
Asclepath株式会社は、AIを前提に設計したクリニック向けの業務システム「Asclepath AIOS」を開発しています。エンジニアが実際に医療現場へ入り込んで課題を解決するFDE型の伴走支援と組み合わせ、事務作業の削減と経営改善を同時に実現する点が強みです。今回は、代表取締役である濱田氏に、欧州での医師経験から得た原体験や、営業利益に直結する独自のビジネスモデルについて伺いました。
当社では、大きく2つの事業を展開しています。
1つ目は、AIネイティブなクリニックを実現するための「Asclepath AIOS(以下、AIOS)」の開発です。予約受付や電話対応、診察、その後のフォローアップまで、患者様が予約してから帰宅するまでに発生する一連の業務を、AIを前提に設計した仕組みへとつくり変えています。
単に既存の業務へAIを追加するのではなく、最初からAIを組み込んだクリニックの運営体制そのものをつくることを目指しています。例えば、医師の事務作業を減らして患者様と向き合う時間を増やしたり、情報検索を簡略化したりすることで、業務効率だけでなく、医療の質や患者様の体験、クリニック経営そのものを向上させていきたいと考えています。
2つ目は、医療機関に特化したFDE(Forward Deployed Engineer/現場に入り込んで課題解決を行うエンジニア)型の支援です。エンジニアが実際に医療現場へ入り、業務を分析・分解したうえで課題を見つけ、その課題に合わせたシステム開発やAI導入を行っています。
実際の導入先では、音声入力を活用したAIカルテ作成によって作業時間が40〜50%程度削減されたほか、紹介状の作成では約80%、医療従事者のシフト管理では約90%の作業削減につながった事例もあります。
また、業務効率化だけでなく、SEOやMEO、SNS運用などのマーケティング支援も行っています。単にDXを導入して終わるのではなく、売上を伸ばしながら経費を削減し、その先にあるクリニックの営業利益や価値を高めることを重視しています。
この2つの事業は別々に進めているわけではありません。FDEとして各クリニックの現場で得た課題や知見をもとにツールを開発し、それをAIOSへ反映していきます。そうすることで、一つひとつのクリニックで得た学びを、将来的には数千、数万院で使える仕組みへと広げていきたいと考えています。

起業したきっかけは、医療とAIの両方に携わってきた経験を生かして、もう一度医療の領域で人を救える仕組みをつくりたいと考えたことです。
私はもともと医師を目指しており、ヨーロッパで医学を学びました。卒業後はオーストリアで医師として働くことを考えていましたが、新型コロナウイルスの影響で希望していた研修枠がなかなか空かず、半年ほど時間ができました。
そこでプログラミングを学び始めたところ、次第に面白さを感じるようになり、受託開発などにも取り組むようになりました。その後、オランダでITやAIの法人を立ち上げ、AIの研究開発にも携わってきました。
日本に帰国してAIの研究開発を続けていた中で、以前お世話になった大学の教授から連絡をいただきました。これまで何をしてきたのかを話す中で、「せっかく医学を学んだのに、今は医療に携わっていない」という話になり、改めて自分の人生を振り返るきっかけになりました。
私が医師を目指した背景には、人を救いたいという思いがありました。中学3年生の頃に身近な方を亡くし、その方だけでなく周囲の人たちが悲しむ姿を見て、人を救うことは、その人の周りにいる人たちを救うことにもつながるのではないかと感じたことが原点です。高校3年生の時には母がステージ4の食道がんを患い、その思いはさらに強くなりました。
加えて、ヨーロッパで医療現場を見てきた中で、日本より医療DXが進んでいることも実感していました。例えばドイツでは電子処方箋の導入が進み、数年前から受付スタッフがいないクリニックも実際に運営されていました。そうした現場を見て、既存の仕組みにAIを組み合わせれば、受付だけでなくバックオフィス業務までさらに効率化し、より良い医療環境をつくれるのではないかと考えるようになりました。
こうした経験を通じて、自分が培ってきた医療とAIの知識を掛け合わせれば、より多くの人を救える仕組みをつくれるのではないかと考え、現在の事業を立ち上げました。

私が大切にしているのは、技術的に優れたプロダクトをつくること自体ではなく、それによって実際に医療現場の業務や経営が改善されたかどうかです。
世の中には便利なDXツールが数多くありますが、どれだけ優れたものであっても、学習コストが高かったり、既存のオペレーションに合わなかったりすれば、現場では十分に使われません。プロダクトを導入すること自体ではなく、実際に使われ、現場が変わるところまでつなげることを重視しています。
そのため、私たち自身が医療現場に入り、そこで見つけた課題や改善点を一つひとつ解決することを大切にしています。
最大の壁は、良いツールをつくれば現場を変えられるという考えが、実際の医療現場では通用しなかったことです。
創業当初は、医療DXや医療AIのプロダクトをつくろうと考えていました。しかし、実際にクリニックの現場に入ってみると、すでに導入されているツールであっても十分に使われていないケースがありました。どれだけ便利な機能があっても、現場の業務やオペレーションに合っていなければ定着しないことを実感しました。
そこで、プロダクトを提供するだけではなく、自分たちがFDEとして医療現場に入り、そのクリニックごとの課題を見つけ、実際に使える仕組みをつくる形へと方向転換しました。
さらに、業務を効率化するだけでは、必ずしもクリニックの売上や営業利益の向上につながらないことも見えてきました。そこで、業務効率化に加えて、売上を伸ばすことや人件費をはじめとしたコストを抑えることまで含め、クリニックの経営改善を支援する形へと事業を広げてきました。
現在は、FDEとして一つひとつのクリニックでつくったツールや仕組みを、どのように汎用的なAIOSへ落とし込み、将来的に数千、数万のクリニックへ展開していくかという点に難しさを感じています。現場ごとに異なる課題を解決しながら、そこで得た知見を多くの医療機関で使える仕組みにしていくことが、今取り組んでいる大きな課題です。
一番のモチベーションは、人を救いたいという思いです。そのために、世界中の人を救えるような医療インフラをつくっていきたいと考えています。
また、私自身、新しいことに挑戦するのが好きということも大きな原動力になっています。医療業界には、長い間改善されないまま残っている課題がまだ多くあります。例えば、業務効率化が十分に進んでいなかったり、DX化や電子化が進んでいなかったりする部分です。
そうした課題に新しい方法で挑戦し、医療現場だけでなく、医療経営のあり方や仕組みそのものを根本から変えていきたいと思っています。
一緒に事業を進めているCTOとは、目指している未来や夢を共有することも大切にしています。何者でもなかった自分たちが、医療業界を変えるようなことを成し遂げていく。そのビジョンを共有しながら、一緒に挑戦を続けていくことも、事業を前に進める力になっています。

まずは、FDEを通じて医療現場で得た知見をAIOSに反映しながら、事業をさらに拡大していきたいと考えています。現在は外部の医療コンサルタントとも連携していますが、将来的にはコンサルティング機能も自社で持ち、より幅広くクリニックの経営を支援できる体制をつくっていきたいです。
AIを前提としたクリニック全体のOSという領域は、今後AIの進化とともに参入する企業も増えてくると思っています。その中で、早い段階から事業を拡大し、この領域で大きなシェアを獲得していきたいと考えています。
さらに中長期的には、海外でのPEロールアップにも取り組んでいきたいと考えています。クリニックにAIOSを導入し、経営を改善するだけでなく、より深く経営そのものに関わることで、医療機関の価値を高めていくような展開も視野に入れています。
最終的には日本国内にとどまらず世界へ事業を広げ、医療経営のあり方そのものを変えていくことが目標です。
私自身もまだ起業したばかりなので、アドバイスできる立場かは分かりませんが、伝えたいのは、考えるだけで終わらず、できるだけ早く行動に移してほしいということです。
事業化を決めてからすぐにプロダクトをつくり、医療コンサルタントの方への営業も含めて、17日ほどでクリニックへの導入とPoCを開始しました。もちろん考えることも大切ですが、実際に動いてみることも同じくらい重要だと思っています。
学生であれば在学中に挑戦してみてもいいですし、社会人であれば、必ずしもいきなり会社を辞めて起業する必要はありません。まずは、自分が考えているプロダクトの顧客になりそうな方に、1人でも10人でも実際に話を聞いてみてください。そこでニーズを確かめながら、今できることを一つずつ着実に進めていくことをおすすめします。
欧州医師。国立コメニウス大学医学部在学中から卒業後にかけて、欧州日本人医師会青年部会副部長を務める。
その後、オーストリアやオランダを拠点に医療・金融分野に取り組む。2026年7月、Asclepath株式会社を創業し、代表取締役CEOに就任。
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法人名 |
Asclepath株式会社 |
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HP |
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設立 |
2026年7月 |
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事業内容 |
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