OIKOS MUSIC株式会社 代表取締役 市村 昭宏

「OIKOS MUSIC」は、音楽の原盤権を販売・購入できるマーケットプレイスを提供しています。音源の権利をアーティストとファンが共同保有し、購入者は音楽配信サービスで生み出す印税を受け取れる新たな音楽の所有方法として注目を浴びています。

 

代表取締役を務める市村 昭宏氏に、今回は事業内容や起業の経緯、今後のビジョンについて詳しくお伺いしました。

 

音楽文化を支えていきたい

事業の内容をお聞かせください。

我々の事業は音楽の原盤権を販売・購入できるマーケットプレイスの提供です。

 

音楽には大きく分けて「原盤権」と「著作権」の二つの権利があります。原盤権は音楽を記録した人が持っている権利で、主にレコード会社が持っています。著作権はご存じの方も多いですが、その曲を作詞した人と、作曲した人が持ってる権利です。

 

我々は「原盤権」の方にフォーカスをして、アーティストとファンが共同保有できる、新たな音楽の所有方法を展開しています。原盤権は市場で取引されることはほぼありません。レコード会社同士でアーティストが移籍する時に、過去の原盤権も一緒に持っていくことはありますが、マーケットとしてはほぼ存在していないのが今の状況です。

 

この5年ぐらいで日本の音楽業界もビジネスモデルがCD中心から音楽配信サービスに変化してきています。CD1枚の値段から1回の配信再生数の価格になってきています。そうなるとアーティストへお金のバッグや権利に対しての回収が以前より非常に難しくなってきました。

 

またアーティストも自身でレコーディングして楽曲を作れるようになってきています。大きなレコーディングスタジオで大がかりに録音せずとも音楽が作れる時代です。原盤権も作った人本人が持てる状況になりました。

 

その原盤権をファンと共有し、支援することでリターンをもらえるのが、事業コンセプトです。ファンが権利を一部持つことによって、アーティストの活動に参加している感じを受けるので、リターンのある推し活に近いと思います。海外には事例のあるサービスですが、国内では権利による収益分配まで実施しているのは我々だけです。

 

「原盤権」を事業にした理由は何でしょうか?

音楽の価値をもっと高めたいという思いがありました。

 

その背景には、コロナ禍でライブや交流イベントなどのエンターテイメントに関わる仕事がほとんど行えなくなったことが強く影響しています。興行が中止になったため、年間スケジュールの半分が空き、売り上げが全部なくなる自体がおきました。その時にみんなで議論し、音楽を作り続け、届けることが財産であるという結論にいたりました。

 

そして音楽という大事な財産をしっかりみんなで管理しないといけないと思いました。そこで「原盤権」をファンと持ち合うことによって、アーティストは収益を得て、それを次の活動費や制作費に回すことができる仕組みを考えました。権利を買った人は原盤権を文化の財産として持てますし、配当ももらえます。このサービスが今後の音楽文化の発展につながると思っています。

 

音楽市場がストリーミングサービスに移行したため、国内だけでなく世界中の人に音楽を届けられるようになりました。収入もCDの場合は最初の2年ほどは売れますが、3年目以降はさほど売れなくなります。しかし今は配信で聞かれ続けていれば、ずっと収入があります。

 

権利にフォーカスをしたビジネスは、音楽文化を促進していく上でも大事な事業だと思っています。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

起業自体は初めから考えて行動してきました。現在軸足を置いているこの音楽事業は、創業して丸2年になります。これまで様々な業種で何十もの事業に携わってきています。ですので業界に関しては全く抵抗がありません。

 

事業を決める基準は2つあります。1つ目は前職の経験からきています。前職では50以上の事業に関わり、管轄や統括、新規事業の責任、ベンチャーキャピタル業をしていました。そこで流行しそうな市場観と新しいことにチャレンジしたい人の組み合わせ方を学んだと思います。

 

2つ目は人とタイミングです。今のメンバーは創業時にコロナの影響を受けて時間がありました。「時間があるかないか」は単純に思えて新しい事業をする時には大事な要素です。デザイナーやエンジニア、DJ、クリエイターが結構集まってくれました。そして率先して動いてくれ、それに共感してくれる人が出てきてくれました。

 

どっぷりと音楽業界にいるのは実は初めての状況です。今はレコード会社や音楽事務所、出版社の方々と仕事をして、いろいろ学んでいます。

 

一番大事なのはアーティストの支援

事業において意識していることやこだわりを教えてください。

アーティストファーストである点です。そしてアーティストがマネタイズする方法論やファンとコミュニケートする方法論を作っていくことです。

 

アーティストが権利をしっかり理解をして管理をしていくことが一番大事です。そのきっかけになるサービスになればいいと思って事業をしています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください。

すべてが壁だらけという状況です。日本国内でまだマーケットがしっかりと確立されていない新しい事業で、この挑戦があっているのか答え合わせしながら常に動いているためです。アプローチが正しいものなのかどうかを日々見極めながらやっています。

 

そもそも「原盤権とは何?」から始まり、認知してもらうことが大事です。そして「原盤権」を理解し購入してもらうまでのプロセスは相当新しいので、それをどう普及させていくのかが一番の壁だと思っています。

 

解決の手段として最初にした工夫は、権利を仕組みに「OIKOS」と名前をつけたことです。権利は目に見えないものなので、「原盤権」だけだとわかりにくく、実態が掴みにくいです。そこでユーザーは「OIKOSを買う」、アーティストは「OIKOSを売る」と表現することで、世の中に伝わりやすく、認知しやすい方法に変えました。

 

そしてこれから試していこうとしているのは、株券のような売買方法の提供です。株はサイトを見れば今の配当がわかるようになっています。「原盤権」も類似の売り方・買い方を提供することが一番わかりやすいのではないかと考えています。

 

進み続けるモチベーションは何でしょうか? 

「楽しくて苦しくて楽しい」がモチベーションにつながっています。もちろんメンタル的に苦しい時や悩む時は絶対ありますが、最終的に楽しいです。

 

私は1つの企画や会社、一曲に対しても、このプロジェクト期間に何を達成したら肩を組んで喜び合えるのかを設定します。もちろん売上や利益も目標にしますが、お互いが喜べる目標はしっかり設定します。

 

そして一回一回の達成感と、喜びを共有し合える環境が「楽しさ」を生み、モチベーションにつながっていきます。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください。

より大きなプラットフォームになることです。そして今まで以上にアーティストと関わりを持てるようになり、資金や環境面で彼らが活動しやすい状況を提供していきたいです。

 

あとはマーケットが日本だけではないので、世界のアーティストと一緒に曲を作り、世界同時リリースをしてみたいと考えています。例えば東京に遊びにきたアーティストが曲を作る時の窓口になり、弊社のアーティストにつなげるような事業にも挑戦していきたいです。

 

また弊社のアーティスト同士も横のつながりで一緒に曲作りをしています。クリエイティブな作業は独りで考えていると詰まる時もあるので、脱却する方法として横の仲間のつながりを今以上に大規模に作っていきたいです。

 

そして大きな野望は弊社のアーティストがグラミー賞を取り、世界で売れることです。このように発言しておくと叶いやすくなると思っています。

 

やらない0と行動した1は大きな差

起業しようとしている方へのメッセージをお願いします。

とにかく「やってみる」ことが大事だと思います。大きな金額がかかることから始めるのではなく、まず小さなことからやってみるのがいいです。

 

そうすると見えてくる景色は変わりますし、やらない0と行動した1は全く違います。やった結果また0に戻ってもいいし、2にゆっくり進んでてもいいでしょう。

 

まずは小さく始めて大きく育てるつもりで、行動してほしいです。

 

私もはじめから全部きっちりとビジネスモデルを決めて、そこに向かう事例は稀です。周りの人にたくさん話してみると、「違ったな」と気がつきます。それをまた微調整を繰り返しながらビジネスモデルを組みます。そうすることでだんだん事業が見えてくるのです。

 

大事なのは走りながら調整していき、それでいて土台となる方向性はぶれずにしっかり立てて進むことです。

 

「OIKOS MUSIC」では一緒に働く仲間を募集中です。 

企業理念に共感してくれた方を絶賛募集中です。動画編集や音楽を編集している方、実際にアーティストと働いてみませんか?

アルバイト、インターン生も大歓迎です。一緒にクリエイティブなOIKOS MUSICで働きましょう。

ご応募お待ちしております!

 

企業HP:https://oikosmusic.jp/

問い合わせ:https://oikosmusic.jp/pages/contact

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:市村 昭宏 氏

慶應義塾メディアデザイン研究科修了。

2012年:電子チケット販売サービスを創業。音楽、スポーツ業界にてサービスを展開。

2015年:DMM.comに全株式を売却しDMMグループに参画。執行役員 経営企画室⻑(M&A、ベンチャー投資、新規事業を統括)。

2020年:情報経営イノベーション専門職大学客員教授。学生起業家育成プログラムを立ち上げ。

2022年:音楽アーティスト支援事業「OIKOS MUSIC」を共同創業。

 

企業情報

 

法人名

OIKOS MUSIC株式会社

HP

OIKOS MUSIC | 音楽の原盤権マーケットプレイス | OIKOS MUSIC

設立

2022年4月15日

事業内容

マーケットプレイスの運営、アーティストの発掘・育成支援、音楽コンテンツの作成など

沿革

2022年4月 OIKOS MUSIC株式会社を設立

2022年8月 原盤権マーケットプレイス「OIKOS MUSIC」をリリース

2022年12月 主催ライブ「GOT OIKOS GET LIVE vol.1」開催

2023年8月 主催ライブ「GOT OIKOS GET LIVE vol.2」開催

2023年9月 資金調達発表

2024年1月 InterFMにて音楽番組放送開始 

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