Pathfinder株式会社 代表取締役 小野崎 悠介
Pathfinder株式会社は、異なる店舗で出発・返却を行う片道専用レンタカーのサービス「カタレン」を提供する会社です。乗り捨てされた後に出発店舗に回送される車両と、片道のみ車をレンタルしたい利用者をマッチングさせることで、乗り捨て料金がかからないサービスを実現しています。「カタレン」を皮切りに、自動運転社会に向けたMaaS化の推進に取り組んでいる同社代表取締役 小野崎 悠介氏に詳しくお話をお伺いしました。
利益にならない回送車両とレンタカー利用者をマッチング
事業の内容をお聞かせください
我々は乗り捨て料金なしで都市間を移動できる片道レンタカーサービス「カタレン」の提供を軸とし、来たるべき自動運転社会に向けて、MaaS領域の拡大をめざす会社です。
「カタレン」は、出発店舗に返却するのではなく、目的地にある店舗に返却する片道専用のレンタカーです。車の返却場所による行動の制限を気にせず、電車やバス、飛行機などの交通手段と組み合わせることで、旅行の自由度を高めることができるのが特長となっています。
乗り捨てに対応しているレンタカー会社は数多くあるものの、乗り捨て利用する場合、出発店舗に返却する場合には発生しない追加料金が発生することが多くなっています。この主な原因は、乗り捨てられた車を元の店舗に輸送する費用が加算されるからです。
「車庫として登録されている都道府県から県外に移動したレンタカーは、1ヶ月以内に元の都道府県に戻さなくてはいけない」というルールが車庫法により定められています。そのため、空の車両を元の都道府県にある店舗へ必ず回送しなければならず、この際に輸送費が発生しているのです。
「カタレン」はレンタカー会社と連携し、従来であれば利益にならない回送車両を、片道レンタカーのニーズがある利用者とマッチングさせるシステムとなっており、特許を取得しています。
このシステムで当社は、提携するレンタカー会社からはサービス提携のご依頼料を、レンタカーの利用者からはレンタカー料金をいただいています。この独自の体系により、通常のレンタカーだとかなり高額な乗り捨て料金を、無料 無しでお客様にレンタカーサービスを提供することができるのです。
現在は東名阪と成田空港でサービスを展開していますが、さらに鹿嶋、宇都宮、日光といった地方各地でもサービスを拡大すべく、実証実験を行っている最中です。
また、現在約5万名のユーザーがおり、グループ旅行やファミリー旅行、荷物の多い展示会などのビジネス利用など、様々な用途でご利用いただいております。
特に都内と成田空港間のご利用の場合、交通機関が少ない、もしくは動いていない早朝便・深夜便の時間に合わせてレンタルし、乗り捨てすることができるため ので、前泊・後泊が不要になり便利にご利用いただけます。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
高校時代、高校生向けの起業家養成プログラムに参加したことがあり、「いつか起業してみたい」という気持ちを常に抱いていました。
大学では自動運転技術について研究しており、卒業後はモノづくりを学ぶため豊田通商株式会社に入社し、自動運転の日本への導入や車両の最適配置などを担当していました。
そして、約7年半豊田通商で経験を積み、いよいよ起業に挑戦することに決めたのです。事業内容は、やはり自分がこれまで深く携わってきた自動運転に繋がる事業を行いたいと考えていました。
しかし、まだ日本では自動運転車の走行は許可されておらず、関連事業を行うのは時期尚早です。将来来たる自動運転時代に向けて今行うべき事業を逆算すると、MaaSの推進があり、そのためにまずは今よりも利便性の高いレンタカーの貸出事業だと考え、片道レンタカーのサービスを思いつきました。
何事にも一貫性を持つことが大切
仕事におけるこだわりを教えてください。
仕事におけるこだわりは「何事にも一貫性を持つこと」です。一貫性を持つことは、起業家にとって最も大切な姿勢だと私は考えています。
いかなる時もぶれない一貫性がないと、会社の成長を支えてくれる優秀な仲間も集まらず、加えて社員の方ににメッセージが伝わりません。
私は日頃から一貫性の大切さを個々の社員にも伝えています。そのうえで、社員が取り組みたい仕事と当社で今取り組んでいる仕事にギャップはないか、社員のめざすキャリアや将来像は当社で実現できそうかをヒアリングしています。
そして、当社で働くことで、社員が描くキャリアにしっかり向かうことができているかどうか、社員それぞれと真剣に話し合っています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
最大の壁は、なんといっても「起業2ヶ月で新型コロナ禍に直面したこと」です。2020年1月に創業した後、片道レンタカーのサービスを事業化すべく、大手のレンタカー会社2社と提携を結び、ゴールデンウィークに実証実験を開始しようと準備していました。
順調な滑り出しかのように見えた矢先、新型コロナが猛威を振るいはじめ、2020年3月末に第一回目の緊急事態宣言が発令されました。皆さんご存知の通り、他県への移動はおろか、県内の外出すら制限される状況で、片道レンタカーの実証実験はストップせざるを得ない事態になりました。
当時は大変という感情を通り越し、何をすればよいのか全くわからなくなりました。
そこで、コロナ禍で急激に需要の増えた運送やデリバリー業を開始しました。幸いその事業はうまく行き、会社の経営を続けることができましたが、本来私たちが目指していた世界の実現のため、タイミングを見計らって片道レンタカー事業に再挑戦することを決めました。
そして、新型コロナの猛威が当初より落ち着いた2022年3月、「カタレン」のサービスをリリースしました。リリース当初は「長距離間の乗り捨てレンタカーに需要はあるのだろうか」と不安もありましたが、事前登録時に一気に約5,000人のお客様の登録があり、手ごたえを感じることができました。
環境にやさしいMaaS、自動運転社会の実現へ
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
当社は「自動運転社会」という未来に繋げるためにスタートしており、大学時代から研究を重ねている私自身大好きな分野の事業を行っています。そして、これからの社会にとって役立つ事業であると確信しているため、どんなに困難な状況に直面した時でも、事業を続けていくべきだと信じて進むことができました。
また、我々はこの業界の先駆者であり、業界を引っ張っていく存在でなければならないという自負もモチベーションの一つになっています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
「カタレン」のサービス提供エリアが拡大すれば、たとえば「東京から軽井沢」と検索したときに、東京で借り、軽井沢で乗り捨てる片道レンタカーをマップ上で予約完結でき、シームレスに移動できます。
このような広域を網羅したMaaS社会を実現するためには、東名阪だけでなく、隣接する都市や交通機関が発達していないエリアへもサービスエリアを拡大していかなくてはなりません。当社ではすでに栃木県日光市と宇都宮市、茨城県鹿嶋市で「カタレン」の実証実験を開始しています。
観光地として人気の日光市では、東武鉄道と提携し、豪華特急「スペーシアX」やサイクルツーリズムと組み合わせた利用プランを提案しています。また、鹿嶋市はサッカーJ1チーム「鹿島アントラーズ」の都内からの試合観戦での利用を見込んでいます。
そして、宇都宮市は名物グルメのギョーザや宇都宮カクテルを、都内から車を乗り捨てて楽しんでもらうプランを提案しています。このように、今後は地方都市へのエリア拡大も検討しています。
また、北海道や九州の空港間での「カタレン」のサービス提供も検討しています。観光エリアが広域に点在している北海道や九州では、行き帰りで異なる空港を利用する旅行者も多くなっています。
そのため、レンタカー利用時、乗り捨てでの利用者が全国ではわずか10パーセント程度にとどまっているのに対し、北海道や九州では約30パーセントも占めるというデータが出ているのです。
このように全国各地に「カタレン」を広げていき、レンタカーをしっかり管理することで、少ない台数を効率よく利用者に配車することができ、エコにも繋がります。そして将来的にはMaaS、自動運転社会を実現したいです。
年齢に関係なく、後悔のないよう挑戦を
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
起業にはもちろん困難な問題もたくさん起こります。しかし、「起業したい」と思うのであれば、ぜひ挑戦してもらいたいです。今は定年退職後にシニア起業を行う方も増えています。年齢に関係なく、「挑戦してみたい」と思った時に後悔のないよう挑戦してみてください。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:小野﨑 悠介氏
企業情報
法人名 |
Pathfinder株式会社 |
HP |
|
設立 |
2020年1月27日 |
事業内容 |
MaaS及び関連サービス/研究開発/回送車両マッチング |
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