株式会社SYN-ROBOTICS 代表取締役COO 柳本友幸氏

株式会社SYN-ROBOTICS(シンロボティクス)は、畑の中を自動で走り、雑草取りや生育状況の撮影を行う自律稼働型の農業ロボット「シンロボ」を開発しています。人手をかけずに畑で稼働し、株元の細かな雑草をピンポイントで抜く技術を備えている点が特長です。今回は、代表取締役COOである柳本友幸氏に、事業を立ち上げた経緯や起業からの最大の壁について伺いました。

無人で畑を走り、除草と生育モニタリングを担う自律農業ロボット

事業の内容をお聞かせください

当社は、自律稼働型のAI農業ロボット「シンロボ」を開発しています。人が付き添わなくても畑の中を自動走行し、種まき、草取り、剪定、収穫など、さまざまな農作業を担えるロボットです。まずは、株元の除草と、撮影データによる生育状況のモニタリングから実用化を進めています。

 

現在、特に多くご依頼をいただいているのが「株元の除草」です。例えば枝豆の畑では、雑草対策としてビニールシートを敷いていても、枝豆の根元のすぐ側の株元には草が生えてきます。こうした雑草は、現在も農家さんが一つひとつ手作業で抜いているのが実情です。 

 

雑草対策には除草剤や草刈機などさまざまな方法がありますが、最後に残った草を取り除く作業は、人の手に頼らざるを得ません。雑草は生命力が強く、作物と競合すると生育に影響を与えます。そこで当社のロボットが、これまで人手で行っていた作業を代替します。

 

農家さんが抱える課題は、肥料をはじめとする資材価格の高騰、気候変動による栽培環境の変化、人手不足など多岐にわたります。その中でも、草取りは大きな負担の一つです。

 

ロボットにはモニタリング機能も搭載しています。畑を走行しながら画像を撮影することで、発芽率や生育状況、葉の色の変化などを把握します。イメージとしては、Googleマップを拡大して畑全体を見るように、生育状況を可視化する仕組みです。

 

将来的には「いつ頃、どの程度の収穫量が見込めるか」といった収穫予測、病気の兆候予測にも活用していきたいと考えています。

 

草取りに注力している理由は、多くの作物に共通する課題だからです。種まきや収穫は作物ごとに仕様が大きく異なりますが、除草は基本的に「草を見つけて抜く」という動作であり、複数の作物へ展開しやすい特徴があります。

 

現在は、レタスやパクチー、枝豆、白ネギ、タマネギ、お茶の木などへの対応を進めています。特に白ネギは、根元に土を寄せて白い部分を長くする栽培方法で、土の中の雑草の種が次々と地表に出ることになるため、雑草が発生しやすく、除草の負担が大きい作物です。

 

雑草が残ると日当たりが悪くなったり、病気の原因になったりするため、早期の除去が重要になります。  

 

ロボットは横幅約130cm、奥行き約150cm、高さ約130cmのサイズで、畝を一つ飛ばしてUターンできる設計です。畝立て機など既存農機の規格に合わせ、横幅や高さは調整できる仕様にしています。

 

AIによる解析では、作物ごとのデータ蓄積が重要になります。現在はパクチーやレタスで大量の画像データを収集していますが、今後は白ネギなど対応作物を広げながら、病気判定を含めたAIモデルの精度向上を進めていきます。

 

実証を進める中で、農家さんからはありがたいことに「早く導入したい」という声をすでに多くいただいています。現在は、長時間安定して稼働することや、除草成功率を8割以上に高めることを目標に開発を進めており、来年4月の製品リリースを予定しています。

 

導入による効果としては、正社員の屋外作業時間のうち、除草作業は約15〜20%を占めています。完全になくすことは難しいものの、その負担を大幅に減らし、空いた時間をより重要な作業に充てていただけるものと考えています。

 

シンロボの大きな強みは、人が付き添わなくても畑で自律稼働し、株元の雑草をピンポイントで除去できるロボットを開発している点です。現在、市場にある多くの農業ロボットはリモコン操作や作業者の立ち会いが必要で、完全自律型で細かな除草まで行える製品は限られています。

 

海外では、レーザーで雑草を処理する大型ロボットなどもありますが、マルチシートを使った栽培は日本で広く行われる独自性の高い農法です。そのため、日本の農業現場に適したロボット開発には大きな可能性があります。

 

また、日本には優れた技術を持つ精密機械メーカーが数多く存在し、私たちの本店登記地の長野県もそうした企業の集積地の一つです。小ロットでも複雑な機械を開発できる環境を活かしながら、日本の農業が抱える課題解決に取り組んでいきたいと考えています。

作業動画はこちら

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

当社はもともと、サステナジー株式会社で太陽光発電の普及事業に取り組んでおり、私は現在もサステナジーの副社長を兼任しています。国内で太陽光発電が一定程度普及した次のステップとして、私たちは「地球環境にポジティブなインパクトを与えられる新たな事業は何か」を模索していました。

 

その中で着目したテーマの一つが、農業ロボットでした。サステナジーで営農型太陽光発電事業、いわゆるソーラーシェアリングの事業を経験したことをきっかけに、地方で増加する耕作放棄地や、農業現場における担い手不足の課題を目にする中で、特に大きな負担となっていたのが、人の手に依存した過酷な作業です。

 

サステナジー代表取締役の三木は、こうした課題を解決する手段として、ロボットとデータ活用による農業支援の可能性に注目しました。

 

農業は、連作障害や病気への対応など、知識や経験に基づく高度な判断が求められる一方で、身体的な負担も大きい仕事です。そこで、ロボットが重労働を担い、さらにデータを活用して栽培を支援できれば、農業への参入ハードルを下げ、次世代へ農地を引き継いでいけるのではないかと考えました。

 

私自身も三木も、前職ではアクセンチュア株式会社で戦略コンサルタントをしていました。三木は2004〜2005年頃に担当したプロジェクトをきっかけに、人口減少により生産力と購買力が落ちれば、今は輸入に頼っているエネルギーを買い負けることになり、日本の成長力は損なわれ、今のような快適な暮らしも続けられなくなるのではないか、という危機感を持ち、国産のエネルギーを増やしたいという思いから再生可能エネルギー事業を立ち上げたのです。

 

その理念に共感したことが、私がサステナジーに参画するきっかけでもありました。

 

農業ロボットの開発は、まず大学との共同研究からスタートしました。開始当時、早稲田大学に在籍され、現在は芝浦工業大学に移られた大谷拓也先生と研究開発を進める中で、実際の農家さんからも「早く実用化してほしい」という声をいただくようになりました。

 

 

そこで現在は、ロボット開発の専門企業である株式会社イクシスと連携し、研究、実証の段階から実際に現場で使える量産機の開発へと進めています。

「やりたくない過酷な作業」を代わる、現場起点のものづくり

仕事におけるこだわりを教えてください

「困っていることを解決したい」との想いが、一番のこだわりでありモチベーションです。

 

農家さんにお伺いすると、「収穫作業は農家にとっての喜びだから自分たちでやりたいけれど、草取りはただただ大変だから機械に頼みたい」といった本音をよく耳にします。そうした作業をロボットで代わってあげたいのです。

 

また、現場を訪問して農家さんが作った美味しい作物をいただくことも大きな楽しみであり、活動の大切な原動力になっています。

 

印象に残っているのは、宮崎県西臼杵郡五ヶ瀬町の山あいで、有機茶を栽培されている農家さんをお訪ねした時のことです。高齢化などで農業をやめる方の耕作放棄地を引き取り、分散した小さなお茶畑を何十枚分も実直に維持されていました。

 

効率を考えれば遠くの小さな畑は断りたくなるものですが、その方は「自分が断って荒地にしてしまったら、二度と農地に戻せなくなる。先祖代々の土地を守りたい」とおっしゃっていて、大変深い感銘を受けました。(詳しくはこちら

 

そうした地域や農家さんの助けに少しでもなりたいと、強く思っています。人手不足の解消だけでなく、農地や地域の価値を守ることにもつながる仕事だと考えています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

最大の壁は、2019年に農業ロボット事業を立ち上げてから昨年頃まで、世間や投資家から十分な評価を得られなかったことです。

 

「農業×ハードウェア(ロボット)」という領域は、開発に多くの時間と資金が必要でありながら、短期間で急成長しにくい分野だと見られる傾向があります。そのため資金調達には非常に苦労しました。

 

そこで、サステナジーの再エネ事業で生み出した利益をロボット開発へ投資しながら、地道に開発を続けてきました。決して簡単な道のりではありませんでしたが、現場の課題解決に必要な技術を積み重ねてきた期間でもあります。

 

そんな中、昨年の後半頃から「フィジカルAI」、つまり現実世界で稼働するAIやロボットへの注目が高まり、状況は大きく変わりました。これまで愚直に取り組んできた開発が評価されるようになり、今回の資金調達にもつながっています。長い苦しい時期を乗り越え、ようやく追い風が吹いてきたと感じています。

頭に浮かぶ、各地で頑張る農家さんの顔

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

ご協力頂いている農家さん、訪問した先の農家さんの顔や、現場の風景が頭に浮かぶことが、進み続ける原動力です。

 

先ほどお話しした宮崎県のお茶農家さんをはじめ、各地で頑張っている方々の姿を思い出すと、「絶対に形にして役に立ちたい」との気持ちが自然と湧いてきます。

今後やりたいことや展望をお聞かせください

現在、当社では作物ごとに畑の画像データを蓄積しており、特にパクチーの圃場画像データの保有量は日本一ではないかと自負しています。来年にはレタスでも国内最大規模のデータを保有しようと計画しています。

 

今後はキャベツや枝豆など対象作物をさらに広げ、農業画像データの分野で圧倒的なアセットを持つ企業を目指します。そのデータをAIで解析することで、より効率的で高品質な栽培ノウハウを確立し、日本の農業全体に貢献していきたいと考えています。

 

一方、直近の目標は、来年4月にご予約いただいている20台を確実に出荷することです。国内だけでも1万台以上の潜在ニーズがあると試算しており、製造体制を早期に整え、全国の農家さんへ届けたいと考えています。

 

酷暑の中で長時間しゃがみながら行う草取りは非常に過酷な作業です。まずは、その負担をロボットで軽減することが私たちの使命です。

 

将来的には、人間が涼しいオフィスで作戦会議をし、実際の過酷な農作業や巡回はロボットのシンロボが担う未来を描いています。

 

SYN-ROBOTICSの「SYN」には「一緒に(シンクロする・共生する)」の意味を込めており、人を排除するのではなく、人とロボットが協働して農業をアップデートしていく世界を目指しています。
シンロボの夢(シンロボ公式Xのエイプリルフールのネタ画像ですが、実現したい未来の姿です)

 

経験と人脈を武器に、ミドル・シニアこそ挑戦を

起業しようとしている方へアドバイスをお願いします

起業というと若い方のイメージがあるかもしれません。しかし、アメリカの調査では、成功した起業家の平均年齢は45歳というデータもあります。

 

社会人として培ってきた経験や人脈、そして困難を乗り越えてきた経験は、大きな強みです。ミドル・シニア世代だからこそ、多少のトラブルや想定外の出来事にも冷静に対応し、広い視野で事業を進められるのではないかと思います。

 

役職定年や退職といった人生の節目は、新しい挑戦を始める絶好のタイミングでもあります。そうした転機を前向きに捉え、ぜひ起業という選択肢にもチャレンジしていただきたいと思います。

 

<PR>お知らせ:第16回 農業WEEK(J-AGRI TOKYO)に出展します!

株式会社SYN-ROBOTICSは2026年10月7日(水)〜9日(金)に幕張メッセで開催される「第16回 農業WEEK」(通称:J-AGRI、GARDEX・TOOL JAPAN同時開催)に出展いたします。

 

このたび、展示会公式サイト内の出展社ページが公開されました。畑に常駐し、除草と圃場見回りを自律的に行うAI農業ロボット「シンロボ」の紹介や実証映像、資料をご覧いただけます。ぜひご覧ください。

 

【日時詳細】

会期:2026年10月7日(水)〜9日(金) 

会場:幕張メッセ 小間番号:32-59

出展社ページはこちら

▼ご招待

下記URLからのご登録で当日使える【ランチ券1,000円分】プレゼント!

https://www.jagri-global.jp/tokyo/ja-jp/register.html?code=1753148624243027-GPW

本日は貴重なお話ありがとうございました。

起業家データ:柳本 友幸 氏

東京大学法学部卒業。デジタルハリウッド大学大学院デジタルコンテンツマネジメント修士コース卒。
アクセンチュア株式会社、ボストン コンサルティング グループを経て、PEファンドにてM&A・企業再生に従事。東日本大震災後は岩手県気仙地域(大船渡市・陸前高田市・住田町)にて復興支援事業に携わる。
その後、ドン・キホーテホールディングスのプロジェクト推進室(M&A・新規事業企画)室長を経て2019年5月に退職。
2018年3月にサステナジー株式会社のアドバイザーに就任し、2019年6月に副社長就任。2021年よりシンロボ事業に参画し、2026年3月に同事業をスピンオフして株式会社SYN-ROBOTICSを設立、代表取締役COOに就任。

企業情報

法人名

株式会社SYN-ROBOTICS

HP

https://synrobo.ai/

設立

2026年3月6日(サステナジー株式会社からのスピンオフ)

事業内容

  • AI搭載の自律稼働農業ロボットシステム「シンロボ」の開発・社会実装(露地栽培の畑作向け。除草・圃場状況把握など身体的負担の大きい反復作業を再生可能エネルギーで自律稼働するロボットが代替)
  • 取得データのAI学習による判断精度・作業品質の継続的改善(将来的には播種・収穫の多機能化、栽培データを活用したAI栽培判断支援機能を拡充予定)
  • 芝浦工業大学・早稲田大学・株式会社イクシスとの産学連携体制による共同研究・共同開発

 

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