株式会社Raccot 代表取締役社長 小松田 乃維

株式会社Raccotは、全国の大学生に向けたオンライン・ハイフレックス型インターンシップのマッチングプラットフォーム「ReMova」(リモバ)を運営しています。特に地方の学生が、距離や時間の制約によって東京に集中する長期インターンシップの機会を逃さず挑戦できるよう、環境の違いによる経験格差の是正を目指しています。学生が自分のキャリアを切り拓くための新しい選択肢を提供しようと奮闘する株式会社Raccot代表取締役社長で、学生起業家の小松田乃維氏にお話を伺いました。

 

環境のせいで諦めることをなくしたい!

事業の内容をお聞かせください

オンライン・ハイフレックスのインターンシップマッチングプラットフォーム「ReMova」を運営しています。このプラットフォームは、特に地方の大学生など、インターンシップに興味があっても、地理的・時間的な制約や機会不足で参加できない学生を支援することを目的としています。

 

サービスは非常にシンプルで、企業と学生の双方がプラットフォームに登録し、学生は気になる企業に応募し、企業からもオファーを行うことができます。

 

オンラインインターンシップに特化しているため、リモートワークに適した職種や業種が多く、マーケティングのリサーチやSNS運用、デザイン、エンジニアリングなど、多岐にわたる職種が対象です。営業においても、従来の対面営業に加え、オンラインで営業を行う企業も増えています。コロナ禍以降、多くの企業がオンラインやハイフレックスの働き方を導入しており、インターンシップもその延長でオンラインで行うことが一般的になりつつあります。

 

オンラインインターンシップには、さまざまなメリットがあります。企業側にとっては都市部の学生だけでなく、地方の優秀な学生にもリーチできる点に大きな魅力があります。特に都内の有名大学の学生は企業間で取り合いになることが多く、優秀な学生を確保するためには地方にも目を向ける必要があるでしょう。さらに、限られた時間の中で学生に価値を感じてもらい、長期的な採用につなげることもできます。

 

インターン先の人事が「優秀で忙しい学生には週1時間のコミットから関係をつくっていく」と言っていたことが印象に残っています。オンラインインターンシップであれば、単発的な参加やリモートでの柔軟な勤務形態を活用でき、企業と学生が長期的な関係性を築くことを目的としたタッチポイントとなることが可能です。

 

また、学生側の視点では、地方にはインターンシップを受け入れる企業が少なく、地方在住学生にとってキャリア形成の大きな障壁となっています。東京に出てインターンシップに参加しようとすると、交通費や宿泊費など経済的な負担が大きくなることが問題です。

 

しかし、今の時代、環境のせいでチャンスを諦める必要はありません。ネガティブな要素に引きずられることなく、また無理にポジティブに変換しようとするのでもなく、あらゆる選択肢を探し、自分が納得できる道を見つけてほしいと考えています。

 

「ReMova」を通じて、学生たちが自分のキャリアを積み上げ、企業も全国から優秀な人材と出会える場を提供することを目指しています。

 

▼ReMova
https://remo-va.com/

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

この事業を始めた背景には、私自身のネガティブな体験が影響しています。



私は仙台市の出身で、小中学校時代は学校に行きづらさを感じることが多く、標準的な進路に対して違和感を抱いていました。地方では、一般的な進路とは異なる選択肢が非常に限られており、その情報が不足していることを強く実感しました。

 

例えば、高校時代に私は留学をしましたが、学校のカリキュラム以外で留学しようとする生徒はほとんどおらず、留学という選択肢自体が非常に珍しいものでした。



しかし、iU(情報経営イノベーション専門職大学)への進学を機に東京に上京してみると、東京の学生は留学やインターンシップ、さらには起業など、さまざまな機会に恵まれていることに驚きました。地方と都市部の間で、これほどまでに情報や機会に差があることに強い違和感を覚えたのです。

 

この経験から、住む場所によって子どもたちの選択肢が狭められてしまうことに疑問を感じ、地方の子どもや若者にもっと多くの選択肢を提供したいという思いが芽生えました。



そこで、2024年の今年、大学3年時に、地方の学生たちが都市部の学生と同じように情報や機会を得られることを目指して「ReMova」を立ち上げました。当初は、不登校の子どもたちに焦点を当てることも考えていましたが、まずは意思決定ができる大学生を対象にした支援から始めることにしました。

 

成功事例をわかりやすく伝え、地方の根強い価値観を変革していく

仕事におけるこだわりを教えてください

地方には、長年培われた考え方や思想が根強く残っている地域が多く、変革が難しいと感じることがあります。



私の出身地であり、東京からそれほど遠くない仙台でさえ、まだまだ凝り固まった部分が多いと感じています。こうした社会的背景の中で、小さな子どもたちに何かを提供しようとしても、最終的には親の意思が決定権を持つため、地方での取り組みは一筋縄ではいきません。多くの場合、変わらないのは大人たちの根強い考え方や価値観です。

 

現在弊社では、自分で意思決定が可能な大学生からアプローチを行っていますが、それが十分に定着した後には、リモートワークの転職支援なども視野に入れています。壁をひとつずつ壊していくように、大学生を起点にして、次は子どもや大人への支援へと広げ、最終的には、外部環境に捉われずに自分らしく自己実現に向かうことができる世の中へと変えていきたいという想いが、私の軸になっています。

起業から今までの最大の壁を教えてください

最大の壁は、地方の大学生にオンラインインターンシップの魅力を伝えることです。

 

事業をスタートする際には、実際に地方の大学生に対してヒアリングを行い、課題を理解した上でサービスを展開できたと思っていました。しかし、想定よりも学生たちを巻き込んでいくことに現在苦労しています。

 

その背景には、インターンシップそのものに対する理解が浅く、「インターンの受け入れ先が少ない」という課題をオンライン形式で解決していく(オンラインでインターンをする)ということに対してハードルの高さを感じている学生が少なくないことにあります。「やってみたい」「やるべきだ」と感じるよりも、「よくわからないし、不安だ」「面倒くさい」という気持ちが勝ってしまっているようです。

 

特に、多くの学生がインターンシップに参加するにはスキルや経験が必要だと思い込んでおり、そのために自分には無理だと感じてしまうことも少なくありません。こうした誤解が、インターンシップの魅力を伝える際の大きな障害となっています。その結果、サービスを案内しても登録する学生は限られてしまうという現状があります。

 

これまでは、「全国の学生」と幅広い層をターゲットにしてきましたが、これからは対象を絞り込み、わかりやすい成功事例を作り上げることが重要だと感じています。その上で、啓蒙活動が必要な層に対して少しずつアプローチしていきます。

 

応援してくれる方々の期待に応えていきたい、そのプレッシャーが原動力

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

進み続けるモチベーションは、周囲からの応援と支えです。インターン先の方々や大学の皆さん、そして学生起業家としての活動をサポートしてくれる企業の協力があってこそ、今の私があると感じています。


最近では、メディアからの取材やイベントでの登壇といった機会をいただくことが増えました。最初はチャンスだと思って喜んでいましたが、次第に、自分のサービスがその期待に応えられていない、いただいた機会を十分に生かしきれていないと感じることが増えてきました。



こうした機会に「待ってました!」と胸を張って応えられるよう、もっと努力しなければと強く感じています。こうした外部からの期待やプレッシャーも、私にとっては良い意味でのモチベーションとなっています。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

当面の目標は、「ReMova」をより満足のいく形に仕上げることです。この先1、2年で、地方の大学生が活躍できる場を提供し、オンラインインターンシップの普及をさらに進めていきたいと考えています。



将来的には、教育やキャリアに関連する他の分野にも挑戦してみたいと思っています。「自己実現を諦めない若者を増やす」をミッションに、利用者が自分に合ったキャリア選択をすることができるきっかけを提供できるような企業へと成長していきたいです。

 

自分で生き方を決めて、幸福度の高い人生を

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

起業を迷っている方がいらっしゃるなら、ぜひその一歩を踏み出してみてください。

 

現実として、成功する事業は決して多くはありません。それでも、自分で仕事を生み出し、社会に対して何かを創り出す経験は非常に価値のあるものです。特にこれからの時代、AIの進展が予想される中で、自分自身で生き方を決める力がより重要になります。その力を持つ人が、これからの時代において、より豊かで幸福度の高い生活を送ることができるのではないでしょうか。

 

学生の方には、学生時代を有効に活用して、インターンシップや起業に挑戦してほしいと思います。また、東京を中心に、学生起業家を支援してくれる企業が多く存在します。そういった機会をぜひ活用し、自分の力を試してみてください。挑戦することは、大きな成長の一歩になります。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ: 小松田 乃維 氏

宮城県出身

2021年〜 iU 情報経営イノベーション専門職大学(在籍中)

2022年5月〜2023年10月 早稲田スタートアップサークルWit代表

 

企業情報

法人名

株式会社Raccot (英称:Raccot Inc.)

HP

https://raccot-inc.studio.site/

設立

2024年2月14日

事業内容

キャリア支援事業

 

送る 送る

関連記事