株式会社ジャポリス 代表取締役 小嶋 建

越境ECの輸出事業や試食専門店を運営する株式会社ジャポリスは、日本の素晴らしい文化や商品を世の中に広められるよう取り組んでいる企業です。”定番”では得られない、いつもとは違う体験を通して、お客様に驚きや発見を味わってもらうだけでなく、食品メーカーやバイヤー、メディアが交わって協働し日本のバイタリティを高めるために尽力されています。今回は代表取締役の小嶋 建氏に事業の内容や今後の展望を伺いました。

 

全品無料の試食専門店で商品に出会う機会を創出

事業の内容をお聞かせください

日本全国の名産品を全て無料で試食できる「試食BARアサクサ」という試食専門店を運営しています。

 

特徴としては、浅草を拠点に、普段はあまり出会うことのできない特産品や名産品を試食という形で提供し、その代わりにアンケートに答えて味の評価をしていただくというサービスです。店舗に出す商品は、食品メーカーの展示会や行政のおすすめ品から厳選し、企業様から出店料をいただき運営しています。

 

試食専門店の良いところは、新たな発見ができる点です。例えば、スーパーをイメージしていただくと、近所のスーパーを4、5件回っても置いてある商品はほとんど同じで定番のもので埋め尽くされています。

 

これは、大手企業によるCM宣伝効果や、昔からずっと使っているなど顧客の安心感という心理が働いているためです。いつもと違うものを試してみたいという人もいますが、味への不安から購入に繋がらないケースが多いのが現状です。

 

当店の商品も、珍しいものや味わったことのない商品が多いものの、全ての商品を味見できるため気軽に手に取って試していただくことができます。これができることで、商品に対して安心感が生まれ、購買意欲に変化が起きたり購入に至るハードルを下げたりすることが可能になります。

 

また、特産品の価格は高いというイメージに対しても試食をすることで合点がいき、自分が納得すれば誰かにプレゼントする時にも自信を持って選べるでしょう。

 

我々の強みとしては、浅草という土地柄からインバウンドに強く国外にも販売網があることです。それに加えて浅草は、渋谷や新宿などに比べて年齢層に偏りがなく、時間の流れがゆったりしています。また、ある程度の来店客数が見込める上、地元住民や外国人観光客など、アンケート収集をする上で幅広いデータが取れることも利点です。

 

今後は店舗だけでなく、大使館や海外企業、また海外コミュニティと連携して日本製商品のサンプルを送って味の評価をしていただき、よりデータを拡充させていきたいと思っています。

 

さらに、我々のサービスは、店頭で商品を売って売り上げを作るよりかは、長期的な目線で認知度や売り上げを伸ばしていくスタイルです。例えば、試食商品にQRコードを付けてお客様に持ち帰っていただくことで、メーカーさんのECサイトのPV数が上がり、浅草に来られなくても商品が購入できるという特徴もあります。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

学生時代は起業したいとは思っていませんでしたが、社会人になってから起業家への憧れが芽生えたのを今でも覚えています。

 

元々父が建築系の会社を経営しており、そちらを継ぐつもりであったことから、建築関連の会社で働いていました。しかし、建築業界への様々な不安から他の事業を探し始めました。

 

今後の日本の現状を考えると、何か世界と取引ができるようなことがしたいと思い、その時に副業として始めた越境ECが軌道に乗ったため父親に断って独立を決意しました。

 

それから越境EC事業を進める中、一時期農家さんの支援事業に関わるタイミングがあり、その時農家さんの全く恵まれていない現状を目の当たりにしました。

 

農家さんの作る作物は日本国民の生活を支えるインフラに近い存在であるにも関わらず、後継ぎがいなかったり自然災害に見舞われたりする問題が常にあります。それは今後も厳しくなると考えられますが、農家さんが廃れていくと日本の国力低下にも繋がるのではと危機感を感じました。

 

なんとか農家さんを盛り上げるような活動を間接的にもできないか、そのような思いから立ち上げたのがこの事業でした。農家さんが作った作物、そしてそれを加工する二次産業のメーカーさんの商品を、地元だけでなく多くの方に知ってもらえる場を作れれば、素晴らしい商品が減っていくことを防げるのではないかと考えました。

 

また、市場から求められている商品がどういうものなのかを調査するべく、アンケートの実施を思いついたのがこの事業のスタートです。

 

日本中の素晴らしい商品を発信し守りたい

仕事におけるこだわりを教えてください。

売り上げも大事ですが、それよりも社会に面白く貢献できるようなことがしたいという思いが軸にあります。その一環として、我々は日本の素晴らしい商品たちを後世に残していきたいと思っています。

 

昨今は外国の資本が注入されていて、日本の農場やお米や水が買われることで一時的にお金は流れてきますが、これでは日本の良さが無くなっていってしまうと感じています。そのため、日本の素晴らしさ、特に食文化を後世に残し、守っていくような活動がしたいです。

 

直近で対外的に計画している施策などはありますか?

商品を作るメーカーさんと商品を仕入れるバイヤーさん、この二者を繋ぐマッチングプラットフォームを現在構築中で、2025年3月リリース予定です。これはWeb上の展示会をイメージしていただければと思います。

 

普段こういった食品関係の卸しの取引が発生する場所は、基本的にビッグサイトなどで行われる展示会が多いです。食品メーカーさんにとってはそこが勝負の場なのですが、結構費用がかかったり展示会の開催期間でしか接触できなかったりする課題があります。

 

しかし、今回の我々のマッチングプラットフォームはWeb上なので、年中無休でいつでもバイヤーさんと接触でき、場所も問わないので日本全国、国外にも展開できるサービスになっています。

 

また、新しい商品や取引先を求めるバイヤーさんにとっても、展示会に都合を合わせたり東京に探しに来たりする必要がなくなり、交通費や手間が省けるメリットがあります。

 

他社でも同じようなサービスはありますが、我々の独自性はアンケートによるデータの活用です。マッチングプラットフォームにはこのデータを用い、日本全国の美味しい商品を数値で表します。

 

美味しい評価をした方の割合や、評判が良いターゲット層、金額に対しての感想などを各商品ごとに全て数値化して、今まで日の目を浴びていなかった商品やあまり知られていない地方の商品が世に発信される形にしたいと思っています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

起業したばかりの頃はお金がなく、実績もないので融資が通らず資金面では悩むことが多かったです。その上、最初は我々の珍しいスタイルのサービスを理解してもらえなかったり、古い会社が多い食品メーカーではなかなか新しいサービスに取り組んでもらえなかったりして営業活動は苦労しました。

 

また、店舗がテレビなどのメディアに出た際にメーカーさんの商品をピックアップすると、一気に話題になり注文も殺到します。これらの取り組みをメーカーさんに理解してもらい、共に売り上げを作っていくことが大切であり課題だと思っています。

 

海外にチャレンジしたい企業をバックアップ

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

我々のサービスは特殊なため、様々な経営者の方から興味を持っていただけることも多く、応援してくれたり一緒に組みたいと言っていただいたりすることもあります。

 

最近では、大型商業施設におけるポップアップ出店や、行政とのふるさと納税の誘導サポートがその一例です。

 

ふるさと納税の返礼品はネットで見るしかなくて、もちろん試食することも実物を手に取ることもできません。そこで我々の強みである試食を活かすことで選んでもらう手助けになるため、これらがモチベーションになっています。

 

それから、今後強めたいサービスがたくさんあることも意欲に繋がっています。そのうちの1つが海外展開で、今少しずつ始めているところです。

 

越境ECと組み合わせて日本製の商品を世界中に発信する活動を通して、まずは障壁の低いアジア圏から展開し、海外での大きな実績を作りたいと思っています。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

今後の目標はたくさんありますが、広義的には日本と世界を繋ぐ架け橋になりたいと思っています。

 

日本の人口減少や不景気に対する不安はもちろんですが、何より日本人は世界に比べてお金がないなと思っています。この先長い目で見た時に、もっとマーケットを広げて世界に向けて発信していかないと日本経済はより厳しくなるでしょう。特に薄利多売の商法では、より太いパイプや世界中の販路を持つことが大事だと思っています。

 

昨今、海外は大手商品が独占してしまっている状況で、海外を経験したことがない食品メーカーは80%に上ります。それでも、海外にチャレンジしてみたいと考えるメーカーは多くニーズがあると思うため、そこを我々が担う立場になれるよう取り組んでいきたいです。

 

売り上げよりも実現したい世界をイメージして

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

まず、自分が頑張れる目標や最終的なゴールは定めるべきだと思っています。そして、それは「売り上げ」ではなく「作りたい世界」に設定して進むべきです。

 

お金を第一優先にしてしまうと、そういう人しか集まってこないですし、利益優先のサービスしか作れないと私は感じています。そのため、お金に縛られず、社会課題への貢献や実現させたい世界を目標に頑張ってみてください。

 

提携を考える企業様にメッセージをお願いします

海外展開をされている事業者の方がいたら、是非一緒にお仕事したいと思っています。我々は、店舗で取得してきた大量のアンケートデータや全国の食品メーカーさんとの繋がりがあり、厳選した美味しい商品や海外に売りやすい商品を提供できるため、海外への貿易の強化で連携できればと思います。

 

例えば、タイに進出したい場合はタイ人のデータだけを集められるため、タイの方に対して強い説得力を持つことができ、高い評価を得ることができるでしょう。

 

それから、食品メーカーさんには是非我々の試食専門店でPRしてほしいと思います。これまで展示会への出店がほとんどだったPR方法は、今はどのメーカーさんもやっており、同じパイを取り合ってしまっているだけです。

 

そこで、我々のサービスを利用すれば展示会以外のバイヤーさんと繋がれたり新規ルートを開拓できたりするため、他社との差別化が叶うことも一つのポイントです。

 

また、メディアに取り上げられる機会もあるため、話題性を集める効果も期待できます。お客様に素晴らしい商品をアピールし、是非一緒に日本を活性化させましょう。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:小嶋建 氏

 

企業情報

法人名

株式会社ジャポリス

HP

https://japolis.com/

設立

令和2年10月

事業内容

輸出貿易事業・試食BARアサクサの運営・マーケティング事業

 

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