株式会社ギバース 代表取締役 藤本 巴

日常の購買行動がそのまま寄付になる、というまったく新しいショッピングアプリ「Givearth(ギバース)」を提供する株式会社ギバース。代表取締役の藤本巴氏は自社のサービスについて、「誰かの役に立ちたい」と考える人たちに、お金や時間がなくても人助けをする手段にしてもらえれば、と語ります。今回は藤本氏に「Givearth(ギバース)」のサービスが生まれた経緯や、今後の展望などをお聞きしました。

 

好きな物を買うだけで寄付ができる、まったく新しい体験を

事業の内容をお聞かせください

当社は「いつもの買い物で世界を救う!ゼロ円寄付アプリ」をコンセプトとしたECサービスを提供しています。具体的には、当社のアプリ「ギバース」を開いていただいて、そこからamazonや楽天で販売されている商品を通常の価格で購入するだけで、寄付ができるというサービスです。

 

なぜ寄付をしているのに追加の支払いが発生しないかというと、当社が掲載しているECサイトに「送客」をするという形で報酬が発生しているからです。

 

利用者にとっては、いつもと同じように買い物をするだけで誰かの力になれるという手軽さが魅力だと思います。現在は購入金額の一部が寄付されるシステムになっています。

 

当社のサービスのポイントは、買う物も寄付先も自由に選べるという点です。例えば「このTシャツの売上はすべて〇〇の団体に寄付されます」という商品はよくあると思うのですが、寄付をする人が寄付したいのはその団体だけど欲しいのは違うTシャツだったり、そのTシャツは欲しいけれど寄付をしたいのは別の団体だったりするかもしれません。

 

その点、「ギバース」はあくまでも買い物の入口になるだけで、ご自身でamazonや楽天のようないつも利用しているECサイトで好きな物を購入していただけますし、購入前に「子ども」や「動物」など希望のジャンルを選んで寄付してもらうことができます。「購入する商品」と「寄付先」を自由に組み合わせられるのは、画期的な体験だと思います。

 

現在はZ世代といわれる若い世代の方々が中心で、「同じ買い物をするなら、誰かの役に立つほうがいい」と、共感の声を多くいただいています。

 

当社としては社会貢献をするためだけではなく、彼らのように「人の役に立ちたい」と考える人たちの力になりたいと考えて事業に取り組んでいるのです。その着眼点が、当社が唯一無二のサービスを生み出せる強みだと考えています。

 

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事業を始めた経緯をお伺いできますか?

「ギバース」のサービスを立ち上げる前には、「オシリス」という社名で、まったく別の目的を持ったサービスを考えていました。オシリスの「オシ」というのは、実は推し活の「推し」で、好きなアイドルを買い物で応援するECサービスが、現在のビジネスモデルの原型になっています。

 

私自身、元乃木坂46の齋藤飛鳥さんを推していて、飛鳥さんが購入していた飲料水と同じものを、箱買いしてしまうほど熱心に応援していました。ですが、そのときふと「この買い物はアイドル本人の役には立っていないのでは」と思い、もっと直接的に力になれる方法はないかと考えだしたのが始まりでした。

 

ただ、ビジネスモデルを突き詰めていくため、熱心に推し活をしている人たちに話を聞かせていただいたのですが、彼らの推し活への熱量は私とは比べものにならないほどで、本当に自分がこのビジネスをやるべきなのかな、と迷いも出てきました。

 

判断に迷っていたそのとき、能登半島にて地震が起きました。私の友人も石川県に住んでおり、連絡を取り現状を理解しました。そこから次第に困っている人たちのために何かしたいという強い気持ちが湧いてきました。

 

そこで、進行中だった推し活向けのECサービスのビジネスモデルと、寄付の概念を結びつけて生まれたのが、現在の「ギバース」です。

 

その時点ですでに推し活向けのサービスとして資金調達も進んでいましたが、投資家の方々のところをお1人ずつ訪問して、事業内容を変更したいとお願いしました。幸い皆様に受け入れられて、そのまま「ギバース」を支援していただけることになったのですが、「マーケットが大きくなった分、茨の道を行くことになる」と、忠告してくださった方もいます。

 

確かに大変な事業ですが、私個人としては遂に「この仕事になら人生を賭けられる」というものを見つけることができ、大きなやりがいを感じています。

 

社会にとっても良いものを生み出す、「三方よし」の考え

仕事におけるこだわりを教えてください。

私の仕事に対する考え方の根底にあるのは、「三方よし」という言葉です。よく知られている近江商人の言葉ですが、これはまさにお客様の満足度を追求しながら社会貢献を実現するという当社のプロダクトに合致する考え方だと思います。

 

会社や共に働く仲間にとって良いもの、そしてアプリを利用する方々や取引先の方々にとって良いもの、さらには社会全体にとっても良いものであることを目指す「三方よし」の想いが、価値のあるサービスを生みだすと考えています。

 

「三方よし」はずっと以前から私自身の人生観として根付いていたものですが、今では「ギバース」を運営していくうえで絶対に譲れない軸にもなっています。

 

さらに現在はこの「三方よし」の考えを、我々らしい世界観を出すために「世界を救う」というフレーズにして当社のミッションとして掲げています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

未だ乗り越えたとはいえない状態ですが、常にステージの変化に合わせて自分自身を変えていく必要があったことが、私が直面した壁だと思います。

 

タスク一つ取っても、「このタスクは本当に今やるべきことなのか」「そもそも本当に必要なのか」と、すべての自分の行動に対して、より深いレベルで理由を持たなくてはいけません。それができなければ、高い確率で意思決定を誤ることになります。

 

さらに、自分が納得するだけではなく、それをメンバーに説明し、理解してもらう必要があります。ただ説明するだけでは不十分で、腹落ちしてもらえるように、伝えなければなりません。

 

こういった行動の一つ一つをアップデートし続ける必要があり、その難しさを日々実感しています。

 

起業してからずっとこの壁にぶつかり続けていて、今も懸命に登ろうと努力している途中です。

 

こんなチャンスは、人生で今しかない

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

私が常々意識しているのが、「こんなチャンスは人生で今しかない」ということです。

 

実際に私は、タイミーの1人目のエンジェル投資家でもある連続起業家の木崎智之さんとのご縁に恵まれたことで、一気に起業が形になっていきました。チャンスが巡ってきたときに全力を尽くしたからこそ、今があります。だからチャンスを逃さないためには今頑張らないとと思い続け、それが自分を動かす原動力になっています。

 

さらに付け加えると、苦しいときにも頑張れるのは、やっぱり大切な人たちの存在があるからではないでしょうか。

 

私が起業した原点には「何者かになりたい」という個人的な夢ももちろんあるのですが、もしも自分のことしか考えていなかったとしたら、どこかで心が折れてしまっていたと思います。一緒に働いてくれているメンバーや投資家の方々、そして今では「ギバース」の理念に共感してくれているユーザーの皆さまも含めて、仲間がいるからこそ頑張ってこられました。

 

「この人たちのために頑張りたい」と思える仲間を見つけることが、モチベーションという意味で一番大切かもしれません。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

ひとまずはアプリの体験の質の向上にフォーカスしていきたいと思っています。

 

スタートアップとして自社のサービスをどんどん広めていきたい思いはありますが、まず優先すべきは目の前のユーザーの皆さまに満足してもらうことです。

 

1人の人に「もっと使いたい!」と感じていただけたら、口コミでサービスを広げていくことも可能だと思いますし、まずは使いやすさなどを追求して、「ギバース」で寄付をするという体験の質を上げていきたいです。

 

その一環として、当社サービスを利用いただける機会をさらに増やしていく必要があると考えています。たとえば、掲載するECサイトを増やし、より多くのお買い物が寄付につながる仕組みを整えることで、ユーザーの皆さまに喜んでいただける形を目指します。

 

「これになら人生を賭けられる」と思えるものを見つける

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

「これになら自分の人生を賭けられる」と思えるものを見つけることが、起業家にとって大切だと思っています。

 

プロダクトの価値を自分自身が信じられること、結局のところはそれが仕事の軸になります。私もこれまで、さまざまなご縁があってここまでやって来られたのですが、一番は「ギバース」というプロダクトに出会えたことが大きかったと思います。

 

これから起業する方にも、心から「これがやりたい!」と思えるものを見つけてほしいと思います。目標が見つかれば、あとは走るだけです。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:藤本 巴氏

株式会社タイミーの小川嶺社長に影響を受け、将来起業することを決意。2019年に新卒でパーソルプロセス&テクノロジーに入社。2021年には当時最年少で役員直轄の新規事業開発部門に異動し、新規事業の立ち上げを経験する。2022年、タイミーの1人目のエンジェル投資家である木崎智之氏との出会いをきっかけに本格的に起業準備を開始。約2年間多くのアイデアを木崎氏と検討する中、能登半島地震を機にお金いらずで寄付を可能にする新しい仕組みである「Givearth(ギバース)」の構想を得る。

企業情報

法人名

株式会社ギバース

HP

https://www.givearth.jp/

設立

2023年11月21日

事業内容

いつもの買い物で世界を救う!

ゼロ円寄付アプリ「Givearth(ギバース)」の企画‧開発‧運営

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