ディヴォートソリューション株式会社 代表取締役 洞本 昌明
中小企業の支援から大企業の戦略コンサルまで、EC/ITソリューション事業を通じ数百社の課題解決を主導してきたディヴォートソリューション株式会社。近年、販売元として展開してきたRPA製品「アシロボ」では、防衛省をはじめ契約数は1,200超、官公庁や企業の働き方改革を実現させています。趣味が仕事だと語り、今までも多数の事業を手掛けてきた同社代表取締役の洞本昌明氏に、詳しい事業内容や今後の展望などをお聞きしました。
高額&難解のイメージを覆すRPAロボットを提供
事業の内容をお聞かせください
当社の主な事業として、RPAロボットの「アシロボ」があります。AIが人間の脳や目の仕事をするのに対し、RPAは手の仕事をします。例えば、自動演奏ピアノに「ドミソ」と教えれば「ドミソ」と弾くように、RPAはそのパソコン版のようなイメージで、「A+B+C+Enter」と教えれば「A+B+C+Enter」と真似をします。これがRPAの技術です。アシロボはバックオフィスの様々な業務を効率化します。例えば、総務、人事、経理、営業事務、そういったルーティーン的な業務を代替することができます。
アシロボの魅力は、月額5万円から始められる価格にあります。世にRPA技術が広まり始めた頃は高額で、導入に数百万円~数億円もかかる世界だったので、中小企業でも採用しやすいRPAがあれば喜ばれるのではと可能性を感じ事業を開始しました。キャッチフレーズの「月給5万円」は、月給5万円でロボット社員が働いてくれるイメージで付けたもので、中小企業による導入のしやすさを意識したものです。当初は中小企業メインのプロジェクトでしたが、今では多くの大企業や官公庁にも導入いただけるまでになりました。
今までの事業を始めた経緯をお伺いできますか?
私は趣味が仕事で、今までにも様々な事業を行ってきました。
最初に立ち上げたアンジェweb shopは、書店とインテリア雑貨を展開する家業から派生した事業でした。私が職に付く時点では、兄が書店を、私が雑貨屋を継ぐことになっていたのですが、2000年のインテリア雑貨部門在籍中に、これから来るインターネット時代に向けECを立ち上げたいと起案し、その担当となりました。
事業を始めて5年が経過した頃にMBO(事業買収=Management Buyout)を実施し、セレクチュア-株式会社として独立しました。それから更に約5年後、セレクチュア-ソリューション株式会社を立ち上げ、Eコマースのソリューション事業を展開し、サイト構築や写真の撮影、SEO関連、コンサルティングなど、様々なEC/IT関連のご要望にお応えしていました。その後、2014年にEC事業を展開するセレクチュア-株式会社をM&Aで料理サイトクックパッド株式会社へバイアウトしました。(※同時期にセレクチュアソリューション株式会社からディヴォートソリューション株式会社へ社名変更)2015年、国のインバウンド目標では明らかに宿泊施設の需給バランスが崩れると予想した事をきっかけに、次なる事業として民泊事業を展開しました。インテリア雑貨屋だった私としては、室内インテリア構成のノウハウもあり、結果的に受託を含め運営する部屋数は国内最大規模の300室を超えました。
現在の主力事業であるRPAに出会ったのはその後のことです。当時、こんなに便利な技術があるのかと感動を覚えたと同時に、導入費用の高額さと操作の難しさに難点があると感じました。そこで、この技術を中小企業向けに広めるべく開発できそうな企業へ打診し、製造元と販売元の2社共同ビジネスで展開することになったのがアシロボ誕生のきっかけです。
先義後利で「ありがとう」の収益を生み出したい
仕事におけるこだわりを教えてください
アシロボビジネスの根底には「利他精神」があります。これは、お客様へのサポートを充実させることを重要視している点に表れています。私がこれまで経験してきた全てのビジネスで共通する「利他」の精神を基にサポートを充実させ、顧客満足を重んじる体制を整えています。具体的には、オーナー企業且つベンチャー企業でしか判断しづらい全サポートを採算度外視で無料提供にし、尽くし続ける。そんな無謀な方法で行っています。
この「利他」の精神は、私が育った京都の商売の教えに根ざしています。創業100年を迎える家業の3代目として、父である先代から受け継いだ京都商法は、商売は一人のお客様から大きく儲けるのではなく、多くのお客様から少しずつ利益をいただく適正利潤で考えるべきだと教えられてきました。効率化や生産性が当然のデジタル化社会には、考えが古いと失笑を受けると理解をしつつも、信念として、今なおお客様からの「ありがとう」の積み重ねを繰り返す事が企業の信頼となり真の在り方なのだと、アシロボビジネスでもその根幹を成しています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
どんなビジネスでも必ず壁はあると思います。当然、私も、これまでに小さな壁はありましたが、大きな壁が来た認識はあまりありません。これは、何に対してもネガティブに捉えるのとポジティブに捉えるのでは記憶にも差があるように思います。全ては心の持ちようなので、例え、その瞬間は必死でドタバタとしていても、成長に必要な事なのだと楽観的に捉えるからか、お陰様で最大の壁といった困難に陥った記憶はありません。
ユーモラスな発見が自分を動かす源
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
私が様々な事業で進み続ける理由は、趣味が仕事なので単に好きなことをやっているだけに過ぎません。それは儲けやお金の世界の話ではなく、ゲームスコアが上がっていく事に喜ぶ感覚に近いです。例えば、世の中やビジネスのペインに気付き、スケールの道筋が見えた瞬間は、モチベーションと挑戦心が湧きます。こんな日々挑戦できる環境が、私のモチベーションの源泉なのだと思います。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
2つあります。1つ目は事業の柱をいかに増やすかです。現在、RPA事業やITソリューションなど複数の事業がありますが、これらの事業に関連性はなくても、人に喜ばれる世の中に無いモノを作ったり、上りエスカレーターのような時代の後押しがあるものの世に認知されていない技術・商品・サービスを探しています。お客様に喜ばれ事業が拡大し、関わる人々にも喜びを波及させる。そんな好循環をしていきたいと思っています。
2つ目は、まだ当面先の話になりますが、事業が伸びず困られている方々の支援です。特に地方企業にその傾向が強く、いくつかスイッチを変えればスケールしそうなビジネスはたくさん存在します。そんな視点からお役に立てることができればと思っています。
やるべきことをやり続ける行動力がすべて
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
私のように新規事業の開発をしたり、起業の0→1段階では、その事業に対して本気で向き合い、考え続け、行動を伴わせなければ、何事も為し得えません。軌道に乗るか乗らないかのエンジン役が自分中心になる以上、その目標に向かい、今やっておいた方が良い事にひたすら取り組むのは当然だと思います。ビジネス書でよく例に挙がる企業の10年生存率から見ても、生き残りが容易な世界ではないだけに、本気度というエンジンの強弱は、精神論的ながらも、あながち核心をついているように感じています。
新会社「株式会社OMAPAN」を立ち上げたそうですが、どのような会社ですか?
OMAPAN(オマパン)は、「あなたの人生守ります|うんちを漏らしてもバレないパンツ」を謳う排便対策パンツです。マーケットは国指定難病の潰瘍性大腸炎26万人、クローン病7万人、過敏性腸症候群1,200万人と、日本人の1/10も存在するお腹に不安を抱えている方々です。実は、私が潰瘍性大腸炎の難病患者で、発病当時から、こんな商品があればと遊び半分で考えていた事を実際に開発しました。
ゴールは「防臭×防水パンツ」でしたが、開発当初は排便用の防臭生地が存在せず、あらゆる縫製方法を試しても水分が漏れ続ける悲惨な状況でした。しかし、懲りずに原料メーカーを探し、何度も縫製方法を検討した結果、ようやく1年が経過した頃に、防臭(5大排泄臭対応)×防水(紙オムツ1回分150cc吸収)の機能を持ち、洗濯も50回までできる、見た目は普通のボクサーパンツが完成しました。
一見、遊びっぽい商品ながら、医師や看護師からも有用性を認められている他、官公庁・自治体からは、災害救助装備品や災害避難所備蓄品として興味を持っていただける有り難い滑り出しで進捗しています。また、腸疾患以外にも様々なシーンや職業に需要があり、潜在マーケットは3,000万人超だと見ています。
■シーン
飲み過ぎた翌日のお腹が緩い日用、電車・バス通勤、車の渋滞、海外旅行、観光バス、緊張する会議、入試・入社テスト、花火大会、ライブ、登山、下痢っぽい日。
■職業
バス・電車・タクシーの運転手、高所作業者、TVクルー、舞台出演者、警察・消防の警備、自衛隊など。他にも子供のイジメや不登校の温床になる排便問題など、意外に各所に必要性があります。
テスト販売中の弊社オンラインでは「安心して外出できる」「臭わない」「購入が恥ずかしくない」など、レビュー点数4.9の高評価をいただき、いよいよ今秋から大手小売店での販売も始まる事から、これからもOMAPANの魅力を益々広めていきたいと思っています。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:洞本昌明 氏
京都精華大学人文学部卒。2000年ふたば書房グループにてアンジェweb shopを立ち上げる。2005年同事業部をMBOし、セレクチュアー株式会社を設立。楽天shop of the year総合2位×2回、総合3位×1回、9年連続楽天市場インテリア部門第1位、5期連続顧客満足度第1位、日本オンラインショッピング大賞最優秀賞、IT百選最優秀賞、ほか多数受賞。その後、同社をM&Aでクックパッド株式会社にバイアウト。2012年EC・ITソリューション事業を行うディヴォートソリューション株式会社(旧セレクチュアーソリューション株式会社)を設立、IT/EC事業のソリューションを各業種の大企業~中小企業まで数百社に行う。2015年経営コンサルティング事業として、大企業の戦略コンサル事業を展開。同2015年民泊事業を行うオールステイ株式会社を設立。複数の大企業とパートナーシップを組み国内最大規模の300室超を運営。2019年ディヴォートソリューション株式会社の新規事業としてRPA製品「アシロボ」を展開。防衛省初のベンチャー直契約企業として航空自衛隊・海上自衛隊をはじめ、国交省(海上保安庁)、経済産業省(内閣官房)、複数の自治体や警察と契約。民間企業では野村證券、朝日新聞社など大企業を中心に計1,200契約の顧客を抱えている。著書:Eコマース成功の条件(日本経済新聞出版社/共著)
企業情報
法人名 |
ディヴォートソリューション株式会社 |
HP |
|
設立 |
2012年8月 |
事業内容 |
RPA事業 |
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