株式会社サルエド CEO 上嶋 旬
株式会社サルエドは、生成AIを活用した営業社員育成の全自動化サービス、AI上司「サルトル」の開発に取り組んでいます。大学在学中から営業職を経験していたCEOの上嶋旬氏は、自身の成長体験を多くの方と共有するために、このサービスを開発していると話します。日本の経済活性化を目指す上嶋氏に、事業内容や今後の展望なども含めて、詳しくお聞きしました。
生成AIを活用した営業社員育成の全自動化サービスを開発中
事業の内容をお聞かせください。
現在、AI上司「サルトル」の開発に取り組んでいます。これは、生成AIを使った営業社員育成の全自動化サービスで、AI上司が全商談に張り付いて、営業マネージャーの代わりにOJTを行うサービスです。
具体的な機能の一つに「商談カンペ」があります。これは、Zoomなどのオンライン商談中に、営業社員とお客様の会話を分析し、リアルタイムでアドバイスを出す機能です。例えば、お客様から「費用が高い」と言われた時に、とくに新入社員など営業経験が浅い方だと焦ってしまいます。そうした時に、すかさずAI上司が「費用対効果に見合わないという意味なので効果を強調しよう!」といった助け舟を出してくれます。
AI上司「サルトル」は、リード獲得後からの営業活動をサポートし、商談を進展させ、 成立に至るまでアドバイスを行います。また、教師あり学習を採用しており、約20万時間をかけて体系化されたトップセールスのセオリーやノウハウの膨大なテキストデータを元に助言を生成しています。助言は業種問わず役に立つように仕立てており、幅広い業種で導入が可能です。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
私がこの事業を始めたきっかけの一つは、営業として成長した体験を多くの方と共有したいと思ったことです。大学の学費を工面するために在籍時から営業の仕事を始めましたが、上司が1on1でつきっきりで指導してくれたおかげで、未経験からでもそれなりの成果を出せるようになり、営業の面白さも知ることができました。同時に数字づくりに苦しんでいるのにマネージャーのサポートがほとんどない方も数多く目にしました。そこで私の体験は世間一般ではありえない特殊なケースなのだと実感したわけです。
大学卒業後もフリーランスとして営業代行を請け負っていましたが、かねてより可能性を感じていたAIを使って先の問題をどうにか解消できないかと考え続け、AI上司「サルトル」の構想にたどり着きました。
AI上司「サルトル」は現在開発中ですが、ありがたいことに多くの引き合いをいただいている状態です。さらにリリース前にもかかわらず、事業会社とのオープンイノベーションの検討が進んでいます。例えば、生命保険の営業活動で使用する場合、商談中にリアルタイムでコンプライアンスチェックを行う機能や、営業のスキル・能力をスコア化する営業版TOEIC機能にご関心いただくなど様々な広がりをみせています。
最後まで粘り強く、常に創意工夫しながら仕事に挑む
仕事におけるこだわりを教えてください。
どんな仕事でも粘り強さや執念を大切にしています。以前、お客様に提案した後に「もっと良いやり方があったのではないか?」と思い、別の方法を考えて、再度提案したこともありました。そのくらい最後までやり抜くことにこだわっています。
また、教育指導を例に出すと、上司が部下に何度説明しても理解してもらえず、なかなか育たないケースがあります。そこでも諦めずに他のアプローチを試みたりすることが大切です。
このように、人材育成では時間をかけて相手と粘り強く向き合う姿勢が必要です。上司が成長の遅い部下に嫌気が差して諦めてしまうこともありますし、そもそも複数の部下持ちである以上は各人に割ける時間は限られています。人間の上司には物理的に不可能なのでAIの補佐が必要だという話に戻ってきます。
起業から今までの最大の壁を教えてください。
プロダクトの開発コストを何で補うかについて日々悩んでおり、今が最大の壁だと感じています。「受託案件を受けてその利益から資金を捻出する方法」と、「出資や融資を受けて資金を確保する方法」の主に2つの方向性がありますが、どちらも一長一短です。
起業家であれば誰もが悩むと思うのですが、どこかで判断しなければなりません。正解なんて後になってみないと分からないので、選択した先で最善をつくすことが大切なのかもしれません。
生成AIをうまく取り入れながら、人が主役になれる世界をつくりたい
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
「これをやりたい!」「こういう世界を実現したい!」といった原点の強い想いがモチベーションになっています。現在、当社は際立ったトラクションが出ていないプレシードの段階のため、正直なところ苦しく感じるタイミングもあります。しかし、自分のなかにある情熱のおかげで、屈せずに進み続けられています。
また、モチベーションを保つために、心の余裕を持っておくことも大切です。先ほどお話ししたように、資金面の方策は最終的にどちらを選択してもいいようにリスクヘッジはしています。決断後にすぐにアクセルが踏めるように準備しておくことで、精神的にも安定します。
今後やりたいことや展望をお聞かせください。
大きく2つの方向性があります。1つ目は、もともとの私の想いである「日本の経済を活性化する」ことです。2つ目は、会社のビジョンとしても掲げている「人が主役になれる世界をつくる」ことです。
まず「日本の経済を活性化する」ことについてです。これは日本企業の業績を高めることだと思っています。その上で「業績を高めるためには?」と逆算すると、収益獲得の中核機能である“営業”の売上づくりを支援することだと考えました。また、日本経済の先行きは不透明ですし、人口減少により雇用の場が縮んでしまいます。親よりも子のほうが貧しくなる時代にさせないためにも、言葉の壁を乗り越え、海外市場や海外顧客をつくることに挑み、商流によるグローバリズムと貿易立国を確かにするべきです。AI上司がその手助けになれるよう頑張りたいと思っています。
次に「人が主役になれる世界を作る」ことについてです。ChatGPTが登場する前はオフィスワークのなかでも創造的な業務はAIにはできないと思われていましたが、最近では頭脳労働もできることが判明してきました。こうした背景を受けて「人間にしかできないこととは?」という議論がされています。当社の生成AIの活用方針は、人の仕事をAIに任せることよりも、人の能力を強化していくことに重きを置いています。現に、AI上司のアドバイスではHOW TOというテクニックを教えるだけではなく、顧客志向という営業として大切にすべきマインドやスタンスを伝えています。テクニックだけだとしゃべりの上手い営業になってしまい、顧客にとって良い営業になれません。また、知識だけを一方的に授けているとAI上司に対する依存心が生まれてしまうので、自分で考える力が身につくよう工夫もしています。その結果として、お客様から「この人の話を聞きたい」や「この人だから商品を買いたい」と言われる営業が育つと思っています。
経営者に必要な情報、そして支えてくれる仲間を集めるべし
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします。
情報を得ることが何より大切です。経営者は開発、営業、採用、経理などあらゆる領域について一定の知識を身に着けておく必要があります。しかし、未経験だと分からないことだらけです。経営を勉強して起業する流れでもいいですが、どの程度のレベルになったら適切か答えはありません。解決策は自分の不足を補ってくれる仲間を持つことです。
私は一人で起業したのですが、特に仲間集めに苦労しました。ひたすら勉強会やイベントに参加して名刺交換をしたり、その後も積極的にコミュニケーションをとったりと奔走しました。現在、テックリードを務めているメンバーは、1年半かけて関係を構築したほどです。最初は断られても、定期的に連絡を取って、根気強く自分の想いや事業の目的などを伝え、共感してもらう努力が必要になります。こうした粘り強いアプローチにより、創業期でも強力なチームを作り上げることができました。協力してくれる方のなかでもコミットしてくれる方はすぐには出会えないので、早めに行動することをおすすめします。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:上嶋 旬氏
大学入学時から営業コンサルタント会社で新規開拓のインサイドセールスや提案書作成の代行などに励み、営業の仕事の面白さと奥深さに目覚める。 また、実務経験を積むうちに、収益獲得の中核機能を担う「営業」の弱体化が進んでいることを知った。そこで、先端技術を絡めた営業変革を通じて日本企業の活性化を促し、日本経済の地盤沈下・埋没に歯止めをかけたいとの「志」を抱く。さらに世間で嫌われ、とくに私と同世代が就きたがらない営業職をわくわく感と高収入が得られる仕事に高めたいとの思いを抱く。
卒業後、「日本の営業を元気に」「日本の会社を外向きに」を使命とした株式会社サルエドを立ち上げ、事業内容を営業社員育成全自動化に定めた。 自らは学生時代に手厚いOJTを受けたことでそれなりの営業成績を収められるようになったが、上司の部下指導が不徹底なことは世間一般では当たり前であったことから、全社員・全商談に張りつくAI上司の着想を得た。
開発実務ではアーキテクトを担うほか、営業コンサルタントが蓄積してきたコンテンツをAIに格納するデータ整形を担う。世界に先駆けて「SNA」の概念を提唱し、書籍執筆やビジネス誌連載で啓蒙に努める。
企業情報
法人名 |
株式会社サルエド |
HP |
|
設立 |
2021年12月6日 |
事業内容 |
AI上司サルトル(SaaS)の開発・販売 AIアプリケーション・ITシステム受託開発 |
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