企業を経営していると必ずリスクが伴います。万が一のリスクに備えて日頃から対処法を考えておかなければいけません。
しかし、リスクが起こった際に慌てることなく安定した経営を行うにはリスクマネジメントを理解しておく必要があります。本記事では、リスクを最小限に抑えるために、経営リスクの種類や経営者が知っておくべきリスクマネジメント、企業としてリスクを抑える対処法を解説します。
経営にはリスクがつきまとう
会社を経営するとリスクは必ずつきまといます。しかし、経営環境や時代の流れなどによりリスクの種類はさまざまです。
そのため、自分が経営する会社にどのようなリスクが起こるか予測するのが難しいのも事実です。人が関わっている以上、何らかのミスやトラブルは仕方ありません。
だからこそ、リスクが起こった際に適切な対処法で処理できるかが鍵になります。また、リスクを最小限にするため、日頃から予防策を考えておくことも大切です。
経営リスクの種類
経営リスクは、経営環境や関わる人によってさまざまな種類があります。ここからは、経営リスクの種類を以下の6つ紹介します。
- 経営戦略リスク
- 財務リスク
- 事故や災害リスク
- コンプライアンスリスク
- 情報漏洩リスク
- 訴訟リスク
経営戦略は、会社の未来を大きく左右す
経営戦略リスク
るため、その分リスクも大きく影響します。経営戦略の中身は、設備投資や商品開発、受け継がれてきた事業を守ることなど幅広い戦略が必要です。
時代の流れや新たに参入してきた競合企業などにより業績が下がると会社の存続にまで影響が及びます。経営戦略を立てていても予想もしていないことが起こる場合があるため、万が一のときに対処できる方法を考えておくことが大切です。
財務リスク
経営者なら、財務に関しては一番避けたいリスクです。経営不振や売上が下がることは経営者ならもっとも恐れているリスクといえます。
財務状況が悪化すると、資金の調達で負債が拡大する恐れがあります。自社の売上げ不振だけでなく、取引先の経営状態が悪化しても、債権困難に陥る可能性もあるのです。
そのため、経営を安定させるためには、自社の収支バランスを保つことが大切になってきます。
事故や災害リスク
日本各地で起こる地震や台風、水害といった災害は予測できません。また、何らかの事故に巻き込まれるケースもあります。
災害や事故が一度起こると会社の機能が全てストップしてしまう可能性もあります。災害や事故は、自社だけでなく取引先も被災する可能性があり、その場合も業務を続けることは難しいでしょう。
そのため、災害や事故が起きてもリスクを最小限に抑える対処法を考えておく必要があります。
コンプライアンスリスク
コンプライアンスとは、企業が「法律や条例、社会的規範などの幅広い規則を守る」ことです。近年、コンプライアンスは非常に重要視されています。
会社に関わる人の不祥事や製品の不備といったコンプライアンス違反は、会社のイメージを損ない、社会的信用も失うでしょう。得意先などからの信頼を失うと倒産に追い込まれるケースもあります。
SNSの普及などにより、少しでもコンプライアンスに違反することがあればまたたく間に噂は広がるため、法律や社会的規範は常に頭に置いていなければなりません。
情報漏洩リスク
SNSやインターネットが進化している近年では、情報漏洩も重要視されています。情報管理が徹底されていない企業は得意先などから信用を得ることはできません。
情報管理は、社内での誤送信や資料の紛失といったヒューマンエラーを防ぐだけでなく、外部からの不正アクセスやデバイスのウイルス感染などにも備える必要があります。
万が一、情報漏洩が起こった場合には原因の調査や対応ができる環境を整えておくことが大切です。
訴訟リスク
取引先に渡す商品に重大な欠陥があり損害を与えた場合、相手から損害賠償を請求される可能性もあります。また、経営者や経営陣が原因により会社が大きな損害や被害を受けた場合は、会社の代わりに株主が代表訴訟を起こすこともできます。
会社として訴訟を起こす場合、損害賠償請求額は高額になることがほとんどです。なかには、数百億にも上るケースもあるため、さまざまな事態に備える必要があります。
経営者が知っておくべきリスクマネジメント
社会情勢などが大きく変化する近年、経営者は万が一のリスクに備えて回避する方法を考えておかなければいけません。ここからは、経営者が知っておくべきリスクマネジメントについて詳しく解説します。
- そもそもリスクマネジメントとは?
- リスクマネジメント4つの手順
そもそもリスクマネジメントとは?
リスクマネジメントとは、予想されるリスクが起きた際、最小限におさえるためにさまざまな視点から対処法を想定しておくことです。リスクを回避、または最小限にできないと、企業としての信頼を失いかねません。
万が一の際に、信頼を失わないよう、企業の価値を維持したまま組織的に管理しリスクを防ぐことを意識しましょう。そのため、日頃からリスクマネジメントを意識した経営が大切です。
リスクマネジメント4つの手順
ここからは、以下の流れでリスクマネジメントの手順を詳しく解説します。
- リスクを特定する
- リスクを分析する
- リスクを評価する
- リスクへ対応する
①リスクを特定する
企業内の各部署ごとにどのようなリスクが想定されるかヒアリングしましょう。このとき大切なことは、起きる確率はほとんどないだろうと無意識に放置されているリスクや、できれば避けたいリスクも含めて、細かく可視化することです。
おおまかなリスクを洗い出すのではなく、できるだけ細かいリスクを洗い出します。洗い出したリスクは「財務リスク」や「情報漏洩リスク」といったリスクの種類別にあらゆる方向からリスト化することが重要です。
②リスクを分析する
リスクを洗い出せたら、そのリスクを分析しましょう。リスクの分析では「影響の大きさ」と「発生確率」を算定します。
たとえば、不良品クレームなどを利用して過去の事例(他社含む)からある程度「影響の大きさ」と「発生確率」が算定できます。ただし、人命に関わる事故の発生や信頼損失といった数字化できないリスクも考えておかなければいけません。
そのため、さまざまな人からの意見を相対的に比べて分析することも大切です。
③リスクを評価する
洗い出したリスクを分析しても、すべてのリスクを100%対処することは難しいのが現実です。そのため、ある程度リスクの優先順位をつけておくことも必要です。
冷静な視点で、それぞれのリスクの優先順位を判断しましょう。
④リスクへ対応する
リスクの優先順位が決定したら、具体的な対策を考えます。リスクへの対応は一つではありません。
対応方法は「低減」「移転」「許容」「回避」が選択肢として挙げられます。保険への加入や最悪の場合、事業売却なども視野に入れておきましょう。
また、将来の収益を損なわない範囲でリスクを許容する想定も重要です。
企業としてリスクを抑える対処法
企業としてリスクを抑える対処法は以下の4つがあります。
- 経営トップが指揮をとる
- 危機管理マニュアルを作成する
- 従業員への教育を徹底する
- 定期的なリスクの見直しをする
経営トップが指揮をとる
リスクが発生した場合、経営トップが先頭に立ち指揮をとることで社内の管理体制が構築されます。全体的な状況を確認し、可能なら専任チームを発足させるとリスクの早期解決につながります。
経営トップが率先して対策をとっていることがわかれば、得意先などからの信頼も向上するでしょう。
危機管理マニュアルを作成する
危機管理をマニュアル化しておけば、早急な対応が可能です。ただし、マニュアルは定期的な見直しをしましょう。
社内の危機管理マニュアルは、運営体制などを引き継ぐことにもつながります。また、厚生労働省が発表している危機管理対策マニュアル策定指針も参考にするとあらゆるリスクの参考になるでしょう。
従業員への教育を徹底する
リスクが起こった場合、従業員が適切な動きができることも重要です。そのため、日頃から従業員への教育を徹底しておきましょう。
従業員への教育には、リスクを具体的に再現しながら行う「シミュレーショントレーニング」や記者会見などを想定した「メディアトレーニング」などがあります。
定期的なリスクの見直しをする
消費者の行動や法改正などは日々目まぐるしく変化しています。そのため、定期的なリスクの見直しは必ずしておきましょう。
今までは問題なかったことが、法改正などによりリスク要因になることは少なくありません。また、外部環境や自社の事業環境の変化があった場合は、新たにリスクとなる可能性もあるため、同じタイミングでリスクの見直しが必要です。
経営者はあらゆるリスクを想定して企業対策を行おう!
経営にはあらゆるリスクが伴います。リスクが起こった際に、どれだけ冷静に適切な対処を行えるかは、日頃からの企業対策が鍵になるでしょう。
想定とは異なるリスクが起こったとしても、リスクマネジメントがしっかりしていれば被害は最小限に食い止められます。経営者としてトップが率先して指揮できるよう、視野を広く持って対応できるよう心がけることが大切です。
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