株式会社AX 代表取締役 石綿文太氏

株式会社AXは、法人向けにAIを活用できるプロ人材を育成する研修事業「AX CAMP」を提供しています。研修後も半年から年単位で顧客企業の業務のAI化を伴走支援する点が特長です。今回は、代表取締役である石綿文太氏に、これからのAI時代に生き残る人材の考え方や、計画倒産の危機を機にAIへ舵を切った経緯について伺いました。

研修で終わらせない、業務が変わるまで伴走するAI活用支援

事業の内容をお聞かせください

当社は、法人向けにAIのプロ人材を育成する研修事業「AX CAMP」を展開しています。もともと10年以上広告代理店を営んでいましたが、約2年前に自社業務をAIで徹底的に自動化し、26人分の業務を1人で回せる体制を構築しました。その実績をもとに、「社内にAIのプロ人材チームをつくりませんか」という形で企業のAI活用を支援しています。  

 

「AX CAMP」は一般的なリスキリング研修とは異なり、「AI版のRIZAP」のような伴走型サービスです。研修だけでは業務は変わらないという考えから、半年から1年にわたってAI導入のKPIを追いながら、実際の業務改善まで支援しています。主な対象はマネージャーやリーダー層で、AIコンサルタントが伴走しながら、社内でAIを自走・定着できる体制づくりを進めます。 

 

顧客は広告代理業や通信業が約6割を占め、広告運用やCRM、SFAなどマーケティング領域の支援が中心です。例えば広告運用をAIで完全自動化した事例や、1人あたり数アカウントだった運用を50~100アカウントまで拡大できた事例もあります。 

 

さらに、AI開発支援サービス「AX BUILD」も提供しています。顧客の課題をもとにAI化・システム化すべき業務を整理し、週次単位で機能追加や改善を進める柔軟な開発スタイルを採用しています。 

 

当社の強みは、自社で業務AI化を実践してきた経験と、1,700件を超える伴走支援実績です。そのため、「この業務はAI化できるか」と相談を受けた際も、実績を踏まえた具体的な進め方をご提案できます。また、他社研修を受けたものの定着しなかった企業からご相談をいただくケースも少なくありません。半年から1年かけて伴走するため、成果が定着しやすい点が特徴です。 

 

導入時には、経営者が効率化を歓迎する一方で、従業員の中には「仕事を失ってしまうのではないか」と不安を抱く方もいます。そこで研修やeラーニングのカリキュラムでは、最初に「今後残る人材とはどういう人物か」というマインドセットから入るようにしています。加えて、育成の対象を主にマネージャー層に絞り、ジュニア層は対象から外していただくようお願いしているため、もともとモチベーションや理解度が高い方にアプローチする前提になっています。

 

当社ではAIを「優秀な新人」と捉えています。これから求められるのは、細かな指示を待つのではなく、KPIや成果目標をもとに自律的に仕事を進められる人材です。研修を通じてAI時代の働き方への理解を深め、業務や組織の変革につなげていただいています。 

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

私は2歳から16歳まで長く子役をやっていました。お小遣いが出なかったため、自分のギャラで生活していました。小学校の頃から個人事業主に近い感覚で、ギャラの中から交通費を出してオーディションに行くなど、自ら計算して動いていたのです。そのため、もともと起業に対してまったく抵抗がありませんでした。

 

また、自分自身が商品として仕事をしていたことから、「商品価値がなくなれば次に進めばいい」という考え方も自然と身についており、イベント・ケータリング事業で創業して売却した後、Web制作や広告代理業といったデジタル領域に参入していきました。

 

デジタルマーケティングはAIとの親和性が高く、自社業務への導入を進めた結果、多くの業務を自動化できるようになりました。例えば、1日200本ほどの記事を制作して広告出稿する業務では、従来はライターが1本仕上げるのに1〜2週間かかっていたものが、1日で数か月分以上の検証を行えるようになりました。

 

さらに2024年には、リサーチから記事・クリエイティブの制作、広告出稿、改善までを一気通貫で担うAIエージェントを自社で構築しました。この成功体験をもとに、現在のAI事業へと展開しています。

「本質」を問い続ける、儲けだけでは長続きしない

仕事におけるこだわりを教えてください

私は社内でよく「本質」という言葉を使います。何かを判断するときは、「それが本当に価値につながるのか」を常に意識しています。例えば、「助成金が出るから研修を受ける」という発想では意味がありません。大切なのは、AIを社内に定着させ、業務改善につながる文化をつくれるかどうかだと考えています。

 

誰か一人だけが儲かるビジネスや、一時的なブームに乗っただけの事業は長続きしません。実際、私自身も過去に「儲かりそうだから」という理由で始めた事業は、ほとんどうまくいきませんでした。その経験もあり、「本当に価値のある取り組みか」を何より大切にしています。

 

実は助成金制度では、助成対象が原則として所定の要件を満たす職業訓練に限られ、研修後の個別業務支援は内容によって対象外となる場合があります。 研修で扱った内容を個別業務へ応用して支援することが制度上難しく、本当の意味での業務改善につながりにくい側面があります。だからこそ当社は、助成金ありきではなく、実際に成果が出る支援を重視しています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

私がAIに本格的に取り組むきっかけになったのは、取引先の経営破綻に伴って約1億5,000万円の損失が生まれたことです。さらに他事業の失敗も重なり、累計で約2億円の損失を抱える厳しい状況に陥りました。 

 

さらに、追い打ちをかけるように、主力だった広告代理事業の売上も前年比で約40%減少しました。このままでは会社を存続できないと感じ、抜本的に事業を変える必要があると考え、寝る間も惜しんでAIの開発に没頭しました。まさに背水の陣でした。 

 

当時は社内にも状況を打ち明けず、一人で突破口を探し続けていました。それでも、会社を終わらせたくないという思いと、一緒に働くメンバーや信頼してくださる方々の存在が大きな支えになりました。その挑戦が結果的に実を結び、現在の事業につながっています。 

優秀な仲間と壁を越える、一人加わるだけで組織は変わる

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

仕事で一番楽しいのは、優秀な方々と一緒に働けることです。私が事業を続けている理由も、「自分一人では乗り越えられない壁やチャンスを、仲間と一緒に乗り越えていくこと」にあります。

 

優秀な人が一人加わるだけで、組織は大きく変わります。その変化を目の当たりにできることが、この仕事の一番の面白さです。現在はAIコンサルタント、AIエンジニア、社長室、新規事業責任者、マーケター(マネージャー)など、幅広いポジションを募集しています。

 

求める人物像を一言で表すなら、新しい知識を吸収する学習力と、困難に直面しても課題を見つけて解決し、前に進める力を持つ人です。今はAIを活用すれば、未経験の分野でも自ら学びながら成長できる時代です。そのため、経験以上に、自走力があり、主体的に挑戦し続けられる方と一緒に働きたいと考えています。

 

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今後やりたいことや展望をお聞かせください

世の中には、人が担わなくてもよい業務が数多くあります。そうした作業はAIに任せ、人はより付加価値の高い、創造的な仕事に集中できる環境をつくりたいと考えています。  

 

そのため、AX CAMPやAI開発に続く新たな事業を社内から生み出し、企業や社会が抱えるさまざまな課題をAIで解決していきたいです。

 

今後はデジタル領域のAIがさらに進化し、その先にはロボティクスをはじめとするフィジカルAIの普及も進んでいくでしょう。5年後には、人が今ほど多くの仕事を担わなくても社会が成り立つ時代が訪れると考えています。

 

そうした未来を見据えながら、当社も事業や知見を広げ、優秀な人材が集まるフィールドをつくっていきたいと思っています。

 

AIに向かう前に、目の前の人と向き合う

起業しようとしている方へアドバイスをお願いします

起業で最も大切なのは、悩みを抱えている人を見つけ、その課題を解決し続けることです。シンプルですが、目の前のお客様と真摯に向き合い、対話を重ねることが何より重要だと考えています。

 

最近は、AIを使って完成度の高い事業計画書を作る起業志望者も増えました。しかし、本当に向き合うべき相手はAIではなく、お客様です。実際にプロダクトを使ってもらい、率直なフィードバックを受けながら改善を重ねる。その地道な積み重ねが、事業を成長させる原動力になります。

 

AIは非常に便利なツールですが、それだけで事業は成功しません。まずは目の前の人の声を聞き、課題を深く理解すること。その上でAIを活用することが、起業を成功に導く近道です。

本日は貴重なお話ありがとうございました。

起業家データ:石綿 文太 氏

1994年生まれ。2歳から16歳まで子役として活動。高校2年で起業を決意し、高校卒業の7日前に中退して起業した。
イベント・ケータリング事業で創業後、Web制作事業、広告代理業へ参入し10年以上の実績を積む。2018年7月に株式会社アフタースクールを設立(2025年に株式会社AXへ社名変更)。
2024年6月、AIに精通した人物との出会いを機にAI活用へ本格転換し、自社業務の自動化で年間47,000時間以上の業務削減を実現。2025年4月よりAI研修事業「AX CAMP」とAIエージェント開発をメイン事業として本格展開している。「Google Cloud Generative AI Leader」認定資格保持、一般社団法人生成AI活用普及協会(GUGA)シニアパートナー会員。

企業情報

法人名

株式会社AX

HP

https://a-x.inc/

設立

2018年7月18日

事業内容

  • 法人向けAI研修「AX CAMP」
  • AIエージェント開発「AX BUILD」
  • 組織開発コンサルティング業
  • 広告代理業

 

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