株式会社Mecara 代表取締役CEO 川又 尋美
「痛みのない社会をつくる」を理念に掲げる株式会社Mecaraは、電子瞳孔計からフィジカル・メンタルの状態を可視化する、今までにない新しい指標を展開する企業です。AI技術でウェルネスを実現し、未病の分野で革新的なソリューションを目指しています。代表取締役の川又尋美氏は、Dell国際女性実業家日本代表やGoogle Japan女性就業支援アドバイザーなど、働く女性の社会進出も支援を経て2019年に日本では2社目となる株式会社Mecaraを設立(旧AIMS)。 事業内容や今後の展望なども含めて、詳しくお話を聞きました。
心身の健康状態を7秒で可視化する電子瞳孔計を開発
事業の内容をお聞かせください
弊社では、瞳孔の動きを見て心身の健康状態を7秒で可視化する「AI電子瞳孔計Mecara」を取り扱っております。
元々瞳孔を検査する医療機器として、電子瞳孔計・瞳孔記録計・イリスコーダなどがあり、日本でも1957年頃から医療の診断領域で使われています。
そのなかで瞳孔記録計の民主化を目指し、得られたバイタルデータをドクターや医療機関だけでなく個人への還元に挑戦したのは、弊社が初めてです。
それまでの電子瞳孔計は、医療分野の診断領域のみで使われていたため重くて持ち運びもできず、大変高価な存在でした。検査結果も、専門知識のあるドクターしか解析・診断できないものです。
そこで私たちは、ドクターのアルゴリズムを入れたAIとそのAIをコントロールできるハードウェアも開発することで、専門的な知識を有しなくても瞳孔から健康状態を把握できる機器を開発しました。
現在は国内外での量産体制も整い、医療現場だけでなくオフィスや自治体などさまざまな場面で、心身の健康状態をチェックできる機器として展開しています。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
電子瞳孔計の事業を始めたのは、計画的というよりも、この分野が世の中で発展すれば今より世界が良いものになるというビジョンが見えたからです。
私が初めて起業したのは15年ほど前で、女性がリモートワークで働ける週刊誌関連の会社でした。
働いている方の多くは、子供を育てるお母さん達だったと記憶しています。
たった15年前の話ですが、その頃は結婚して子どもを産んだら退職するという女性が非常に多く、大手企業でさえまともな育休制度が整っていない時代でした。
一方Google Japanではすでに、一度キャリアから離れた女性をインターンで引き入れ、キャリアアップの教育支援をして正社員に育てていくプログラムが用意されていました。
さらに日本では通勤が当たり前のなか、アメリカではすでにリモートワークやジョブシェアリングなども普及しており、家庭を持った女性でも働ける仕組みが作られていたのです。
そこで弊社でも女性が活躍できる会社として、お母さんによる、お母さんたち向けの紙面媒体やウェブシステム事業に力を入れました。
そうしたことで、競合他社がなかったこともあり社会の関心を集め、さまざまな企業からお仕事をいただくようになりました。
大手の週刊媒体だったら会社に寝袋を持ち込んで対応するような仕事を、その3倍の人数のお母さんたちでチームをつくり、細切れ時間で企画・編集・校正・撮影・販売まで行っていました。
そのうちメーカーから、「グローバルでものを売りたいけれど中小企業だとどうしていいかわからない」という相談を受けるようになりました。
そこで今度はサプライヤーとしてアメリカに渡り、新たに会社を設立して4年ほど滞在しました。
その間も日本側からの依頼をこなしていたのですが、日本から世界に羽ばたくような企業がなかなか出てこないことに気づき、どの領域なら日本が活躍できるだろうと考えるようになりました。
そこで注目したのが、FinTechや人工衛星、AIの分野です。
そして新たな会社を立ち上げるまでにさまざまなタイミングやきっかけがあり、AIと医療分野の掛け算に至り、電子瞳孔計のハードウェアの開発・実用化につながっています。
一次情報を大事にしてエンドユーザーが求めるサービスを突き詰める
仕事におけるこだわりを教えてください。
私は、私自身が直接体験したり調査・実験して得られる「一次情報」を非常に大事にしています。
自身の戦略と一次情報を行き来して解像度を上げるタイプで、自社の商品の使われ方やお客様の声などを入手するために何度も現場に足を運びます。
実は地方の展示会で、親子連れの方に「子どものメンタル状況はチェックできませんか」と尋ねられたことがありました。その当時は試作期で、子どもの顔に適した試作品がありませんでした。
しかしニーズがあるのに改良しないわけにはいかないと思い、レンズから瞳孔だけを抽出する改良を繰り返し、大人から子どもまで使える商品に至った経緯があります。
また地方で展示会をさせていただくと、1日目におひとりでいらした高齢のお客様が、翌日たくさんのご友人を連れて顔を出してくださることがありました。
ご友人方と瞳孔神経年齢勝負などをされるなど、私たちが想定していたのとは全く異なる使い方をされるケースも少なくありません。
その現場で得た情報を生かして、瞳孔神経年齢の商標を取得したり、神経年齢の説明をするコンテンツを作ったりして事業がさらに活性化していきます。
このように、私たちはエンドユーザーの方が使いやすいものを突き詰めています。
その結果弊社の商品を購入する企業の方のアセットにも組み込みやすくなり、一次情報を大切にする私の信念は間違っていなかったと感じます。
起業から今までの最大の壁を教えてください
そもそも私は、企業家は自分で壁を作って成長していくものだと考えています。高い所を目指すからこそ壁ができるので、最大の壁は自分が作ったものになります。
また、自分で作った壁はある程度のリスクまで想定できるので、これまで壁があって大変だったと感じた経験はありません。
しかし、コントロール外で起きる人間関係の問題は難しいと感じます。経営者も人間関係のプロではありませんし、いかにカルチャーにフィットした会社を作っていくのかは本当に大事なポイントです。
その意味ではどれほど素晴らしい経歴の方でも、カルチャーフィットについては妥協するべきではないと思います。
このサービスで世の中がさらに良くなるビジョンが見えているから
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
私は自社の商品やサービスが世の中に必要だと思い、人々の暮らしを良くしていく未来が鮮明にイメージできているので進み続けられています。
このサービスを広めるのは私の使命で、自分の潜在意識でそのビジョンが見えるので、達成までの長い道のりや課題をクリアしていくモチベーションが維持できます。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
現在、政府からドバイなどの空港のセキュリティのチェックインに採用する提案を受けており、他にもアフリカなどの医療体制が整っていない国への貢献も展望しています。
そのようななかでも国内での上場を目指しつつ、グローバルを含めて地固めをしていくつもりです。地味でも大事なことを社長自ら楽しくやりながら、10年・20年かけて自社を社会のプラットフォームにしていきます。
サービス自体も毎週アップデートをこなしている状況で、心身の健康状態のチェックだけでなく、会社から離れた場所からの出退勤できるサービスもプレリリースしています。
これからはストレスチェックだけでなく、オンライン上でも自然に健康管理が可能なサービスが提供できる会社と認識されていくでしょう。
また弊社だけでなく行政や医療事業者、企業が連携して瞳孔からポジションが視覚化できる世の中を作りたいと願っています。
私はそれを「サービスの透明化」と呼んでおり、それが実現すればハードウェアがなくてもオンライン上で自然に健康管理が実現するでしょう。そのためにまずは、国内外でハードウェアの量産体制に力を入れています。
やりたいことの延長戦で起業できる時代の良さを生かして欲しい
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
起業を検討している場合は、どうか「死なない環境」で起業して欲しいと願っています。
気持ちが焦り「背水の陣」のような形で起業する方もいますが、それを乗り越えられないタイプの方も少なくないと思います。
今はAIやツールを使用すればさまざまな仕事ができる環境があり、起業のハードルが非常に低い時代です。
アクセラレーターもあるので、自分が居ても立っても居られないほどのアイデアが出たり、気がついたら起業していたりするくらいの高まりがあれば良いと感じます。
やりたいことの延長線上で起業できるような時代になっているので、自分の気持ちにブロックをかけずに、とりあえず1年などの期限を決めてチャレンジするのも有りでしょう。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:川又 尋美氏
20代で幼児2人を連れ渡米、日米中台と多国籍企業を経営しシリコンバレーのスタートアップと密接に関わる。帰国後、AIビジネスを立ち上げることに。20代前半、在宅勤務の主婦を中心とした革新的な広告代理店Lindoors株式会社を設立。Dell国際女性実業家会議日本代表。Google Japan女性就業支援のアドバイザーや日本最大級の生活週刊誌編集長を歴任。ソフトバンクアカデミアAI実業家群13期生。
企業情報
法人名 |
株式会社Mecara |
HP |
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設立 |
2019年(令和元年)7月11日 |
事業内容 |
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