【#646】「自分たちが欲しかったものを作る」——人と組織をつなぎ、働きがいを届けるプラットフォームの原点|大西 泰平(株式会社スタメン)

株式会社スタメン 代表取締役 大西 泰平
「人と組織で勝つ」をコンセプトに、2016年に創業した株式会社スタメン。主力サービス「TUNAG(ツナグ)」は、現在約1,400社の企業に導入され、従業員体験向上を支えるインフラとなっています。創業から10年を間近に、AIの波や大きな転換期を迎えながらも、「自分たち自身があったらよかったと思えるサービスを作る」という原点を貫く代表取締役の大西泰平氏に、事業の詳細から起業の背景、今後のグローバル戦略まで幅広くお話を伺いました。
「人と組織の力」を最大化する——従業員体験(EX)向上プラットフォームの全貌
事業の内容をお聞かせください
複数のITサービスを展開しています。メイン事業である「TUNAG」は、人と組織のつながりを深め、信頼関係を育むための「従業員体験(EX)向上プラットフォーム」です。
TUNAGは現在、外食・小売・物流・製造といった、いわゆるノンデスクワーカーを多く抱える業界で広く活用されています。ただ、当初からノンデスク産業に特化して開発したわけではありません。実際にサービスを届けていく中で、本部と現場の距離、あるいは拠点間のコミュニケーションに課題を抱える現場主体の産業と、TUNAGの機能が非常に相性が良いことがわかってきたのです。
従業員全員がスマートフォンひとつで、業務連絡や申請・承認といった「業務DX機能」と、社内報、サンクスカードなどの「エンゲージメント向上機能」の両方を利用できる点が強みです。これにより、社内全体の業務生産性を高めながら、離職率の低下やリファラル採用の増加、さらには経営理念の浸透といった組織課題の解決をワンストップで支援しています。昨今、外国人労働者やスポットワーカーが増えている現場においても、情報の共有やチームとしての関係構築のニーズは非常に高まっています。
二つ目の事業が「FANTS」です。このサービスは、マイクロインフルエンサーと呼ばれる、SNSのフォロワーが合計10万人以上の方をメインターゲットに、オンラインコミュニティの収益化を支援するプラットフォームです。
英語教室や料理教室などの習い事をオンラインで提供し、サブスクリプション型のコミュニティ運営をサポートしています。動画配信サービスとの違いは、生徒同士の交流や1on1フォローなど、コミュニティとしての双方向性にあります。
さらに、プロダクト提供だけでなく、プライシング設計や集客施策などコンサルティング面での支援も行っており、ビジネスの知見が少ないインフルエンサーの方にも包括的なサポートを届けています。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
弊社は2016年に3人で創業しましたが、はじめからどんな事業を立ち上げていくか決めていたわけではありませんでした。しかし、創業メンバー全員がスタートアップの経営層を経験しており、組織が急拡大する過程で必ず直面する「組織の歪み」を身を持って実感していました。
私自身、海外拠点の立ち上げで、ゼロから200名規模まで組織を拡大する経験をしました。その過程で、コミュニケーションの不足から生じるトラブルや、本来の事業推進とは違う部分に多大なエネルギーを割かなければならなかった状況を乗り越えていく中で、エンゲージメントの重要性を痛感したのです。事業成長の要は「人と組織の力」にあるという確信を、創業メンバー全員が共通の経験としてもっていました。
そこで「当時の自分たちがあったらありがたかったと思えるサービス」を作ろうと、TUNAGの開発に着手しました。創業当初は3人ともIT業界出身だったため、IT系のスタートアップや成長企業をメインターゲットにしていました。しかし、試行錯誤を重ねる中で、より切実で大きなニーズがあったのがデスクレス産業だったのです。
ちなみに、共同創業者との出会いは、私が新卒で入社した広告会社で働いていた頃に遡ります。広告会社の営業担当とクライアント顧客という関係から始まり、起業というビジョンを共有し、ともに走り続けてきました。

「自分がいい」と思えるものを磨く——差分から学ぶ、愚直な仕事の流儀
仕事におけるこだわりを教えてください。
一番大切にしているのは、「自分自身がいいと思えるものを作り出す」ということです。自分で納得の行かないものは当然ですが、他者には受け入れてもらえません。資料作りでも提案でもプロダクトでも、まず自分が自信を持てるレベルにしてから、誰かに共有するようにしています。
その上で大切にしているのが、自分が「良い」と思ったものと相手の反応のギャップを丁寧に分析することです。自分が良いと思ったものが相手に納得してもらえなかった時、そこには自分がまだ気づいていない何かがあるはずです。
そのギャップが何かを正確に把握できれば、次にその要素を盛り込むことで、その差を埋められます。反対に、何がギャップか分からないままでは、どうしていいか分からなくなってしまいます。だからこそ、その差分を理解することが重要だと思っています。
このこだわりは昔からのもので、準備した手応えと結果が一致する時、一致しない時、その差を意識してきた経験が、今の仕事のスタイルにそのままつながっていると感じています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
今が一番大きな壁だと感じています。AIによる社会構造の変化は、人類史上最大の転換点といえるほどのインパクトがあります。
これは弊社だけでなく、ほぼすべての企業が直面している課題だと思います。この変化の波に適応できるのか、押し流されてしまうのかというように、これほどの規模の壁は、これまでに経験したことがありません。
大変だなと感じる部分も正直あります。しかし、この時代に事業をやっていることを「面白い」と捉えるしかないとも思っています。大変ではありますが、やるしかないという気持ちで向き合っています。

難しいことだから、達成した時に意味がある——仲間と積み上げる充実の日々
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
人生は一度きりという前提の中で、自分の時間をどれだけ濃くできるかを大切にしています。40年間の人生を振り返った時に、高い目標に向かって仲間と力を合わせ、それを達成できた時の充実感や達成感は、何にも代えがたいものだと感じてきました。
高い目標に向かうプロセスは非常に耐え難いものですが、目標が達成された瞬間に、あのストレスが全部やっててよかったに変わります。それが繰り返されてきたから、どんなに大変なことにも立ち向かうことができるモチベーションになっています。
仕事でも同じです。難しいことを仲間と一緒にやり遂げた時、目標達成の喜びだけでなく、ともに戦った仲間との信頼感がより深まります。そうした経験が積み重なっているから、どれだけ大変な局面でも前に進み続けられると思っています。
「経営者は孤独」とよく言いますが、私自身はあまりそのように考えたことはありません。それは、本当に信頼できる仲間がいるからこそだと思っています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
今後は「プロダクトの業界特化拡張」「新機能の開発」「データの活用」を軸に、さらなる成長を目指します。特にAIの活用には注力しており、蓄積された組織データから離職リスクを予測したり、次に打つべき施策をリコメンドしたりと、より精度の高い組織改善サービスの提供を予定しています。
また、将来的には日本国内に留まらず、グローバルな市場での価値提供も視野に入れています。外国人労働者の増加など、多国籍化していく現場の組織課題は、日本国内でもすでに顕在化しています。自分たちがテクノロジーを武器にそれらの課題を乗り越えていくことで、より多くの人に感動を届けていきたいと考えています。

何気ない縁が未来を変える——起業家へ贈る、日常の中のパスポート
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
何気ない出会いや縁を大事にすることが一番伝えたいことです。
創業メンバーとの出会いも、重要なお客様との縁も、組織拡大を支えてくれた仲間も、振り返ってみると最初は何気ない出来事が出発点でした。起業すると、目の前の事業や目標にフォーカスするあまり、ちょっとした縁を軽く扱ってしまいます。
それでも、意識して向き合ってきた何気ない出来事が、後々思わぬビジネスチャンスにつながったり、苦しい局面を救ってくれることが、本当に何度もありました。
小さな出会いや縁にも全力で向き合うことの積み重ねが、起業での成功を形作る見えない力になると思っています。時間軸を長く持ちながら、目の前の小さな縁を大切にしてみてください。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:大西 泰平 氏
筑波大学卒業後、大手広告会社などを経て、2014年よりITベンチャーのベトナム拠点事業責任者として、海外子会社をゼロから2年で200名を超える拠点として立ち上げる。帰国後、取締役としてスタメンの創業に参画。創業事業であるTUNAGを事業部長として統括するとともに、営業、マーケティング、デザイン、開発、財務などの幅広い職能を活かした全社最適な経営戦略の推進を担う。2023年1月より現職。
企業情報
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法人名 |
株式会社スタメン |
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HP |
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設立 |
2016年8月1日 |
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事業内容 |
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