株式会社を設立する際には、資本金額を設定しなければいけません。適切な金額で資本金を設定できれば、社会的信用度を得やすくなったり取引先と契約しやすくなったりします。

 

反対に、適切な額の資本金を設定できなければ、税金面でのデメリットが生じてしまうかもしれません。

 

今回は、株式会社設立時の資本金に必要な金額や金額を決めるときのポイントについて解説します。この記事を参考にすることで、株式会社設立時の資本金額の適切に設定できる可能性が高いです。

株式会社設立で必要な資本金の仕組みとは?

株式会社設立で必要になるのが「資本金」です。資本金とは、会社を経営していく上で必要な運転資金であり、資本金が多いので取引先へ安心感を与えられます。

 

また、資本金の内訳としては「経営者の自己資金」と「投資家から集めた資金」に分けられます。資本金は、会社の売上や業績とは関係ないため「資本金が多いから事業が安定している」とは言い切れません。

 

株式会社設立する上では、資本金について理解していないと、税金面や社会的信用の面でデメリットが生じる恐れがあります。これから株式会社の設立を考えているなら、資本金の仕組みを理解しておくことが大切です。 

 

株式会社設立時の資本金について知っておくべきこと

株式会社設立時の資本金について知っておくべきこととしては、下記3つが挙げられます。

 

  • 資本金額は最低1円から
  • 資本金は社会的信用度に直結する
  • 事業に関わる様々な用途で使用可能

 

資本金の内容や使用金額について理解しておくことで、現在の資金に応じて適切な資本金額を設定できます。誤って資本金も設定しないためにも、上記3つは株式会社設立前に理解しておくことが大切です。 

 

資本金額は最低1円から

資本金額は、最低1円からでも設定可能です。2006年以前は、資本金の下限額が定められていました。しかし、2006年に会社法が改正されたことにより、従来の最低金額に関する内容が取り消されました。

 

資本金が1円でも株式会社を設立できるようになったことで、自己資金が少なくても株式会社を設立できるメリットがあります。しかし、資本金を最低金額にすることで、取引先からの信用を得づらかったり金融機関からの融資を受けづらくなったりするため注意が必要です。 

 

資本金は社会的信用度に直結する

株式会社における資本金は、社会的信用度に直結します。資本金と業績がイコールなわけではありません。しかし、他社が閲覧する情報として資本金は大きな指標となるため、資本金が少なすぎると社会亭信用度が低下してしまいやすいです。

 

資本金が社会的信用直結しやすい例として、法人用口座の開設や銀行融資の申し込みが挙げられます。資本金が多ければ多いほど、スムーズに口座開設ができたり多額の融資を受けられたりします。

 

ただ、一概に資本金が多ければ良いというわけではありません。資本金額を高額に設定することで、消費税の課税対象となる恐れがあります。資本金額によっては、税金面でデメリットが生じる恐れがあるため注意が必要です。 

 

事業に関わる様々な用途で使用可能

資本金は、事業に関わる様々な用途で使用可能です。例えば、事業に必要な備品の購入や従業員への給与などが挙げられます。

 

ただ、事業のほとんどに使用できるからといって、自己資金全てを資本金に回すのはおすすめしません。なぜなら、資本金は個人の生活に関して使用できないからです。

 

資本金を経営者の自己資金から用意する際には、個人資産と資本金を明確に分けておくことをおすすめします。 

 

株式会社設立時の資本金はいくら必要?

株式会社会社設立時の正しい資本金額は、会社によって異なります。そのため、資本金は〇〇円からがおすすめという具体的な数字はありません。

 

自己資金とのバランスはもちろんのこと、初期投資と運転資金の割合も考えてから判断することが大切です。ただ、初めて株式会社を設立する人は、資本金の目安がいくらなのかもわからないかもしれません。

 

自社の使用金額を設定するなら、他社の資本金額を参考にしてみましょう。株式会社設立時の資本金は、公式に発表されています。次の章で、株式会社設立にかかる資本金額の平均を解説するので参考にしてみてください。

 

株式会社設立にかかる資本金額の平均

株式会社設立にかかる資本金額の細かい数値は公表されていません。しかし、大まかに資本金額別の企業数は公表されているため、下記を参考にしてください。

引用:第11表 法人数の内訳|令和2年会社標本調査|国税庁

 

株式会社の資本金としては、200〜500万円に設定している企業が最も多いです。また、資本金を100万円以下にしている企業も多くなっています。

 

ただ、適切な資本金額は会社によって異なります。許認可や融資によっても資本金額が異なるため、どんな事業内容で融資はどれくらい受けたいのかを考えた上で判断することが大切です。

 

株式会社設立に必要な資本金額を決める時のポイント

株式会社設立に必要な資本金額を決める時のポイントは、下記の4つです。

 

  • 初期投資と運転資金を考える
  • 社会的信用度を考える
  • 税金や融資なども考慮する
  • 増資のメリットデメリットを理解しておく

 

株式会社設立時の資本金額をなんとなくで判断してしまうと、経営自体がスムーズに進められなくなる恐れがあります。会社設立後に後悔しないためにも、資本金額を決める時のポイントを理解した上で判断することが大切です。

 

初期投資と運転資金を考える

株式会社設立時の資本金額を決める際には、初期投資の運転資金を考えた上で判断することが大切です。資本金額が低くても、株式会社を設立することは可能です。しかし、不足分を自己資金から補わなければいけなくなるため注意が必要です。

 

また、自己資金から会社に資金を貸した場合「役員借入金」となり、負債として勘定されます。役員借入金が多いと、自己資本率が下がってしまいます。自己資本率が低いと、社会的信用度が下がる恐れがあるため注意しましょう。

 

自己資本率の低下によって社会的信用度を下げないためにも、事業計画書を作成した上で運転資金を見極め、資本金を判断することが大切です。

 

社会的信用度を考える

資本金は、社会的信用度に大きく関わります。中には、資本金額が低いだけで取引を断られる恐れもあるため注意が必要です。

 

中には、個人事業主と取引しないと決めている会社もあります。同様に「資本金額が100万円円以下の企業とは取引しない」と決めている企業もあるため理解しておくことが大切です。

 

ただ、個人を相手に取引をする場合は、資本金額によって大きなデメリットが生じることはほとんどありません。資本金額によって取引先と契約できるかどうかが異なるのは、BtoBでビジネスを行っている企業がほとんどです。

 

BtoBでビジネスを行う予定なら、一定以上の資本金を設定しておくことをおすすめします。

 

税金や融資なども考慮する

税金や融資なども考慮した上で、資本金額を判断することをおすすめします。税金に関しては、資本金が1,000万円以下の場合には、消費税の免税措置を受けられます。また、一部の事業に対しては許認可が必要であり、資本金額が不足していると許認可を受けられないため注意が必要です。

 

資本金額を決定する際には、税金や許認可のことも考えた上で判断しなければいけません。一度設定した後でも、資本金を増やすことは可能です。しかし、後から資本金を増やすとデメリットが生じる恐れがあるため注意しましょう。

 

増資のメリットデメリットを理解しておく

資本金は、会社設立時に決定した後でも変更することが可能です。資本金額を増やすことを「増資」と言い、増資するにはメリットデメリットがあります。増資のメリットデメリットは、下記表を参考にしてください。

 

増資のメリット

増資のデメリット

  • 社会的信用度が増す
  • 流動比率が改善しやすくなる
  • 資金調達がしやすくなる
  • 軽減税率が適用されなくなる恐れがある
  • 株主の構成比率が変化する恐れがある

 

増資をすることで、流動比率が改善しやすくなり、社会的信用度の向上にも繋がります。社会的信用度が向上すれば資金調達もしやすくなるため、事業を拡大したい場合におすすめです。

 

反対に、増資を行うことで軽減税率のような税制上の優遇を受けられなくなる恐れがあります。例えば、資本金が1億円を超えた場合には、法人税の優遇が受けられなくなるため注意しましょう。 

 

株式会社設立時の資本金に関する注意点

株式会社設立時の資本金に関する注意点は、下記の2つです。

 

  • 金額によって消費税の免税措置が受けられなくなる
  • 許認可や融資において一定以上の資本金は必要

 

株式会社設立時には、注意点を理解して資本金を設定するかどうかで、経営のスムーズさが大きく異なります。経営を進める中で、資金面での負担を少しでも減らすためにも資本金を決める際には必ず理解しておくことが大切です。

 

金額によって消費税の免税措置が受けられなくなる

株式会社設立時の資本金における注意点として、資本金額によっては消費税の免税措置が受けられなくなることが挙げられます。消費税の免税措置とは、基準期間の課税売上が1,000万円以下の場合には、徴収した消費税の納税義務が免除されることです。

 

ただ、資本金が1000万円を超えてしまうと、消費税の免税措置が受けられなくなります。会社設立から2年目までの場合、消費税が免除となるため、資本金額を1,000万円以上に設定しただけで納税する税金が増えてしまいます。

 

会社設立から数年は資金繰りが厳しくなりがちです。少しでも資金を貯めなければいけないため、免税措置のことも考えた上で資本金を判断しましょう。

 

許認可や融資において一定以上の資本金は必要

許認可や融資を受けるためには、一定以上の資本金が必要になることもあるため注意しましょう。許認可とは、特定の事業を行う際に行政機関から許可を得なければならないことです。許認可を受けずに事業を始めてしまうと、罰則を受ける恐れがあります。

 

許認可の具体例としては、建設業が挙げられます。建設業で許認可を受ける場合には、資本金が最低でも2000万円以上は必要です。また、日本政策金融公庫の「新創業融資」を利用する場合には「全体として必要な資金の10分の1程度は自己資金から資本金を出資できること」が条件となっています。

 

資本金が少なくても株式会社の設立は可能です。しかし、許認可や融資において様々なデメリットが生じる恐れがあるため注意しましょう。

 

株式会社設立時の資本金額は慎重に判断すべき

株式会社設立時、資本金額を決める際には慎重に判断することが大切です。資本金額によって、その後の経営がスムーズに進むかどうかが異なります。

 

また、資本金は社会的信用度にも直結するため、事業を拡大しようとしているならより慎重に判断しましょう。

 

資本金額別のメリットデメリットを理解した上で適切な資本金を用意できれば、会社設立をしても資金繰りに困りづらくなり、スムーズに経営を進められます。

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