オフィスの移転が初めての場合や、ノウハウがない場合は何をすれば良いのか分からない、費用はどのくらいかかるのかなど、 疑問に感じることも多いのではないでしょうか。
効率的にオフィス移転を進めるためには、どのような業務が発生するのかを管理し、どのようなスケジュールで進めていくのか事前に決めておく必要があります。
本記事では、オフィス移転の流れやスケジュール例、タスクごとのチェックリストを解説します。オフィス移転に関する注意点や費用も紹介しますので、オフィスの移転を考えている方は参考にしてください。
現オフィスを退去する流れ
オフィスの移転は、現在のオフィスを退去するために契約内容を確認し、退去の手続きをするところから始まります。 現在のオフィスを退去する流れは以下の通りです。
退去に当たってはトラブルを避けるために、現在の契約内容をよく確認した上で進めていく必要があります。
①解約予告
一般的に、移転する3~6ヶ月前までに貸主へ解約を予告する必要があります。解約予告の期間は契約内容によって異なる場合があるため、あらかじめ契約内容を確認するようにしましょう。
もし、解約予告期間を過ぎてしまった場合は、新たに賃料が発生したり、解約金を請求される場合があるため注意する必要があります。
②原状回復工事
一般的に、オフィスの原状回復費用は借主が負担する場合が多いです。また、原状回復工事は現在のオフィスを引き渡す前に完了させておく必要があるため、早めにスケジュールを組む必要があります。
原状回復工事についても、費用の負担元や工事の完了期限などは契約内容によって異なる場合があるため、事前に確認するようにしましょう。
新オフィスを構築・移転する流れ
オフィス移転の主な流れは、以下の通りです。
この章では、オフィス移転の流れを一つずつ詳しく解説します。
①移転の方針・目的の決定
理想のオフィスを実現させるためには、移転する方針や目的を明確にすることが重要です。 移転する目的は現在の課題の中から見つけます。スペースが足りない、コストを抑えたい、立地を良くしたいなどが移転する目的として多いケースです。
課題を洗い出したあとは、新しいオフィスで実現したいことを設定します。 企業のブランディング、コミュニケーションの活性化、生産性の向上などが挙げられます
このように目的や方針を明確にすることで、オフィスの物件が選定しやすくなったり、レイアウトに反映させやすくなったりします。
②オフィス移転業者の選定
オフィス移転に伴い、どのような業者に発注するのか決める必要があります。オフィス移転に関する業務を委託できる業者の中には、 物件の選定から新オフィスのレイアウトの設計、引っ越し作業まで一括で依頼できる業者もあります。
オフィス移転のノウハウがある場合は、物件の仲介のみ・引っ越し作業のみなどのピンポイントの依頼が適しています。一方で、オフィス移転のノウハウがない場合や、オフィス移転に関する負担を減らしたい場合は、一括で委託できる業者がよいでしょう。
依頼したい業務を明確にし、自社に合った業者を選ぶ必要があります。
③新オフィスの選定
新オフィスの選定においてチェックしておきたいポイントは以下の5点です。
ポイント |
確認内容 |
立地 |
|
コスト |
|
規模 |
|
周辺の環境 |
|
設備 |
|
新オフィスの選定の際は、条件だけではなく移転の方針や目的を考慮した上で、選ぶようにしましょう。
④新オフィスのレイアウト決定
レイアウトの設計は、その後の内装工事や、設備・家具などに影響するため、オフィス移転の中で重要な業務の一つです。
レイアウトの設計において、決めるべき項目には以下のようなものがあります。
- 部署ごとに必要なスペース
- 休憩室や会議室、エントランスなどの業務以外のスペース
- 設備や家具の設置場所
新オフィスのレイアウトは、移転の方針や目的に合わせて作成する必要があります。
例えばコミュニケーションの活性化を移転の方針としている場合は、社員が集まれる休憩スペースを設置することや、テレワークの導入でオフィスコストを抑えたい場合は、 フリーアドレスを採用しスペースの最適化を図れるようなレイアウトがよいでしょう。
⑤新オフィスの内装工事
オフィスのレイアウトが完成したら、内装工事を行う業者を選定します。料金だけではなくサービス内容やこれまでの実績などを踏まえて、自社に合った業者を選定することが重要です。
業者を選定したら正式に工事を発注し、レイアウトを共有しながら、どのようなスケジュールで進めていけるのかなど、ミスコミュニケーションがないように密に打ち合わせをする必要があります。
⑥新オフィス通信関連工事
内装工事とは別に、電話回線やネットワーク回線など通信関連工事も必要となります。移転日が決まったら、現在契約している電話回線会社やネットワーク会社などに連絡をして、工事計画・手配を進めていきます。
通信関連工事のようなインフラ周りの整備は、専門知識が必要となります。そのため自社のIT部門や専門業者と密にコミュニケーションを取りながら進めていくのがおすすめです。
⑦新オフィスの備品・リース品手配
会社カラーや、コンセプトなどに合わせて新オフィスに設置するデスクやチェアなどのオフィス家具、OA機器などを選定します。 ものによって購入かリースかを決め、メーカーやリース会社などに見積もりを取り正式に発注します。
購入やリース品の手配と同時に、現在のオフィスで不要になったものを廃棄する手配も必要になることを理解しておきましょう。
⑧引っ越しに伴うマニュアル作成
オフィスの移転は大掛かりであるため社員一人ひとりがタスクやスケジュールを全て把握するのは難しいです。そのため、自社の社員に周知するにあたって引っ越しに関するマニュアルを作るのがおすすめです。
社内マニュアルには、引っ越しスケジュール、役割分担、重要書類の管理方法、備品や書類などの移動方法、廃棄物の処理方法などを記載しましょう。具体的に社員に周知・マニュアル配布するのはオフィス移転の3ヶ月から2ヶ月前が望ましいです。
⑨引っ越し準備・作業
引っ越し当日スムーズに搬出・搬入ができるように、 スケジュールに余裕を持って荷物の整理や身の回りの片付けを進めておく必要があります。
引っ越し作業において、 重要書類が無くなった、スムーズに引っ越しできず業務に支障が出てしまったということがないように「書類の管理方法が合っているか」「作業を予定通り進められているか」など、管理者が社員の状況をチェックするようにしましょう。
⑩移転に関する届出提出
オフィスの移転をする際は、移転前と移転後に関係官庁に届出が必要となります。 必要となる届出の一例を以下に紹介します。
届出内容 |
届出先 |
届出期限 |
郵便物届出変更届 |
移転前の受持郵便局 |
移転前 |
防火・防災管理者選任届出書 |
移転先の管轄消防署 |
移転前(移転先の管理会社への提出が必要) |
防火対象物工事等計画届出書 |
移転先の管轄消防署 |
内装工事開始の7日前 |
消防計画作成(変更)届出書 |
移転先の管轄消防署 |
移転の7日前 |
対象物使用開始届出書 |
移転先の管轄消防署 |
移転の7日前 |
本店移転登記 |
移転前の管轄法務局 |
移転後2週間以内 |
異動事項に関する届出 |
移転前と移転後の管轄税務局 |
移転後速やかに |
健康保険・厚生年金保険適用事業所所在地・名称変更届 |
移転前の管轄年金事務所 |
移転後5日以内 |
労働保険名称、所在地変更届 |
移転後の管轄労働基準監督署 |
移転後10日以内 |
労働保険関係成立届 |
移転後の管轄労働基準監督署 |
移転後10日以内 |
労働保険保険料申告書 |
移転後の管轄労働基準監督署 |
移転後10日以内 |
雇用保険事業所各種変更届 |
移転後の管轄ハローワーク |
移転後10日以内 |
それぞれ届出先や届出期限が異なるため、抜け漏れがないようにオフィス移転前に提出が必要な書類の情報について確認しておくことをおすすめします。
オフィス移転のスケジュール例
この章では移転規模が30坪の場合と、100坪の場合のスケジュール例を紹介します。
オフィス移転のスケジュールは、移転規模によって大きく異なるため、自社の状況に適したスケジュールを立てるのが重要です。
移転規模30坪の場合
移転規模30坪の場合の移転スケジュールは、以下の通りです。
※引用:オフィス移転スケジュール|at OFFICE
移転規模30坪の比較的小規模な場合でも、約8ヶ月前に移転に伴う業務をスタートさせる必要があります。
移転規模100坪の場合
移転規模100坪の場合の移転スケジュールは、以下の通りです。
※引用:オフィス移転スケジュール|at OFFICE
移転規模100坪の中規模な移転の場合は、移転計画から移転完了まで、1年弱の期間が必要となります。
移転の規模だけではなく、設備や内装工事の規模などによって移転に必要な期間は異なり、どちらの例もあくまでも目安ですが、自社の移転スケジュールを立てる参考として活用ください。
オフィスを移転する際の注意点
オフィスを移転する際の注意点は、以下の4つが挙げられます。
- 現オフィスの退去要件を確認する
- 人数や業務内容にあったレイアウトにする
- 適切に情報を管理する
- タスクチェックリストを作成する
オフィス移転を失敗しない、トラブルに合わないようにするためには、注意点をしっかり理解しておく必要があります。
現オフィスの退去要件を確認する
解約予告の期限や原状回復工事でトラブルを防ぐためにも、契約の退去要件を確認しておくことが重要です。
退去要件を確認できていなかった場合は、余計に賃料が発生したり、原状回復工事で貸主とトラブルに発展したりする可能性があります。
現在のオフィスを移転することが決まったら、まず契約内容を確認しましょう。
人数や業務内容にあったレイアウトにする
新オフィスのレイアウトはレイアウトは、働きやすさや社員の満足度に直結するため、オフィス移転の中で最も重要な業務の一つです。
新オフィスのレイアウト作成時は、単純に決めるのではなく、人数だけではなく業務内容などを考慮する必要があります。さらに、オフィス移転の方針を実現できるように、移転の目的を反映させたレイアウトを作成しましょう。
適切に情報を管理する
現オフィス保管している重要書類なども移転させる必要があります。書類の中には顧客や社員の個人情報なども含まれているため、情報の取り扱いには注意が必要です。
情報管理については、搬出前に社員に対して教育するのがよいでしょう。またスムーズな搬入のため、新オフィスに搬入するものや捨てるもの、重要なものなど細かく仕分けし、誤って処分するようなことがないように工夫する必要があります。
タスクチェックリストを作成する
オフィスの移転には、オフィスの解約や契約、引っ越しの周知や各種届出など、やらなければならないタスクが多いです。会社の移転完了まで、一つ一つのタスクを漏れなく進めるためには、チェックリストの作成がおすすめです。
チェックリストは「旧オフィスに関わるもの」「新オフィスに関わるもの」など項目ごとに分けたり、タスクはできるだけ細かく記載すると、より抜け漏れを防ぐことが可能です。
また、チェックリストを複数の部署や多くのメンバーで管理する場合は、クラウドで保存するなど保存漏れが無いようにチェックリストを一元管理しておくことをおすすめします。
オフィス移転に必要な費用
オフィス移転に必要な費用は、さまざまものがあり、規模や移転時の状況、エリアによって異なることなります。
一般的なオフィス移転の相場は以下の通りです。ただし、以下の表は費用の目安であるため、自社の状況によって変動する可能性があります。
内容 |
入居費用 |
退去費用 |
原状回復工事費 |
0円 |
小規模オフィス(50坪まで):3万円〜5万円/坪 大規模オフィス(50坪以上):5万円〜10万円/坪 |
不用品・廃棄物処理費 |
0円 |
2トン車:7万円〜8万円 4トン車:12万円〜15万円 |
賃料 |
0円 |
3〜6ヶ月前の解約予告に基づき支払い ※契約内容は物件によって異なる |
敷金 |
小規模オフィス(50坪まで):賃料4〜6ヶ月分 大規模オフィス(50坪以上):賃料6〜12ヶ月分 |
0円 |
礼金 |
賃料1〜2ヶ月分 |
0円 |
仲介手数料 |
賃料1ヶ月分 |
0円 |
保証会社加入料 |
賃料1ヶ月分 |
0円 |
火災保険料 |
2万円/2年間〜 |
0円 |
前賃料 |
入居月と翌月分 |
0円 |
内装工事費 |
10万円〜40万円/坪 |
0円 |
設備・通信工事費 |
5万円〜15万円/坪 |
0円 |
備品・家具購入費 |
5万円〜30万円/従業員1名 |
0円 |
引越し費用 |
2万円〜5万円 |
0円 |
届出書類の作成費用 |
10万円〜25万円 |
0円 |
広告・告知の費用 |
1万円〜2万円/従業員1名 |
0円 |
※費用に関しては状況により異なる
オフィスの移転費用について詳しく知りたい方は「オフィス移転にかかる費用は?内訳や相場費用をもとに予算の目安を考えよう」をご覧ください。
オフィス移転は細かいスケジュール設定が重要となる
オフィスの移転は長期間にわたるため、事前に発生する業務やスケジュールを細かく設定する必要があります。 タスクの抜け漏れがないように、チェックリストを作成し、 管理するのがおすすめです。
オフィス移転をお考えの方でどのようにオフィス移転を進めてよいか分からない場合は、at OFFICEの「オフィス移転ガイド」をダウンロードしてみてください。オフィス移転ガイドでは、オフィス移転費用や契約手続きの注意点、失敗しない移転のコツをまとめています。
オフィス移転ガイドや本記事を参考に、理想のオフィス移転を成功させてください。
関連記事