OpenHeart 代表 渡邉 晃司

OpenHeartは、スマホで撮影するだけで3D・4Dの動画を作成できる革新的なSNS「TAVIO」の開発を手がけています。VR(仮想現実)やAR(拡張現実)、MR(複合現実)などを総称するXRの技術を活かし、不動産物件の3D化やファッションECサイトでの洋服の3D化など、幅広く事業を展開しています。「日本発GAFAのようなプラットフォーマーをめざす」と語る同社の代表、渡邉晃司氏に事業内容や今後の展望なども含めて詳しくお聞きしました。

 

スマホのアプリだけで3D・4D化を実現 

事業の内容をお聞かせください

私たちはスマホのカメラで撮影した思い出や景色を3D・4Dデータとして残すことができる、新しいSNSサービス「TAVIO」の開発を行っています。

 

従来の3D化サービスでは専用のスキャナーなどの機材が必要でしたが、「TAVIO」ではスマホにアプリをインストールするだけで、簡単に3D・4D化することができます。

このサービスは、XRの新しい形態を提供しており、私たちはこれを「ポータブルリアリティ」と名付けています。

 

「TAVIO」の具体的な活用例としては、不動産業界における物件の3D化、観光地や文化財の3Dデータ化等があります。例として、奈良の大仏のような複雑な構造物もカメラで撮影し3D化し、Webページに埋め込むなどデータ活用することができます。

 

また、ファッション業界でもこのサービスを活かすことができ、特にファッションのECサイトでは3D化を導入することで、洋服の立体的な見え方を確認できます。正面からの見た目だけではなく、横や後ろから見たときのシルエットや着丈を把握できるため、購入前に商品の細部をじっくり確かめられるようになります。

 

さらに将来的には、3Dデータを手で触れられることを目指しています。現在はゲームのシミュレーションで体験できる程度ですが、実物に近い体感ができるサービスを最終的には実現したいと考えています。

 

 

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

私は、大学院で画像情報を解析するAIの研究を行っていました。特に画像から背景を再現するプログラムAIの生成などに取り組んでおり、もともと現在の事業は個人的に興味がある分野でした。

 

その一方でフリーランスとして、スマート農業や自動運転の事業を手がけていました。具体的には、スマート農業では撮影した映像を元にビニールハウスの環境を3Dで再現していました。自動運転ではドライブレコーダーの映像を使用しマップを作成するなどの業務を行っていました。

 

以前から研究面と自分の興味、今まで携わってきた仕事内容を組み合わせてサービス化することで、多くの人に喜んでもらえるのではないかと考えていました。実際、まわりの人にサービスを体験してもらったところ、大変喜んでもらえるサービスだと気づき、全世界の人々に提供しようと決意し事業を始めることにしました。

目先の利益よりもパラダイムシフトを重視

仕事におけるこだわりを教えてください。

今後変わる可能性もあるのですが現段階では、パラダイムシフトを起こすことです。

 

単に利益が出るサービスを提供するのではなく、お客様に「これ凄いな」「革新的だな」と感じてもらうことを目指しています。

 

現在はスマホで写真を撮影することが当たり前ですが、将来的には3Dで撮影することが日常的になる世界を実現したいと考えています。私は目先の利益で判断するのではなく、革新的な体験を生み出すことにこだわっています。

 

また、私と同じ熱量を持ってパラダイムシフトを起こしたい気持ちがある仲間を集めることも心がけています。いきなり仕事を依頼するのではなく、実際に会って会話をする中で、その人の熱量や思いを確認し、採用活動を行っています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

最大の壁は、サービスを展開するまでの過程にあります。

 

私たちの最終目標は、消費者にパラダイムシフトを起こすサービスを提供することです。

 

しかしながら、サービスが浸透するまではユーザー数が伸びずに黒字化が難しい状況が続きます。資金調達の交渉は続いており、技術自体に先進性を認められてはいるものの、展開やビジネスモデルの構築が現在の最大の壁として私たちの前に立ち塞がっています。

 

また将来的にはユーザー数が増えてきたときの課題として、サーバー費用のコストが大きくなることが想定されます。ユーザー数が5万人以上に増えれば広告収入やSNSでのマーケットによる収益化が期待できますが、過度期は非常に大変なものになると思っています。

 

仲間がいるから最大限の力を発揮できる 

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

仲間のために頑張る気持ちが私のモチベーションとなっています。

 

現在の事業は、あくまでもスタート地点に過ぎません。この事業の先に、私の実現させたい世界があります。今はスタート地点でしかないので、モチベーションは常に高い状態です。

 

その上で、一緒に取り組む仲間がいるからこそ、より頑張れる部分があります。今まではフリーランスとして1人で活動していましたが、今は9人の仲間と事業に取り組んでいます。

 

ピッチや商談の前など何か頑張るときには、仲間の顔が自然と浮かびます。皆で良いものを作ってきたため、自分も頑張らないといけないと思いますし、何としても結果を残さないといけないと思っています。

 

自分が馬力を出すためにも、良い仲間と一緒に仕事をすることを心がけています。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

日本発のGAFAのような3D・4Dのプラットフォーマーをめざしています。

 

その理由としては、日本ではまだ GAFAと同等のプラットフォーマーは存在しておらず、そこに可能性を感じています。日本はこの分野の成長は落ち着いている一方で、起業家支援は比較的充実しています。

 

その環境の中で、私たちの事業でパラダイムシフトを起こすことを狙っています。海外と比べると勝ち目がないと思われがちですが、私たちは本気で日本発のGAFAをつくりたいと思っています。

 

時代の流れからも、3D・4Dの取り扱いがどんどん増えていくと予想しています。近い将来、スマホのSiriのようなAIアシスタントがピンマイクサイズの小型デバイスに搭載され、日常を記録し続けるようになると思います。

 

そうなると、私たちが扱っている3D・4Dとしてアップロードされ続ける世界になりますが、現状では3D・4Dが増えたときに対応できるプラットフォームはありません。

 

だからこそ私たちは、3D・4Dに対応した次世代のGAFAと同等のプラットフォーマーになりたいと考えています。

 

競争の激しい業界で勝ち抜くための戦略を教えてください。

現在、3D・4Dの業界をリードしている企業を追い越すために、日々試行錯誤しています。

 

その企業は莫大な資金調達を成功させているため、私たちに勝ち目はないと思われるかもしれません。しかし、課題を細かく分析してみると対抗できることがわかってきました。

 

具体的には、3D生成の品質を向上させ価格を抑える、データ生成時間を短縮する、さらにコンシューマー向けに写真1枚から数十秒で3D化できる機能の実現することで、その企業と戦えると予想しています。手軽さを売りにコンシューマーの需要を取り込む考えです。

 

また、業界をリードする企業は3Dデータ生成の精度に重きを置くのに対し、私たちはWebページへの埋め込みや商品購入サイトのリンク機能など、3D・4Dデータを活用した新しいマーケットを築くところに重点を置いています。この用途の違いが差別化できるポイントになると考えています。

 

3回目まではあきらめずに挑戦を

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

上手くいかなくても、3回目までは諦めずに挑戦し続けてください。

 

偉大な実業家であっても、1〜2回目までは失敗することがほとんどです。3回目の挑戦で感覚がわかり、成功する可能性が高くなります。少なくとも3回目までは諦めずに挑戦しましょう。

 

また、信頼できる仲間を見つけることも重要です。3回失敗しても同じ志を持った仲間がついてきてくれるなら、絶対に大切にしてください。

 

起業家がピッチを成功させるコツはありますか?

ピッチを成功させるために、メンタル面とテクニカル面の両方を意識した準備をおこなっています。

 

メンタル面では、本番の1週間前ぐらいにステージを見に行きます。もし可能であればステージに立って広さや観客の人数をイメージすることで、緊張をコントロールしやすくなります。

 

また「誰のためにピッチをするのか?」といった視点も意識しています。私の場合は、仲間のためにおこなっています。明確な目的を持つことは、モチベーションの維持にも効果的です。

 

そして何より大事なのは、伝えたいメッセージを頭の中に入れておくことです。本番で頭が真っ白になってしまうこともあります。その場合でも「これだけは必ず伝えたい」とメッセージを決めておくと対応できます。

 

テクニカル面で1番練習するのは、ページをめくるタイミングです。

 

発表する文章を暗記しているだけだと、本番でスムーズに進まないことがあります。ですが、ページをめくるタイミングを意識すると、言葉の繋ぎ目がスムーズになります。スピーチとページをめくるタイミングを連動させることをぜひ意識してください。

プレスリリース

”さわれる”3Dプラットフォーム「TAVIO」を提供する株式会社OpenHeart、7,000万円の資金調達を実施

今回実施したシードラウンドにおける資金調達を通して、私たちは3Dプラットフォーム「TAVIO(タビオ)」の機能強化および市場拡大に向けた取り組みを加速させたいと考えております。

従来、2Dの画像や動画では伝え切れなかった空間製品の立体感・スケール感も、3D・4D技術を活用すればリアルに表現できるようになります。TAVIOはそうした技術をもっと身近にすることで、不動産、観光、ファッション、自動車など、幅広い業界におけるビジュアルコミュニケーションの進化を目指しています。

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:渡邉晃司氏

総合研究大学院大学社会人博士課程

国立情報学研究所社会人博士課程にて生成AIの研究を行っている。

現在はAIやCGの開発を行っており、TAVIOのリリースに向けて活動中。

 

企業情報

法人名

OpenHeart

HP

https://tavio.ai

設立

2024年 8月 27日

事業内容

スマホで撮るだけで、大切な想い出や日常のワンシーンを360度見渡せる4D動画として投稿出来るSNS「TAVIO」の開発。

 

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