
株式会社森未来は、全国の木材産地の事業者情報をデータ化し、建築家や設計者へ木材のマッチング・選定から調達までを支援する会社です。データベースを基盤に、木材情報プラットフォーム「eTREE」などのwebを通じて、これまで属人化していた木材の情報を全国規模で集約・可視化している点が特徴です。今回は、代表取締役である浅野純平氏に、林業が抱える構造的な課題やAIを活用した今後の展望について伺いました。
日本全国の木材産地の事業者情報をデータ化し、その情報をもとに、主に建築家や設計士の方々へ木材の紹介・マッチングから調達・納品を行うのが当社の事業です。木材業界・林業業界のデータを整備したうえで、そのデータを活用して建設業界へ向けたWebマーケティングを行っています。需要者と供給者の双方のアカウントが必要になるマルチサイドプラットフォームだとご理解いただくとよいでしょう。
前提として、森林業界の課題を簡単にお伝えします。日本の森林率は67%あり、国土の約7割が森林です。世界的に見ても森林率が70%近い国は少なく、日本は先進国(OECD加盟国)の中でも第3位の森林率となっています。 (※林野庁 令和8年9月 森林・林業・木材産業の現状と課題より)世界的に見てもトップクラスの森林国家ということです。
一方で、課題になっているのは齢級構成です。まず、1本の木が植えられてから伐採・利用できるまで基本的には約50年かかります。現在の日本の森林は50〜60年生の木が非常に多く、一方で5年生や10年生といった若い木がとても少ないのです。これは、50〜60年前に先代が植えてくださった木がちょうど収穫・伐採期を迎えている一方で、使ったあとに次の世代のために植える取り組みが進んでいないことを意味します。
なぜ植えられていないのか。それはビジネスとして儲かりづらい構造になっているからです。林業では木を伐採し、丸太を売った時に得た金額が収益になります。一方で、次の世代が伐採する木を残すための植林と、その後の50年間の育林にはコストがかかるだけで、収入にはなりません。こういったビジネス構造から、次の世代のために投資する余力が生まれにくい状況になっているのです。
かつて50〜60年前は丸太も高値で売れて林業自体が儲かっていたため、50年先の投資として再造林ができましたが、この50年で世の中が変わり、採算性の低さや流通の中で過剰に中間コストがかかるために生産者へ利益が還元されづらくなりました。結果、現在の林業は補助金に頼らざるを得ない状況となっています。

そこで当社は、行政の支援のみに頼ることなく、ビジネスとして林業を支える方法を模索してきました。
当社のビジネスモデル自体はシンプルで、木材を仕入れて販売するモデルです。最近は森林再生や、脱炭素、地域産業への貢献といった文脈からも、設計業界での木材の利用が注目されています。一方で、都心の設計事務所が特定地域の木材をプロジェクトで使いたいと思っても、地方の材木屋とのネットワークが無いため実現が困難でした。
また、木材は特性上専門的な知見が必要になるため、今回のデザインではスギとヒノキどちらにすべきか、節の有無やどういった塗装をすべきかなどを、設計士自身で判断することが難しいのです。そうした、木材を利用する時のボトルネックに対して、情報をデータ化してコーディネートしているのが当社の特徴です。
各地域には木材市場や問屋が存在しますが、都市部の設計者とのネットワークはほとんど途切れていました。これを全国規模でデータを収集し独自のデータベースにして、木材需要に対して適切な商品や実現方法を繋いでいる点が森未来の強みだと考えています。

当社が運営している「eTREE」は、もともと木材のECプラットフォームとしてスタートしました。しかし木材をECで購入いただく難しさに直面し、現在は林業・木材業界の情報を集約して発信するポータルサイトへと役割を変えています。さまざまな方が流入して情報に触れ、木材を探している方から当社へお問い合わせが来るモデルです。
また、お問い合わせでいただいた木材利用のご相談に対しては、木材に特化した当社の営業が、プロジェクトに伴走してデザインの実現を支援しています。こうした取り組みに価値を感じていただいて、一度ご相談いただいた設計士や空間デザイナーの方からのリピート相談も日々いただいています。
最近は、データベースとAIを連携させて大量の商品情報や属人化しがちなノウハウにもスタッフが素早くアクセスして提案に繋げられるようにしたり、設計士の疑問にAIが対応するサービス「Laurel」を開発・提供するなど、AI活用で事業をさらに加速させています。
ここまでは需要側(設計業界)の話でしたが、一方で供給側(木材業界)とも連携を強めています。木材業界には素材の供給能力は一定数ありますが、施工業者から明日ほしいと言われても乾燥や加工に時間がかかるため、すぐには準備できません。当社ではこういった場合を想定してデータベースを構築し、プロジェクトの早い段階から対応できるようにしています。
このように市場のニーズや需要側の時間軸を、供給側と合わせていくことを当社では大事にしています。
他にも、データを活かして市場のニーズやトレンドを供給側へ届けたりもしています。多くの製材所は少人数で運営されているため、マーケティングまで手が回らないことが多く、木材特化型AIアシスタント「Laurel」や「eTREE」に寄せられる質問・相談を起点に、市場のニーズを当社で分析し、フィードバックしてサポートしています。

大きなことに挑戦したい思いが昔からありました。サラリーマンとしてトップを目指すか独立するかを考えたとき、私は起業を選びました。また、どうせやるなら社会インパクトを生み出す、社会貢献性の高い事業にしたいと思っていたのです。
ビジネスモデルは2〜3年ほどかけて吟味しました。毎週図書館で本を10冊借りて読む生活を続けていた中で、大工の棟梁が書いた本を通じて林業の課題に触れ、「これでいこう」と決めたのです。その後は林業や木材業現場を学ぶために東京都の秋川木材協同組合に飛び込み、実際に現場を経験したのち、株式会社森未来を創業しました。

会社の軸として「Sustainable Forest(持続可能な森林)」をミッションに掲げており、これを現場で実現していくことが最大の使命です。ここがブレてしまったら、森未来ではなくなってしまうと考えています。
優先順位としては、事業成長、組織、社会形成の順番だと考えています。Sustainable Forestは50年単位の長い時間軸のテーマであるため、従業員にも手触り感を持ってもらう必要があるのです。そのため、まずは事業をしっかり伸ばして会社の影響力を強くし、組織を固めたうえで社会変革に挑戦していきたいと考えています。
キャッシュフローの問題や、組織の問題は常にあります。スタートアップであるため、「そこまでコミットできない」と途中で離脱してしまう人もいます。そうしたメンバーとの擦り合わせやカルチャー作りは、社内でしっかり進めているところです。
地方創生といった、当社のミッションと隣接するような領域を志す方なども集まることがあるのですが、Sustainable Forestというコアの部分以外の文脈はできる限りそぎ落としつつ、社会変革に挑戦していくことが今後の組織づくりにおいて重要になると考えています。Sustainable Forestをメンバーそれぞれが自分ごと化して臨める組織にしていきたいですね。
掲げたミッションを諦めずにやり切る使命感が、私を前に進ませています。事業を伸ばすことがそのままSustainable Forestの実現につながる戦略をとっているため、日々の事業成長への取り組みが、そのまま社会変革への一歩になります。
Sustainable Forestは50年単位の時間軸で捉えるテーマです。目の前の事業と長期のミッションが一本の線でつながっていることが、進み続ける原動力です。
創業時から掲げている「All Wood Platform」のビジョンを実現させることが目標です。
木材のアナログで膨大なデータは、これまで扱うのが難しいものでした。それがAIの台頭によって効率的に処理できるようになり、ビジョンに現実味が帯びてきています。
少ない人数でもビジネスをスケールさせられる環境が整いつつあります。このAIを活用した仕組みを完成させていくことが、直近の野望です。
起業はあくまで「手段」であるため、起業そのものを目的にしないことが大切だと思います。自分が本当に何をやりたいのかを明確にし、それが既存の会社でできるのか、それとも起業すべきなのかを見極めるべきです。目的と手段が一貫していれば、ブレることはありません。
私は、起業や会社経営は複雑性の高いゲームだと考えています。組織問題、キャッシュフロー、社会情勢などが常に変化し、それらの組み合わせが課題をさらに複雑にしています。例えば営業職における「売上をつくる」というミッションに比べると、経営において求められる要素は多岐にわたり、行動も複雑になります。
このような複雑性の高いゲームで成功するのは、非常に難易度が高いです。世間一般で言われる「成功」を目指すのであれば、起業以外の道を選んだ方が可能性は高いと考えています。しかし、それでも「どうしても実現したいことがある」と思った時に、初めて起業が選択肢に入ってくるのだと思います。
逆説的ですが、最初はそこまでの情熱がなかったとしても、起業は人を大きく成長させるため、「まずはやってみる」という選択も一つのお勧めです。ただ、うまくいかなかった場合のセーフティーネットは、行政や業界全体でもっと用意すべきだとは感じています。
スタートアップは村社会だと言われたりもしますが、お互いに辛い局面を乗り越えてきたという事実が、語らずとも強固な信頼につながっているのだと思います。どんな前提であれ、起業という選択をされたのであれば、全力で応援したいですね。私でお力になれることがあれば、いつでも声をかけていただければと思います。

1981年千葉県生まれ。IT企業で営業、マネジメントを経験。社会的な事業で起業をする為、3年間社会課題を勉強していく中で、林業の課題に出会い、林業での起業を決意。2015年東京都秋川木材協同組合の事務局長として現場を学んだ後、2016年 「Sustainable Forest」をミッションに株式会社森未来を設立。
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法人名 |
株式会社森未来 |
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HP |
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設立 |
2016年4月28日 |
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事業内容 |
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