スタートアップ・ベンチャー企業を成功に導くには、実際に成功している企業を参考にすると効果的です。しかし、各企業で具体的にどのようなサービスを行っているのか知らないという人も多いのではないでしょうか。

 

本記事では、スタートアップの具体的な事業例や、実際に成功している企業例について紹介していきます。また、スタートアップを成功させるポイントについても解説していきますので、参考にしてみてください。

 

スタートアップ事例10選

スタートアップの事例を10選紹介します。

 

まずは、フォースタートアップ株式会社が公表した2023年1月時点での各企業の評価額をランキング形式で下記の表でまとめました。

 

評価額とは、原則として第三者割当増資にあたって株式発行価格に、新株予約券(ストックオプション)などの潜在株式を入れた発行株式の数を掛けて出した数字となります。

 

順位

社名      

評価額

1

Preferred Networks

3,539億円

2

GVE

2,245億円

3

スマートニュース

2,004億円

4

SmartHR

1,732億円

5

TRIPLE-1

1,650億円

6

スリーダムアライアンス

1,527億円

7

クリーンプラネット

1,457億円

8

Spiber

1,457億円

9

TBM

1,339億円

10    

Mobility technologies

1,224億円      

 

引用:国内スタートアップ評価額ランキング最新版(2023年1月)|フォースタートアップ株式会社

 

評価額は企業の価値として使われることもあり、評価額が高いほど「企業の方が高い」と判断されます。

 

各企業で具体的に何をしているのか、評価額をどのような水準で上げているのかについて、以下の章で解説します。

 

Preferred Networks

Preferred Networksは、日本にあるAI企業の中でも大きく注目されているAI開発のベンチャー企業です。Preferred Networksの強みとなる機械学習と深層学習を使い、交通システム・製造業・ライフサイエンス・ロボティクスなど、多くの分野でイノベーションを起こすことを目指しています。

 

評価額は、3,539億円(2023年1月現在)にも上り、国内のスタートアップの中でも圧倒的な時価総額を誇っています。

 

2017年8月には、トヨタ自動車株式会社から自動運転技術など自動車業界におけるAI技術の共同研究・開発を行う目的で、105億円の資金調達を成功させました。直近では、2019年6月にJXTGホールディングス株式会社と石油精製プラントの最適化・自動化に関する共同研究を行うために10億円の資金を調達しています。

 

社員の約8割が技術者というAI分野における圧倒的な技術力を元に、自動車業界やエネルギーインフラ業界などさまざま業界の技術支援を行っています。

 

GVE

GVEは、「Central Bank Digital Currency」省略してCBDCプラットフォームという、中央銀行デジタル通貨の開発を主力事業とする事業です。暗号資産とは少し違い中央銀行が発行している通貨で、このデジタル通貨を基盤に安全性の高い技術「EXC」を使用したキャッシュレス決済のシステム開発に特化しています。

 

評価額は、2,245億円(2023年1月現在)です。GVEは。EXCの特許を申請し欧米などでも国際出願しており、2020年5月は米ファンドのエボリューション・ファイナンシャルグループなどから出資を受けました。出資額は総額約2,500万ドル、日本円で約27億9,625万円の資金調達に成功しています。

 

GVEは新型コロナウイルス感染拡大により、ワクチン接種やPCRの検査結果などをリアルタイムで確認できるワクチンパスポートを開発。世界中の偽物の混じったワクチン接種記録やセキュリティ技術との大きな違い、科学的なデータ分析の速さから、観光立国各所へマーケティングを進めています。

 

スマートニュース

スマートニュースは、主にスマートフォン向けのモバイルニュース「Smart news」を開発・運営している企業です。ニュースメディアと連携して、無料のニュースアプリを配信しています。ニュースだけでなく、クーポンやセール情報についても配信しており、世界5,000万ダウンロードというニュースアプリの中では圧倒的な数値です。

 

評価額は2,004億円(2023年1月現在)で、2021年9月にはコロナ禍の影響により米国ユーザーが急増したことから、米国強化を目的に251億円の資金調達を行っています。参加した投資家は日本だけでなく、米国・アジア・欧州にわたり、含まれているのは新規投資家から既存株主の両方です。

 

スマートニュースの利用は、20代以下から50代までと幅広いユーザー層を持ち、需要の高い情報を多く配信しています。そのため、ユーザー層が広く利用頻度も高いことから、日本だけでなく世界中で多くの人に利用されているのです。

 

SmartHR

SmartHRは、人事・労務の業務効率化や人材マネジメントで使える、クラウド人事労務ソフト「SmartHR」を提供している企業です。「労務にまつわる社会課題をなくし、誰もがその人らしく働ける社会をつくる」ことを目指しています。

 

評価額は1,732億円(2023年1月現在)で、2021年6月8日には人事・労務分野の業務効率化、企業による「働きたいと思う環境の整備」のため、人事・労務情報のデータ活用を推進する目的で資金調達を行っています。Light Street Capitalをリード投資家とし、新規投資家と既存株主を引受先とした新株予約権付社債・第三者割当増資により約156億円の資金調達に成功。

 

SmartHRはペーパーレス化を図れるだけでなく、入社手続きから退職手続き、年末調整、給与明細などの従業員が直接入力する手間を省くことや外部サービスとの連携も手軽に行えます。

 

TRIPLE-1

TRIPLE-1は半導体システム「KAMIKAZE」の開発をしており、主にシステム事業・エンジニアリング事業・プロダクツ事業の3つの事業を行っている企業です。エンジニアリング事業では、LSI関連技術を基盤に、ニーズに合わせたハードウェア・ソフトウェアの開発設計を提供しています。

プロダクツ事業では、自社工場を持たない製造業から依頼された、設計オーダーを製品化して納品をしており、システム事業ではメカトロニクスの設計・制作に取り組んでいます。

KAMIKAZEは、その小ささと処理能力の高さ、消費電力の低さから従来のマイニング市場においてのデメリットを全て解消することで評価され多くの注目を集めています。

資金調達先や金額は公表されていませんが、評価額は1,650億円(2023年1月現在)です。2021年5月にはローカル5G市場に参入し、ネットワークシステム「TOKI」をリリースしました。

東洋経済誌『すごいベンチャー100・2021年最新版』にも掲載され、経済界からも注目を集めている企業です。

スリーダムアライアンス

スリーダムアライアンスは、次世代交通インフラの電動化に関したサービスを第一に、電動船事業・EVサービス事業・エナジーストレージ事業を行っている企業です。スリーダムアライアンスは元々、大学教授とともにセパレータ(絶縁体)の研究開発を行っていた大学発ベンチャーとなっています。

 

評価額は1,527億円(2023年1月現在)で、セパレータの大量生産を開始し、これを使用した電池の生産も始めることを目的としてベンチャー投資家から約81億円の資金調達を成功させました。

 

スリーダムアライアンスは、リチウム電池やリチウム金属電池劣化の大きな原因となる、金属結晶デンドライトを抑制可能な「ポリイミド製セパレータ」という強みを持っています。

 

クリーンプラネット

クリーンプラネットは、地球温暖化の解決策を考え「革新的クリーンエネルギー」の実用化を目指している企業です。凝縮計画反応を用いた量子水素エネルギーを活かし、熱源や発電機でさまざまな業界で活用検討されています。クリーンプラネットでは燃やさない文明を目指し、次世代社会の「最高のインフラ」構築を推進しています。

 

評価額は1,457億円(2023年1月現在)、2019年1月28日には新水素エネルギー技術が可能性ある技術だと評価され、三菱地所から出資を受けました。詳しい金額は発表されていませんが、その時の資本金が3億650万円から8億770万円となったとされています。

 

クリーンプラネットは、世界初の画期的な量子水素エネルギーの実用化を目指し、同エネルギー領域の基礎と実用化の研究を推進し、世界的に期待を大きく集めています。

 

Spiber

Spiberは、次世代の新素材「ブリュード・プロテイン」を開発し、アパレル・ファッション事業を展開しているバイオベンチャー企業です。ブリュード・プロテインとは、多糖やタンパク質などの生物圏由来の材料を用いた、ゴミという概念のない素材となっています。

 

評価額は1,457億円(2023年1月現在)で、2021年9月8日には第三者割当等増資や三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社をアレンジャーとした事業価値証券化から、総額344億円の資金調達を成功させました。資金調達の目的としては、タンパク質などを基礎素材とした材料を産業的に使用するため、インフラを整備することを通し、地球規模の問題解決への貢献や持続可能な社会の実現としています。

 

Spiberは、環境問題の解決に貢献でき実用化が難しいと言われていた新素材を人工的に完全合成できる技術をもち、量産化にも成功させています。

 

TBM

TBMは脱炭素社会を目指し、石灰石を主な原料とする「LIMEX」という新素材を使用し、プラスチックや紙の代替製品を形成・リサイクルを目指している企業です。その他にも、LIMEXとプラスチックを50カ国で循環させることを目指すために資源循環プラットフォームを国内で構築する、資源循環事業にも力を入れています。

 

評価額は1,339億円(2023年1月現在)で、2021年7月には世界市場に進出することを目的に韓国のSKグループから135億円の資金調達に成功しています。主に、石油系プラスチックの代替となる素材を開発し、中国市場へ売り込んだ「脱プラ」の技術が評価され出資へとつながりました。

 

TBMのLIMEXは、脱プラに応える新素材として多くの注目を集め、国内6,000社・団体が取り入れています。

 

Mobility technologies

Mobility Technologiesでは「移動で人を幸せに」を目的とし、日本国内のモビリティ産業を更新する、さまざまなITサービスを展開する事業です。主に、タクシー事業者に向けた、タクシーとリアルタイムで位置情報が連携し高度な配車ロジックなどによるアプリ「GO」を提供しています。「GO」以外でも、法人向けのタクシーサービス「GO BUSINESS」やタクシーフードデリバリー「GO Dine」なども展開しています。

 

評価額は1,224億円(2023年1月現在)で、2020年7月13日にはNTTドコモ・東京センチュリー・電通グループの3社と資本業務提供を行い、2020年の累計調達額が最大266.25億円となりました。

 

これまでのタクシーを起点としたモビリティDXの推進を加速させ、スマートシティを見据えたモビリティサービスやデータサービス、自動運転サービスなどの実現を目的としています。

 

ベンチャー企業の成功例

ここでは、ベンチャー企業の成功例でよく挙げられている企業を2社紹介します。紹介する企業は、以下の通りです。

 

  • メルカリ
  • ラクスル株式会社

 

メルカリやラクスル株式会社は、どちらもインターネットを活用し誰でも簡単に利用できるサービスで成功を遂げています。

 

メルカリ

株式会社メルカリは「限りある資源を循環させ、より豊かな社会をつくりたい」という問題意識により生まれた、今や誰もが知っているフリマサービスです。2013年2月に創業され、資本金 44,110 百万円(2019年6月末時点)、主な事業内容はアプリの企画・開発・運用です。

 

テクノロジーを使って世界中の個人と個人をつなぎ、誰もが簡単に物品の売買を楽しめるサービスを展開しています。メルカリは、インターネット技術の活用やアプリのUI設計を改善・追求したこと、販売手数料が無料などのアイデアを使い成功へとつなげています。

 

メルカリが成功した大きな理由としては、高度なマーケティング技術だけでなく、アプリ一つで簡単に売買が完結することにあるでしょう。これまで、アプリ一つで売買が完結するサービスは無かったため、このような革新的アイデアで作ったサービスにより、メルカリは成功を遂げたのです。

 

ラクスル株式会社

ラクスル株式会社は、「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」というビジョンを掲げて創立されました。2009年9月に創立され、資本金26億9,436万3,800円(2022年10月31日時点)、主な事業は印刷・広告・物流コーポレートITなどを展開しています。

 

印刷の「ラクスル」では、ネットで簡単に印刷物を注文できるシステムを提供しており、平均顧客単価が1万円程度と小ロットを実現させました。これにより、今まで印刷を依頼したくても出来なかった中小企業をターゲットに、小規模な印刷の需要を大量に拾い上げることに成功しました。

 

ベンチャー.jpではさまざまな業界の起業家にインタビューしています。起業した経緯や成功のポイントを詳しく知りたい方は「起業家インタビュー」をご覧ください。

 

スタートアップを成功させるポイント

成功させるポイントは、以下の3点です。

 

  • 市場分析を徹底する
  • 資金調達を行う
  • 優秀な人材の確保

 

スタートアップは人や資金が少ないため、以下で紹介するポイントを抑えることで成功へとつながります。成功させる起業家は大きな夢だけでなく、現実的に実行するプランを構築する能力が必要です。

 

市場分析を徹底する

スタートアップを成功させるには、事業の方向性を決める際に重要な「市場分析」が欠かせません。市場分析とはそのままの意味で、市場の動向をリサーチし分析する業務です。顧客の課題は事業のモチベーションとなるもので、これを見つけることでやっとスタート地点に立つことができます。

 

市場分析で明確化すべき項目としては、市場規模・顧客の課題・競合他社の情報が挙げられます。まずは、自社が参入する市場の規模を把握し、市場に存在する潜在顧客の調査を行いましょう。調査結果を確認し、独自の製品やサービスを考案した後、それが本当にニーズに適合しているのか調査が必要です。

 

市場分析をした後、それが顧客の課題を解決していることが確認できれば、市場に向けて発表する準備ができたといえます。このように、マーケティングを成功へと導くには、市場分析の徹底が必要不可欠です。

 

資金調達を行う

資金の少ないスタートアップは、確実な資金調達が重要なポイントとなります。スタートアップは一般企業とは異なり、業績が安定していない・実績がまだないなどの理由から、信用の問題により金融機関から融資を受けられない場合があります。

 

そのため、事業が安定していない状態の時から大きな規模でスタートするのではなく、企業の成長に合わせて規模を展開していくことが大切です。どれくらいの規模でスタートするのか、回収はどれくらいでできるのかなど、現実的なプランをしっかりと立てるようにしましょう。

 

具体的な資金調達方法が知りたい場合は、以下をご覧ください。

関連記事

ベンチャー企業の資金調達方法とは?具体的なやり方やメリットとデメリットを解説

 

優秀な人材の確保

スタートアップは短期間で実績や成果を出す必要があるため、優秀な人材の確保が成功への重要なポイントとなります。例えば、リーダーシップがあり鋭い見識のある創業者をはじめ、クリエーターやエンジニアなど専門的知識を持った人材を確保する必要があります。

 

さらに、スタートアップでは斬新なアイデアや技術革新が必要となるため,事業を成功させるためにも各業界で特に能力の高い人材を結集することが求められるでしょう。

 

ベンチャー企業(スタートアップ)における成功例のまとめ

ベンチャー企業を成功させるには、新しい技術やイノベーションが必要なため、他社がどのような事業を行っているのかを把握することが大切です。また、実際に成功している事業を例にすることで、具体的なイメージを掴みやすくなります。

 

スタートアップを成功させるポイントは、市場分析を徹底する・資金調達を行う・優秀な人材の確保の3つです。本記事のポイントを理解し、新事業成功への参考にしてみてください。

 

送る 送る

関連記事