
映像・音声から非言語情報をAIで可視化するSaaS「Kagami AI」を提供する株式会社DJ Insightが、美容サロン業界の接客改善に新たなスタンダードをもたらしています。
代表取締役・齋藤立壽氏に、革新的なプロダクトの詳細から起業の経緯、そして世界展開への野望まで伺いました。
株式会社DJ Insightが展開するのは、映像・音声から非言語情報を抽出するAI SaaS「Kagami AI」です。表情・顔の向き・位置などを解析し、人が言葉にしない感情や反応を数値として可視化します。
活用シーンは大きく2つあります。
一対多数の場面では、セミナーやイベントの観客席にカメラを向けて最大500人規模まで顔を一斉に解析し、「盛り上がりマップ」や「集中度レポート」を登壇者にフィードバックします。人数が多いほど正規分布に近づき、1人の外れ値に左右されない精度の高いデータが得られます。
現在メインの注力領域は一対一の美容サロンです。各テーブルに設置した小型マイクで施術中の会話を録音・解析し、リピート率向上やアップセルにつながる会話のポイントをレポートとして返します。対象は客単価1万円前後の美容院・ネイルサロンで、「この人に任せたい」という関係性でリピートが生まれる層に特化しています。
エンタープライズ向けは稟議などで意思決定が遅くなりがちなのに対し、美容サロンはPDCAサイクルを高速で回せます。そのキャッシュフロー効率の観点からも、現在は一対一の接客改善に力を注いでいます。生データを即時削除し特徴量のみを保持することでプライバシーの保護も図っています。専用エンジニアも不要で、小型マイクを設置するだけという手軽さも支持されています。
1つ目は、セミナーやイベントなどの一対多数の場面です。会場の観客席にカメラを設置し、最大500人規模の表情や反応を同時に解析します。これにより、どのタイミングで会場が盛り上がったのか、どの話題で集中度が下がったのかといった情報を、登壇者へフィードバックできます。大人数を同時に分析することで、特定の個人の反応に左右されず、全体傾向として精度の高いデータを取得できる点も特徴です。
2つ目は、現在特に注力している美容サロン向けの活用です。美容院やネイルサロンの各席に小型マイクを設置し、施術中の会話をAIが解析します。そして、リピートにつながりやすい会話やアップセルにつながる接客の特徴を分析し、レポートとして店舗側へ返します。
特に、客単価1万円前後の美容院・ネイルサロンでは、この人にまたお願いしたいという接客体験がリピート率に大きく影響します。私たちは、そうした感覚的だった接客力をデータとして可視化することで、売上向上や顧客満足度向上につなげています。
現在、美容サロン領域に注力している理由の一つは、PDCAサイクルを非常に早く回せるからです。エンタープライズ企業では導入や意思決定に時間がかかることが多い一方、美容サロンでは改善施策をすぐに現場で試しやすく、成果検証までのスピードが速いという特徴があります。
また、プライバシー保護にも配慮しており、取得した生データは即時削除し、AI解析に必要な特徴量データのみを保持しています。さらに、専用エンジニアなどは不要で、小型マイクを設置するだけで導入できる手軽さも、多くの店舗に支持されている理由の一つです。

私が「見えないものを数値化する」という分野に強く惹かれるようになったのは、都立高専4年生の時です。医療超音波を用いた癌の病理診断研究に取り組む中で、目に見えない超音波の反射波から悪性・良性を判別するというテーマに大きな面白さを感じました。
もともと、見えないものを可視化したいという思いは18〜19歳の頃から一貫して持っています。例えば、私自身が取り組んでいたパワーリフティングでも、フォームが1ミリずれるだけで持ち上げられる重量が変わります。そうした「感覚的なものを数値で捉えられる世界」に強く魅力を感じていました。
その後、コロナ禍の影響で予定していたドイツへの研究留学が中止となり、転機として元経産省官僚の前田教授のゼミに参加しました。そこで、プラザ合意後の日本経済の停滞や、高専教育の歴史について学ぶ中で、「もう一度、日本のプレゼンスを高めたい」という志を持つようになりました。
当時は大学院修了後に経済産業省への入省を目指していましたが、長期インターン先だったメガベンチャー「Donuts」で、西村社長と出会ったことが大きな転機になりました。
「官僚として社会を変えるには、事務次官になるまで待たなければならない。一方で、ビジネスであればもっと早く、大きな変化を起こせる」と言われたことで、自分の進むべき方向性が大きく変わりました。
その後、社長室でM&A仲介の新規事業などを経験し、合同会社DJ Roboticsを設立しました。ロボットの頭部カメラで観客の感情を読み取って選曲を変えるアルゴリズムを開発し、インド工科大学(IIT Bombay)の科学技術フェスティバルでは、5,000人規模の観客の前でパフォーマンスを行いました。
一方で、ロボット事業そのものにはスケーラビリティの限界も感じていました。そこで事業を譲渡し、コアとなっていた非言語AI技術をスピンアウトする形で、株式会社DJ Insightを設立しました。
最も大切にしているのは、逃げないことです。
実は私は、これまでずっと「自分は逃げてきた人生だった」という後ろめたさを抱えてきました。高専進学や大学編入も、どこかで受験を回避できる道を選んできたという感覚がありました。
そんな自分に対して、Donutsの西村社長は、いつも「すぐに逃げるのをやめなさい」と言い続けてくれました。特に今でも強く印象に残っているのが、退職日のエレベーター前でかけていただいた、「会社の器は、社長の器の大きさ以上には大きくならない」という言葉です。この言葉は、今でも自分の経営の軸になっています。
もちろん、これまでの中で転職したいと思ったことや、もう一度サラリーマンに戻った方が楽なのではないかと考えた瞬間もありました。ただ、そのたびに「自分で決めた道なのだから、自分の意思を貫かなければいけない」と踏みとどまってきました。
また、社内で大切にしているのは、「楽しみながらやること」です。私は、強制や過度な管理によって人が最大限の力を発揮できるとは考えていません。自分で考え、自主的に動ける人たちが、同じ方向を向いて挑戦していくことで、初めて大きな成果につながると思っています。

起業してからこれまでで特に大きな壁だったと感じている出来事は、2つあります。
1つ目は、インド工科大学(IIT Bombay)の科学技術フェスティバルに特別招待をいただき、5,000人規模の観客の前でロボットパフォーマンスを行った時です。
当時は、ロボットをほぼスクラッチで組み上げており、その機体を持ってインドへ渡航しました。ただ、現地へ向かうまでずっと不安でした。税関を通れなかったらどうしよう、輸送中や現地で故障したら代替部品が手に入らない、というプレッシャーが常にありました。
実際、現地で組み立てを行い、ステージへ運び込む瞬間までずっと気が抜けませんでした。それでも最終的に無事パフォーマンスを成功させることができて、本当に安心しましたし、大きな達成感がありました。
もう1つは、現在CTOを務めている朝倉を口説き続けた2年間です。
朝倉とは高専時代の同期で、東工大で博士号を取得し、画像認識分野ではGoogleを上回る精度を出すほどの非常に高い技術力を持っていました。当然、大手テック企業からも多くのオファーがあるような人材でした。
私はどうしても一緒に事業をやりたいと思っていたので、朝倉が月に2回、高円寺のクラブでDJ出演するたびに足を運び、打ち上げにも参加する、ということを2年間続けました。
結果的には、「かわいそうだから入ってあげるよ」というような感じで仲間になってくれたのですが(笑)、今振り返ると、あの2年間は決して無駄ではなかったと思っています。あの時間があったからこそ、今のチームや事業があると感じています。
私が進み続けるモチベーションは、シンプルに言えば「始めてしまったから」です。
最低でもIPOするまでは中途半端に終われないと思っています。もし途中でやめてしまったら、それこそ自分にとっては逃げになってしまうからこそ、簡単には引き返せません。
もちろん、事業としてはまだまだ満足できる段階ではありません。大規模チェーンへの導入もこれからですし、本当に業界のセンターピンを倒せたとは全く思っていません。理想としている景色までは、まだかなり距離があります。
それでも前に進み続けられるのは、「もう始めてしまった以上、逃げられない」という覚悟そのものが、自分の燃料になっているからだと思います。
また、将来的には、政治家の選挙演説を分析し、「どの政策や言葉が聴衆に本当に刺さっているのか」を可視化できる社会をつくりたいという構想も持っています。有権者が感覚や印象だけではなく、より正確に情報を受け取り、判断できるようにしたいと思っています。
私たちが取り組んでいるKagami AIのビジョンは、みんなが伝えたいことを100%相手に伝えられる社会をつくることです。言葉だけでは伝わらない感情や熱量、空気感まで含めて可視化し、人と人とのコミュニケーションをより正確にしていきたいと考えています。
今後の展望として、まずは美容サロン業界でシェアを拡大し、ARR1億円を達成したいと考えています。
私は、業界のセンターピンとなる存在を倒すことができれば、二番手・三番手も追随し、業界全体が変わっていくと思っています。現在の美容業界は、予約サイト上でのクーポン割引競争に依存している部分が大きいですが、私たちはそうした価格競争ではなく、本質的にリピート率を高めるモデルを実現したいと考えています。
美容サロン事業は2〜3年後をめどにリクルートへの事業譲渡も視野に入れつつ、会社自体は成長させ続け、IPOを目指す方針です。
技術面では、非言語AIの活用領域をさらに広げていきたいと考えています。例えば、コンサート会場で観客の盛り上がりを分析したり、ハイラグジュアリーブランドにおける購買行動を分析したり、さらにはアメリカでの政治演説分析にも取り組みたいと思っています。
日本では法律の制限などから難しい部分もありますが、アメリカでは演説分析の活用が非常に進んでおり、候補者の話し方や政策説明の改善にも活かされています。私は、その仕組みをまずアメリカで実現し、その後日本へ持ち帰りたいと考えています。
最終的には、日本発のAIネイティブなSaaSとして、世界に挑戦していきたいと思っています。

正直に言うと、「あまり気軽に起業しないほうがいいとは思います。生半可な覚悟で始めると、どうしても中途半端なところで終わってしまうことが多いからです。
起業すると、お金の面でもプライベートでも、犠牲にしなければならないものが本当に多くあります。自由そうに見えるかもしれませんが、実際には常に事業のことを考え続ける生活になりますし、精神的にもかなりタフさが求められます。
そのうえで、今振り返ると、「もう少しサラリーマンを続けてから起業してもよかった」と感じています。優れた経営者の近くで数年間しっかり修行することで得られる視点や知見は、独学ではなかなか得られない大きなレバレッジになると思います。
実際、今は40代の起業家の方が成功率が高いというデータもあります。AIの時代になっても、結局は業界の現場経験や、顧客が本当に抱えているペインを理解していることに大きな価値があります。
だからこそ、焦って起業するよりも、まずはしっかりと現場で経験を積み、自分なりの土台を固めてから挑戦する方が、結果として成功確率は高いのではないかと思っています。
都立高専・大学院にて医療超音波研究に従事
メガベンチャー「Donuts」社長室にてM&A仲介などの新規事業を経験
合同会社DJ Roboticsを設立。IIT BOMBAY(インド工科大学)の科学技術フェスに特別招待され、約5,000人の前でDJ Robotをパフォーマンス
事業譲渡を経て、株式会社DJ Insightを設立、代表取締役に就任
映像・音声から非言語情報を可視化するAI Native SaaS「Kagami AI」をリリース
シードラウンドにて独立系VCより資金調達を完了。PreシリーズAに向けてARR1億円を目指し事業進行中
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法人名 |
株式会社DJ Insight |
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HP |
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設立 |
2025年11月 |
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事業内容 |
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