株式会社スポーツネーション 代表取締役 三木 智弘

スポーツの新たな可能性を追求し、日本ひいては世界へ発信することを目指す株式会社スポーツネーション。革新的な経営アイディアの創造の中心を担うのは、代表取締役の三木智弘氏。なんと、東京大学4年生の学生さんです。

 

20代で、既に3社を起業した三木氏の背景や、なぜスポーツ界の在り方を変えようとしているのか、今後の目標などを詳しくお話しいただきました。

 

新たなスポーツチーム経営の在り方を世界へ

事業の内容をお聞かせください

現在は主に、札幌市のプロ男子バレーボールチーム『北海道イエロースターズ』の経営とスポンサーシップではない地域を巻き込んだ新しいスポーツファイナンシングの仕組み、プラットフォームを構築しています。

 

従来、日本のプロスポーツチームの経営モデルは、スポンサー収入が売上の50〜80%程度を占めていて、それに対してスポーツチームは、広告宣伝活動でお返しするというのが基本です。

 

ただ、これだけでは費用対効果が不明確なため、継続しにくく、単発課金に終わり、経営が軌道に乗るまで資金が続かないことが多々あります。23歳からプロスポーツチームの社長として、実際に営業に行く中で、年に一度企業にスポンサーのお願い営業にいく関係ではなく、もっと企業にとってもwin-winであり、自分は今後のスポーツ業界の常識を一新するような違った経営方法を構築しようと考えました。スポンサーシップモデルのサブスク化や地域コミュニティでの共同経営など、新たな角度での経営に取り組んでいます。

 

今はこの事業に95%の力を注いでおり自分のチームで新しいビジネスモデルに挑戦し、うまくいったことを世界中に展開していきたいと考えています。

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

3回起業していますが、全てスポーツに関わることを仕事にしています。父が日本代表のスポーツトレーナーをしていたことが背景にあります。

 

父は日韓ワールドカップやドイツワールドカップで日本代表に帯同していて、私たち家族も試合や選手の宿泊するホテルに呼んでいただいたりしていました。コート近くの席で観戦したり、選手と一緒にホテルに泊ってご飯を食べたり中田英寿さんや小野伸二さんと練習させてもらったこともあります。

 

ところが、私が中学生の頃、父が日本代表トレーナーを引退したのちに始めたビジネスでパートナー企業の不正に巻き込まれてしまい、生活が変わりました。華やかな世界を離れて実家で鍼灸治療院を開業し、父はコツコツと寝る間も惜しんで働いて家族を支えてくれていました。家族の仲がとても良かったので、こうした境遇から、早く家族に恩返しをしたいと思い、休学して100万円借金をして起業に向けて動き始めました。

 

まず、1社目にスポーツトレーナーを支援する会社を作りました。ただ、資金がないスポーツチームにトレーナーを送るのはどうしても儲けが少ない仕事で、稼げないアイデアに当初は出資を申し出てくれる人が全くいなかったんです。そんな中、元プロバレーボール選手の方が、会って5分で100万円を出資してくださり、起業できました。

 

1つ目の会社を企業して約3ヶ月後、同じ方から「偶然相談がきたけど、やってみる?」と、突然スポーツチーム経営の話がきました。ずっとスポーツに関わる人の価値を上げるために「スポーツチームを経営したい」と思っていたので、すぐに引き受けることにしました。そして、日本最年少で日本プロスポーツチームの社長になったのが、2019年です。

 

ただ、チームの立て直しには、新しいやり方が必要でした。また、スポンサーや世の中の景気に左右されてしまうチーム経営は、そもそも今までと同じやり方では絶対に上手くいかないものだと感じたんです。

 

そこで、スポーツチーム経営の在り方を模索すべく、3社目としてスポーツネーションを起業しました。現在シード期のスタートアップで1億円以上を調達しています。大手の銀行様だと三菱UFJ信託銀行様よりエクイティで資金調達をしています。また、最近ではDDI (現KDDI)の創業者で現Y!モバイルも創業した世界的な連続起業家である千本倖生氏に就任いただきました。グローバルな目線をもち、世界中のスポーツチームを支援することを掲げています。

信頼してもらい、味方でいてもらえるような人間に

仕事におけるこだわりを教えてください。

「感謝、正義、信念」の3つを常に持ち続けることです。

 

感謝は、意識して口に出すことを大切にしています。感謝を忘れると問題が起きたり、お客様との関係が崩れたりもします。

 

自分の帰る家があること、大きな問題がなく周りの人とコミュニケーションが取れていること、そもそも仕事があることなど、日常への感謝も欠かせません。人は追い込まれると、不満が出てきてネガティブな方向に波及していくこともあります。だからこそ、日々への感謝が何よりも大切です。

 

2つ目の正義とは、人前でも正々堂々とできる行動かを日々念頭に置くことです。

 

特に、上場を目指しているうちのような会社は、経費の使い方1つでも自分をものすごく律しています。社員一人一人が正義感を持って行動することが、会社の徳を上げることに繋がると思います。

 

3つ目の信念とは、自分や仲間を信じること。例えば、上り調子の大手企業の中にいたら、自分を信じる力がそこまでなくても会社全体の勢いで上がっていけそうです。

 

でも、ベンチャー企業では、日々お金が減っていく感覚を得やすい。本当にニーズがあるのかな?やっていることは正しいのかな?ずっと一緒に働けるのかな?など日々社員一人一人に葛藤があると思います。だからこそ、手探り状態の中で自分をいかに信じられるか、仲間をいかに信じられるかが大切だと感じます。

暗い海の中で船を漕いでいても信念があれば必ず答えに辿り着くものです。

 

私生活で仕事のために意識していることは、朝6時に起きてジムでトレーニングすること。その後は、しっかりと朝ごはんを食べて、ニュースや本を読み、9時から仕事を始め、夜は勉強するというのが1日のルーティーンです。

 

また、食生活を整えるなど、精神的肉体的に健全でいられるような習慣を大切にしています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

2つあります。

 

1つ目が人間関係です。スポーツチームの経営者になった当初は「突然知らない若造がきた」と見られていたかもしれません。そのため、現場や地場の経営者の方々の信頼を得るまですごく時間とストレスがかかりました。

 

また、社会へ出るとより様々な考え方の人と出会います。そこで、自分と違う考え方の人に信頼してもらい、味方になってもらって事業をするということの難しさとやりがいを学びました。

僕は人間関係を築く上で、とても大切にしている言葉があります。過去に言われた言葉で、「100%相手が悪くても許すことができるようになったら、信頼されるようになる、仲良くできるようになってくる。」というものです。

 

例えば、会社に500万円の損失が出た場合、ある社員の癒着した業者との取引が原因だったとします。それでも「私が数字をチェックしていなかった、コミュニケーションが少なかった」と自責で考え、相手にイライラしている姿を見せないように意識します。

 

理不尽なことがあっても「当然自分が悪かった」と考えることを繰り返すことで、自分の器が大きくなり少しは徳を積めたのかなと思います。

 

そして、2つ目の壁は経済的なこと。スタートアップ企業を経営しているので、資金調達でとても苦労しました。

 

まだどこにも存在しないサービスを作っているので理解をしてもらうことが難しく、再現性、蓋然性がないという言葉を聞いたのは100回どころではありませんでしたが、世の中の価値観を変えるようなチャレンジをしているのだから当たり前だと自分に言い聞かせて妥協せず、調達期間の目処が3ヶ月後だったのに、実際は約10ヶ月後になってしまったこともありました。予定の倒産ラインを超えた状態でいろいろな人に頭を下げてお金を借りる、というような苦い経験もしましたが、目先のお金に振り回されず信念を貫き通すことで、自分がひとまわり経営者として成長できたとても良い経験でした。

本当に苦しい時に支えてくださる方々へ恩返しをしたいという気持ちが経営していく上でのパワーに変わっていることもすごく今ではプラスに感じています。

 

喜んでくれる人のそばにいられることが力に

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

僕のキャリア選択は全て自分の自己理念から来ていて、そもそも自分がやりたいことを事業を通して実現しているので常に高いモチベーションを保っていられます。

生き方と事業が完全に一致しているのが自分の強みです。

 

誰かにやらされているわけではなく、お金を稼ぐために強制的にやっているわけでもありません。

 

また、喜んでくれる人がいることも心の支えです。家族やスポーツをやっている人たちなど、仕事をした分だけ喜んでくれる人がいて、そういう人たちと接し続けられているので、苦しい状態でも「やったら報われる」と信じられています。

 

投資家さんや市場と向き合うとどうしても稼ぐこと、論理的に説明することに目が行きがちですが目の前のお客さんが幸せそうにしていることこそが価値の源泉であり、そこに自信があるからこそ誰になんと言われても進み続けられるんだと思います。

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

スポーツネーションの目標は、「世界100カ国、1万チーム、時価総額100兆円」です。僕が40歳になるまでには達成したいですね。

その後は三木財団を作って、自分のように志は高くても経済的に恵まれない人たちに経済的なリターンを求めない支援をしたいです。

また、知的好奇心が旺盛で宇宙開発や地球外生命体にも興味があるので、自分が稼いだお金はそういった探求に使えたら幸せですね。

行動しなければ成果はあり得ない

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

僕の尊敬する弊社の共同代表が言っていたのですが、「人生は思った通りにはならない、行動した通りになる」という言葉が本当に全てだと思っています。

 

ほとんどの人が、自分の頭の中の仮説のみで、「こうなったら良いな」と考えている間に、時間は過ぎ去ってしまいます。考えることで成長していると錯覚しがちですが、行動して結果が生まれ、学習してこそ成長するものだと思います。行動しない限り、成長はあり得ません。

 

僕は、現在日本全体が衰退していると実感していて、閉塞感をぶち破り新しい風を吹かせられるのは20代しかいません。エジソンは20代で大発明をし、アインシュタインも20代で相対性理論を発表しました。しかし、今の20代は、なんだかおとなしいですよね。

 

その原因には、大人が「起業は危ない、リスクがある、うまくいかない」というネガティブなことを若者に言い過ぎてしまっている、ということがあるのではないでしょうか。

 

僕は、失敗前提で挑戦すれば良いと思います。失敗しなかったら学習できないのに、失敗を避ける様なアドバイスをしている大人が多いような気がします。

 

私は、なにも無責任に話をしているわけではありません。行動して失敗して自己破産したって、日本の制度上死ぬということはないですし、再チャレンジはいくらでも出来ます。

 

これだけセーフティーネットが整っている国で行動しないことの方がリスクです。そうでもして世の中を変えないと、じわじわ衰退していき、日本は、いつか破綻します。

 

もし今起業したいなら、明日にでも起業するくらい、行動にフォーカスして欲しいと思います。

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:

1996年、愛知県日進市生まれ。サッカー日本代表トレーナーの父の元で幼少期を過ごす。10歳で三重県に引っ越し、高校卒業後、自宅での浪人を経て東京大学文科二類に進学。現在東京大学経済学部4年。23歳の時に、V2リーグ所属のプロ男子バレーチーム「サフィルヴァ北海道」(現:北海道イエロースターズ)の経営再生を任され、代表取締役に就任。2030年に「北海道にスーパーシティを創ること」を掲げ、5000万円の融資を受けて3年半で売上を35倍にV字回復させる。

寄附的なスポンサーを募るクラブ経営の根本的なビジネスモデルに限界を感じ、【参加型のクラブ経営】という個人企業の垣根を越え創り上げる新しいスポーツクラブ経営モデルの構築を目指し日々挑戦を続けている。ミッションは「応援する力を経済に還元しよう」

企業情報

法人名

株式会社スポーツネーション

HP

https://sportsnation.jp/company-introduction/

設立

2020年05月12日

事業内容

地域スポーツ応援プラットフォーム「SOCIO」の運営

沿革

《2020年》

株式会社スポーツネーション設立

2021年

シーラウンドにて9000万円資金調達

2022年

専用アプリ「スポつく」上でのデジタルオーナー権を発売。

現在は「SOCIO」に名称変更。

2023年

三菱UFJ信託銀行より資金調達

千本倖生氏取締役就任

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