ベンチャー企業では、融資を受けられるかどうかが今後の経営にも大きく関わります。必要な額の融資を受けられれば、経営を安定させられる可能性が高く、事業拡大にも繋げられます。

 

しかし、申込者全員が融資を受けられるわけではありません。融資を受けるためには、審査基準や審査に通過するポイントを理解しておくことが大切です。

 

今回は、ベンチャー企業が利用できる融資の種類や審査に通過するためのポイントについて解説します。この記事を参考にすることで、ベンチャー企業の資金調達を適切に行うことができ、経営の安定にも繋げられる可能性が高いです。

 

ベンチャー企業に融資が必要な理由

 

ベンチャー企業に融資が必要な理由は、財政状況が不安定ため、営業基盤を安定させる必要があるからです。売り上げが安定していない状況では、新規事業に対して資金や人材を十分に投入できません。

 

そのため、融資を活用して資金調達を行うことで、早い段階でビジネス拡大のための投資をしやすくなります。

 

また、融資を利用するメリットは、事業拡大に繋げやすいことだけではありません。社会的信用や経営の自由度にも関わるため、ビジネスを拡大しようと考えている場合には、融資の必要性を理解しておきましょう。

 

ベンチャー企業が融資を受けるメリットとデメリット

 

ベンチャー企業が融資を受けるメリットとデメリットは、以下の表を参考にしてください。

 

融資を受けるメリット

融資を受けるデメリット

  • 株式などを相手に提供しなくても良い
  • 出資とは異なり、経営に干渉されず自由な経営ができる
  • 毎月の返済義務や利息がかかる
  • 審査のハードルが高い

 

ベンチャー企業が融資を受ける一般的なメリットは、資金繰りが安定しやすくなることです。資金繰り以外にも、融資を受ける際には株式を提供する必要がありません。株式を提供しなければ第三者が経営に干渉しないため、自由な経営を進めることが可能です。出資の場合、株式の提供によって経営の自由度が下がるため注意しましょう。

 

反対に、融資を受けることで毎月の返済が必要になったり、返済に利息が上乗せされたりするデメリットもあります。そもそも、融資審査のハードルも高いため、融資を受けられないことも考えられます。

 

ベンチャー企業で融資を検討している場合には、融資を受けるメリットとデメリットを理解した上で利用するかどうかを判断しましょう。

 

ベンチャー企業が利用できる5つの融資

 

ベンチャー企業が利用できる融資の種類は、以下の5つが挙げられます。

 

  • 信用保証協会の保証付き融資
  • 日本政策金融公庫の融資
  • 自治体の制度融資
  • 民間金融機関の融資
  • ノンバンクのビジネスローン

 

ベンチャー企業が融資を利用できるのは、銀行だけではありません。行政機関や民間金融機関からの融資も可能なため、状況に合わせて最適なものを選びましょう。

 

信用保証協会の保証付き融資

 

信用保証協会とは、銀行などの審査が通りづらく自力で融資を受けられない企業が、スムーズに資金調達できるようサポートしてくれる公的機関です。信用保証協会に保証人になってもらうことで、金融機関から融資を受けやすくなります。

 

企業は信用保証協会に「信用保証料」を支払うことで保証を依頼できます。

 

信用保証協会を利用するメリットは、金利が低く金融機関から直接融資を受けるよりも審査が通りやすいことです。また、万が一返済できなかった場合には、信用保証協会が代わりに返済をしてくれます。

 

一方、デメリットとしては信用保証料が発生することです。他にも、信用保証協会と金融機関のそれぞれで審査が必要となるため手続きに時間がかかることが挙げられます。

 

信用保証協会は、全国の都道府県ごとに1ヶ所設置されているため、利用の際は該当の信用保証協会に問い合わせてみてください。

 

日本政策金融公庫の融資

 

日本政策金融公庫とは政府系の金融機関で、創業支援や新事業育成支援への融資に力を入れています。そのため、ベンチャー企業でも利用しやすい融資制度の一つです。

 

日本政策金融公庫の融資制度には種類があります。それぞれの特徴や融資額は以下表の通りです。

 

新事業育成資金

対象者

融資額・利率

融資期間

  • 新事業が事業化されて7年以内の方
  • 成長新事業育成審査会から事業の新規性・成長性の認定を受けた方
  • 継続的に経営指導を行い円滑な事業の遂行が可能と認められる方

6億円

0.3%〜3%

設備資金:20年以内(うち据置期間5年以内)

運転資金:7年以内(うち据置期間2年以内)

新株予約権付融資

対象者

融資額・利率

融資期間

株式公開を目指している方

2億5千万円

1.11~3%

7年以内

挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)

対象者

融資額・利率

融資期間

新規開業資金や新事業活動促進資金等の融資制度の対象となる方

3億円

0.45~5.5%

7年、10年、15年、5年1ヵ月(期限一括償還)

 

出典:日本政策金融公庫|新たな事業に挑戦する中小企業、ベンチャー企業向け融資制度

 

日本政策金融公庫で融資を受けるメリットは多く、創業前でも申請できることや金利が低いこと、さらに無担保・無保証で融資を受けられます。また「新創業融資制度」の場合、審査が順調に進めば「申請から最短2週間ほど」で融資を受けられるため、資金調達を急ぐ企業におすすめです。

 

一方、デメリットは融資制度ごとの条件があるため、誰でも融資を受けられるわけではないことが挙げられます。また審査では、ある程度の自己資金があることや面談が重視されるため、面談がスムーズに進むように創業計画書も作り込む必要があります。

 

日本政策金融公庫は、全国に支店があるため融資制度を利用の際は、お近くの支店に問い合わせてみてください。

 

自治体の制度融資

 

都道府県や市区町村の自治体の中には、ベンチャー企業が資金調達をしやすいように融資制度を設けているところもあります。

 

自治体の融資制度は、直接自治体が融資するのではなく、自治体が窓口となって信用保証協会の保証を受けて金融機関から融資を受けるという仕組みです。

 

自治体の制度融資を活用するメリットとしては、審査が通りやすいことが挙げられます。自治体は主に地元企業の支援を目的に融資制度を設けているため、審査のハードルが低く設定されています。そのため、民間の金融機関から融資が受けられなかったベンチャー企業でも、受けやすい融資の1つです。

 

一方デメリットは、審査に日数がかかり資金調達までに時間が空いてしまうことです。また、自治体によっては制度融資を設けていない場合もあります。

 

自治体の融資制度を利用したい方は、事前に近くの自治体に問い合わせることをおすすめします。

 

民間金融機関の融資

 

民間金融機関は、メガバンクや地方銀行、信用組合などのように民間の資本で運営される金融機関を指します。

 

民間金融機関による融資は、他の融資と比べて審査が厳しい傾向にありますが、近年ではベンチャー企業の成長性に期待し融資をする金融機関も増えています。金融機関が直接の融資を承認すれば、企業の信用度も上がるため、融資の選択肢として検討するのもおすすめです。

 

民間金融機関の融資は、金利が低いことが特徴です。また成長性のある企業と判断されたり信用を得られれば、多額の資金を融資してもらえる点が大きなメリットでしょう。

 

一方、申請などの手続きが複雑で融資を受けるまで時間がかかることがデメリットとして挙げられます。

 

ノンバンクのビジネスローン

 

ノンバンクのビジネスローンは、事業資金に限定されたローンのことを指し、消費者金融や新版会社などの預金や為替業務などがない金融機関が運営しています。

 

銀行や政府系金融機関に比べて、審査のハードルが低いことが特徴です。そのため、ベンチャー企業でも比較的利用しやすい融資制度の一つです。

 

メリットとしては、審査に通りづらいベンチャー企業でも融資を受けやすい点です。また、オンラインでも手続きが可能で、審査の日数が短くスピーディに融資を受けられます。

 

一方、上限金利が18%と高く、返済期間も短く設定されることが大きなデメリットとして挙げられます。

 

返済が遅れると企業の信用度に影響が出るため、ノンバンクのビジネスローンを利用する際は、返済計画まで立てておくことが重要です。

 

ベンチャー企業の融資以外の資金調達方法

 

ベンチャー企業の融資以外の資金調達方法は、以下の4つです。

 

  • ベンチャーキャピタルから出資を受ける
  • 補助金や助成金を活用する
  • クラウドファンディングで募集する
  • 友人や知人から借り入れる

 

融資を受けるためには、審査に通過する必要があります。ベンチャー企業によっては審査に通過できず、融資を受けられない場合もあるため、融資以外の資金調達方法も理解しておくことが大切です。

 

ベンチャーキャピタルから出資を受ける

 

ベンチャーキャピタルから出資を受けるのも、ベンチャー企業の資金調達方法の1つです。ベンチャーキャピタルとは、今後成長すると考えられる企業に対して、出資を行う会社のことです。

 

ベンチャーキャピタル自体も企業のため、出資によって利益を得る必要があります。ベンチャーキャピタルは、出資した企業が上場または成長した際の株式や事業の売却益を得ることを目的としています。

 

また、ベンチャーキャピタルは出資を行うだけではありません。企業が成長できるように、経営に役立つアドバイスをしてくれることもあるのが特徴です。

 

しかし、経営に介入されることで、自由度の高い経営ができなくなる恐れがあります。さらに、会社の成長度合いによっては、株式買取を迫られることも多いです。株式買取をすると、費用が高額になり借金を背負う恐れもあるため契約前に確認しておきましょう。

 

補助金や助成金を活用する

 

融資を利用できなかった場合には、補助金や助成金を活用するのもおすすめです。補助金や助成金は、経済産業省や厚生労働省、地方自治体などから受けられます。

 

制度によっては返済が必要ないため、ベンチャー企業にとって非常におすすめの資金調達方法です。

 

しかし、補助金や助成金ごとに決められた条件を満たす必要があります。条件を満たしていない場合や審査に通過しない場合には、制度を利用できないため注意が必要です。

 

クラウドファンディングで募集する

 

ベンチャー企業では、クラウドファンディングによる資金調達もおすすめです。クラウドファンディングとは、インターネット上で公開した事業に共感した人から、少しずつ資金を調達する方法のことです。

 

融資や補助金、助成金制度とは異なり、審査や様々な手続き無しでも資金調達できます。

 

しかし、希望した金額を必ず得られるわけではありません。事業内容や影響力によっても調達できる金額が異なるため、足りない資金を補うための資金調達方法として活用しましょう。

 

友人や知人から借り入れる

 

融資やここまでの資金調達方法でも資金調達できなかった場合には、友人や知人から借り入れるのも1つの方法です。友人や知人から借り入れる最大のメリットは、柔軟性が高く、借り入れのハードルが低いことです。

 

しかし、お金の貸し借りとなるため、状況によっては大きなトラブルに発展する恐れがあります。トラブルを未然に防止するためにも、借り入れの際には必ず契約書を作成し、お互いに合意した上で資金調達を行うことが大切です。

 

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ベンチャー企業の資金調達方法とは?具体的なやり方やメリットとデメリットを解説

 

ベンチャー企業が融資を受ける際の審査基準

 

ベンチャー企業が融資を受ける際の審査基準としては、以下4つが挙げられます。

 

  • 自己資金がどのくらいあるか
  • 経験や信頼があるか
  • 返済能力があるか
  • 資金の使い方は明確か

 

ベンチャー企業の融資審査では、返済能力だけを見られているわけではありません。資金の面に関してだと、自己資金の量や資金の使い方が非常に大切です。融資する側で考えれば、融資した資金をどのように使われるのかは重要な項目であり、曖昧になっていると「返済が滞るかもしれない」と考えられてしまい、審査に通りづらくなってしまいます。

 

また、過去のビジネス経験や融資経験を踏まえ、信頼性があるかどうかも審査されています。企業に関してだけではなく経営者個人の信用情報も調査されるため、支払いを滞納している場合には、速やかに支払った上で審査に臨みましょう。

 

ベンチャー企業の融資審査に通過するためのポイント

 

ベンチャー企業の融資審査に通過するためのポイントは、以下の5つです。

 

  • 自己資金を多めに用意しておく
  • 事業計画書を細かく記載する
  • 担保や保証人を用意する
  • 格付けについて理解する
  • 様々な料金の支払いを期日内に行う

 

ベンチャー企業が融資審査に通過するためには、適切な対策をしておくことが大切です。対策をしているかどうかで、審査に通過できるかどうかが大きく異なるため事前に確認しておきましょう。

 

自己資金を多めに用意しておく

 

ベンチャー企業の融資審査に通過するためにも、自己資金は多めに用意しておきましょう。自己資金がゼロだと、融資を受けられる可能性が低いです。

 

反対に、自己資金を少しでも多く用意すればするほど、融資審査に通過しやすくなります。できる限り多いのが望ましいですが、最低でも「融資希望額の3分の1程度」は用意しておきましょう。また、自己資金が少ない場合には、売り上げの見通しが立つような事業計画書を提出することが大切です。

 

事業計画書を細かく記載する

 

事業計画書を細かく記載することで、融資審査に通過しやすくなります。事業計画書は、融資する側が最も重要視する項目の1つです。「なぜ希望する融資額が必要なのか」と明確にすることで、説得力が増します。

 

より細かく記載するためにも、以下のような内容を記載しておきましょう。

 

  • 会社設立の動機
  • 経営者の学歴や職歴
  • 事業内容
  • 既存の取引先
  • 従業員数
  • 借り入れ状況
  • 融資希望額と資金調達方法
  • 売り上げ見込み

 

上記以外にも、事業内容を明確に伝えられるものがあれば、補足しておくことをおすすめします。

 

担保や保証人を用意する

 

融資審査に通過しやすくするためには、担保や保証人を用意するのもおすすめです。担保や保証人を用意することで、金融機関も万が一のリスクに備えられます。

 

担保や保証人では、経営者自身が連帯保証人になることも可能です。また、土地や建物等の資産も担保にできます。

 

格付けについて理解する

 

融資審査には「格付け」があることも理解しておきましょう。格付けとは、金融機関が融資を実行するかどうかや融資額を判断するための基準のことです。格付けが高いほど審査に通過しやすかったり、融資額も満額受けられたりする可能性が高いです。

 

格付けは「定量的評価」と「定性的評価」に分けられます。ただ、明確な基準が発表されているわけではありません。融資審査に通過するためにも、適正な決算書を作成したり自己資本比率を高めたりしておくことが大切です。

 

様々な料金の支払いを期日内に行う

 

金融機関の融資審査では、返済能力があるかどうかも確認されています。返済能力がないと判断されると、融資を受けられない可能性が高いため注意が必要です。

 

返済能力が原因で審査に落ちないためにも、税金や公共料金などの支払いは期日内に行いましょう。現時点で滞っている支払いがある場合には、速やかに支払うことが大切です。

 

また、信用情報に傷がついていないかどうかを確認した上で審査に臨むことで、安心して審査を受けられます。

 

ベンチャー企業の資金調達では融資以外も検討しよう

 

ベンチャー企業では、資金調達が非常に大切です。資金調達ができなければ、経営基盤が安定せず、倒産する恐れもあります。この記事では、融資について詳しく解説しましたが、ベンチャー企業の資金調達には融資以外の方法もあります。

 

目的は融資を受けることではなく、適切な資金調達を行い、事業拡大や経営を安定させることです。ベンチャー企業で資金調達を考えている場合には、融資だけにこだわるのではなく、状況に応じて適切な資金調達方法を選びましょう。

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