megli株式会社 代表取締役 秋山広行氏

megli株式会社は、AIを使ってキャラクター・音楽・映像・AI Tuberといったエンターテインメントコンテンツを制作している会社です。AIシンガー「coyane」をはじめとする自社IPの開発から企業向けの制作受託まで、AIとエンタメの掛け算に特化し、短時間で形にするスピードとコストの強みを持っています。今回は、代表取締役である秋山広行氏に、AI×エンタメへの挑戦を決めた起業の経緯や、AIだからこそ生み出せる新しいエンタメ体験の構想について伺いました。

AI×エンタメを全部作り切る三位一体の事業

事業の内容をお聞かせください

当社は「AI×エンタメ」をテーマに、大きく3つの事業を展開しています。

 

1つ目はAIネイティブなIPの事業で、AIシンガーの「coyane」を開発・プロデュースし、彼女にあらゆるエンタメを360度実装していくことを進めています。

 

2つ目が受託事業です。IPを360度で展開していくには、キャラクターのデザインやSNS運用、ミュージックビデオ、アニメーション、音楽、ライブなど、さまざまな制作が必要になります。こうした制作にAIを活用することで、コストや制作期間を抑えながら、表現の幅やクオリティを高められると考えています。制作コストの高騰や人手不足によって制作現場の負担が大きくなる中、AIを活用した制作ノウハウを自社のIPだけに閉じるのではなく、企業様にも提供することで、コンテンツ制作の効率化や新たな表現の実現を支援していきたいと考えています。

 

3つ目は、AIキャラクターに特化した独自のプラットフォームサービスです。こちらはまだ開発中ですが、労働集約型の受託事業、非労働集約型のプラットフォーム事業、自社IPの3つを組み合わせ、事業をスケールさせていきたいと考えています。

 

私たちの特徴は、AI活用に伴うリスクを理解したうえで、先行して取り組む姿勢です。私はVTuberの黎明期から約10年この業界に携わってきましたが、AIの活用には、既存のクリエイター市場との関係やファンの受け止め、著作権など、さまざまな課題があります。

 

そのため、多くの企業が慎重になるのも当然です。一方で、AIによる変化は待ってくれません。当社はリスクを踏まえたうえで挑戦し、誰よりも早く技術やノウハウを蓄積していきます。

 

AIは誰でも使えるようになっていく一方、現時点では、思い通りのアウトプットを出すには知識や経験が必要です。だからこそ、今の段階から試行錯誤を重ね、制作量を増やしていくことが将来的な競争力になると考えています。

 

イメージとしては、App Storeが登場した当初に多くの個人開発者が生まれ、その後、組織としてより大きなサービスを作れる企業が市場を広げていった流れに近いと思っています。当社も個人ではなくチームだからこそできる、より大きなものづくりを目指します。

 

現在は5人ほどのチームで、SE、IP運用、YouTubeなど、それぞれ異なる経験を持つメンバーが集まっています。まだスタート段階だからこそ、経験のない分野も互いに学びながら進めています。また、長年この分野に取り組んできた方にもアドバイザーとして参画いただいており、知見を取り入れながら事業を進めています。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

この事業を始めた根本には、「新しい技術とエンタメを掛け合わせ、新しい文化を作りたい」という、私自身がずっと持ち続けてきたテーマがあります。

 

社会人になりたての頃は、今ほどインターネットやYouTubeが普及しておらず、アニメを見ているだけでいじめられるような時代でした。だからこそ、こんなに面白いコンテンツを知る機会がないのはもったいないと感じ、誰もが好きなコンテンツに触れられる環境を作りたいと考えていました。

 

その後、インターネットが普及し、世の中が自分の思い描いていた方向へ変わっていくのを見て、次は「コンテンツそのものを新しくしたい」と考えるようになりました。

 

そこで、コスプレイヤーやeスポーツなど、当時まだ新しかった領域に挑戦しました。そうした中でVTuberが登場し、「これこそ新しい文化になる」と大きな衝撃を受けました。その後、キズナアイを生み出したActiv8さんとのご縁をきっかけに、「バーチャルシンガー」というコンセプトでこの領域に挑戦する機会を得ました。

 

以来、約10年間にわたり、アーティストやクリエイターとともに新たな表現を形にしながら、VTuberが日本を代表するサブカルチャーへと育っていく歩みを重ねてきました

 

そして今、次の大きな変化を生み出す技術として注目しているのがAIです。AIがエンタメにも広がる一方、既存のクリエイターやファンとの関係を考えると、既存の組織では思い切った挑戦が難しい場面もあります。だからこそ、AIに特化した組織をゼロから作り、新しいエンタメの形を追求したいと考えるようになりました。

 

もともと起業そのものに強いこだわりがあったわけではなかったのですが、いろいろなご縁や条件が重なり、最終的に人生は一度きりだから思い切ってやってみようということで起業を決意しました。

 

忖度なく、後悔のない即決即断を貫く

仕事におけるこだわりを教えてください

こだわりを一つに絞るのは難しいのですが、常に全力を尽くすことは大切にしています。

 

社会人としてさまざまな組織を経験していると、「自分がトップなら、この判断はしない」「この進め方は選ばない」と感じる場面があります。もちろん、自分が同じ立場になったからといって完璧にできるわけではありません。それでも、周囲への忖度にとらわれるのではなく、目的を達成するために何が最善なのかを考え、後悔のない選択をしていきたいと考えています。

 

これは、これまでさまざまな企業で働く中で感じてきたことの積み重ねでもあります。「こうしたほうがいい」「これをやってみたい」という思いが生まれたときに、それを諦めるのではなく、できる限り挑戦していく姿勢を大切にしています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

起業するまでの最大の壁は、自分の気持ちと覚悟を決められるかどうかでした。何のプランもないまま、闇雲に起業するのは違うと思っていたので、「本当にこの道でいいのか」と毎日のように考えを巡らせていました。

 

そんな中である時、SLAM DUNKの山王戦前日の安西監督のように、道は細くても「このルートで行けば勝てる」と思える道筋が、自分の中でつながった瞬間がありました。それまでは一人で部屋にこもり、AIだけを相手に考え続けるような日々でした。正確には、事業を「始める」と決断するためにもがいていた時期で、そこが一番苦しかったと思います。何もしなければ何も見つけられないという危機感もありました。

 

勝ち筋が見えてからは「やる」と決め、仲間や協力者の力を借りながら、先日シードラウンドの資金調達を終えることができました。今はまだ事業が始まったばかりなので、さまざまな可能性をR&Dしながら、会社として事業の実態を作っていく0→1のフェーズにいます。これからは、ここを乗り越えて事業を形にしていくことが、目の前の壁だと感じています。

 

みんなが安心してご飯を食べられる、新しいエンタメの文化を

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

進み続ける原動力は、一緒に挑戦してくれる仲間が安心してご飯を食べていける仕組みや組織、エンタメの文化を作りたいとの思いです。もちろんビジョンはありますが、業界全体を変えることより、まず身近な仲間が安心して暮らせる状態を作りたい気持ちのほうが先にあります。

 

かつての経験から、文化と呼べるほどスケールしたものは、誰か1人が作るものではないということを実感しています。いろいろな熱量の人が集まり、気づけば大きく広がっている。自分がどの部分を担っているのかわからなくなるほどのカオスさも含めて楽しく、誇りになります。

 

この分野も、世界中で多くの人が立ち上がっているため、みんなで切磋琢磨する中から何かが生まれてくるのだと思います。競合を敵視するより、「仲間だよね」との感覚を持っていたいです。 

 

今はまだ陣取り合戦をするフェーズではなく、需要が増えていくスピードのほうが速いと考えています。一つの会社がどんなに良い作品を作っても、この世のすべてのアニメーションをその会社だけで作ることはできません。人の才能や興味も細分化していくため、これからは共存が当たり前になっていくと思っています。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください

IPについては、少し時間はかかると思いますが、私がバーチャルシンガーに取り組んできた経験も生かし、ライブや漫画、アニメ、ゲームなど、さまざまな形でファンにエンタメ体験を届けられるIPへと育てていきたいと考えています。

 

受託事業では、AIに特化した制作スタジオを目指します。さまざまなコンテンツを大量に作れる体制を整え、そこから新しいクリエイターが仕事を生み出せる環境も作りたいと考えています。AIによって仕事がなくなるのではないかと不安に感じる人もいますが、AIから逃げるのではなく正面から向き合うことで、新しい職業や仕事の種は生み出せるはずです。それを自分たちの組織で実現したいと思っています。 

 

もう一つ目指しているのが、「当社のAIだからこそ生まれた」と言えるサービスを作ることです。AIが人間の代わりをするのではなく、AIだからこそ実現できる新しくて面白いエンタメ体験を生み出したいと考えています。 

 

その一例が、AIシンガーの「coyane」です。彼女はユーザーとの会話を忘れず、一人ひとりとの思い出や記憶を積み重ねていきます。人間が向き合える人数には限界がありますが、AIなら一人ひとりと継続的にコミュニケーションを取ることができます。さらに長く接するほど二人だけの思い出が増え、それが彼女の人格にも反映されていきます。人間の配信が「1対多」なのに対し、常に「1対1」で向き合える点も、AIならではの面白さだと思っています。

 

キャラクターの人格も、最初から設定を固めるのではなく、コミュニケーションを通じて変化していくことを前提にしています。人間も経験によって変わっていくように、話せば話すほどペルソナがアップデートされていきます。これから新しい可能性が広がっていく分野だからこそ、実際にユーザーと向き合いながら、どんな体験が生まれるのかを一緒に確かめていきたいと考えています。

 

やりたいと思ったら、やっちゃったもん勝ち

起業しようとしている方へアドバイスをお願いします

ここまで挑戦してきたからこそ言えることだと思いますが、やりたいと思ったことは、やったもの勝ちだと思っています。人生は一度きりですから。

 

少し極端に聞こえるかもしれませんが、どれだけ先の未来を考えても、今の自分たちが生きている時間はほんの一瞬です。そう考えると、「やりたいことがあるなら、やってみればいい」と思えるようになります。

 

私はよく宇宙の動画を見るのですが、宇宙のスケールに思いを巡らせていると、「日々の生活の中で、何をこんなに小さなことで悩んでいるんだろう」と感じることがあります。だからこそ、周りの目や失敗を気にしすぎず、自分が後悔しないと思える選択をして生きてほしいと思います。

本日は貴重なお話ありがとうございました。

起業家データ:秋山 広行 氏

VTuber業界の黎明期から約10年にわたりエンタメ領域に携わる。2018年頃に自称・世界初のバーチャルシンガーを手がけ、その後バーチャルシンガーに特化した事務所の役員として、ゲーム・漫画・ライブ・アニメなど360度の展開を経験。キズナアイの親会社である株式会社Activ8とのご縁もあり業界に深く関わった。AIとエンタメの掛け算に挑戦するため、megli株式会社を設立し代表取締役CEOに就任。先日シードラウンドの資金調達を完了した。

企業情報

法人名

megli株式会社

HP

https://www.megli.jp/

設立

2026年4月

事業内容

  • 自社 IP の開発
  • 各種コンテンツ制作(AIキャラクター・AI音楽・AI映像・AI Tuber・AIコンサルティング等)

 

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