BREATHER株式会社 取締役 宇田川一弥  氏

BREATHER株式会社は、深い呼吸をサポートするアイテムやサービスの企画・開発から販売までを手がける会社です。「ston」「REBOO」「fufuly」といった商品で、普段は無意識に行っている呼吸を、意識的に切り替えることで、心身のモードチェンジへと導き、「呼吸市場」という新しい市場の創造に取り組んでいるのが特長です。今回は、取締役である宇田川一弥氏に、呼吸市場という新しい市場の醸成や、愛を軸としたチームづくりについて伺いました。

無意識の呼吸を意識に変える「呼吸市場」の創造

事業の内容をお聞かせください

当社は、深い呼吸をサポートする商品の企画・開発からマーケティング、販売までを事業の中心に据えています。当社は「呼吸市場」という新しい市場をつくろうとしている、いわば新規事業の会社です。

 

「呼吸市場」という言葉は、まだ世の中に浸透しておらず、当社が掲げ始めたものです。かつては水道水を飲んでいた時代から、今では誰もがお金を払って水を買うようになりました。

 

それと同じように、呼吸も生まれてから死ぬまで誰もが無意識に行っていますが、生きるための呼吸ではなく、心を豊かにするための呼吸のアプローチがあってもいいのではないかと考えています。呼吸を通じてメンタルやフィジカルに寄与できると信じ、さまざまなデバイスやサービスを開発しているのです。

 

呼吸は無意識に行っているからこそ、意識レベルに引き上げることがとても難しいものです。人は1日に2万回から2万5000回ほど呼吸をするといわれますが、その中で意識してとっている呼吸は、おそらくゼロか数パーセントにすぎないでしょう。

 

だからこそ、何かのアイテムやサービスがあることで自然と呼吸が深くなる、そんな体験を当社が提供し、そこに他のプレイヤーも参入してくれれば、一つの市場として成り立っていくと考えています。

 

現在は3つの商品を展開しています。1つ目の「REBOO」は、鼻から香りを吸うという、タイで流行りの商材にインスピレーションを受けて作ったアイテムです。いい香りとメントール感によって、鼻からの呼吸が自然と深くなります。

 

現代人は9割ほどの方が浅い呼吸をしすぎているといわれ、深い呼吸ができていません。そこで当社は深い呼吸でメンタルやフィジカルを整えることを推奨していて、その入り口として、いつでもどこでも気分転換やリフレッシュに使えるのがREBOOです。

 

2つ目の「fufuly」は、抱きかかえる用の柔らかなクッションで、まるで呼吸をしているようにゆっくりと動きます。人と人でも、人と動物との間でも良いのですが、何らかの媒体を通して呼吸が同調することが研究で確認されています。

 

呼吸が浅い方が、ゆっくり動くクッションを抱いていると、5分から10分ほどでそのリズムに同期し、ただ座って抱いているだけで自然に呼吸が深くなっていくのです。

 

 

3つ目の「ston」は、口から深く吸うと蒸気が出なくなる深呼吸をサポートするデバイスです。深くしっかり吸い込めば蒸気が出ず、逆に浅く吸うと蒸気が出てしまうため、蒸気の有無で「いい呼吸ができているか」を可視化できます。

 

商品ごとに対象とするユーザーは異なります。REBOOは、仕事や勉強、スポーツ、創作などに没頭したいときの集中のスイッチとして、比較的若年層に使っていただきたいと考えています。fufulyは在宅ワークの合間のひと息にぴったりで、可愛らしいデザインもあって20代から40代の男女を中心に想定しています。stonは男女を問わず幅広く使っていただけるものです。

 

呼吸は本来、フィジカルやメンタルのパフォーマンスに関わるウェルネスの領域です。ただ、あまりに普遍的に日々誰もが行っている行為だからこそ、無意識下で呼吸が浅くなっている方が多いようです。呼吸の価値の啓蒙も含め、もっと多くの人に呼吸の大切さや、そのスイッチは誰もが等しく持っているということを、伝えていきたいです。

 

また、当社はベンチャーですから、総花的な広告やイベントプロモーションはできませんし、大手と体力勝負をしても勝てません。そこで、今は反応が広がりそうな手応えのあるトライブで受容性検証を繰り返しながら徐々に拡大をしてきています。

 

例えばREBOOでは、eスポーツの領域を主たるターゲットとし、お役に立てそうかを検証しています。試合の合間や直前の切り替え、集中の手段として使われる場面が多く、シーンから入り込むことを狙って、コラボレーションやプロモーションを展開しているところです。

 

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

当社の創業者は既に会社を離れておりますが、呼吸の可能性に気づき、我々に何ができるかという考えからこの事業をスタートしたと聞いています。

 

私自身がこの会社に加わった経緯は、たまたまのご縁でした。前職は大手飲料メーカーでしたが、7年間海外で仕事をしていました。2025年の4月に帰国した際、知人から「こういうのがあるよ」と声をかけてもらいました。話を聞いてみたいと伝えたところとんとん拍子に進み、転職して今に至ります。

 

帰国のタイミングで改めて次に何をしようかと考えたとき、新たにチャレンジできる場所がいいと思っていました。そこにちょうどご縁があったため、同年9月から加わらせていただきました。

一言でいえば「愛」。みんなが笑顔でいられる場をつくる

仕事におけるこだわりを教えてください

仕事で譲れない軸は、「関わるみんなが笑顔でいてほしい」ということに尽きます。チームのメンバーも、お客様も、パートナーの方々も、全員に笑顔でいてほしいのです。

 

そのために心掛けているのは、自分自身がなるべく笑顔でいることです。ベンチャーの活動をしていればさまざまなことが起こりますが、そういうときこそブレず、メンタルを乱さないようにしたいと考えています。海外では多様なメンバーのマネジメントを経験しましたが、そこで得た私のこだわりは、皆が一番成長できる場を提供することと、笑顔で働ける環境をつくることでした。

 

これを一言でいえば『愛』だと思っています。商品に対する愛でも、人に対する愛でも、会社に対する愛でもかまいません。

 

愛があると、無限のパワーが出るものです。たとえば大切な人が100km離れていても、会いに行こうと思えますし、実際に行けるでしょう。愛がなければ、遠いしお金も時間もかかると、行かない理由ばかりが並びます。それを越えられるのは愛だけだと私は思っています。ですからメンバーには、私にでも会社にでもなくていいので、何かに愛を持ってほしいと常に伝えています。

 

 

入社から今までの最大の壁を教えてください

最大の壁は、具体的なトラブルではなく、全体的にチームの歯車が上手く回っていなそうだな、と感じたことでしょうか。私が加わったタイミングでは、みなさん本当に優秀なのに、その熱量を引き出すことが課題だったように思います。みんな積んでいるエンジンは立派でも、それを動かすガソリンがなくて惜しい、と表現するのが近いかもしれません。

 

そこでこの1年ほどは、組織の体制や役割分担、やることとやらないことの整理に取り組んできました。中でも最初に手をつけたのは、やらないことを決めることです。たとえば無駄と思える会議はまず削る、など。過去から継続していることを健全に疑い、「今やるべきこと」でなければやめる、という要領です。

 

やらないことを決めて、やることに集中すれば、スピードも上がり、質も量も変わってきます。実際、先にご紹介したREBOOも、私が入る前は『2026年内に出せたらいいな』という程度の温度感で、次の一手も2〜3年はかかる見立てでした。それを、やることにスピード感をもって集中して取り組むことで、今年4月に出すことができました。

目の前のことに全力を注ぐ。素直さが原動力になる

今後やりたいことや展望をお聞かせください

今後の目標は、「呼吸って実は大切だよね」と当たり前に語られる状態をつくることです。それが何年先になるのか、あるいはそんな未来が来ないのかもしれない、という前提も踏まえたうえで、今は全力でやるべきことをやっています。

 

そのために大事なのは、商品を売ることだけでなく、市場の下地をつくることだと考えています。極端にいえば、意識して呼吸を変えることができる世界が当たり前にすること。「日常の呼吸を少し変えるだけで、いつでも・どこでも・だれでも、自分の状態や気分をモードチェンジできる」という認識を社会に浸透させることが大切だと思っています。

 

まずは、呼吸を語ってくれる人を増やす活動が土壌を耕すことになるでしょう。そうして耕した畑に商品という種を植え、芽を出させ、事業として花をさかせていく。1本咲いて終わりではなく、それが森になっていくように、広げていく。

 

そうした商品開発やサービス開発、そして呼吸の研究、啓蒙、アライアンスの構築等、これらを同時並行で行っていきます。急に呼吸に関する本がベストセラーになったり、著名人の一言でブームになったりするなど、どこから火がつくかはわかりません。火が付いたときに先頭に立っていられるよう着々と準備を進めていきたいと考えています。

 

ただ、こうしたブームは狙って起こせるものではありません。そこで、新規市場を創出した他社や他商材の研究を重ね、再現性を探しています。たとえば睡眠市場は、眠りの長い短いしかなかったところに『睡眠の質』の新しい軸を持ち込み、枕や乳酸菌飲料といった商品が売れる市場ができました。こうした新市場創出の事例を研究し、呼吸に応用できないかと考え続けています。

 

また、呼吸価値に共感する企業、専門家、研究者、流通、小売などの参入を促し、呼吸市場における商品・サービスや接点を増やすことも大事です。弊社だけで市場を拡大するのではなく、多様なプレイヤーが互いの知見、技術、顧客接点を持ち寄り、市場が自律的にスケールするエコシステム的構造をつくることも大事だと思います。

 

 

想像もしないことが起こる。それを受け流す力がついてくる

起業しようとしている方へアドバイスをお願いします

私は起業経験がないので、エールとしてお伝えします。新しい市場をつくるとは、そもそも想像もしていなかったものを生み出すことです。ですから、本当に予想もしないことが次々と起こると思います。

 

当社もそうした場面を数多く経験してきました。けれども、それをよくあることだと受け流せる力は、現場を重ねるうちに少しずつついてきます。

 

もともと起業される方は、ネガティブなことをプラスに変えていけるメンタリティを持っているはずです。そうした強さは、実際の現場で経験を積むほど、より強靭になっていきます。失敗の中からこそ成功が見つかると思いますから、めげずに頑張ってください。

 

 

本日は貴重なお話ありがとうございました。

役員データ:宇田川 一弥 氏

新卒で食品会社に入社し、マーケティング等に従事。その後大手総合食品飲料メーカーへ移り、主に海外で勤務する。帰国後にBREATHER株式会社へ入社し、取締役に就任。深い呼吸をサポートする商品の開発・販売と「呼吸市場」の創造に取り組んでいる。

企業情報

法人名

BREATHER株式会社

HP

https://www.breather.co.jp/

設立

2019年

事業内容

  • 深い呼吸で没頭状態へ導く「嗅ぐ深呼吸」アイテム「REBOO」の企画・開発・販売
  • 呼吸する(ロボット)クッション「fufuly」の企画・開発・販売
  • 深い呼吸の習慣化サポートデバイス「ston」の企画・開発・販売
  • 「呼吸市場」という新市場の創造(深呼吸の習慣化を目的としたデバイス・サービスの企画・開発・販売を通じ、こころ豊かなライフスタイルの実現に貢献)

 

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