株式会社プランニングオフィスRoom375  代表取締役  福島美邦子

株式会社プランニングオフィスRoom375は、マーケティングの発想を取り入れたデザインリフォームや、中小企業が資金を出し合って子育て世帯を支える民間型の子ども支援制度「ミラインカム」を手掛けています。延べ7,000人以上の生活者研究で培った、業界の常識を疑うマーケティングの視点を軸に事業を組み立てている点が特長です。今回は、代表取締役である福島美邦子氏に、ミラインカムを立ち上げた社会課題への想いや、業界の常識を問い直すこだわりについて伺いました。

リフォームからマーケティング、子ども支援まで。3つの柱で社会に向き合う

事業の内容をお聞かせください

株式会社プランニングオフィスRoom375は、デザインリフォームとインテリアコーディネートの設計施工、そしてマーケティングコンサルティングを手掛けています。

 

私は建設業界には異業種から参入しました。そのため、これまで延べ7,000人以上の生活者インタビューを行ってきた経験を生かし、従来の建設会社や工務店にはなかったマーケティングの視点を取り入れたリノベーション事業を展開しています。

 

デザインリフォーム事業では、都市部の空き家問題やマンション価格の高騰に着目しています。住宅価格の上昇により、若い世代が家を購入しづらい状況が続くなか、空き家や中古住宅をリノベーションして有効活用することで、無理のない住まい選びを実現する提案を行っています。

 

そして約1年半前に、ソーシャルビジネスに挑戦してみたいとの想いから、企業参加型の子ども支援プラットフォーム事業であるミラインカムを立ち上げました。これは、行政の福祉政策や富裕層・財団による寄付とは異なり、中小企業が力を合わせて子どもたちや子育て世帯を支える新しい仕組みです。

 

支援を受けた子どもたちが、将来は地域や社会、さらには支援企業を支える人材へと成長していく、そんな持続可能な社会インフラを目指しています。  企業は1世帯あたり月額5,800円から参加でき、そのうちシステム使用料・運営費を差し引いた残る5,000円を子育て世帯の口座へ毎月直接振り込みます。

 

企業にとって負担が少なく継続しやすいだけでなく、お金の流れが明確で、支援の透明性を確保できることも大きな特徴です。 私たちが現金支給にこだわるのには理由があります。

 

子ども食堂やフードバンクなどの支援も重要ですが、用途を限定しない現金であれば、食費の補填だけでなく、親御さんの資格取得や就職活動、子どもの塾や習い事など、それぞれの家庭が自立に向けて本当に必要なことに活用できます。そのため単なる生活支援ではなく、「格差から抜け出すための自立支援」につながると考えています。

 

また、公的な給付金は支給までに時間がかかったり、一時的な支援にとどまったりすることが少なくありません。一方、民間だからこそ実現できるスピード感と、毎月定額で届けるサブスクリプション型の仕組みによって、迅速かつ継続的な支援を可能にしています。 

 

私たちが特に支援したいのは、生活保護の対象にはならないものの、経済的に厳しい状況にある「支援のはざま」にいる子育て世帯です。例えば、年収200万〜300万円程度で懸命に子育てを続けるシングルマザー世帯などは、勤務形態や家庭環境の制約から正社員として働くことが難しいという構造的な課題を抱えています。

 

さらに、金銭的な支援にとどまらず、賛同企業の人材・仕事・教育などのリソースを活用し、お母さんたちの資格取得支援や正社員登用、業務委託案件の紹介など、キャリアアップの機会づくりにも取り組んでいます。

 

行政だけでは手が届きにくい領域を、民間企業ならではの柔軟性と継続力で支え、子どもたちと子育て世帯が自立し、未来を切り拓いていける社会の実現を目指しています。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

リフォーム会社を立ち上げたきっかけは、自宅を建築した際の経験でした。当時、建築士、現場監督、そしてインテリアコーディネーターである私の3者で家づくりを進めたのですが、多くの方が土地や建物本体に予算をかけ過ぎてしまい、毎日目にする内装やインテリアに十分な予算を残せていない現実を目の当たりにしました。

 

そこで、予算配分を最適化し、本当に居心地の良い空間に投資してもらいたいというマーケティングの発想から、リフォーム会社を立ち上げました。建設業界はまったくの未経験だったため大きな挑戦ではありましたが、その分、業界の常識にとらわれない視点で事業をスタートすることができました。

 

一方、ミラインカムを立ち上げた背景には、社会人として30年以上、日本経済の変化を見続けてきた中で抱いた問題意識があります。私が社会人になった1990年代初頭は、日本企業が世界の時価総額ランキングの上位を占めるような勢いのある時代でした。

 

しかし、その後の「失われた30年」を経て、経済の停滞や国際競争力の低下を目の当たりにし、「自分たち世代だけが逃げ切れればいい」という考え方には強い違和感を抱くようになりました。また、現在は中小企業の人手不足や採用難が深刻化しており、私たちが携わる建設業界でも、職人不足によって仕事があっても受けられないケースが増えています。

 

将来の日本を支える子どもたちを、社会全体で育てていく仕組みが必要だと強く感じるようになりました。さらに、「親ガチャ」という言葉が広く使われるようになったように、家庭環境によって子どもたちの学びや体験の機会に大きな格差が生まれています。

 

私たちが子どもの頃は、家庭の経済状況に関わらず同じように遊び、成長できる環境がありました。しかし今は、教育や習い事など、将来につながる機会そのものに差が生じています。この状況を大人として見過ごすことはできませんでした。子どもたちが家庭環境に左右されず、自分らしい未来を描ける社会をつくりたい。その思いが、ミラインカムを立ち上げる原動力になっています。

裏表のないコミュニケーションと、徹底した傾聴

仕事におけるこだわりを教えてください

相手の立場や年齢に関係なく、誠実かつオープンに向き合うことを何より大切にしています。裏表のないコミュニケーションを心掛けることで、自然と信頼関係が生まれ、同じ志を持つ仲間やパートナーが集まってくると感じています。

 

もう一つ大切にしているのが、マーケティングの基本である「傾聴」です。データを徹底的に分析することはもちろん、現場の声や生活者の本音に耳を傾ける姿勢を何より重視しています。その積み重ねが、本当に求められるサービスや価値の創出につながると考えています。

 

これまで私は、大手広告代理店を通じて、さまざまな業界の商品開発や消費者分析、競合分析に携わってきました。その経験から培った「生活者のインサイトを見つけ出す力」と、「業界の常識を疑う視点」は、現在の事業にも大きく生かされています。

 

例えば、他業界の成功事例や発想をリフォーム業界に取り入れることで、新たな価値を生み出しています。「家は新築を購入し、長期間の住宅ローンを組むもの」という固定観念にとらわれず、中古住宅をリノベーションして住居費を抑え、その分を教育や趣味、将来への自己投資に充てるといった新しいライフスタイルも提案しています。

 

既成概念に縛られるのではなく、「本当にそれが最適なのか」を問い続けることや、生活者にとってより良い選択肢を増やすことが、私のマーケティングアプローチの根底にある考え方です。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

未経験での参入だったため、特に資金繰りの面で大変苦労しました。案件を受注できていても入金までの期間にタイムラグがあり、キャッシュフローが追いつかないことや、建設業界特有の代金回収の難しさなど、実際に事業を運営する中で多くの課題に直面しました。  

 

また、ミラインカムのようにゼロから新規事業を立ち上げる際には、「なぜ子ども支援で企業がお金を出すのか」という部分への理解を得る難しさもありました。事業の必要性や理念を社会に伝え、共感していただける仕組みをつくるまでには、試行錯誤の連続でした。  

 

それでも、理念に共感してくださる企業様が少しずつ増えてきたことが、大きな支えになっています。

誰もやっていないからこそ挑戦する。共感が生む手応え

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

「誰もやっていないからこそ、挑戦する価値がある」という思いが、私を前へ進ませる大きな原動力になっています。

 

そして、もう一つの支えとなっているのが、私たちの理念に共感してくださるパートナーやクライアントの存在です。打ち合わせの場で「素晴らしい取り組みなので、ぜひ参加したい」と言っていただけたり、お客様から「相談して本当に良かった」と感謝の言葉をいただけたりする瞬間に、これまでの苦労が報われたと感じます。

 

そうした一つひとつの声が、事業を続ける意味や、さらに挑戦していく力につながっています。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください

今後はミラインカムをライフワークとして育て上げ、日本全国の中小企業と子どもたちをつなぐ持続可能なインフラにしていきたいと考えています。

 

日本には約330万社の中小企業がありますが、素晴らしい技術を持ちながらも知名度不足で事業継続が困難になるケースが少なくありません。私は、この事業を通じて企業が元気になり、その力で未来を担う子どもたちを支えるという好循環を生み出したいと考えています。 

 

目指しているのは、単なる寄付の仕組みではありません。支援企業同士が新たなビジネスにつながるネットワークを築き、企業価値の向上にもつながるエコシステムです。すでにスポーツチームや異業種との連携も始まっており、少しずつその輪が広がっています。 

 

子どもの未来や社会課題解決に関心をお持ちの中小企業様と、共に成長を目指すパートナーとして手を携えていければ幸いです。そして、先人たちが築いてきた日本社会への恩返しとして、持続可能な産業と次世代を支える仕組みづくりに貢献していくことが、私の目標です。 

一歩を踏み出す誇りと、本音で話せる仲間の力

起業しようとしている方へアドバイスをお願いします

日本において起業にチャレンジする人は、全体のごく数パーセントに過ぎません。その一歩を踏み出そうとしていること自体に、ぜひ誇りを持っていただきたいです。私からのアドバイスは、本音で相談できるメンターや仲間をつくることです。

 

事業を続けていれば、必ず壁にぶつかり、心が折れそうになる瞬間が訪れます。そんなとき、一人で抱え込まず、腹を割って話せる相手がいることは、大きな支えになります。起業は決して一人で成し遂げるものではありません。信頼できる仲間と支え合いながら、一歩ずつ前に進んでいくことが、事業を長く続けるために何より大切だと考えています。

本日は貴重なお話ありがとうございました。

起業家データ:福島 美邦子 氏

延べ7,000人以上の都市生活者のニーズ・価値観研究に携わってきたマーケティングコンサルタント・インテリアコーディネーター。個人事業主を経て、2013年4月に株式会社プランニングオフィスRoom375を創業。マーケティングの発想を取り入れたデザインリフォーム事業やマーケティングコンサルティングを手掛けるほか、約1年半前には企業参加型の子ども支援プラットフォーム「 ミラインカム」を立ち上げた。

企業情報

法人名

株式会社プランニングオフィスRoom375

HP

https://room375.com/

設立

2013年4月

事業内容

  • リフォーム工事・新築工事の設計施工の請負および紹介斡旋業務
  • インテリアおよびリフォームに関するプランニング・コーディネート業務
  • マーケティング企画・リサーチ業務
  • 民間型子ども支援制度「ミラインカム」の運営をはじめとする子育て支援事業
送る 送る

関連記事

関連記事