株式会社IZAI 代表取締役CEO 泉 恭太
「人と機械が自然に共創する社会へ」をビジョンに掲げ、AIとロボットの開発や運用などを行うロボティクスを通じて、企業のDX推進や業務自動化などを行う株式会社IZAI。そのなかでも現在、AIを用いたコールセンター業務の効率化に注力しています。
今回はコールセンターのAI化の詳細や始めた理由、今後の展望などを代表取締役CEOの泉 恭太氏にお話を伺いました。
コールセンターだからこそ叶うAIと人との対話
事業の内容をお聞かせください
私たちはAIと音声データを活用して、対話型音声AIプロダクトの開発や提供、DX推進やオートメーション化を支援しており、コールセンターなどの電話応対業務効率化を中心に行っています。
主要なプロダクトは2つあり、1つは「CoeSketch(コエスケッチ)」という人間の音声を人工的に作り出す音声合成エンジンで、生身の人間が話しているかのような自然で流暢な日本語を生成できます。現在、合成音声はコールセンターのIVRや営業のロールプレイングなどに使われていますが、より自然な日本語が話せるようになれば、さらに多くの業界で人間と同じように活用できるでしょう。
もう1つはコールセンターの業務効率化と品質向上を実現する「IZAI assist(イザイアシスト)」です。市場最高精度の文字起こしエンジンと自社でカスタムしたようやくエンジンを組み合わせることで、電話後のレポーティング業務を自動化しています。また、IZAI assistにサービス情報などを学習させると、お客様の質問に対する回答や提案を自動で生成してくれるため、正確な回答ができます。
実際に、当社のプロダクトを導入したコールセンターでレポーティング業務工数を約6割削減した事例もございます。将来的には、音声応答含めあらゆるビジネス会話を自動化することを目指しています。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
もともとインターンやフリーランスでソフトウェアのエンジニアをしており、AIに関する案件も取り扱っていました。それもあってか、2023年初めにAIシステム開発の企業を創らないかと知人に誘われ、株式会社スマートアックスの副社長に就任しました。その際に、AIを活用すればコールセンターなどコミュニケーションが必要な現場の業務効率化が叶うのではないかと思い、IZAIを創業しました。
数十年前から「近い将来、コールセンターの業務はAIが行うことになるだろう」といわれていたように、コールセンターとAIの業務は親和性が高いので、役に立つプロダクトを開発できるだろうと考え音声応答に着目ました。
また、AIでの業務効率化ができれば、コールセンターが抱える深刻な人手不足課題も解決できるということも、この事業を始めた理由のひとつです。AIで業務を効率化すれば、少ない人材でも対応できますから課題解決の実現が期待できます。
もし、コールセンターでの対応をすべてAIにさせたとき、果たして問い合わせた人間は気づくのかと想像するときがあります。現段階ではすべての対応をAIにまかせられませんが、問い合わせをした誰もが応答したのがAIだと気が付かない品質のシステムが出来れば、コールセンターの問い合わせ業務をすべてAIにまかせられるのではないでしょうか。
パーツひとつでも妥協しない細やかな仕事で信頼を勝ち得る
仕事におけるこだわりを教えてください。
こだわりは2つあり、1つはお客さまへのヒアリング、もう1つは人材です。
お客さまにどれだけの価値を提供できているかが大事ですから、私自身がコールセンター業界に深く関わり、お客さまにシステムの効果や使用感などをヒアリングすることは欠かさず行っています。
弊社のシステムを導入してもらったら終わりではなく、実際に使ってみて確実に成果が出るシステムにしたいので、お客さまの業務を何%効率化できたかをヒアリングし、何らかの問題があればシステムの使い方の提案をしますし、必要であればシステムそのものを改善します。
また、オペレーターが使いやすいようにシステムの操作性も重視しています。PC画面に表示されるボタンのクリックのしやすさなども実際に使っている人に聞くなどして、非常に細かな部分までこだわって開発しています。
そのため、誰でも容易に使うことができ、突然システムを導入しても使用するオペレーターが「使い方がわからない」と困ることはありません。システムの操作性が高ければ、短期間で操作方法を覚えられますので、この点も業務効率化につながっているといえるでしょう。
システム自体の品質の良さだけでなく、お客さまの声を丁寧に聞き、お客さまそれぞれのニーズに合わせたシステムを提供することは日本一であると自信を持っています。
このような質の高さを可能にしているのは、弊社の優秀な人材です。先進的なプロダクト開発やお客さまへの提案ができるよう、専門性の高い人材を集めています。メンバーの多くは、コンピューターサイエンスや人工知能などの専門家で構成されています。
私自身が東京大学に在籍しており、そのつながりから弊社には東大の博士課程の学生や東大出身のエンジニアが多く在籍しています。また、メンバーのうち3割ほどはアメリカ在住で、世界的に有名な大学でコンピューターサイエンスを学びながら、弊社でも働いてくれています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
私たちは創業して間もない名もなきベンチャー企業であるため、信頼を得られにくいことが最大の壁です。壁を切り崩すために私たちのビジョンやシステムを導入することによって得られる成果などを伝えています。システム導入で期待できる成果を伝えるときには、「導入することで20%の工数削減が可能」など数字を用いて伝えるようにしています。
また、小さな仕事も手を抜かず丁寧に対応している点もアピールしています。たとえば前述したように、画面のクリックボタンなどパーツひとつひとつの使いやすさといった細部まで改善していることも説明するようにしています。
営業するときだけでなく、採用時にも同じことがいえます。創業して日の浅い会社ですから情報が少なく、人材募集をしても応募してくれる人が少ない現状があります。ですから、採用時には「私たちが何をしたくてこの事業を行っているか」を丁寧に説明することに力を入れています。
誰も傷つかない次世代のコールセンターを作り社会にインパクトを与えたい
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
AIを活用して業務を効率化し、人間の対応が必要なコールセンターなどの業界の課題を解決したいという思いがモチベーションになっています。コールセンターは需要が高い反面、常に深刻な人手不足に悩まされています。そもそも問い合わせの電話がかかってくることが多くて、オペレーターは常に対応に追われていますし、ときにはカスタマーハラスメントを受け精神的なダメージを負う人も少なくありません。
しかし、AIがオペレーターに変わって問い合わせ対応をしてくれれば、誰も傷つかずに済みます。
将来的には基本的に問い合わせ対応をAIが対応し、緊急時だけ人間が対応するといった次世代のコールセンターが作れるでしょう。
それから、「この世に生まれて生きているからには、世界に自分が存在した証しを残したい」という思いも原動力の一つです。AIを活用することで、どの業界においても、業務の効率化や今までになかった革新が可能になると確信しており、どうしたら世にインパクトを与えられるかといったことを常に考えています。
一緒に働いているスタッフも、私と同じように考えをもってくれている点も励みになっています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
まずは、現在のシステムをコールセンターが抱える業務の課題を包括的に解決できるシステムにしたいです。具体的には、2030年頃までにコールセンター業務をすべてAIにまかせられるような状態にすることです。問い合わせ内容に対して、AIが自動で人間と遜色ない応答ができるようにするだけでなく、勤務管理まで行えるようなホールプロダクトを目指します。
ただ、コールセンターをAI化するには、まだまだ課題が残っています。問い合わせに対する回答の正確さは、人間には及びません。人間であれば、過去に誰かと話した内容を覚えており、それに基づいた会話ができますが、AIは一から教え込む必要があり多くのデータとその整理が必要となってきます。
また、AIの音声認識の精度は、背景情報を知らない分人間と比べると低いため、さらに学習データを収集してさらに制度を上げる必要があります。とはいっても、5年ほど前に比べたらAIの精度は高まっているので、これらの課題は近い将来、解決できると思っています。
長期的な目標になりますが、ハードウェアへの応用も手掛けていきたいです。工場などで行われている単純作業全てロボットが代行する社会にしたいと考えています。電話応対業務や単純作業を一つの企業が手掛けているケースは多いため、企業が抱える効率化や人材不足といった課題を一元的に解決できるプロダクトを作るというビジョンを描いています。
起業を目指すなら起業家の話を聞くことが実現の近道
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
起業したいと思っているなら、チャレンジしたほうが良いと思います。そのためには起業している人に話を聞きに行くことをおすすめします。私も起業する前は、いろいろな人から話を聞きに行きましたが、とても勉強になりました。
ちなみに、東大では卒業後だけでなく大学在籍中に起業する人が増えてきました。というのも、起業に関する授業があり、東大出身の起業家が講義してくれるのも要因の一つであると考えています。
日本は起業しやすい環境が揃っているにも関わらず、起業する人は少ないという現状があります。そのため、たとえ起業に失敗したとしても、起業しようと挑戦したという事実は社会的に評価されるのではないでしょうか。これらを念頭に置いて、起業したいと思っている人はぜひ挑戦してほしいです。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:泉 恭太 氏
2002年 千葉県生まれ
2020年 東京大学理科一類入学
2021年 〜2023年 学生の傍ら、開発系インターンを経て個人開発・フリーランスエンジニアとして活動。
2023年 受託開発を行うスマートアックスへ副社長として参画
2024年 音声 x AIを主眼に置いた株式会社IZAIを創業
企業情報
法人名 |
株式会社IZAI |
HP |
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設立 |
2024年5月 |
事業内容 |
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