株式会社Life Reversal Gaming. 代表取締役 髙木 光治

株式会社Life Reversal Gaming.は、「人×ゲーム」に未知なる可能性を見出すため、ゲームを用いて新たな価値作りに挑戦する会社です。代表の髙木光治氏は、元プロゲーマーで原因不明の難病を抱える兄の伸夫さんとともに2020年に同社を立ち上げました。今回は、ゲームを通して社会課題の解決に取り組んでいる髙木氏に詳しい事業内容や今後の展望を伺いました。

 

「ゲーム×ごみ拾い」で楽しく社会貢献

事業の内容をお聞かせください

当社の事業は大きく5つに分かれます。

 

メインとなるのは、企業様が抱える課題や社会全体の課題に対し、ゲームを用いて解決を図る課題解決事業です。一般企業や社団法人、地方自治体をはじめ、教育機関や学校法人まで幅広い業種のクライアントに展開しています。例えば、住民の流出に歯止めをかけたい自治体の担当者から声をかけていただくこともあります。

 

では実際に何をしているかといえば、最も頻繁に行っているのはごみ拾いの中にゲームを組み込んだイベント「eスポGOMI」です。楽しい「eスポーツ(ゲーム)」に、スポーツの要素を取り入れたごみ拾い活動「スポGOMI(スポーツごみ拾い)」をかけ合わせています。このイベントの特徴は、幅広い年代の方が気軽に、楽しく環境保全活動ができることです。

 

いくら社会課題を解決したいと思っても、楽しくない事業は続きません。我々がゲーム性を大事にしているのも、こうした思いがあるからです。また、たくさんのお子さまと親御さまに参加してもらうことで、ゲームに対するイメージの向上に貢献できるとも考えています。

 

ほかにも4つの事業も展開していますが、すべて課題解決事業から派生したものです。

 

コミュニティ事業では、コロナ禍で拡大したものの活用しきれなくなったオンラインコミュニティを盛り上げるため、オフラインのイベントと連動させたサービスを企業様の福利厚生の一つとして提供したり、若手社員のためにゲームでコミュニティの土台を作るお手伝いをしたりしています。

 

教育研修事業の内容は、主に企業に対する研修と学校での講演です。ゲームでは「どうやったら勝てるか」を徹底的に考えて攻略するのですが、それは事業のPDCAサイクルに通ずるものがあると思っています。こうしたお話をするときもあれば、講演をしながら実際にゲームを体験してもらう場合もあります。

 

このほか、YouTuberやゲーム配信者に対してサービスを提供するクリエイティブ事業や、イベントサポート事業も展開しています。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

社会貢献を軸とした事業を始めたのは、全身に激しい痛みが走る難病、線維筋痛症を抱える兄の存在が大きく関わっています。

 

兄は原因不明の病と闘いながら、プロゲーマーとしてマリオカートの世界大会で6回優勝するなど活躍していました。私も小学2年で同じゲームで全国3位になる位、ゲームには熱い思いを持っています。そのため、以前の私は兄に対して、尊敬と嫉妬の気持ちが入り混じった複雑な感情を抱いていました。

 

ただ、6年ほど前から病気の影響で、ゲーム動画を定期的に配信することが難しくなりました。スポンサーに迷惑をかけないように就職しようと思っても、線維筋痛症は国の指定難病ではなく、十分な支援が受けられません。そんな不利な状況でも自分が輝ける場所を作りたいと考えた兄が「一緒に会社を作り、助けてほしい」と打ち明けてくれたのです。

 

当時は企業の会社員だった私に、経営の知識は当然ありません。ビジネスで成功したい気持ちも毛頭なかったのですが、兄から相談を受けた翌日には、勤めていた会社に辞表届を出していました。そのときの気持ちをかっこよくいえば「家族を守りたい」になりますが、今思えば兄に対する複雑な気持ちを一緒に乗り越えたかったのだと思います。

 

eスポーツ分野には既に大企業が参入しています。我々の強みは何かと考えたとき、兄の存在が大きく関わる社会貢献の部分だなと思いました。ゲームで戦略を立てる過程は教育に役立ちますし、病院で過ごす子どもたちには楽しい時間を届けられると思ったのです。こうしてゲーム性と社会貢献を掛け合わせたコンテンツを提供する会社を2020年に始めました。

 

「兄と私がやる意味」を考える

仕事におけるこだわりを教えてください。

「ただ面白い」、「ただ儲かるだけ」の仕事ではなく、私と兄がやる意味のある仕事がしたいと思っています。ここは自分の中で譲れない軸です。かといってメッセージ性だけが強いイベントも我々の仕事ではないと思っているので、ここの絶妙なバランスを取りながら4年間走ってきました。

 

その中でも大切なのは、自分がワクワクするかどうか、ではないでしょうか。そうでないと、どうしても続かないと思います。思えば幼少期からゲームが身近にあった私は、宿題や家事を終わらせたあとに誰にも邪魔されずにゲームに熱中する時間が何より楽しかったと、今でも覚えています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

先ほどもお話したように、経営者になる気はまったくありませんでした。会社を経営する上で必要な知識もゼロからのスタートでしたので、そこはまず大きな壁でした。

 

加えて、当社を立ち上げた時期はコロナ禍の真っただ中です。イベントを開催するにしてもパーティションやアルコール消毒器具を十分に用意する資金がなく、ほとんど何もできませんでした。最初の1年間の売り上げは、3桁に届くか届かないかのレベルをさまよっていました。

 

それと同時に、自分の気持ちも会社から離れかけていました。もともと兄のために始めた会社でしたし、自分が大好きなものが少しずつ嫌いになっていく感覚を覚え、精神的にも非常にきつい時期でした。それでも兄は私のことを信じ続けてくれて、それに応えられないジレンマも抱えていました。

 

そんな苦しい状況を乗り越えられたのは、家族や友人たちの支えがあったからです。私の懐具合を考え「居酒屋でなくても、近所で缶チューハイを飲んで話せればそれでいい」と言ってくれる地元の友達には、本当に救われました。

 

自分がどんな状況になってもそばにいてくれる彼らのことも含めて、家族だと思っています。兄だけではなく、地元の仲間を幸せにすることが今の私の目標にもなっています。

 

兄も友人も取引先も。周りの皆を幸せにしたい

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

コロナ禍が明けてイベントができるようになり、ありがたいことに多くのお問い合わせをいただくようになりました。一度お仕事した方が再度依頼をくれる、または「新しい企画を一緒にやりませんか」と声をかけてくれることもあり、それは我々のイベントに伸びしろを感じてくれたからだと思っています。

 

前回より高い効果を得るためにお客さまと密なやり取りを重ねるうちに、仲間意識も生まれます。周りの仲間を幸せにすることが私の目標なので、各クライアントと良い関係を築けていることが今の私の大きなモチベーションになっています。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

「eスポGOMI」を全都道府県で定期的に開催することが、創業当初からの目標です。さらにもう一つ、抱き続けている野望があります。Life Reversal Gaming.、つまり人生逆転ゲームの意味を込めた社名の通り、当社に携わる人が大逆転をしていくストーリーを築き上げることです。

 

具体的には、病院や養護施設を舞台に我々のサービスを展開したいと考えています。もちろん、簡単にできることではありません。当社だけでは絶対にできないでしょう。だからこそ、多くの方と協力しながら実現したいと思っています。

 

軸を決めたら、行動あるのみ

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

何のために事業を始めるのか、軸となる部分をしっかり決めることが大切ではないでしょうか。私の場合は、ゲームが好きで得意だったからだけではなく、「兄のため」に始めた軸がブレないよう、常に意識しています。知識が無くても、軸さえしっかりしていれば後からどんな学びも入ってきます。

 

あとは、本当にやりたいことがあるなら、口に出すだけではなく、まず行動してほしいです。動かないと何も始まりません。「誰かに後ろ指をさされそう」、「他の人がすでにやっているから」と動けなくなる方も少なくないと思いますが、良くも悪くも人は自分以外のことにそこまで興味が持てないものです。ここで止まるのではなく、自分に正直になってほしいと思います。

 

他の企業様へのメッセージをお願いします 

ありがたいことに、現在はご紹介でいただくお仕事が7〜8割です。我々のイベントを取り上げたニュースを見て、自治体の担当者から「予算を取ったので、これをさせてください」と連絡がきたこともありました。皆さまに楽しんでもらえた証なのかなと思っています。

 

規模は大きくなくとも、一風変わったイベントがやりたいと思っている方はぜひお問い合わせください。我々が関わりたいのは、何かを実現したいとうずいている状態の方です。できるかどうかはさておき、まず積極的に意見を交わすことに意味があると思っています。少しでも当社のことを面白いと思ってくださる方がいたら、お気軽にお声がけください。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:髙木光治 氏

法政大学キャリアデザイン学部卒業。某専門商社に入社、法人営業3年経験。

2020年11月に株式会社Life Reversal Gaming.設立。

現在は『人×ゲーム』に未知なる可能性を見出すためにゲームに関わるイベント製作やイベント出演をするなど活動中。

 

企業情報

法人名

株式会社Life Reversal Gaming.

HP

https://life-reversal-gaming.co.jp/

設立

2020年11月

事業内容

  • 課題解決事業(社会・組織課題)
  • コミュニティ事業
  • 教育・研修事業
  • クリエイティブ事業(動画作成編集)
  • イベントサポート事業

 

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