合同会社ピースユー 職務執行者 藤瀬 公耀
日本最大級のライブコマースアプリを開発・運営する合同会社ピースユー。2023年2月にはECやD2Cマーケティングを支援する「株式会社いつも」とのM&Aを行いました。今後も成長が期待されているライブコマース市場において、業界を牽引する存在として注目を集めています。今回は、M&Aに至った経緯や異業種間M&Aならではの困難など、職務執行者の藤瀬公耀氏にお話を伺いました。
アフィリエイトで商品の売上UPにつながる仕組みを構築
事業の内容をお聞かせください
当社は、ライブコマースのアプリ「Peace you Live(ピースユーライブ)」を通じ、日本最大級のライブコマースサービスを展開しています。
ライブコマースの市場は、2023年には中国での市場規模が約65兆円に上るほど、海外ではかなり大規模になってきました。中国を筆頭に、東南アジアでもEC販売の20〜25%をライブコマースが占めており、今後も拡大が見込まれています。その一方で、日本での認知度はそこまで高くはないため、我々が先駆者として広く浸透させていく気概で臨んでいます。
また、アフィリエイトとして提携企業の商品をライバーさんに提供する取り組みもおこなっています。商品を当社のデータベースに蓄積していき、売る力の強いライバーさんとマッチングすることで、売上が伸びやすい仕組みを構築しています。さらに、視聴者がライブ視聴中に気に入った商品をすぐに購入できるシステムを導入し、商品の購入を一層促進できている点も当社の特長です。
加えて、AIを使ったバーチャルライバーやライブコマースに特化したアフィリエイトなど、日本初の取り組みも進めています。AIバーチャルライバーの企画では、お笑い芸人のEXITのお二人や、声優の小野賢章さんのAIアバターを作成しました。恐らく日本で一番クオリティの高いAIバーチャルライバーだと思います。
ライブコマースの特性上、生配信であるがゆえに配信を行うライバーさんの時間や場所を制約してしまうことが課題でした。そこでAIを活用することで、こういった課題を解決していきたいと考えています。
親会社である「株式会社いつも」に入社された経緯をお伺いできますか?
「株式会社いつも」に入社する前は、人材系メガベンチャーのマーケティング担当、コンサルファームでコンサルタントそして事業者として働いていました。
当時担当していたのは、例えば、大手メディア企業向けの組織コンサルティングや人材育成、新規事業の立ち上げの戦略立案です。
その後、HR関連のSaaSを新規事業として立ち上げることになり、責任者としてマネジメントに携わりました。
こうした経験を積む中で、事業を立ち上げたり大きくしたりすることに対して楽しさや魅力を感じるようになりました。そんな中、以前仕事でご一緒したことのあった「株式会社いつも」の取締役の方からお誘いをいただきました。
当時は上場して間もない頃で、新しいプラットフォームの領域で新規事業を立ち上げたいとの相談を受けました。ECやコマースなどのサービスは、それまで関わってきた分野とは異なるものの、消費行動に影響を与えられる点に興味を持ちました。
また、新規事業に尽力したいと考えていた私にとって、事業責任者を任せていただけた点も入社を決めた大きなポイントの一つです。
「目に見えないことを信じること」で形のないものを実現に導く
仕事におけるこだわりを教えてください
私は「目に見えないことを信じること」を大事にしています。
新規事業の立ち上げは、形のないものを作り上げていく段階に当たるので、基本的には今後のことが分からない状態です。自分がやったことが正解なのか、かつそれが形になるのかが分からない中で進めて行く必要があります。だからこそ、思い描いている戦略や事業の価値、チームのメンバーを信じて突き進んでいこうとする気持ちはとても大切です。
また、メンバーとの意思疎通に関しては、事業の将来像についてかなり詳細な部分まで共有することを心掛けています。「売上げ何億円を目指しましょう」という話だと、それが結局、誰のためになっているのかがイメージしづらいと思うのです。
メンバーには、ユーザーがどのような行動をしているのかを深く理解するため、1人の人を具体的に思い描くよう伝えています。また、ライブコマースではライバーさん自身が購入者にどのようなサービスを提供したいのかを具体化することもとても重要です。そうしたことを都度具体化することで、実現したいことに向けてチームで取り組むべきことがより鮮明になります。
私は、チーム全員が出来るだけ具体的に同じ絵をイメージできるよう工夫することを常に意識しています。
ライブコマースの付加価値を高め、後世に残る事業へと育てることが大きなやりがい
M&Aに至るまでの経緯を教えていただけますか?
ECマーケティング支援の老舗である「株式会社いつも」は、海外で拡大するライブコマース市場への進出機会を狙っていました。ライブコマース事業を手掛ける企業がいくつかある中で、それを専門としている会社は当時ほとんどありませんでした。
そんな中、ピースユーはニッチな領域でありながらもライブコマースを専門としており、かつ業界最大級である点に大きな興味を持ちました。参入を考えていた領域に素晴らしい事業者がいることがわかり、そこからM&Aを検討し始めました。
さらに、ピースユーの創業メンバーと「株式会社いつも」のメンバーが偶然知り合う機会があり、話がより具体的になりました。また、ユーザーに届けたい価値に対する考え方が一致していたことも大きな要因の一つです。
両者ともに、ライバーさんが一方的に喋るよりも、ライバーさんと視聴者がコミュニケーションを取って楽しめるサービスを目指していました。この価値観が一致したのは、M&Aの決め手としてかなり大きかったと思います。
M&Aの際に苦労されたことはありますか?
本業と異なるビジネスモデルへの参入だからこその難しさはありました。
その一つは、新たな事業に関して深く理解する必要があったことです。「株式会社いつも」がコンサルティング業をメインとしているのに対し、ピースユーはプラットフォームを運営している会社です。そのため、かなり幅広い領域に対して調査を行いました。
また、ライブコマースの特性上、強いコミュニティや独自の文化があるので、それらのルールを引き継ぐことも意識していました。M&Aによる変化があってもユーザーには変わらず馴染みの場所として楽しんでいただきたかったのです。
だからこそ、我々もライバーさんにきちんと挨拶をしたり、どのような考えで過去の施策を行ってきたかを細かく聞いたりするなど、コミュニケーションを取るようにしていました。
もう一つ悩ましかったのが、お互いの考え方をどのようにすり合わせるかです。
「株式会社いつも」としても、さまざまな調査を行った上でライブコマース事業を今後どのように伸ばしていきたいのかを検討しました。その上で、「株式会社いつも」の考え方をどこまで適用するのか、逆にどこまで適用しないのかを話し合いの中で模索していきました。
異業種間でのM&A特有の難しさが最初はありましたが、時間をかけて歩み寄れたことは、お互いにとって非常に良かったと思います。
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
「Peace you Live」は国内の業界最大級のアプリのため、この事業を自分自身の手で伸ばしていける点にとてもやりがいを感じます。
イブコマース事業は既に海外で大きな市場となっていますが、日本においても市場への期待はかなり高まってきています。我々はこれからも後世に残る、価値のある事業を築き上げていくことを目指しています。
それから、私は日頃から本をよく読むため、著者の体験や言葉からエネルギーをもらうことも多いです。最近では、USJをV字回復させたことで有名な森岡毅さんの『苦しかったときの話をしようか』に感銘を受けました。
森岡さんの苦労が滲んでいて、心惹かれる言葉も多かったです。その中でも『ナスビはナスビにしかならない』という言葉は特に響きました。私が卒業した京都大学には、いわゆる天才と呼ばれる人がたくさんいました。何でも瞬時に覚えてしまえるような優秀な人たちが多いので、彼らと比べると「自分は凡人だな」と常に思っていました。だからこそ、この言葉が胸に残りましたし、自分の持っているものを光らせなければと強く感じました。
あとは、大学生の頃から日記を続けているのですが、行動を振り返る習慣も、気持ちを高める要素の一つかもしれません。目標や気を付けたいこと、課題、今後試してみたいことなどを毎日メモアプリに書くようにしています。週に一度は、そのロングバージョンとして、カレンダーを振り返りながら一週間の振り返りも行っています。
言語化することで、事業としても個人としても「これはやらなくても良かったな」とか「これはもっと上手く出来たな」ということが分かりやすくなるんです。また、Notion上にデータベースを作り、経営やリーダーシップ、開発など様々なジャンルにカテゴライズして、学んだことを蓄積・管理しています。優先順位の高いものだけを常に表示するようにして一つ一つ課題を克服するようにしています。
私は決して何かに秀でているわけではないので、小さな積み重ねを繰り返して改善の速度を上げ自身を成長させるよう取り組んでいます。だからこそ、出来る限り改善の速度を上げる気持ちで取り組んでいます。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
今後は、ライブコマース事業のインフラ関連に必要なものを全て押さえていきたいと考えています。
店舗やECでは購入すること自体がメインとされる一方で、ライブコマースではコミュニケーションに重きが置かれています。配信内でコメントでの会話を楽しめる点や、視聴者が購入するとライバーさんにもメリットがある点は、ライブコマース特有の価値です。
当社のキャッチコピーである「買い物体験をカラフルに」を実現すべく、この価値にますます磨きをかけていく計画です。そのためにも、インフラとなる商品の調達、物流やノウハウの提供などのサポート体制を強化していきたいと考えています。
具体的には、ライバーさんが担っている商品調達の作業を我々がおこなうことで、ライバーさん側の負担を減らす仕組みも構築し提供しています。
そうすることで、ライバーさんは商品をより詳しく知ることや、視聴者とのやり取りに注力できるようになります。
同時に、新しくライバーさんとして挑戦したい人たちが参加しやすくなるよう、ハードルを下げたいと考えています。今後、さらにライブコマース市場全体を盛り上げていくためには、新規ライバーさんを増やすことが必要不可欠だと感じています。これまでの一年間で、世の中に対してさまざまなものを提供できる段階まで成長しているため、この勢いを加速させていくことを目指します。
それから、個人的には日本中の誰もが知っているようなサービスに育てていく願望もあります。社会的に認められるような大きなものにしていきたいと考えています。
M&Aで最も大切なのは、パートナーとして価値観が一致していること
今後M&Aを考えている方へのエールやアドバイスをお願いします
売却を検討中の方には、焦らずに時間をかけて企業を選ぶことをおすすめします。
買収を考えている企業にとって、M&Aは一般的なものになってきました。その分、売却したい企業側の選択肢も広がっているので、マッチングしやすい状態にあります。
知られていないだけで、実はその事業を求めている企業もあると思いますので、前向きに頑張っていただきたいですね。
私自身は買収を行う立場を経験して、M&A自体が起業のハードルを下げてくれるものだと感じました。既に軌道に乗っている事業に参加し、一緒に伸ばしていける状況はかなり魅力的だと思います。
ただし、闇雲な決断にならないよう、長期的な方向性を定めた上で明確な意思を持って決めることが大前提です。
また、共に事業を伸ばしていくためには、企業同士の考え方や価値観が一致していることも非常に重要です。これはどちらの立場でも大切なことだと思いますが、私は密にコミュニケーションを取ることを特に意識していました。
事業に対する理解を深め合うことができれば、良きパートナーとしてお互いが気持ち良く歩んでいけると思います。そういう意味では、M&Aは結婚と同じだと思います。結婚相手を一か月で決めるのが難しいのと同じように、パートナーとなる企業をすぐには決められないと思います。
M&Aを検討する際は、しっかりと時間を費やして考えることを大事にしていただきたいです。
日本最大級のライブコマースアプリ「Peace you Live」では、ライブを見ながら他では買えない掘り出し物や限定品も購入できます。出品と配信の2ステップで最短10分で始められるのも魅力のひとつ。
「Peace you Live」楽しみ方は下記より▼
https://peaceyoulive.com/how-to/
配信中のライブや今後のライブのスケジュールはこちらより▼
https://web-app.peaceyoulive.com/
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:藤瀬 公耀氏
京都大学 法学部 卒業。大手人材系企業にマーケティング職として入社。国内コンサルティングファームで、事業開発職・エンジニア・プロダクトマネージャーとして、HR領域での新規事業立ち上げ・事業責任者を経て、EC・D2Cの総合支援、M&A・成長支援を行う「株式会社いつも」に入社。ライブコマースアプリ「ピースユーライブ」を運営する合同会社ピースユーのM&Aのプロジェクト責任者を経て、2023年2月に合同会社ピースユーの職務執行者に就任し、いつも.のライブコマース事業の事業責任者を兼任。
企業情報
法人名 |
合同会社ピースユー |
HP |
|
設立 |
2020年6月2日 |
事業内容 |
ライブコマースフリマアプリ「ピースユーライブ」の企画・開発・運用 |
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