【#285】多様なジャンルのキャスティングを実現させる「日本一芸能に詳しい会社」の新たな挑戦|代表取締役 布目 靖太郎/取締役副社長 伊藤 啓輔(株式会社クロスアイ)
株式会社クロスアイ 代表取締役 布目 靖太郎/取締役副社長 伊藤 啓輔
タレントやモデルなどのキャスティング事業をはじめ、映像制作・YouTube運営事業も展開する株式会社クロスアイは、強いコネクションを武器に「日本一芸能に詳しい会社」として多数のキャスティング実績を誇っている企業です。2023年7月の前回のインタビューからおよそ1年、今回はこの1年間で起きた変化や今後挑戦したいことについて、布目 靖太郎氏(代表取締役)と伊藤 啓輔氏(取締役 副社長)に話を伺いました。
国内だけでなく韓国モデルのキャスティングを強化
現在力を入れている事業をお聞かせください
布目氏:以前と変わらず、現在も大軸はキャスティング事業です。特に最近は韓国モデルのキャスティング需要が高まっており、韓国在住のモデルを起用するためのネットワーク強化に力を入れています。
既にほとんどの韓国の芸能事務所とのコネクションはできており、フリーのモデルを含めて500名以上はキャスティングできるような体制を整えています。今後は、キャスティング、現地での撮影のコーディネート、そこに更に商品を作りたい場合はOEM先の紹介も含め、それらをワンストップで対応する韓国でのパッケージを提供していきたいと思っています。
このキャスティングとOEM先の紹介の同時展開を行う理由は、タレントを使うと商品の認知度を上げることができるからです。美容大国である韓国の商品はとても人気が高く、現地のオリーブヤングに行って化粧品を買う人も多くいます。そのため、韓国産の商品を生産したいという企業も多くなっており、現地のOEM先を紹介するサービスを作ることで需要にマッチするのではないかと考えています。
この1年でビジョンや目標に対してどのような進展がありましたか?
布目氏:この1年は、キャスティング成立まで報酬をもらわない、完全成果報酬型でサービスを提供していました。つまり、タレントが決まるまではタレントの費用を無償で提供しますという手法です。
この方法に1年間チャレンジし、結果としてはうまくいったものもあればうまくいかなかったものもあるため、成功や失敗の体験を振り返り来期に向けてブラッシュアップしたいと思います。
伊藤氏:前回のインタビューで語った、M&Aを手掛ける話も着々と進んでいて、「芸能人のキャスティングの原価を弊社で持つかわりに株の何%かをもらう」という、金銭以外でのリターンで保有する仕組みを始めています。
実際に、当社が数十%の株を持っている会社では、1年目で10億以上の売り上げを出しており、株主としてどこまで価値が上がるのか注視しているところです。M&Aで得たものは資産として保有し、いずれは売却することを考えています。
布目氏:それから、今年1月に関西支社を設立しました。関西支社を出す構想は創業当時からありました。理由としては、私が前職で関西のキャスティングの案件があったのと、実際に独立してからも関西での仕事がたくさんあったからです。
支社を作ればより密接に仕事ができるしたくさんの案件が発生するだろうと思い、支社を設立し、営業してみたら、これまで月平均5〜10件だった案件が案の定30件程まで増えました。依頼の増加に伴い、たった1人だったスタッフに加えて中途で1人、さらにインターンで1人増やしたので、今後も4人5人と増やしていくのが目標です。
伊藤氏:私も関西は元々需要がありそうだと思っていました。我々が日本一のキャスティング会社を目指す上で、関西支社は全国を取りに行く第一歩であると思っています。
一方で、エンタメ業界の仕入れの話に視点を変えると、東京都23区の港区、渋谷区、新宿区に大半の芸能事務所やYouTuber事務所が固まっており、我々のオフィスもそこにあるので、芸能事務所から頻繁に売り込みが来ます。もし弊社のオフィスが地方にあった場合、新鮮な仕入れができなくなると考えられます。
我々の本社が東京にあるからこそ、日々新鮮な情報を仕入れることができているので、あとは売り先を開けば全国に拡大できるのではないかと構想しています。
IT導入による業務効率化で組織拡大を狙う
1年前から現在までの期間で感じた困難は何ですか?
布目氏:キャスティングの価格競争力が課題です。タレントの写真や動画を使用できるサブスクリプションサービスが台頭してきたことにより、我々のキャスティングの提案が通りづらくなっています。サブスクリプションサービスはタレントを起用するよりも安いため、我々のサービスが高価だと思われてしまう傾向にあります。
とはいえ、そこは逆に差別化することで解消できると思っています。サブスクリプションは決まったものにしか使えませんが、我々はどういうストーリー作りで商品を売っていくかというマーケティングを含めた提案を行い、企業の商品を一緒に売るところまで入り込むことを強みにしていきたいです。
伊藤氏:自社内の課題としては、現在4部署、20名弱いる社員たちのマネジメントが挙げられます。原則としてツール、メール、チャットを全て共有し、私たちもマイクロマネジメントできるよう管理しています。
例えば、ミドルレイヤーが指示したことに対して、後で「この言い方はよくなかったね」「こうしたらいいんじゃない?」と一緒に考えたり連携したりします。基本的にはできる限り現場に任せつつ、ガラス張りの運営を意識しています。
布目氏:また、私は何かを始める時にまず自分で実行してから部長たちに落とし込むようにしています。自分がまず数字を作ることで部下が動きやすくなりますし、信憑性や信頼感が増すと考えています。
会社内の文化や働き方に関する新たな取り組みについて教えてください
伊藤氏:社内ツールは毎年見直していて、ここ1年でセールスフォースを本格的に導入しました。顧客管理や営業支援をしてくれるツールを入れることで情報を数字で可視化でき、伸びている案件がわかったり改善点を見つけたりできるため、新しい技術として取り入れてよかったと思っています。
キャスティング業界は、全体的にビジネスやマーケティングの数字にとても弱い印象を受けます。業界人やマネージャーをしている人は、タレントをうまく動かす術には長けているのですが、一方で普通のサラリーマンが持っているITリテラシーを備えていない人が多いと感じています。
我々はITによる効率的な業務を遂行し、新卒やインターン生など誰もが結果を残せる仕組みをつくることが組織を拡大する上で大事だと考えます。
多くの拠点を築き、多くの人に楽しさを還元する
この一年でもっとも成長したと思う点は何ですか?
伊藤氏:1つは若手マネージャーです。日々模索しながら頑張ってくれています。
もう1つはミドルレイヤーです。我々がそこまで現場に立たなくてもPDCAが回っている状態になり、会社として成長したなと感じます。
営業してアポを取って、その企業の施策に合わせて芸能人リストを作り、提案し、そのデータを社内で共有して次回の提案に活かす、これがPDCAだと思います。そこまで口を出さなくても、雪だるま式に勝手に円が大きくなっていっていると実感できるので、社員の成長が会社の成長に直結しているのだと思います。
今後挑戦したいことや意気込みを教えてください
布目氏:次に狙っているのは福岡です。前回のインタビューでD2C企業を攻めたいという目標を話していましたが、福岡は通販・Webのみで販売するD2C企業の工場が一番多いため、そのD2C企業を狙いにいきたいと思っています。
そして、福岡に続き名古屋、北海道と全国の主要都市に支社を出し、各地にある広告代理店と密接に事業をやっていくことが重要であるとともに、最終的にはパイをすべて取りにいきたいというのが我々の展望です。
それから、広告撮影も自社で手がけていきたいと考えています。当社の映像制作・Youtube運営事業では、主にYouTubeのチャンネル運営を行っていますが、今後は広告撮影までも自社で担えるよう内製化を図っていきたいです。広告撮影をディレクションし、更にはカメラマンを常駐したりスタジオを持ったりして、自社の力をアップしていければと思います。
起業家として成長するために学び続けたい
他の起業家にむけてメッセージや教訓などがあればお願いします
布目氏:起業家とはいえ、誰にも学びたいという気持ちはあるはずです。私には教訓と言えるものはなく、それは何年経っても変わらないと思います。起業家の方がいたら、是非それぞれの教訓を教えてほしいのが本心です。
過去のインタビュー記事はこちらから
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:
布目 靖太郎
父親に競馬評論家である井崎脩五郎、祖父に浪曲奇術の第一人者である布目貫一という芸能一家の中で育つ。
フジテレビ「めざましテレビ」にてディレクターを務めた後に、企業と芸能事務所の橋渡しを年間500件を担当。
法人向けキャスティング部門の責任者となった後に独立、クロスアイを起業する。会社経営の一方、その幅広い人脈を活かし、自身も芸能評論家として活動している。
伊藤 啓輔
株式会社USENに新卒入社。法人向けICT営業部門にて新人王、事業部内最多成約数を獲得後、私立大学職員に。
就職支援、広報職で成果を残し、改革施策提案部門にて最優秀賞を獲得した後に独立。
その後、複数の企業において役員として立ち上げに携わり、創業からの社内システム構築速度に絶対の自信をもつ。
クロスアイにおける営業部門、情報システム部門、総務部門の最高責任者。
企業情報
法人名 |
株式会社クロスアイ |
HP |
|
設立 |
2019年11月 |
事業内容 |
キャスティング事業映像制作事業 |
沿革 |
2019年 設立 2020年 YouTube運営事業開始 2021年 グループ会社に株式会社クッションを設立、広告運用事業開始 2022年 完全成果報酬制キャスティング「アフィキャス」開始、撮影制作事業開始 2023年 事業拡大に伴い事務所移転 クッションをクロスアイへ吸収統合 2024年 関西支社(大阪府大阪市)を開設 |
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