが好きですし、実現していきたいですね。

 

また、採用にも力を入れていく予定です。お客様にどれだけの価値を提供できるかという当社の志に共感してくれる方や先ほどお話したバリューに共感してくれる方などに入社していただきたいです。お客様企業の情報を守れる仕事なので、やりがいも大きいと思います。

採用URL:https://herp.careers/v1/cloudbase

 

諦めなければ何とかなる

起業しようとしている方へのメッセージをお願いします。

諦めないことが1番大切です。起業は運も関わってくるので、いかに諦めずに一定確率のガチャをどれだけ回すかで今後の未来が変わってくると思います。私も起業から2年を超え諦めずに頑張っていると、周りが応援してくれるようになりました。諦めなければ何とかなると思います。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:岩佐晃也 氏

10歳からプログラミングを始め、特にセキュリティ領域に関心を持つ。学生時代から様々なサービスを開発し続け、京都大学工学部情報学科在籍時にLevetty株式会社(現:Cloudbase株式会社)を創業。2年間で6回のピボットを経て、クラウドセキュリティ領域に至り、Cloudbase事業を始める。

企業情報

法人名

Cloudbase株式会社

HP

https://cloudbase.co.jp/

設立

2019年11月5日

事業内容

セキュリティコンサル事業

セキュリティサービス事業

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