この記事の答え

失業保険をもらいながら起業準備をすることは、求職活動を続けていればできます。ただし、開業したり準備に専念したりすると支給は止まります。給付日数を残して開業すると「再就職手当」を受け取れることがあり、事業をやめた場合に備える「受給期間の特例」もあります(2026年10月時点)。

会社を辞めて起業したい人に向けて、起業準備中・開業後・廃業後に失業保険と再就職手当を受け取れる条件を、厚生労働省の資料をもとに解説します。

 

起業準備の場合は失業保険がもらえる可能性がある

失業保険をもらいながら起業準備をすることは、求職活動を続けていれば可能です。厚生労働省の資料でも「求職活動中に創業の準備・検討を行う方は支給可能な場合があります」とされています(厚生労働省 神奈川労働局「離職されたみなさまへ」)。

 

開業した場合や、準備に専念している場合は受け取れません。退職後に失業保険を受け取りたいなら、開業のタイミングを調整しましょう。自営の準備を始めたら、ハローワークへの申告が必要です。

 

退職後の起業で失業保険がもらえないケース

退職後に失業保険がもらえないケースとしては、下記4つが挙げられます。

 

  • 求職活動をせずに起業準備する場合
  • 自営を始めた、または自営の準備に専念していると判断される場合
  • 会社の役員に就任した場合(名義だけの役員も含む)
  • 雇用保険に入る条件(週20時間以上・31日以上の見込みなど)で働き始めた場合

 

そもそも失業保険とは?

「失業保険」は通称で、正しくは雇用保険の「基本手当」(いわゆる失業手当)のことです。雇用保険に入っていた人が離職したあと、再就職をめざす間の生活を支える給付です。

 

なお、会社の役員になった起業者や、自分の名義で事業をしている人は、原則として基本手当を受けられません。

 

失業保険の金額や日数は、下記の項目によって異なります。

 

  • 年齢
  • 被保険者期間
  • 退職理由

 

受け取るまでの流れは次のとおりです(同「離職されたみなさまへ」)。

 

  1. ハローワークで求職の申込みをし、離職票を出して受給資格の決定を受ける
  2. 7日間の待期期間(この間は支給されない)
  3. 自己都合退職などの場合は、さらに給付制限(原則1か月)
  4. 原則4週間に1回の認定日に、失業の認定を受ける
  5. 認定のおよそ1週間後に、認定された日数分が振り込まれる

 

最初の振り込みまで1か月以上かかるので、貯金がない状態での退職には注意しましょう。

 

失業保険について詳しく知りたい人は、ハローワークのホームページを参考にしてみましょう。

ハローワークインターネットサービス – 雇用保険手続きのご案内

 

失業保険の受給資格

失業保険を受け取るためには、受給資格を満たす必要があります。主な受給資格は下記のとおりです(ハローワーク「基本手当について」)。

 

  • 「失業の状態」にあること(就職する意思と能力があり、求職活動をしているのに就職できない)
  • 離職の日以前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上あること
  • 倒産・解雇などで離職した「特定受給資格者」や、やむを得ない理由で離職した「特定理由離職者」は、離職の日以前1年間に6か月以上でもよい

 

受給資格を満たしていても、次の4つの場合は受け取れません。

 

  • 病気やけがですぐに就職できない
  • 妊娠・出産・育児ですぐに就職できない
  • 定年などで退職し、しばらく休養しようと考えている
  • 結婚などで家事に専念し、すぐに就職できない

 

起業を失敗した場合の失業保険の受給資格

基本的に、退職後に起業した場合は失業保険を受け取れません。ただし2022年7月1日から「受給期間の特例」ができ、事業を休廃業したあとでも受け取れるようになりました(厚生労働省「離職後に事業を開始等した場合の雇用保険受給期間の特例について」)。

 

特例を申請すると、事業をしていた期間(最長3年)が受給期間(原則1年)に数えられなくなります。申請は、事業を始めた日などの翌日から2か月以内です。

 

たとえば離職日の翌日に起業して2年後に廃業した場合、廃業後に1年間の受給期間が残ります(「離職されたみなさまへ」p.5〜6)。もらえる日数が増えるわけではありません。

 

失業保険の受給期間

受給期間は原則として離職日の翌日から1年間で、その間に受け取れる日数(所定給付日数)は、退職理由・年齢・被保険者であった期間で決まります(ハローワーク「基本手当の所定給付日数」、2026年10月時点)。

 

倒産・解雇などで離職した人(特定受給資格者・一部の特定理由離職者)

離職時の年齢\被保険者であった期間 1年未満 1年以上5年未満 5年以上10年未満 10年以上20年未満 20年以上
30歳未満 90日 90日 120日 180日 ―
30歳以上35歳未満 90日 120日 180日 210日 240日
35歳以上45歳未満 90日 150日 180日 240日 270日
45歳以上60歳未満 90日 180日 240日 270日 330日
60歳以上65歳未満 90日 150日 180日 210日 240日

 

自己都合などで離職した人(上記と就職困難者以外)

離職時の年齢\被保険者であった期間 1年未満 1年以上10年未満 10年以上20年未満 20年以上
全年齢 90日(※) 90日 120日 150日

※特定理由離職者は、離職の日以前1年間に被保険者期間が6か月以上あれば受給資格を得られます。障害者などの就職困難者は、別の日数(150〜360日)です。

 

受給資格の決定日から7日間は「待期期間」と呼ばれ、退職理由に関わらず全員が支給を受けられません。

 

自己都合退職の場合は、待期のあとに給付制限があります。2025年4月1日以降に離職した人は原則1か月です(それより前は原則2か月)。5年間に2回以上、正当な理由なく自己都合で離職した場合などは3か月です(厚生労働省 Q&A Q20)。

 

自己都合退職で起業を考えている人も、2025年4月以降に教育訓練給付の対象講座などを受けた(受けている)場合は、申し出れば給付制限が解除されます(厚生労働省リーフレット)。

 

比較表:退職理由による違い(2026年10月時点)

倒産・解雇など 自己都合(正当な理由なし)
待期期間 7日 7日
給付制限 なし 原則1か月(2025年4月以降の離職。教育訓練で解除あり)
所定給付日数 90〜330日 90〜150日
開業して再就職手当の対象になる時期 待期が終わったあと 待期が終わって1か月たったあと

出典:厚生労働省 Q&A、ハローワーク「基本手当の所定給付日数」、ハローワーク「再就職手当のご案内」

 

失業保険の給付額は、次のように決まります(「離職されたみなさまへ」p.2〜3)。

 

  • 賃金日額=離職前6か月の賃金(賞与を除く)の合計÷180
  • 基本手当日額=賃金日額×50〜80%(60〜64歳は45〜80%。賃金が低いほど率が高く、上限額・下限額あり)
  • 受け取れる総額=最大で、基本手当日額×所定給付日数
  • 原則4週間ごとに、失業と認定された日数分が振り込まれる

 

受給期間中にアルバイトをする場合

受給期間中にアルバイトをすると、失業保険がもらえない可能性があります(厚生労働省 Q&A Q24・Q36)。

 

  • 待期期間中に働いた日は待期に数えられず、支給の開始が遅れる
  • 週20時間以上で31日以上働く見込みがあるなど、雇用保険に入る条件で働くと「就職」とみなされる
  • それ以外でも、働いた日は支給されなかったり、収入によって減額されたりする

 

働いた日は必ず申告し、迷うときはハローワークに相談しましょう。

 

知っておきたい再就職手当とは?

再就職手当とは、給付日数を残して早めに就職したり、事業を始めたりした場合に支給される手当です(ハローワーク「再就職手当のご案内」)。

 

金額は「基本手当日額×支給残日数×60%または70%」です。所定給付日数の3分の2以上を残せば70%、3分の1以上なら60%になります(基本手当日額には上限あり)。

 

たとえば基本手当日額4,000円・所定給付日数90日の人が、90日を残して再就職した場合は、4,000円×90日×70%=252,000円です(同ご案内の例)。

 

再就職手当の受給資格

再就職手当の主な受給資格は、下記のとおりです(「再就職手当のご案内」)。

 

  • 7日間の待期期間が終わったあとに、就職または事業を開始したこと
  • 就職(開業)の前日までの失業の認定を受けた上で、支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あること
  • 給付制限がある人は、待期満了後1か月の間はハローワークなどの紹介による就職に限られること
  • 離職前の会社(関係の深い会社を含む)に再び雇われたのではないこと
  • 過去3年以内に再就職手当などを受けていないこと
  • 就職の場合は、1年を超えて働くことが確実で、原則として雇用保険に入ること。受給資格の決定前から内定していた会社でないこと

 

再就職手当は、会社員として就職した場合だけでなく、事業を始めた場合も対象です。

 

起業して再就職手当をもらえる条件

起業の場合は、上の条件に加えて、始めた事業で人を雇って雇用保険の適用事業主になるか、1年を超えて事業を安定して続けられると認められることが必要です(ハローワーク札幌 Q&A)。

 

注意したいのは開業の時期です。給付制限がない人は、待期の7日が終われば対象です。自己都合退職などで給付制限がある人は、待期が終わって1か月が過ぎてから開業しないと受け取れません(教育訓練で給付制限が解除された場合も同じ。「再就職手当のご案内」)。

 

開業届などを出す前に、ハローワークに相談しましょう。

 

ベンチャー.jpが取材した起業家は、退職後のお金をどう乗り切ったか

退職して事業が軌道に乗るまでのお金の実例です。どちらのインタビューにも、失業保険を使ったかどうかは書かれていません。

 

LongWave株式会社 古賀勇輝さん

新卒で入社した楽天を退社し、フリーランスとして独立しました。独立直後はコロナ禍で取引先との契約が次々と打ち切られ、「収入がない中、税金が引かれて貯金が減っていく日々」が続いたと振り返っています(本人談)。その後、2022年2月にLongWave株式会社を設立しました。

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レジリエント株式会社 小林史弥さん

人材派遣会社で執行役員として働きながら、副業として個人事業主の開業届を出し、補助金の申請業務を受けるところから始めました。その後会社を退職し、個人事業主としての仕事が増えたことから、2022年10月に法人化しています。本人は「副業という形でセーフティーゾーンを確保しつつの挑戦」だったと話しています(本人談)。

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退職して失業保険を受けながら準備するか、在職中に小さく始めるか、生活費の見通しとあわせて考えておきましょう。

 

起業時も失業保険や再就職手当を受給できる可能性がある!

この記事の要点は次の3つです。

 

  • 求職活動を続けていれば、起業準備中も失業保険を受けられる場合がある
  • 給付日数を3分の1以上残して開業すれば、再就職手当を受けられることがある(自己都合退職は待期後1か月たってから)
  • 廃業に備えて、開業から2か月以内に受給期間の特例を申請しておく

 

失業保険や再就職手当を活用して、起業前後の資金を確保しておきましょう。

 

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執筆:ベンチャー.jp編集部/2026年10月15日時点の情報です(制度の確認日:2026年10月15日)

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