商品・サービスのイメージや認知度を向上させるためには、ブランディングが必要になります。しかし、「そもそもブランディングの意味は?」「マーケティングとの違いは?」など、お悩みの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、ブランディングの定義について詳しく解説します。マーケティングとの違いや具体的な手法も紹介しているので、ブランディングを検討している方は参考にしてください。
ブランディングとは
ブランディングとは、商品やサービスに対して共通のイメージを消費者に持ってもらうようにすることです。具体的には、「〇〇と言えば〇社」「このマークといえば〇社」など、会社名や商品名を聞いたときに消費者が思い浮かべるイメージを確立させます。
ブランディングによって消費者に商品やサービスが認知され、特定のイメージやブランド価値が定着すると、競合との差別化を図ることが可能です。ブランディングは大手企業だけでなく、中小企業にも欠かせないマーケティング活動の一つと言えます。
マーケティングとの違い
ブランディングとマーケティングの違いとして、大きく以下の5つが挙げられます。
ブランディング |
マーケティング |
|
目標 |
消費者との良好な関係を築く |
消費者の購買行動を促す |
指針 |
ブランドの存在意義を追求する |
どのようにブランドのストーリーやビジョンを届けるのか手段を模索する |
焦点 |
顧客心理 |
顧客ニーズ |
手段 |
ファン心理を形成する |
商品理解を促す |
実施期間 |
長期的 |
短期的 |
ブランディングとは、消費者のイメージを高め他社との差別化を図る活動です。具体的には、視覚的イメージや信頼性の提供などを行います。より多くのファンを獲得するためには、消費者一人ひとりにアプローチして、ブランドに対する感情を生み出す必要があります。
一方で、マーケティングとは、商品やサービスを効率的に売るための活動です。具体的には、商品の詳細や購入することによる便益などを訴求します。また、消費者のニーズを深掘り、まだ商品化されていないモノやサービスを展開することもマーケティングの一つです。
PRとの違い
PRとは、自社の情報を社会に広めるための活動です。ただし、一方的に情報を発信するのではなく、自社の関係者やステークホルダーと長期的に良い関係を築くことを前提に実施されます。
プレスリリースの配信やオウンドメディアの運営、取材対応など、PRの仕事内容は非常に幅広いです。ブランディングで形成されたイメージを基に実施されるため、ブランディングの延長上にPR施策が存在します。それぞれ行うことで、相乗効果が期待できます。
ブランディングの主な目的
ブランディングの主な目的として、以下の2つが挙げられます。
- マーケティング活動の効果を高めるため
- 社会的な価値を高めるため
ブランディングを成功させるためには、まず目的を理解することが大切です。目的を理解することで、ブランディングの効果を最大化できるようになります。
マーケティング活動の効果を高めるため
ブランディングによって自社が発信する情報への注目度が高まると、集客や販促、PRなどマーケティング活動の効果も高まります。マーケティング活動が成功すると、消費者から自社の商品・サービスが選ばれやすくなるでしょう。
売上も自然に伸びるうえ、価格競争とは無縁になる可能性があります。その結果、長期的に利益率の向上が期待できます。
社会的な価値を高めるため
ブランディングによって自社やブランドの価値が高まると、社会的信用を得られるようになります。また、自社の発信力や影響力も高まり、結果的に新商品・新サービスが注目されやすくなったり、株価が安定したりなど、他の目的も達成しやすくなります。
ブランディングの手法
ブランディングは、「ブランディングする対象」「ブランディングを実施する人」「ブランディングのターゲット」によって6つの手法に分類できます。
「何」をブランディングするか |
商品・サービスブランディング 企業ブランディング |
「誰」がブランディングするか |
BtoBブランディング BtoCブランディング |
「誰」にブランディングするか |
インナーブランディング アウターブランディング |
商品・サービスブランディング
商品・サービスブランディングとは、企業が提供する商品・サービスが消費者に選ばれ続けるために行う活動です。魅力や価値を伝えることで、ブランドのファンになってもらいます。
ただし、この手法は商品やサービスに価値があることが大前提です。食品であれば栄養素や美味しさが大前提となり、パッケージや商品名などによって価値を高めます。
企業ブランディング
企業ブランディングとは、企業のイメージや価値を消費者に伝える活動です。具体的には、環境保護や社会貢献への取り組み、オウンドメディアの運営、企業CMなどが挙げられます。
実施するにあたって、まずは企業のミッションやビジョン、バリューなどの企業理念を定義し、それを構築していく必要があります。また、CSR(企業の社会的責任)の実施も企業ブランディングの一つです。
BtoCブランディング
BtoCブランディングとは、ブランドの認知度を高めるために企業が消費者向けに行う活動です。具体的には、広告やマーケティングキャンペーン、パッケージデザインなどが挙げられます。BtoCブランディングでは、消費者の心理や行動を理解し、魅力的なソリューションを提供することが重要です。
BtoBブランディング
BtoBブランディングとは、顧客企業などのビジネスパートナー向けに行う活動です。専門知識や効果的なビジネスソリューションを提供し、信頼関係を構築することを目的としています。
インナーブランディング
インナーブランディングとは、自社の社員にブランド価値を理解・浸透させるために行う活動です。近年、消費者だけでなく、社内向けにブランディングを行う企業も増えてきています。
インナーブランディングが必要な理由は、社員の行動や消費者への対応がブランドイメージに大きく影響するからです。消費者に企業ブランドを必死にアピールしても、社員がそのブランド価値を理解していなければ、消費者の心をつかむことはできません。
企業ブランディングを成功させるためには、社員の質を上げることも非常に重要です。
アウターブランディング
アウターブランディングとは、消費者や取引企業など、社外の人に対して、自社のブランド価値を認知・拡大させるために行う活動です。企業利益に直結しやすいため、インナーブランディングよりも重要視される傾向があります。
しかし、魅力的な商品やサービスを展開し、自社のブランド価値を高めるのは社員です。インナーブランディングとアウターブランディングは相補的な関係にあるため、バランスよく行いましょう。
ブランディングを実施するメリット
ブランディングを実施するメリットとして、以下の5つが挙げられます。
- 価格競争とは無縁になる
- 利益率を高められる
- 宣伝コストを最小限に抑えられる
- 人材確保がうまくいきやすい
- 新しい市場へ参入しやすくなる
ブランディングは商品やサービスの認知度アップ以外にも、さまざまなメリットがあります。あらかじめメリットを把握しておくことで、ブランディングの効果を最大化しやすくなります。
価格競争とは無縁になる
ブランディングによって自社のブランド価値が定着すると、競合他社より少し価格が高くても購入してもらえるようになるため、価格競争に干渉されることがありません。反対に、ブランド価値が構築できていないと、競合他社との価格競争に巻き込まれてしまいます。場合によっては、商品やサービスの値段を下げなければならないこともあるため注意が必要です。
利益率を高められる
前述したように価格が高くても消費者に購入してもらえるため、利益率の向上に繋がります。また、ファンを獲得できると、他社へ離脱することもありません。新製品やサービスを展開する際も、ブランドへの信頼から積極的に購入を検討してもらえる可能性が高いです。
宣伝コストを最小限に抑えられる
ファンが自発的にSNSなどで宣伝してくれるケースがあるため、宣伝コストを最小限に抑えられます。ブランディングに成功すると「このブランドだから」と指名買いしてくれる消費者も多く、多大なコストをかけて広告を展開する必要がありません。
また、宣伝コストが抑えられるとその分利益が上がり、宣伝作業でかかるリソースを他の業務で使えるようになります。
人材確保がうまくいきやすい
ブランディングで自社の魅力を伝えられると、既存社員の自社に対する愛着が強まり、優秀な人材が入社する機会も増えます。企業が成長するためには、社員の存在が不可欠です。
優秀な人材を確保できれば、企業の成長スピードも早くなる可能性があります。また、人材不足で悩むこともなくなるでしょう。
新しい市場へ参入しやすくなる
ブランディングによって企業価値が高まると、新しい市場へ参入しやすくなります。ブランドへの信頼があるため、新たな市場の商品・サービスでも消費者は積極的に購入してくれる可能性が高いです。
また、特定の分野で実績のある企業と認知されている場合、新しい市場でも顧客の確保や利益獲得がスムーズになりやすいと言えます。
ブランディングを実施する際の注意点
ブランディングを実施する際の注意点として、以下の4つが挙げられます。
- ブランドコンセプトを明確にする
- 顧客と良い関係を築く
- 定期的に効果検証を行う
- 年数が経ったらリブランディングを検討する
ブランディングは実施すれば必ず成功するとは限りません。成功させるためには、事前に注意点を押さえておくことが大切です。
ブランドコンセプトを明確にする
消費者から愛されるブランドにするためには、明確なブランドコンセプトが必要です。ブランドコンセプトが曖昧だと新規の顧客だけでなく、既存顧客に対しても商品・サービスの魅力が伝わりにくくなります。また、ブランドコンセプト活動の一貫性が失われる可能性もあるため注意が必要です。
消費者と良い関係を築く
消費者と良い関係を築くためには、コミュニケーションを重視する必要があります。SNSを通して親しみやすさを感じさせることは、ブランディングとして有効な手法です。消費者と良い関係を築けるとブランドへの愛着がわくため、長期的な利益に繋がります。
定期的に効果検証を行う
ブランディングは効果検証を行いながら、進めていくことが大切です。効果検証を怠るとPDCAサイクルが上手く回らなくなるため、効果的な改善方法が見出せません。定期的に効果検証を行うことで、ブランディングを細かく軌道修正できます。
実際に検証する際は、提供する商品やサービス、イメージ分析を通してブランド戦略の成果をチェックします。客観的に分析するためにも、アンケートやフレームワークを活用するのがおすすめです。
年数が経ったらリブランディングを検討する
ブランディングから年数が経ったら、リブランディングも検討しましょう。リブランディングとは、既存ブランドを新たなニーズや消費者に合わせて再構築することです。最近は時代の流れが早く、時代によってトレンドも変化するため、施策もその都度最適な方法を選択する必要があります。
マーケティング活動の前にブランディングから始めよう
ブランディングとは、商品やサービスに対して共通のイメージを消費者に持ってもらうようにすることです。一方で、マーケティングは商品やサービスを消費者に購入してもらうようにすることを指します。
それぞれ定義は異なるため、その違いをしっかり理解しておきましょう。ブランディングは、マーケティング活動の効果や社会的な価値を高める役割があります。ただし、ブランディングが失敗に終わるケースもあるので、本記事で紹介した注意点を押さえたうえで実施することが大切です。自社にリソースやノウハウがない場合は、ブランディング会社の利用も検討してみてください。
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