X Mile株式会社 代表取締役 CEO 野呂 寛之氏

X Mile株式会社は、物流・建設・製造など現場で働くノンデスクワーカーに特化した求人サイト「クロスワーク」を運営しています。企業側の初期費用・月額費用は無料、求人数を国内トップクラスまで広げ、人手不足に悩む産業へ最適な仕事を届けられる点が強みです。今回は、代表取締役である野呂寛之氏に、組織拡大で直面した壁や、日本発のメガベンチャーを目指すスタートアップとしての使命について伺いました。

ノンデスク産業のインフラづくり

事業の内容をお聞かせください

当社は、ノンデスクワーカーに特化した求人サイト「クロスワーク」をはじめ、現場産業向けのソフトウェア事業、経営支援事業を展開しています。

 

「クロスワーク」は、現在会員数が120万人、契約事業所数も3万社を超えています。トラックドライバーやタクシー・バスのドライバー、施工管理、整備士など、さまざまな現場産業の方々にご利用いただき、人手不足に悩む産業の課題解決に取り組んでいます。

 

求職者は無料で利用でき、主な顧客は物流会社や建設会社、メーカーなどです。登録者は業界経験者や有資格者が中心で、同じ業界内で転職される方が多い一方、飲食業界からドライバーへ、トラックドライバーからタクシードライバーへ転向するケースもあります。

 

「クロスワーク」の強みは、業界に特化していることと、求人の豊富さです。例えばトラックドライバーでも、車種や運ぶものによって仕事内容は大きく異なります。当社では、企業側が初期費用・月額費用ともに無料で求人を掲載できるため、求人の在庫数は国内トップクラスです。求職者は、多くの求人の中から自分に合った仕事を探すことができます。

 

また、現場産業向けのソフトウェア事業では、物流や荷主、建設、飲食、ホテルなどに向けて、業務効率化を支援するクラウドサービスを提供しています。現場産業では、今も紙やFAX、電話を使った業務が多く残っていますが、私たちは「DXしましょう」といった言葉から入るのではなく、お客様が実際に何に困っているのかを起点に提案しています。

 

「あったら便利」というものではなく、「これがないと業務が回らない」「法令上対応しなければならない」といった業務に特化していることも特徴です。最初に立ち上げた運送業向けクラウドサービス「ロジポケ」も、実際に運送会社でドライバーや運行管理を経験したメンバーが開発に携わっており、現場の目線を生かしたプロダクトづくりを行っています。

 

さらに、経営支援事業では、M&A仲介などを通じて、後継者不在に悩む企業と、さらに成長したいと考える経営者をつないでいます。

 

運送業界では、事業者数が一時期に増えたことで価格競争が激しくなり、運賃が上がりにくくなった状況があります。その結果、ドライバーの賃金を大胆に上げることができず3Kと言われる物流業界に若い担い手が集まりにくくなり、物流需要が増える一方で供給が足りないという課題につながっています。こうした状況を改善するためにも、私たちが業界の再編を支援し利益率の高い企業を増やしていく必要があると考えています。

 

また、当社は「クロスワーク」での採用支援や「ロジポケ」などのシステム提供を通じて、すでに多くの企業様と長期的な関係を築いています。そうした信頼関係があるからこそ、事業承継やM&Aについてもご相談いただきやすく、長く関係を築いている企業に対して、新たな選択肢としてご提案できると考えています。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

学生時代から、社会課題をビジネスで解決することに関心を持っていました。もともとは環境問題に興味があり、その後も建設業界のDXや、アジアでのEV事業など、社会課題の解決につながる仕事に携わってきました。

 

起業を考える大きなきっかけになったのが、現場産業における人手不足です。2018〜2019年当時、日本全体で人手不足が深刻化しており、特にブルーカラーやエッセンシャルワーカーの不足を、実際に現場へ営業する中で強く感じていました。

 

前職ではソフトウェア会社を立ち上げ、取締役を務めていましたが、お客様から「ソフトウェアもいいけれど、人手不足に困っている」と言われることが多くありました。そこで、まずは人材の課題を解決することの方が、お客様にとって必要なのではないかと考えるようになりました。

 

人材を起点にしながら、ソフトウェアなどを通じて企業のさまざまな課題を解決できる会社をつくりたい。日本が抱える大きな社会課題の一つである、エッセンシャルワーカーの人手不足を解決したいという思いから、起業を決意しました。

現場主義とスピードで価値を届ける

仕事におけるこだわりを教えてください

仕事をする上で大切にしていることは、主に3つあります。

 

1つ目は「現場主義」です。私自身もお客様を訪問したり、各事業の担当者から細かくレポートで報告を受けたりしながら、自分で提案を行うこともあります。また、採用候補者にスカウトを送ることもあり、経営者になってからも現場に関わり続けることを意識しています。

 

2つ目は、意義やトレンド。世の中のためになる事業かどうか、そして業界全体の動きを見据えた事業であるかという視点です。そうした観点を持ちながら、取り組む事業を選んでいます。

 

3つ目は意思決定と実行のスピードです。私自身がスピーディーに動くことで、経営チームや現場チームにもスピード感が生まれ、お客様により早く価値を届けられると考えています。大手企業には資金力も人材もありますが、ベンチャーが勝てるのはスピードだと思っています。そのため、誰よりも早く動き、やり切ることを重視しています。

起業から今までの最大の壁を教えてください

最大の壁は、社員数が30名ほどになった頃に直面した、いわゆる「30人の壁」です。当時は、私と創業COO、その下に現場メンバーがいるだけで、役員と現場の間をつなぐ中間管理職がいませんでした。

 

経営側は会社をもっと伸ばしたいと考える一方で、現場メンバーとは会社の成長に向けた経営視座や能力に差があり、組織として目線が合わなくなっていました。その影響もあり、当時は離職率が上がり、毎月3名ほどが退職し、同じくらいの人数が入社する状態が半年ほど続いていました。社員数が増えず、非常に停滞感のある時期でした。

 

そこで、経営と現場をつなぐ中間管理職を置くことにしました。経営視座の高い若手に課長を任せたり、上場企業で部長を経験した人材を外部から採用したりしながら、マネジメント体制を整えていきました。

 

採用については、リファラルやダイレクトリクルーティングを活用し、経営陣自らが採用活動にコミットして進めました。社員数が100〜150名ほどになるまでは、私と創業COOの渡邉の2人でほぼ全体を見ていましたが、その後300名、600名と組織が拡大する中で、役員・本部長、部長といったレイヤーを積極的に採用していきました。

 

現在は執行役員が10名以上おり、それぞれに大きな裁量を渡し、事業責任を持ってもらっています。

 

また、この拡大前の時期にミッション・ビジョン・バリューも整えました。創業当初は日々のキャッシュを生み出すことに精一杯でしたが、組織が大きくなる中で、「何のためにこの会社をやるのか」「どこを目指すのか」を明確にしていく必要があると感じたからです。

 

さらに、人事部を設けて採用基準を整え、会社にフィットする人材を採用することや、教育・オンボーディングの仕組みづくりにも取り組みました。こうした施策を重ねる中で、離職率は徐々に改善していきました。

 

 

日本発のメガベンチャーとエコシステムへの恩返し

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

一番の原動力は、スタートアップそのものの面白さです。日本経済が長く停滞する中で、その状況を変えていく手段の一つがスタートアップだと考えています。

 

私がスタートアップに関わり始めた2015年頃と比べると、今ではスタートアップという言葉・存在も広く認知されるようになりました。ただ、日本経済に大きなインパクトを与えるためには、より大きく成長する企業を生み出していく必要があります。リクルートやソフトバンクグループのように、新しい産業や雇用を生み出す企業を日本から増やしていきたいという思いがあります。

 

同時に、会社そのものを成長させるだけでなく、社内から次の起業家や事業家を輩出していくことも大切だと考えています。私自身もスタートアップの世界で多くの経験や機会を得てきたので、今度は次の世代にその機会をつないでいきたいです。

 

そのため、当社では若いうちから事業やマネジメントを経験できる環境をつくっています。実際に、入社2〜3年目でマネジメントを担い、25〜26歳で10〜30名ほどの組織を率いているメンバーもいます。若いうちから大きな責任を持って挑戦できる環境を増やし、将来の事業家や経営者を育てていくことも、自分が進み続けるモチベーションの一つになっています。

今後やりたいことや展望をお聞かせください

社会課題を、民間の力で持続可能な事業として解決していくことに、引き続き挑戦していきたいと考えています。お客様、現場で働く方々、そして私たちの会社にとっても成り立つ「三方よし」の仕組みをつくり、その結果として社会課題を解決していくことが理想です。

 

具体的には、ノンデスク産業の人手不足や長時間労働といった課題を解決しながら、物流・建設・製造など、私たちの生活を支えるインフラが止まらない状態をつくっていきたいです。

 

今の便利な生活は当たり前に成り立っているものではなく、その裏側では多くのエッセンシャルワーカーが働いています。一方で、利便性を追求しすぎることで、現場に過度な負担がかかっている部分もあると感じています。例えば物流でも、本当に毎日配送する必要があるのかなど、サービスのあり方そのものを考え直す余地があると思います。

 

世の中で使える人や時間などのリソースには限りがあります。その限られたリソースをどうすれば持続可能な形で回していけるのかを考えながら、現場産業の課題解決に取り組んでいきたいです。

ゼロイチを生み出せる人こそ、覚悟を持って挑戦を

起業しようとしている方へアドバイスをお願いします

起業家は、新しい産業や雇用を生み出し、経済を成長させていくうえで非常に重要な存在だと思っています。今あるさまざまな産業も、もともとは誰かがゼロから事業をつくり、それが成長することで成り立ってきました。

 

そうしたゼロから新しいものを生み出せる人材は、日本ではまだ不足していると感じています。だからこそ、才能があり、世の中に貢献したいという思いを持つ方には、起業という選択肢をぜひ考えてほしいです。

 

ただ、誰もが起業すべきだとは思っていません。起業は本当に大変ですし、実際に事業が思うように伸びず、苦労するケースもあります。本気でやり切る覚悟がある方であれば、その一歩を踏み出す価値はあると思います。

 

また、若い方であれば、最初から大きな覚悟を決めるのではなく、好奇心をきっかけに小さく事業を始めてみるのも一つの方法だと思います。

本日は貴重なお話ありがとうございました。

起業家データ:野呂 寛之 氏

北海道出身。国際基督教大学(ICU)卒業。在学中、テラモーターズ株式会社のベトナム支社に駐在し、製造拠点・物流網の構築・販路拡大に従事。その後カンボジア拠点長としてEV三輪車の事業立上げを経験。帰国後、FinTechスタートアップ・株式会社ペイミーに2番目の社員として入社、取締役COOに就任。2019年(令和元年)、X Mile株式会社を創業し代表取締役CEOに就任。

企業情報

法人名

X Mile株式会社(クロスマイル)

HP

https://x-work.jp/about-us

設立

2019年2月 

事業内容

  • 人材プラットフォーム事業:ノンデスク産業特化の採用支援サービス。求人メディアおよび転職エージェント「クロスワーク」を展開。
  • ITプラットフォーム(DX)事業:ノンデスク事業者向け業界特化型ソフトウェア「ロジポケ」(運送業の案件・請求書・監査・安全教育を一元管理)の開発・提供。

 

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