株式会社明光キャリアパートナーズ 代表取締役 小西 悠太

株式会社明光キャリアパートナーズは、深刻な人材不足が進行する日本において、日本企業と世界中の優秀な人材を繋げ、さらには教育や研修を通じて日本企業の持続的な成長を支援しています。小西悠太氏は、個別指導塾「明光義塾」などを展開する株式会社明光ネットワークジャパンで現在の事業を立ち上げ、その後の事業をスピンアウトさせ法人化し、代表取締役社長に就任しました。今回は、事業を立ち上げた背景や今後のビジョンについて、また社内起業に興味がある方へのアドバイスを小西氏に伺いました。

 

教育アセットを活かし、外国籍人材と日本企業を繋ぐ

事業の内容をお聞かせください                 

現在、大きく分けて4つの事業を展開しています。

 

1つ目は外国籍人材の紹介事業です。特定技能の在留資格を活用し、外食、介護、製造業、自動車運送業界向けに外国人材の採用と入社後の各種支援業務を行っています。

 

2つ目はエンジニアの人材紹介サービスで、施工管理やIT分野の外国人エンジニアの紹介を行っています。

 

3つ目は外国籍人材の雇用に関する教育研修サービスです。日本語教育、ビジネスマナー、日本文化研修に加え、外国人スタッフが自律的に日本語学習を支援する為の学習アプリ「Japany」も日本国内と海外に展開しております。

 

そして4つ目は、国内向けM&A仲介の人材紹介事業です。

 

当社の最大の強みは教育にあります。特に、外国籍人材の採用において教育は欠かせない要素です。そのため、海外の送り出し機関や日本語学習センターと連携し、カリキュラムの見直しや教育の代行、教師向け研修などを実施することで、教育の質を向上させています。

 

また、独自のeラーニングシステムも展開しており、こうした教育アセットを活用することでより質の高い人材の紹介と定着・活躍を実現しています。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

私は以前、明光グループの一社で人事責任者を務めていたのですが、次第に人材関連の仕事に挑戦したいという思いが強まっていきました。そこで、当時の副社長(現会長)の山下に提案したところ、挑戦の機会をいただき、本社へ転籍して新たな事業を立ち上げることになりました。



人材事業に挑戦したいという思いはあったものの、明光グループとしても初の人材事業だった為、様々な角度から事業の企画・検討をする必要がありました。そうする中で、明光グループの教育アセットを活かせる領域かつ、「人材」「キャリア支援」「特定技能」「外国人の支援」のキーワードを掛け合わせながら模索を重ねた結果、現在の事業にたどり着きました。

 

事業を立ち上げた当初は、私ともう一人の少人数体制でした。事業を立ち上げる前に綿密な計画を立てて進めてきたというより、事業を進める中で経験を積み重ねながら成長してきた実感があります。

仕事で「価値」を生み出し、未来につなげる

仕事におけるこだわりを教えてください            

私が仕事の中でよく使う言葉のひとつが「価値」です。最近、社員と話すときもお客様と対話するときも、無意識に「価値」という言葉を頻繁に使っていることに気づきました。それだけ、私にとって「この仕事がどのような価値を生み出すのか」が重要なテーマになっているのだと思います。

 

もちろん、売上や利益は事業を続けるうえで欠かせない要素です。しかし、それだけを追い求めるのではなく本質的な価値を創造できていれば、マーケティングやブランディングも自然と形作られていくと考えています。また、たとえ短期的なマネタイズが難しい取り組みであっても、価値のある事業は将来的に大きな基盤になると信じています。

 

私自身の仕事の進め方としても、「このお客様にとっての価値は何か?」「3年後、5年後、10年後に日本で必要とされるものは何か?」という視点を常に持ちながら、新たな価値を生み出す仕事をすることを大事にしています。その結果として、売上や利益にもつながり、自分自身の成長にも結びつくのではないかと思っています。

 

また、社員に対してもタスクをただ与えるのではなく、「何のためにそれをやるのか」「この仕事の意義は何か」というミッションを伝えることを大切にしています。単なる作業になってしまうと、時として仕事は面白くなくなるものです。だからこそ、皆が主体性を持って動ける環境をつくりたいと考えています。

 

加えて、仕事では「スピード感」と「実行力」も非常に重視しています。これは会社のフェーズや自分の性格が大きく影響していますが、慎重になりすぎるよりも、まずはスピード感を持って動き、PDCAを回しながら改善していくことを心がけています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

事業を立ち上げるにあたって、まず、当然のことながらPL(損益計算書)や事業計画を立てなければなりませんでした。その傍らでマーケティングや事業構築、営業も進める必要がありましたが、様々なことを平行して行っていると失敗が続くことがよくありました。

 

また、無駄なコストが重なることもよくあり、悪戦苦闘しながらアライアンスを組み、PR活動をする中でようやく数千万の売上が見えてくるような状況でした。私自身、子会社で人事部長を務めていた際、新規事業のプロジェクトに関わる機会はありましたが、あくまでプロジェクトやイベントベースであり、自ら事業を立ち上げた経験はありませんでした。

 

そんな中、事業開発を任され、まさに1年生としてのスタートを切ることになりました。MBAを取得したわけでもなく、ただ自分の「想い」だけを原動力に始めた事業だったため、会社が任せてくれたことに感謝する一方で、責任者としての重圧も大きく感じていました。

 

次に直面した壁は、組織に関する課題でした。会社や組織を構築するうえで、MVP(Minimum Viable Product)の提示やマネジメントのあり方など、さまざまな問題に向き合う必要があります。これらに明確な正解はないかもしれませんが、失敗は確実に存在します。そして、私自身も組織づくりにおいて多くの失敗を経験してきました。

 

たとえば、離職者が相次ぎ、メンバーのエンゲージメントが低下し、パフォーマンスがまったく発揮できない時期もありました。しかし、試行錯誤を重ねる中で、今では組織がまとまりを持ち、さらに広がりを見せていると実感しています。

 

現在の課題は、各事業が少しずつ形になってきた中で、マーケティングや戦略をいかに深め、それを実行できる組織をどのように育成していくかという点です。以前にも増して本質的な課題に直面していると感じていますが、時には思うように進まないこともあります。

 

仲間とともに、日本社会に貢献できる事業をつくる

進み続けるモチベーションは何でしょうか?          

シンプルに言うと、「日本で価値のある仕組みを作りたい」という想いと、「いま取り組んでいることが本質的に意味のあることだし、何より面白い」という実感が原動力になっています。さらに、それを1人ではなく、仲間と一緒に実現できる世界観をつくることも非常に魅力的な挑戦だと感じています。これらが今の自分を突き動かしているモチベーションです。

 

以前は、ただ「事業を作りたい」という気持ちが強かったのですが、今では少し視野が広がりました。単に自分のために何かを生み出すのではなく、日本全体にとって意義のあるものを作りたいという考えに変わりました。

 

日本のGDPが下がり、人材不足が叫ばれ続ける状況をただ見過ごすのではなく、自分が何か行動を起こしたいという強い気持ちのもと事業を続けています。もちろん、こうした課題は一朝一夕で解決できるものではなく、人生をかけてもやり遂げられるか分からないほど大きなテーマですが、それでも挑み続けたいと思っています。

 

昔は「自分で考えて、自分で動いて、自分で売る」というワンマンスタイルでしたが、今は組織で動く面白さを感じています。組織をつくるのは決して簡単ではなく多くの挑戦がありますが、それでも仲間とともに進めることには大きな価値があると思っています。

 

結局、モチベーションというよりもこれらは「日常」そのものだと思います。特別に何かを意識しているわけではなく、やるべきことが目の前にあるから進み続けている、そのような感覚です。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

これからも日本のHR分野において、意味があり、価値のある、面白い仕組みを作り続けていきたいです。

 

具体的には、日本の生産性やGDPの維持・成長に貢献できるような仕組みを構築することを目指しており、単なる人材紹介にとどまらず、イノベーションの創出やサステナビリティにも寄与するシステムを作りたいと考えています。

 

また、日本で働く様々な人々がより幸せで、充実した生活を送ることのできる社会の実現にも貢献していきたいです。

 

イントレプレナーとしての起業も一案。挑戦しやすい環境が整っているからこそ、興味がある人はまず行動を

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

私は社内で新規事業を立ち上げたイントレプレナーであるため、その立場としての経験からお話しします。最近はチャレンジしやすい環境が整いつつありますが、それでも起業は決して簡単なものではありません。

 

特に社内での合意形成は大きな壁になります。どの会社にも独自の意思決定プロセスがあり、それを乗り越えるのは決して簡単なことではありません。他のイントレプレナーと話す中で、皆同じような苦労をしていると実感しています。それでも、こうした経験を培える意義は非常に大きいです。

 

イントレプレナーとしての起業は、企業のアセットやネットワークを活用できるというメリットがあります。たとえば、社内のリソースを活かして事業を加速させたり、グループの歴史やブランド力を背景に社外の人とつながる機会を得たりすることができます。軌道に乗ったときの社会的影響も非常に大きく、ダイナミックな経験ができるのも魅力です。

 

もちろん大変なことも多いですが、その分得られるものも大きいため、新規事業立ち上げという挑戦の機会を与えてくれたグループにとても感謝しています。大変だった社内調整や合意形成を通じて自分のスキルも鍛えられ、自分の事業がグループ全体の成長につながっているという実感も得られました。

 

「やりたい」と思っている人にはぜひ挑戦してほしいと思います。一歩踏み出すのは勇気がいることですが、その先には大きな学びと成長が待っています。

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:小西 悠太氏

出版取次会社でマーケティングを担当、リクルートで人材紹介事業のコンサルタントを担当、明光義塾のフランチャイジーに入社し、人事部の立ち上げ及び人事業務全般のマネジメント、所属していた会社が明光ネットワークジャパン社にM&Aを受けた後、新規事業提案をし、親会社に転籍、人材・研修事業を立ち上げて部門化、その後部門をスピンアウトさせ法人化し、代表取締役社長に就任。

企業情報

法人名

株式会社明光キャリアパートナーズ

HP

https://meiko-career.jp/

設立

2022年9月

事業内容

有料職業紹介事業、労働者派遣事業、登録支援機関として行う特定技能外国人支援事業、人材教育及び各種研修の企画、調査、運営及びそれらの受託等

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