株式会社FUNEE 代表取締役 楊 承峻

株式会社FUNEEは、2024年1月にファッションフリマサービス「digdig」をリリースし、洋服がより循環する社会を目指して事業を運営しています。楊氏の多様な環境で過ごしてきたバックグラウンドから生まれました。現在は招待制で一部の方のみ利用できるサービスツールですが、より多くの方々が利用できるファッションフリマのプラットフォーム展開を目指しています。今回は、事業内容や仕事のこだわりを詳しくお伺いしました。

 

「日常にワクワクが溢れる世界を創る」を軸にプロダクトを運営

 さっそくですが、事業の内容をお聞かせください。

弊社では、主に2つの事業を展開しています。

 

1つ目は企業向けにSNSのコンサルティングを行ったり、TikTokやインスタグラムの運用を行う事業です。

 

2つ目が「お洒落を持続可能にするインフラを創る」というミッションのもと運営しているフリマサービス「digdig」の運営事業です。このサービスは、不要になった洋服を送付し、販売価格を決めるだけで、出品ができることが特徴です。販売するための撮影・採寸・商品情報の掲載、購入者に向けて商品を送る梱包・発送作業をすべて「digdig」が請け負っているため、着なくなった洋服を簡単にフリマで販売することができます。

 

着る機会がなくなった服について「フリマアプリに出すにしても手間がかかる」「街のリサイクルショップに持っていっても安い値段でしか買ってもらえない」という理由で、結局捨てる人が多いです。しかし、郵送さえすれば簡単に洋服が売れる「digdig」の活用が広まれば、洋服が循環する社会につながると考えています。

 

「digdig」にはどんな意味が込められているのでしょうか?

「ディグる」というワードが由来です。

 

「自分の系統を掘り下げていく」という意味や、自分の好みの洋服を探すというところから、メンバーと話す中で「ディグるというワードを使いたいよね」という結論になり、「digdig」という名前を付けました。

 

現在の事業を始めた経緯を教えてください。

私は韓国籍の両親のもとに生まれ、幼少期から日本の教育を受けながら育っており、小学1年生から中学3年生までは、韓国の日本人学校に通っていました。

 

韓国にいた頃、日本人の子供と韓国人の子供が日韓の政治問題について言い争う場面に何度も遭遇していました。そのため日韓関係、ひいては社会がどうしたら良くなるのかといったことを幼少期から考えるようになりました。

 

私は日本と韓国どちらにもルーツがあるため、こういった場面に遭遇する度に悩みました。幼いながらに考え抜いた結果、対話するにはお互いへのリスペクトと背景への想像力が必要で、そのためにも日々をワクワクするような気持ちで過ごすことが重要だという結論に至りました。

 

全体がポジティブな方向に向かうためには、他者も自分もポジティブな意思を持つ必要があります。それは基盤としてのポジティブな気持ちがあるからこそ実現するもので、自分が持つポジティブな気持ちを他者に広げたときに、大きな意思に繋がると考えています。

 

小さい頃から姉に雑誌を借りて読み漁っていたように、私にとってファッションはワクワクする気持ちの源泉にあたるものです。大きな社会課題を解決し、あらゆる人に喜んでもらえる仕組みを作るなら、いつもワクワクできるファッションの領域で取り組むことは私にとって不可欠でした。

 

その上で、実際にファッション領域の課題の重さ・根深さを知り、弊社では「日常にワクワクが溢れる世界を創る」というビジョンの元で、「お洒落を持続可能にする」ミッションに則った事業を運営することに決めました。

 

「digdig」はSDGs関連の事業という印象を受けるのですが、SDGsに興味を持たれたきっかけはあったのでしょうか。

先ほどお話ししたように、元々「ファッション領域で事業を作りたい」という想いがあり、SNSをかけあわせた事業を運営していました。その中で、1年半ほど前にアパレルのゴミ問題を取り上げたニュースを目にしました。

 

統計上だと、年間で1人あたり18着の洋服を購入しながらも15着を廃棄し、1年に1回も着られていない洋服を35着眠らせているうえに、供給に対して消費が追いついておらず、一度も消費者の手に渡らなかった洋服もゴミとして数多く廃棄されているというのです。

 

アパレルゴミが社会課題としていかに深刻であるかを痛感しました。

 

また、同じ時期にフリーマーケットを開催する機会が何度かあり、多くの人たちが足を運ぶのを見てきました。つまり、洋服の二次流通の動きや考え方は、既に一定層には根付いているということです。

 

その動きが広がる仕組みを作れば、アパレルのゴミ問題を解決しつつ、新しい価値を生み出すことができるのではないかと考え始めました。

 

元々SDGsというキーワードから事業がスタートしたわけではないですが、上記のようなきっかけや市場動向を踏まえた結果、この事業の重要性、そして自分たちの掲げるビジョンの社会的意義を強く実感するようになりました。

競合他社と比べた際の「digdig」の強みを教えてください。

弊社の強みは出品代行のクオリティの高さです。出品代行とはサイズの確認、撮影などはオペレーションが煩雑化しやすいのですが、弊社はこれらの業務を徹底的にシステム化しています。

 

一部の業務は自動化し、人間が対応すべきことの範囲を絞っているため、高いクオリティで出品代行が実現できています。

 

現在は特定の方々に招待制で使っていただいていますが、弊社の「お洒落を持続可能にするインフラを創る」というミッションを達成するために、今後より多くの方が利用できるような形にしていきたいと思っています。

 

現在日本において、当社ほど洋服の二次流通に特化したオペレーションをつくり込んでいる会社は少ないと考えています。今後もオペレーションの仕組みづくりに力を入れていきたいです。

 

 「digdig」を世間に広めるために、どのような方法を考えていますか?また、届く洋服の量が増えた際に、課題になりそうなポイントはありますか?

現在「digdig」が誕生してから9ヶ月ほど経過しましたが、TikTokとインスタグラムのフォロワーが合わせて10万人ほどに到達しました。かなりハイペースでフォロワーの獲得ができており、最近では10代後半から30代前半を中心にの間では「名前は聞いたことある!」というほど認知が広がってきました。このペースで今後もSNS運用に力を入れながら、宣伝していきます。

 

今後の課題になりそうなポイントとしては、私たちが1日に捌ける洋服の枚数と、送られてくる洋服の枚数の均衡が保てるかどうかという部分です。送られてくる洋服のニーズに合わせて、オペレーションを強化することを意識しなければならないと感じています。

 

どんな意見、決定でも必ず相手の立場になって考える

 現在の仕事におけるこだわりや、譲れない軸などはありますか。

 弊社では、「常に相手のことを思いやりながらコミュニケーションや言動を取りましょう」というバリュー『イエローハート』を定めています。

 

例えば、仕事でより良いものをみんなで作ろうとなった際、意見がぶつかってしまうことや、お互いに違うことを考えてしまう場面があると思います。このような時に、なぜ相手がそのようなアイディアを出しているのかを考えなければ、人と人は衝突してしまいます。

 

自分と違う意見であったり、自分が理解できない事象があったりしても、相手の立場になって物事を考えるということは、私自身そして会社全体でも意識している部分です。

 

先ほど、「digdig」の名前を決める時もメンバーと話し合いながら決めたと伺いました。普段からメンバーとの会話を大事にしていたり、意見を参考にしていたりと、メンバーとの関わりを深く持たれているのでしょうか。

経営陣が決め切る部分と、メンバーを巻き込んで決めるところは、はっきり分けて考えています。

 

内容によっては経営陣で決め切ることもありますが、そのような場合でも、常にメンバーが何を思っているのかという部分は意識しています。

現在、人材を募集されていますよね。どのような経験を持った方や、職種の方を募集しているのでしょうか。

募集させていただいているのは、Webエンジニアと倉庫オペレーションのシステム改善を牽引するPdM(プロダクトマネージャー)のポジションです。

 

エンジニアの場合、実装だけに集中するような働き方ではなく、開発イシューから作ったり、倉庫に足を運んで改善するポイントを把握したりと、状況に応じてフレキシブルに対応できるような方を探しています。コードを書くことだけにコミットするというより、「なぜ作るのか」という問題の上流からこだわってくれる方だと弊社とマッチすると考えています。

 

倉庫のPdMについては、別会社の倉庫システムを理解しつつ、弊社の独特なオペレーションシステムに独自のオペレーションを組み込んでいける方を求めています。自社、他社ECで倉庫側のオペレーションを経験されていた方がマッチすると感じています。

 

募集職種の詳しい情報はこちら

https://funee.notion.site/FUNEE-8a2130650ec7405b842773eac6239e81

 

決め切ったことにとことんコミットしていくと、その先に新しい道が見えてくる

 今後やりたいことや展望はありますか。

「digdig」では、「オシャレを持続可能にするインフラを創る」というミッションを掲げているため、そこに紐付くような部分を強化していきたいと考えています。

 

現状は、洋服の捨て方に注目した事業を作っていますが、そもそもの「洋服の買い方」についても社会に周知していければと思っています。

 

近年、流行やトレンドの移り変わりが早く、ファストファッションブランドが多く生まれた結果気軽に購入し気軽に捨てる消費傾向が見られます。この行動を「これだという洋服をこだわって選ぶ」「自分のスタイルを深堀り、本当に必要なものを理解している人がカッコイイ」というような考え方なども含めて社会に提案したいです。

 

起業しようとしている方へのメッセージをお願いします。

まずは、起業したいけれどアイディアがない人へ。

 

最初は、自分が好きな領域や好きなものをとことん突き詰めてください。好きなものから、どんなものだったら自分がもっと欲しいと思うのかを考えていくと、アイディアが生まれてくると思います。

 

次にアイディアはあるけれど、なかなか一歩踏み出せない人へ。

 

必ずどうにかなります。現時点で、どの選択肢が正しいか、間違っているかを考えるのではなく、選択した選択肢を自分が正しくするんだと考えてください。

 

一歩が踏み出せなくて悩んでいる人には、動き出すのを協力してくれる方々もいますし、一歩踏み出しながら自分の選択肢を正解にできたら良いのではないかと思います。

本日は貴重なお話をありがとうございました!

 

起業家データ:楊 承峻氏

韓国籍の家族の元に生まれ、幼少期から日本で育つ。姉の影響で女性誌を愛読していた経験から、ファッション業界に携わる事を目指し大学在学時に株式会社FUNEEを創業。過去、韓国在住時に国家間にまつわる議論をきっかけに、国籍関係なくみんなが幸せになれる仕組みを作りたいと考えていた中で、2023年7月にアパレル業界のゴミ問題に注目したファッション特化フリマサービス「digdig」を立ち上げた。

 

企業情報

法人名

株式会社FUNEE

HP

https://funee.co.jp

設立

2019年3月18日

事業内容

ファッションサービスの開発・運営

沿革

2019年3月 : 株式会社FUNEE創業

2019年4月 : SNSコンサルティングサービスを提供開始

2023年7月 : digdigβ版をリリース

2024年1月 : digdigを正式リリース

 

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