個人事業主が資金調達を検討する際「個人事業主が資金を調達できるのか」「具体的な手段や注意点を知りたい」となど、疑問や不安を持っている方も多いのではないでしょうか。

 

個人事業主は法人のように会社組織を持たないとはいえ、事業を始めるためにはまとまった資金が必要となるケースも多いです。そのために適した資金調達方法を選ぶことは、経営をしていくうえで重要なポイントとなります。

 

本記事では、個人事業主が資金を調達する方法について分かりやすく紹介します。また、資金調達をする上での注意点も解説していますので、参考にしてみてください。

個人事業主の3つの資金調達方法

 

個人事業主が新しい事業を開始する際に、まとまった資金が必要になることや急な資金繰りが必要となるケースも多いです。資金が必要になった時にスムーズに資金調達できるように、個人事業主の方も資金を集める方法を知っておくことが大切です。

 

個人事業主が資金を調達する方法は、主に以下の3つが挙げられます。

 

  • 資金を借りる
  • 資金をもらう
  • 資金を現金に変える

 

それぞれ詳しく解説していきましょう。

 

資金を借りる

一つ目は、必要な資金を借りることです。個人事業主が受けられる融資は、主に以下4つの方法が挙げられます。

 

  • 公的機関からの融資
  • 銀行からの融資
  • 信用保証協会の保証付融資
  • ビジネスローンを借りる

 

それぞれ、概要や特徴を詳しく解説していきますので、どの方法が自社に合っているのか比較してみてください。

 

公的機関からの融資

 

日本政策金融公庫などの公的機関から融資を受ける方法です。公的融資制度は、公的機関が個人や法人に対して融資を行う制度で、金利が低めに設定されていることが大きな特徴です。

日本政策金融公庫では、経済の活性化を理由に積極的にスタートアップ企業を支援しているため、審査が優しめに設定されています。また、担保や保証人が不要なことから創業前でも申請可能なため、事業を開始する個人事業主の方にとって大きな味方となるでしょう。

 

メリットが多い反面、事業計画書や財務諸表などを作成し資金化するまで時間がかかってしまうなどのデメリットもあります。例えば、日本政策金融公庫では審査の際に事業の将来性や収益性が重要視されるため、事業計画書を入念に作り込む必要があります。

 

公的機関からの融資を受ける際には、事業計画をしっかりと立て計画的な申し込みが必要となります。

 

銀行からの融資

 

銀行融資は、法人でないと利用できないイメージがありますが個人事業主でも利用可能です。銀行融資の特徴は、他の融資と比べて金利が低いこと、審査が比較的厳しいことです。

 

個人事業主が銀行融資を受けるには、開業届や事業計画書などの必要書類をもとに面談をし融資の可否が判断されます。

 

審査が厳しい銀行融資ですが、融資が承認されれば企業としての信用度が上がることや多額の資金を融資してもらうことができます。融資を受ける、一つの資金調達方法として検討しても良いでしょう。

 

申し込み後、さまざまな審査資料を求められることが多いので、事前に準備をしておくなど確認しておくことが大切です。

 

信用保証協会の保証付融資

 

信用保証協会とは、融資の審査が通りづらい中小企業やベンチャー企業、個人事業主などを保証し、融資のサポートを行う公的機関です。また、信用保証協会が保証している融資のことを「保証付融資」といいます。

 

保証付融資では、個人事業主が信用保証協会に「信用保証料」を支払うことで、もし返済が滞った時に借主に代わって金融機関へ立て替えを行ってくれます。融資の審査に通りづらい個人事業主にとっては、有力な借入先となるでしょう。

 

ただし、信用保証協会からの保証付融資は金利支払いの他に信用保証料がかかるというデメリットもあるので注意が必要です。信用保証料は、借入額の0.45〜1.9%となります。また、融資の申し込みをした後、信用保証協会と金融機関それぞれで審査をするため融資を受け取るまでに時間がかかります。

 

信用保証協会を活用する際には、信用保証料がかかることや、審査から融資を受け取るまでに時間がかかることを認識しておきましょう。

 

ビジネスローンを借りる

 

ビジネスローンとは、事業資金に限定された法人や個人事業主向けの無担保ローンのことを指します。事業資金に限定されているため、使用用途は新規事業の立ち上げ資金や設備投資資金などの、事業に関連する資金にのみ利用可能です。

 

ビジネスローンの大きな特徴としては、比較的審査が通りやすいことや、公的融資や銀行融資に比べて資金化するまでがスピーディなところです。無担保・無保証人で利用できるため、資金調達を急ぐ個人事業者の方にはおすすめな方法となります。

 

ただし、ビジネスローンは上限金利が18%と高く、借入残高があると他行からの融資審査が通過しにくくなるというデメリットもあります。高金利となるビジネスローンは、資金調達を急ぐ場合に利用すると良いでしょう。

 

資金をもらう

個人事業主が資金をもらう方法は、以下の2つが挙げられます。

  • 補助金・助成金
  • クラウドファンディング

 

それぞれ、詳しく解説していきましょう。

 

補助金・助成金

各地方自治体では、個人事業主などの中小事業者への資金調達をサポートする制度があります。地方自治体からの補助金・助成金は返済の義務がないことや、事業を開始する前でも申請可能な補助金・助成金もあります。

個人事業主が受け取れる補助金・助成金の一例は以下の通りです。

 

【補助金】

  • 事業再構築補助金
  • 小規模事業者持続化補助金
  • ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
  • 創業補助金
  • IT導入補助金

 

【助成金】

  • 人材開発支援助成金
  • トライアル雇用助成金
  • 中小企業退職金共済制度に係る新規加入掛金助成及び掛金月額変更掛金助成
  • 特定求職者雇用開発助成金
  • 地域雇用開発助成金
  • 中途採用等支援助成金
  • キャリアアップ助成金

 

例えば、各地方自治体で詳細は異なりますが「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」だと、革新的なサービスや技術の開発に取り組む企業を対象とした支援です。補助上限も1,000万円と比較的多いため、中小企業や個人事業主の方が利用しやすい補助金となっています。

 

上記で紹介した補助金や助成金は、2022年8月時点の情報です。補助金や助成金は申請期間が設けられているため、補助金や助成金を受ける場合は、各地方自治体に確認してください。また、受給するためには審査や募集要件、抽選などがあるため必ずしも受給できるとは限らないことを認識しておきましょう。

 

クラウドファンディング

 

クラウドファンディングとは、インターネットやSNSを通して事業に共感した不特定多数の人から資金を調達する方法です。

クラウドファンディングには、主に「寄付型」と「購入型」があります。

寄付型は、その名の通り寄付という形式になるため、支援者に見返りがなく社会貢献性が強いのが特徴です。一方、購入型は支援者に対して商品やサービスを見返りとして提供するのが特徴となります。

 

また、クラウドファンディングは、不特定多数の人から自社の事業に共感してもらい資金を集めているため、事業の需要レベルを知ることができます。クラウドファンディングは専用サイトで手軽に始められるため、個人事業主の方は資金調達方法の一つとして検討してみても良いでしょう。

 

資金を現金に変える

早く現金が欲しい場合におすすめなのが、資金を現金に変えるファクタリングです。

 

ファクタリングとは債権買取という意味で、売掛債権(売掛金・受取手形)を利用して現金化するサービスです。売掛債権は現金化するまでに時間がかかってしまいますが、ファクタリングを活用することで売掛金の支払期日前に資金を受け取ることができます。

 

ただし、ファクタリングを活用するには手数料がかかるので注意が必要です。手数料の相場は、2社間と3社間で異なります。

 

2社間ファクタリングは、個人事業者とファクタリング会社の間で契約をする取引のことを指し、手数料は売掛金の10〜30%ほどです。3社間ファクタリングは、個人事業者とファクタリング会社、売掛先で契約が行われ、手数料は売掛金の1〜9%に設定されています。

 

ファクタリング活用は、突発的な資金不足や早く現金が欲しい時に迅速に現金化できますが、手数料についてしっかりと理解して取引をするようにしましょう。

 

個人事業主の資金調達における注意点

 

個人事業主が、資金調達を行う際に注意するポイントを紹介します。この章で、注意点を押さえておけば、資金調達をする際の思わぬトラブルを回避することにつながります。

 

個人事業主が資金調達を受ける際の注意点は、以下の3つです。

  • 融資を受けるには条件がある
  • 制度の対象者に「個人事業主」があることを確認する
  • 資金調達方法には用途が限定されているものがある

 

資金調達を検討する個人事業主の方はぜひ認識しておきましょう。

 

融資を受けるには条件がある

 

融資を受けるためには、開業届を提出していることや確定申告をしていることが必要です。開業届を出さずに事業を開始していても特に罰則はありませんが、融資を受ける際には、借入先が事業の存在(実体)を確認する必要があります。

 

開業届とは、個人事業をスタートしたことを税務署に宣言する届書のことを指し、正式名称を「個人事業の開業・廃業等届書」といいます。原則として、新事業の開始から1ヶ月以内に開業届を提出する必要がありますので、融資を検討している方は届出しておきましょう。

 

確定申告は、個人事業主が融資を受ける際の審査で最も重要視される書類となります。きちんと納税をしていることや、利益を出し黒字であるのかを審査され融資の可否を判断されます。融資を受ける条件として、事業の実績を確認する必要がありますので確定申告を忘れないようにしましょう。

 

制度の対象者に「個人事業主」があることを確認する

 

融資制度を受ける際に、対象者が個人事業主であるのか確認しましょう。例えば、返済の義務がない便利な補助金や助成金ですが、法人のみを対象として個人では使えないという場合があります。

融資を受ける際に、対象者が「個人事業主」であることをしっかりと確認しておきましょう。

 

資金調達方法には用途が限定されているものがある

 

資金調達方法によっては、資金の使用用途が限定されているものがあります。使用の目的以外のことで資金を使ってしまうと使途違反とみなされ、次回融資を受ける際の審査が通りづらくなってしまいます。

また、個人事業主は個人で資金を調達するため、私用で使う資金と混合しやすい傾向があり注意が必要です。個人と事業で資金を混合していると、金融機関からの信用を得ることも難しくなってしまいます。ビジネスカードを作る、銀行口座を分けるなど、業務用資金と生活用資金を正しく管理しましょう。

 

注意点を押さえた上で資金調達をしよう

 

個人事業主が資金を調達する方法には、各機関の融資制度を活用する方法や補助金・助成金などで資金をもらう方法、ファクタリングで資金を現金に変える方法があります。それぞれの方法で、特徴や内容が異なるため注意点をしっかり押さえた上で自社に最適な方法で資金を調達することが重要です。

また、資金調達をする際には、開業届や確定申告が必要なことも忘れないようにしましょう。使用目的をしっかりと決め、私用と混合しないように上手に使い分けるなど、管理方法にも気をつける必要があります。この記事を参考に、自社にとって最適な資金調達方法を検討してみてください。

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