株式会社AGENT SUCCESS 代表取締役 野村 真央

現在、日本では年間約2,000~3,000社のペースでいわゆる転職エージェントが増え続けているといわれています。そのなかで人材紹介業を立ち上げようとする中小企業やベンチャー企業を支援するのが株式会社AGENT SUCCESSです。今回は、人材業界に身を置いて10年、学生からベンチャー企業の経営層まで幅広い支援実績を誇る代表取締役の野村真央氏に、事業の詳細や今後の展望などをお伺いしました。

「小さく始めて」「ニッチなところを狙う」ー効果的な人材紹介業の立ち上げを支援

事業の内容をお聞かせください

我々は人材紹介業の立ち上げから事業成立までの約1〜2年の間、企業に寄り添いながら並走支援を行います。人材事業への新規参入企業を対象とした支援が最も多く、最近はコンサルタント業や不動産業、飲食など、まさに多種多様な業種からの新規参入が目立っています。

 

人材紹介業は、「経験はないが、なんとなくできそう」というイメージを抱かれることも少なくありません。事業を始めるきっかけはそういったイメージでも問題ありませんが、チャレンジが失敗で終わらないよう、立ち上げの部分からお手伝いするのが我々の役割です。

 

その他にも、既存の人材紹介企業に対する事業戦略の改善や拡大といった支援を行うこともあります。例えば、今まで学生向けの紹介を行っていた企業の新たな取り組みとして転職支援を行ったり、今まで若手の支援を行っていた企業がベテランの紹介にも参入する際のお手伝いなどがこれにあたります。

 

弊社の強みは、二つあります。一つ目は、私自身が人材業界に10年携わっている中で支援してきた方の層や職種が幅広く、様々な領域の人材紹介事業の立ち上げに対応できる点です。

 

学生から第2新卒、スタートアップの経営層、シニアまで様々な方へ転職支援をしてきました。職種は、弊社での実績も含めると10を超えるため、取り扱える領域の幅広さには自信があります。

 

二つ目は、新規参入が相次ぎ競合他社が増え続けているこの状況下においても、勝ち続けるための戦略立案から実行までを一気通貫で提供していることです。

 

企業ごとに人材紹介事業を立ち上げることの大義や、その会社が持っている強みは異なるため、その特徴に合わせた事業展開を提案し、それを実現するための具体的な手法までをフォローしています。

 

業態や業種に限らず、新しい事業を始めるときに大事になるのは、「小さく始めて」「ニッチなところを狙う」ことです。どんなに大手の競合がいたとしても、ニッチな分野であればあるほど、大手が参入しづらい領域であるが故に勝ち筋があると考えています。

 

この考え方は、弊社自体が体現していることでもあります。

 

一般的なコンサルタント業では全業種に共通するような汎用的な支援を行うと思いますが、弊社は「人材紹介会社の立ち上げ」に絞ったコンサルタント業を行っております。これによってクライアントの要望に沿ったオーダーメイドの支援をご提供できています。

 

「他社のご提案だと立ち上げのプランがパッケージ化されており、事業への想いを反映できないためどうしたものか悩んでいてお問い合わせをしました。」と言っていただくことも増えており、小さい会社ながらの戦い方が出来ていると自負しています。

人材紹介業に参入する魅力を教えてください

まず前提として人材紹介事業への参入障壁は低いです。個人的な意見としてはある程度経験を経てから本格的に参入するかどうかを考えた方がよいと思っていますが、未経験の方でも始めやすいという点は、多くの方にメリットとして捉えられているようです。

 

また企業開拓や候補者集客に関して、自分自身の人脈で紹介が成り立ってしまうこともあるため、高い利益率が見込めるというのも魅力の一つです。

 

私がこの事業をしていて改めて実感した人材紹介業の魅力としては、企業および候補者の意思決定に対して直接手助けをして貢献ができる点です。

 

今やどの企業も人手不足で採用に課題を抱えています。候補者のご紹介をするために、コンフィデンシャルな情報まで信頼してお話しいただいた上でそれに見合った方をご紹介し、結果的にその方がご活躍して企業の事業拡大に貢献できることは、この仕事の醍醐味と言えるでしょう。

 

実際に、コンサルティング業を営んでいる企業から人材紹介を始めたいとご相談いただくケースでは、「クライアントが採用に困っているので、人材紹介を始めてそちらの面からも貢献したい」という声が多いです。

 

その他の魅力としては、自社の採用活動にも貢献できる点です。私が積極的に支援している企業では、立ち上げた人材紹介部門で魅力的な候補者に会えた際に自社の経営陣に紹介をして、結果的に採用に至ったケースがいくつもあります。

 

人材紹介事業を自社で行っていれば、良い人材と「一番最初に巡り合える」ので、両者フィーリングが合った上での話ですが、一週間も経たずに入社が決定することもあります。

大手転職エージェントも数多くあるなかで中小企業が勝ち残るためには、どういった戦略を組んでいくべきだとお考えですか?

人材紹介業への参入を支援するうえで私がよくお話しさせていただいていることは二点あります。

 

一つ目は、「発信や露出すること」です。事業がうまくいくかを検証したいので、最初はスモールに目立たずやりたいという方もいらっしゃいますが、それでは確実にうまくいきません。

 

撤退を見越して人材事業に参入しているという事実を外部にオープンにしていない企業が思いの外多く存在しますが、せっかく事業を始めたのにホームページでも公表されていないとなると、それだけで候補者から不審がられることもあり機会損失となってしまいます。

 

最近はSNSを活用して集客をする企業が増えてきました。大手企業では広報チェックがあり、あまり尖った発信も出来ないため、リアルタイムかつ奇抜性が求められるSNSの運用には消極的な会社が多いです。

 

中小企業やベンチャーは比較的自由に発信が出来るため、これを使わない手はありません。いかにSNSを駆使するか、が人材紹介事業の立ち上げにおいて大きなポイントとなります。

 

二つ目は、「手を広げすぎない」ということです。どうしても最初は手探りで「新卒も第2新卒もベテランも」「営業も経理もエンジニアも」「全国で」とターゲットを広げてしまいがちですが、それは悪手です。

 

そうしてしまうと逆に、それぞれの領域の知識が貯まらず、個々の分野に強い転職エージェントに負けてしまいます。まずは焦らずにテーマを絞って、分野に特化したサービスを提供することが重要です。

この事業を始めた経緯をお伺いできますか?

私は新卒から10年ほど人材紹介の現場を経験しましたが、この業界は人の入れ替わりが激しいということにやるせなさを感じていました。人材紹介会社は、転職エージェントとなる方を多数採用しますが、営業という職種柄、売上という数字を求められるため、生き残っていくのは非常に大変なことです。

 

結果を出すために焦れば焦るほど候補者に入社を急いだり、膨大な数の求人をどんどん紹介したりといった無理な営業をしてしまい、候補者から煙たがられるようになってしまいます。

 

そのような状況に耐えきれず辞めていく人たちを見て、「最初は候補者の人生に良い選択肢を提供したい、企業に貢献したいと志高く人材業界に飛び込んだにも関わらず、結果的にはすぐに辞めてしまう人が多くもったいない」と感じたのがはじまりでした。

 

この話は新規参入企業にも通じますが、多くの企業が志を持って事業を始めたにも関わらず、努力する方向性を間違えたりして撤退してしまうケースが増えており、そういったことをなくしたいと思うに至りました。

パワープレーはしない!現場で働く転職エージェントを第一に考える

仕事におけるこだわりを教えてください。

パワープレーをしないことです。

 

私は転職エージェントとして長らく現場を経験してきた人間ですが、決して優秀なプレイヤーではありませんでした。そのため、「できない人」の気持ちがよくわかります。

 

今は少なくなってきましたが、人材紹介会社ではKPI×マイクロマネジメントが横行している企業も多くあり、マネージャーから詰められて辞めていく同僚を見てきた経験などもあります。

 

もちろん候補者も紹介先の企業も大事であることは前提の上で、私の責務は「転職エージェントおよび人材紹介会社が長く続く」ことにあるため、現場で働く転職エージェントを第一に考えながら仕事をすることに軸をおいています。

起業から今までの最大の壁を教えてください

企業からコンサルティングフィーをいただいている身であるため、お客様の中でなかなか結果が出ないときは居た堪れなくなります。

 

過去には成果が出ない状況が半年ほど続いたケースもあり、現場でやっていただいていた方々には負担をかけてしまって申し訳なく思う期間が続きました。

 

「お客様からお金を頂いておいてパフォーマンスを発揮できない」かつ、私が一番避けたいと思っている「転職エージェント自身が疲弊する」状況を作り出してしまっていることを情けなく思いました。

 

そのため、その状況から脱却するためにどうすればいいのか、お客様と一緒になって試行錯誤しました。

 

別軸で壁と考えられるのは、弊社のビジネスモデルも該当します。

 

現在のモデルでは立ち上げがうまくいくことを目的としていることから、成果を出せたからこそ、その後は不要といわれてしまい取引が終了してしまいます。

 

半年や1年で切られる契約を繰り返しているだけでは持続的な会社経営が出来ないため、立ち上げたあとも長期的な関係性を築いていくための施策が必要だと考えています。

すべての事業会社を人材紹介会社に!

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

お客様の成功を見届けることや、そこから私自身もさまざまな学びを得ることです。

 

転職エージェント時代、自分の仕事にしんどさを感じることが多々ありました。今振り返ると、候補者の転職に寄り添うことに苦手意識を感じていて、それよりも「会社の経営」の方に相当な興味があったため、本来やるべきことに集中できていなかったのだと思います。

 

人の転職については「本人が最終決定するもの」で、私のコントロール下にはありません。転職エージェントはあくまでもフォローする立場で、企業から内定が出たとしても候補者ご本人が「行かない」と選択したのであれば、それが正解だと思っています。

 

ただ、その決断は転職エージェントの売上には繋がらないため、そのギャップを負担に感じていました。

 

一方、今は転職エージェント自身の支援をしているため、私が行っているのは企業や事業の成長に対するアドバイスです。お客様の成功や、そこから得られる学びの数々が、今の仕事を楽しいと思えている理由だと思います。

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

まずは、人材紹介という市場をより拡張させていくことです。

 

しばらく前まで「転職=35歳限界説」が当たり前のように言われていました。最近は40代以降でも転職することが当たり前になり、市場は拡大し続けています。

 

また、弊社の認知拡大にも取り組みたいです。「人材紹介業の立ち上げ支援」はまだスタンダードとはいえないのが実情ですが、いい意味で捉えると伸びしろも大きいということです。

 

さらに弊社では、採用にも力を入れていきたいと考えています。これまでは代表取締役である私と業務委託の方数名で運営してきましたが、この形で1年ほど実践してみた結果、今後も拡大していけそうだと思えたため、よりコミットいただける方を増やしたいと考えるようになりました。

 

求めているのは、社長候補となる人材(COO)や、お客様により添えるCS(カスタマーサクセス)です。私に代わってこの事業を取りまとめてくださる方を見つけて、私自身は現場で駆け回るような形式もよいと思っています。固定観念にとらわれず、新たな時代を生き抜ける会社にしていきたいです。

 

すべての企業に人材紹介部門があれば、採用活動が適正化するのではないかと考えています。

 

というのも、現状は転職エージェントに支払うフィーが高額で、これが利益を圧迫したり事業成長に対してマイナスになっていると感じます。すべての企業に人材紹介部門があれば、どの会社も採用に強みを持ち、事業に投資することに健全に向き合えると考えています。

 

「すべての事業会社を人材紹介会社に」していきたいという想いを、より多くの方に届けていければと思います。

まずはすべての業務を自分で経験してみよう

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

せっかく起業するのであれば、外注に頼らずまずは自分ですべての業務を経験してみてほしいです。

 

会社員だと、自分の担当以外の業務は各担当者が行ってくれるでしょう。ところが起業すると、営業をしながら経理や労務なども行わなければなりせん。これは、自分のキャリアの幅を広げられる経験だと思っています。

 

色々な業務を自分で行うことで新たなビジネスを思いついたり、今までそれをやっていただいた方への感謝の気持ちも芽生えます。

 

一方で、起業する際には自分が起業家に向いているのかどうかしっかりと見極める必要があると思います。最初は勢いでなんとかなったとしても、起業家として生き続けることは非常に大きな負担を伴う働き方でもあります。

 

さまざまな選択肢をしっかりと比較検討したうえで、それでも起業をしたいのかどうか判断していただければと思います。

 

また、謙虚さは大事にしたいです。「自分は起業家なので常識には囚われない」といったスタンスが行き過ぎると人が離れていってしまうため、自制を覚えることに加えて、アドバイスをくれたり時には叱ってくれたりするメンターを見つけることが、持続的な成長へと繋がります。

AGENT SUCCESSの利用を検討している方へメッセージをお願いします

弊社では、事業が軌道に乗るまでいくつもの手法を効果検証して、その会社にあった事業立ち上げをご提案しています。事業を立ち上げると言っても、各フェーズ毎に企業の事情や課題は変わってくるものなので、その都度ヒアリングしたうえで、支援内容を再設計して提案したりもしています。

 

そのため、お客様からはよく「当初は何をしてくれる会社なのかよくわかっていなかったが、何とかしてくれるだろうと思って依頼した」というお声をいただいたこともあります。

 

基本的にはお客様の意志を最大限尊重する点も特徴のひとつです。スタートアップの場合、強い意志や理想を持って起業されることが多いため、あまり採算が取れなさそうな道のりをご希望される場合でも、その事実は進言したうえで、最終的にはお客様の意志を尊重するようにしています。

 

目指している方向は各社によって違いますので、その理想を実現できるよう柔軟に対応いたします。ぜひお気軽にご相談ください。

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:野村 真央 氏

慶應義塾大学卒業後、スタートアップ及び外資系人材会社にて人材紹介部門の立ち上げに貢献。人材業界歴は10年目となり、学生〜ベンチャー企業の経営層まで幅広く支援実績がある。2023年、株式会社AGENT SUCCESSを創業し、各社の課題に合わせた人材紹介事業部の立ち上げ支援サービスをハンズオンで展開。支援実績は20社を超える。

 

企業情報

法人名

株式会社AGENT SUCCESS

HP

https://agentsuccess.jp/

設立

2023年2月15日

事業内容

人材紹介立ち上げ支援事業

 

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