会社にかかる税金の種類は、個人事業主にかかる税金よりも多いです。税金の種類だけでなく、適切な計算方法を理解しておくことで資金繰りを安定させやすくなります。

 

また、会社経営では税金の種類が多くなるデメリットだけではありません。経費となる範囲が幅広く節税対策もしやすくなるため、有効活用することが大切です。

 

今回は、会社にかかる税金の種類だけでなく、各種税金の計算方法やおすすめの節税方法を解説します。この記事を読むことで、自社の納税額を正確に把握しつつ、適切な節税を行うことで資金繰りを安定させやすくなります。

会社と個人にかかる税金は異なる

会社と個人にかかる税金の種類は、異なります。会社にかかる税金の種類を理解した上で経営を進めなければ、納税によって資金繰りが悪化してしまうかもしれません。

 

例えば、個人だと所得に対して所得税がかかるのに対し、会社の場合には所得税ではなく法人税がかかります。

 

また、個人よりも会社の方が様々な種類の税金が対象です。税金の種類が多いことによって「デメリットしかない」と感じる人もいます。しかし、会社の場合には個人よりも節税可能な範囲が広がるため、税金について理解しておくことで多くのメリットも受けられます。

 

会社にかかる税金の種類一覧と計算方法

会社にかかる税金の種類としては、下記8つが挙げられます。

 

  • 法人税
  • 地方法人税
  • 法人住民税
  • 法人事業税
  • 消費税
  • 印紙税
  • 固定資産税
  • 事業所税

 

会社にかかる税金の種類は多く、概要だけでも理解しておくことが大切です。続いては、各種税金についての概要だけでなく、計算方法や具体的な数値を用いたシミュレーションを解説します。

 

法人税

法人税とは、法人の所得に対してかかる税金のことです。個人の場合、法人税ではなく所得税が対象となっています。また、法人税は国税に分類されます。

 

法人税の税率は、国税庁が公表している下記表を参考にしてください。法人税率は、最大でも23.4%となっており、所得が800万円以下の法人税は15%となっています。所得金額によっては、個人の方が税率が高くなることもあるため、税率によっては法人化を検討するのがおすすめです。

引用:No.5759 法人税の税率|国税庁

 

例えば、所得金額が700万円で資本金が3,000万円の場合「700万円×15%=105万円」となります。また、役員報酬や通常の経費などを利用することで、課税所得を減らせるため節税可能です。

 

地方法人税

地方法人税とは、法人税と同様に会社の所得に対してかかる税金のことです。地方法人税は、地方税と間違われがちですが国税に分類されます。法人税との違いは、税金の使い道です。法人税が国債や社会保障関係で利用されるのに対し、地方法人税は地方への交付金として活用されます。

 

地方法人税の税率は、下記の通りです。下記の税率をもとに「法人税額×10.3%(もしくは4.4%)」で計算されます。

引用:地方法人税の税率の改正のお知らせ|国税庁

 

法人税額が200万円だった場合「200万円×10.3%=20万6千円」が、地方法人税額となります。法人にかかる税金が法人税だけだと思っていると、予想外の支出となってしまうため、事前に理解しておくことが大切です。

 

法人住民税

法人住民税は、法人の所得とは関係なく対象となる「均等割」と法人税額に対して対象となる「法人税割」に分類されます。法人住民税は、自治体の住民サービスを行うために徴収される税金であり、地方税となります。

 

法人住民税は、均等割と法人税割の合計で算出可能です。法人住民税の法人税割は、法人税を安くすることで抑えられます。均等割の税額については、下記表を参考にしてください。

引用:総務省|地方税制度|法人住民税

 

また、法人税割の税率は地方自治体によって異なります。各地方自治体のホームページで確認できるため、法人住民税の計算をする際には各地方自治体のホームページを確認してください。

 

法人事業税

法人事業税は、事業所がある都道府県に納めるべき税金です。法人事業税は、地方公共団体の公的サービスの一部負担が目的となるため、地方税に分類されます。

 

法人事業税は「所得×法人事業税率」で計算できます。法人事業税の税率は、下記表を参考にしてください。

引用:法人事業税・法人都民税 | 税金の種類 | 東京都主税局

 

法人事業税の場合、法人の所得が赤字になった場合には支払う必要はありません。会社によって税率も異なるため、自社の税率が何%になるのかを理解しておくことが大切です。

 

消費税

消費税は、消費者が商品の購入やサービスを受けた際に支払う税金として有名です。しかし、消費者が直接納税支払っているわけではなく、会社が消費者から一旦預かった上で納税します。会社は国に納税しなければいけないため、国税に分類されます。

 

また、消費税の支払いは全ての法人が対象となるわけではありません。消費税の納税対象となるかどうかは、前々事業年度の課税売上高によって異なります。具体的には、前々事業年度の課税売上高が1,000万円を超える場合が対象です。

 

消費税率に関しては、下記表を参考にしてください。

引用:No.6303 消費税及び地方消費税の税率|国税庁

 

ただ、会社を設立してから2年間は一部の場合を除いて消費税の納税が免除されます。消費税の免除期間中に資金繰りを安定させることで、その後の経営も安定させやすくなります。

 

印紙税

印紙税は、領収書や契約書、会社設立に必要な書類に収入印紙を貼ることで納める税金のことです。印紙税は、国税に分類されます。 

 

印紙税にかかる税額は、契約金額によって異なります。税額の詳細を知りたい人は、下記表を参考にしてください。 

引用:不動産売買契約書の印紙税の軽減措置|国税庁

 

固定資産税

固定資産税は、法人が所有している土地や機械などの資産に対してかかる税金のことです。固定資産税は、地方税に分類されます。固定資産税の税率は、基本的に1.4%と定められています。 

 

1月1日時点で税額が判断され、納税納期は各市町村の条例に従わなければいけません。

 

また、場合によっては下記のような減額措置が適用されることがあるため、確認しておくことをおすすめします。

引用:総務省|地方税制度|固定資産税

 

事業所税

事業所税は、人口30万人以上の都市の整備や環境改善のための費用としてかかる税金です。事業所税は地方税に分類され、税率は各地方自治体によって定められています。

 

事業所税の計算方法は「事業所税=資産割+従業者割」となります。

 

東京都の事業所税に関して詳しく知りたい人は、東京都主税局の「事業所税の手引」を参考にしてください。

 

会社の税金に対するおすすめの節税方法

会社の税金に対するおすすめの節税方法は、下記の5つです。

 

  • 青色申告の申請を行う
  • 役員報酬で法人税を節税する
  • 割増償却や特別償却を利用する
  • 税制優遇制度を活用する
  • 社宅制度を利用する

 

会社にかかる税負担を重いと感じる人は多いです。しかし、適切な方法で節税できれば、納税額を減らせるだけでなく、社員のモチベーションアップに繋げられます。会社経営時の資金繰りに関する不安材料を減らすためにも、節税方法について理解しておくことが大切です。

 

青色申告の申請を行う

会社で最もおすすめの節税方法としては、青色申告の申請が挙げられます。青色申告の申請を行うことで「青色申告法人」となります。青色申告法人となると、税制上の優遇を受けられるようになり、高い節税効果を得ることが可能です。

 

所得控除や税額控除の優遇も、ほとんどが青色申告法人であることを前提として考えられています。青色申告の申請をしていないことによるデメリットは、かなり大きいです。

 

反対に、青色申告の申請をしないメリットはほとんどありません。会社経営をしているのに青色申告の申請をしていない場合には、早急に申請することをおすすめします。 

 

役員報酬で法人税を節税する

役員報酬を損金計上することで、法人税の節税に繋がります。会社の場合、経営者や役員は給与ではなく「役員報酬」として報酬を受け取ります。役員報酬では、定められた要件を満たすことで損金計上が可能です。損金計上できれば会社の利益が減少するため、結果的に法人税の節税に繋がります。

 

ただ、法人税を減らすためだからといって、役員報酬を増やしすぎるのは注意しましょう。役員報酬を増やしすぎてしまうと、役員自身の所得税が増加してしまいます。全体で考えると、納税額も増加してしまう恐れがあるため注意が必要です。

 

また、役員報酬を損金計上をしたいなら、株主総会で作成した資料を残しておかなければいけません。証拠がなければ、税務調査の際に罰則対象となる恐れがあるため注意が必要です。 

 

割増償却や特別償却を利用する

割増償却と特別償却を利用することも、おすすめの節税方法として挙げられます。割増償却とは、減価償却費に割増して経費計上できる制度のことです。また、特別償却とは通常の減価償却費の計算方法ではなく、特別な償却率の計算方法で費用を計上できる制度のことです。

 

割増償却と特別償却の詳細は、中小企業庁のホームページに掲載されているため、利用を検討している人は必ず確認しておきましょう。

 

また、割増償却や特別償却では、対象となる設備や要件がそれぞれ異なります。利用を検討している設備や要件が対象となっているかを確認すると共に、不明点が多い場合には税理士に依頼するのがおすすめです。 

 

税制優遇制度を活用する

会社でのおすすめの節税方法としては、税制優遇制度の活用が挙げられます。税制優遇制度とは、一定の条件を満たした場合に税金が少なくなる優遇措置を受けられる制度のことです。家賃負担の大きい中小企業が対象とされていることが多く、上手に活用することで大きな節税効果を期待できます。 

 

ただ、税制優遇制度は期限が設けられているものがほとんどです。定期的に税制優遇制度について確認しておかなければ、対象期間が過ぎてしまい、自分自身が損をする可能性があるため注意しましょう。

 

社宅制度を利用する

社長や従業員に対して社宅制度を活用することもおすすめの節税方法です。社宅制度を活用すれば、会社として支払った家賃と社長や従業員から受け取った家賃の差額を経費として計上できます。

 

ただ、社宅制度を活用するためには、社宅制度に関する社内規程を設ける必要があります。社内規程には、入退去の要件や手続き方法、光熱費の負担などを明確にしておかなければいけません。社内規程を作成し、事前に従業員に対して説明しておかなければトラブルになる恐れがあるため注意が必要です。 

 

また、社宅制度は節税に繋がるメリットだけではありません。個人が負担する家賃が低すぎる場合や無料にした場合などは、現物支給として課税対象となる恐れがあります。家賃や社内規程などに注意した上で、社宅制度を活用することが大切です。

会社に必要な税金の種類を理解すれば資金が安定する

会社経営に失敗してしまう原因の多くが、どんぶり勘定による資金繰りの悪化によるものです。反対に、資金繰りを安定させることができれば、倒産を防止し、長期間会社を存続させられます。

 

資金繰りを安定させるためには、会社に必要な税金の種類を理解し、納税額分の現金は最低限保有しておくことが大切です。

 

また、適切な節税方法を理解しておくことで、税金による罰則を受けるリスクを抑えつつ、納税額を減らすことができます。会社経営をする際には、税金の種類を理解した上で適切な節税に取り組むことが大切です。

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