株式会社メロン 代表取締役 三橋勇太氏

株式会社メロンは、クライアントの要望に沿った時系列解析AIの受託開発を手がけています。数値の予測や解析を得意とする時系列解析技術を持ち、製造業の異常検知から小売の需要予測まで、勘と経験に頼ってきた現場をデータで支えられる点が強みです。今回は代表取締役の三橋勇太氏に、創業の経緯やリモート中心のチームづくりについて伺いました。

生成AIが苦手な「未来予測」を担う時系列解析AI

事業の内容をお聞かせください

当社は、お客様の「こんなAIを実現したい」という想いに寄り添う受託開発事業を主軸に据えています。お客様が最終的に求める形に合わせてカスタムで開発できる点が、当社の大きな特徴です。

 

また、当社は時系列予測の統計的手法である「Flare」をベースとした技術基盤を有しており、世界中で使っていただけるようOSSやAPIの形で提供する取り組みも進めています。さらに、受託開発とは異なり、すぐにAIを活用したいというお客様に向けて、プロダクトとしてそのまま導入できる需要予測AI「KISS」も展開しています。

 

特に引き合いが多いのは、製造業における異常検知と、小売業における需要予測です。

 

例えば製造業では、機械の刃の摩耗による交換時期を「過去の経験から3か月ごと」「安全を取って2か月ごと」と職人の勘に頼って判断しており、まだ使える部品を破棄してしまう課題がありました。また小売業では、ニーズのない店舗に過剰な在庫が偏り、本当に必要な店舗へ届かずに機会損失が生まれるミスマッチが頻発しています。当社は時系列解析技術を用いることで、こうした現場の勘や経験に頼ってきた領域をデータで支えています。

 

さらに、AIを導入する手前の、データが点在・混在し、規格もバラバラで使えないというデータ基盤の課題から一貫して支援できる点も当社の強みです。データを整えることで、予測だけでなく売れ筋の分析なども可能になり、副次的にも大きな効果が生まれています。

 

大手企業に負けない高い予測精度を実現できているのは、単に研究室の中で開発を完結させないからです。実際の現場でお客様とともにプロジェクトを推進する中で、この手法が良いという生の知見や泥臭いノウハウを得て、それをモデル開発に直接還元してきました。現場で磨き上げた知見をモデルに反映し続けていることこそが、確かな精度につながっています。

 

昨今トレンドとなっている生成AIは、データの整形作業には長けているものの、複雑な数値の解析や未来の予測を苦手としています。生成AIが得意なデータ整理と、当社が得意とする時系列解析による高度な予測技術を組み合わせられる点は、大きな優位性になっています。

 

時系列解析を専門的に扱う企業は国内では非常に珍しく、海外ではGoogleやMetaなどの大手企業が同様のモデルを開発している状況です。日本国内においてこの領域を専門的に追求している姿勢が、当社のユニークな立ち位置を形作っています。

 

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

前職のAIベンチャーでは、コンサルタントとしてお客様の課題をヒアリングし、要望を汲み取ったAIを企画・提案する業務を担当していました。この現場でAI業界における土地勘や具体的なノウハウをしっかりと身につけられたことが、現在の事業における大きなベースになっています。

 

その前職で出会ったのが、一緒に今の事業を立ち上げることになる本田でした。受託開発に取り組む中で、「受託だけにとどまらず、もっと自分たちの手で世界と戦える面白い技術やプロダクトを作り出したい」と熱く語り合い、想いが一致したことが創業への直接的なきっかけになりました。

 

実は、学生時代からもともと起業志向があり、実際に一度起業を経験したこともありました。将来的に起業するためにも、まずは自分の強みとなる得意分野を作ろうと考え、AIの領域へ跳び込んだ経緯があります。起業自体を考える一番のきっかけになったのは、学生時代に映画『ソーシャル・ネットワーク』を見たことです。ちょうどFacebookが普及し始めた時期で、マーク・ザッカーバーグの姿に強く憧れたことが、すべての原点になっています。

 

技術ありきにせず「前提を疑おう」

仕事におけるこだわりを教えてください

私が何より大切にしているのは、「お客様や誰かの役に立てているか」という視点です。AIを扱う仕事だからこそ、技術そのものに目が向きがちですが、本当に大切なのは、お客様の課題解決につながっているかどうかだと考えています。

 

そのため、お客様とはできる限り丁寧に対話することを心掛けています。表面的なご要望をそのまま受け取るのではなく、本当に困っていることは何か、実現したいことはこれで合っているのか、と一つひとつ確認しながら課題を整理していきます。

 

また、社内では前提を疑う姿勢を大切にしています。当たり前だと思っていることを一度立ち止まって見直し、本当にお客様にとって最善の選択なのかを問い続ける。そのスタンスを、会社として大切な価値観の一つとして共有しています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

最大の壁となったのは、創業初期に手掛けた大型案件でした。お客様自身も、真の課題やニーズを掴み切れておらず、AIを導入したいというご要望はあるものの、何が本当にお客様のためになるのかが見えづらい状況だったと感じています。

 

そこで社員の皆様一人ひとりに丁寧にヒアリングを行い、潜在的な課題を構造化して提案に落とし込みました。初めての大型取引だったこともあり苦労はありましたが、そこを乗り越えたからこそ現在の会社の基盤ができたと感じています。

 

また、組織づくりの面でも試行錯誤がありました。創業当初は業務委託のメンバーを中心とした体制だったため、そこから正社員を採用し、組織として形にしていく過程では、どのようなチームをつくっていくべきかと悩むことも少なくありませんでした。

 

だからこそ、自分が社員だったらどのような環境で働きたいかという視点を大切にしながら、メンバーが安心して働ける環境づくりを心掛けてきました。その積み重ねが、現在の組織づくりにもつながっているのではないかと感じています。

 

 

仲間との日々が一番の原動力

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

一番の原動力は、仲間とのコミュニケーションです。今日もあの人と楽しく仕事ができるな、と思える日々の関わりや、チームみんなで壁を乗り越えて会社を存続させてこられた実感が、進み続ける力になっています。

 

また、リモートワーク中心だからこそ、Slack内に社内のつぶやき場を設け、日常の雑談や趣味を発信し合える環境を作っています。お互いの人柄が見えることで相談もしやすくなり、より円滑なチームワークが育っています。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください

私たちが目指しているのは、日本を代表する技術力を持つAI企業になることです。特に、時系列解析や予測AIの領域では、「この分野ならメロンが日本ナンバーワンだ」と評価される存在を目指したいと考えています。

 

その先には、海外市場への展開も見据えています。まずは日本で確かなポジションを築き、その技術力を武器に世界へ挑戦していきたいと考えています。日本発の技術として世界に通用するAIを生み出し、多くの企業の課題解決に貢献できる会社へと成長していきたいです。

 

「転び方」だけは準備して、好きなことに挑戦を

起業しようとしている方へアドバイスをお願いします

私自身、学生時代に起業した時は良い意味で何も考えていませんでした。コンテストなどで厳しいアドバイスを受けることもありますが、周囲の意見を気にしすぎる必要はありません。起業すると大変なことはたくさんありますが、本当にやりたいことなら、何度失敗したとしてもやり直せばいいのです。

 

ただし、転び方の準備だけは大切です。株式の比率や個人保証の借金リスクなどはしっかり勉強したうえで、リスクをコントロールしながら好きなことにどんどん挑戦してほしいと思います。応援しています!

 

 

本日は貴重なお話ありがとうございました。

起業家データ:三橋 勇太 氏

一橋大学大学院商学研究科(現・経営管理研究科)のMBAを修了。学生時代に起業を経験する。修了後はコンサルティング会社に入社し、中期経営計画策定・新規事業戦略・PMOなどのプロジェクトに従事。その後、東大発AIベンチャーに参画し上場を経験。AIコンサルタント業務を経て、2022年に株式会社メロンを創業し、代表取締役に就任。

企業情報

法人名

株式会社メロン

HP

https://melloninc.jp/

設立

2022年6月20日

事業内容

  • カスタムAIの開発
  • AI/DXに関するコンサルティングの提供
  • 需要予測AI「KISS」の提供

 

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