株式会社フィル・イノベーション・ラボ(フィル・カンパニーグループ) 執行役員 村川 裕一郎様


コインパーキングの上部空間を活用する空中店舗「フィル・パーク」など、ユニークな土地活用サービスで成長を続けるフィル・カンパニーグループ(以下、当社グループ)。「まちのスキマを、「創造」で満たす。」をパーパスに掲げ、オーダーメイド型のまちづくりを体現しながら既存の枠を超えた挑戦を続ける同社の事業戦略と組織文化、そして若手が活躍できる環境について伺いました。

コインパーキングの上に商業ビルを建てる――活用がむずかしい土地の潜在価値を最大化する

どのような事業をされているか教えてください。

当社グループでは、「空中店舗フィル・パーク」という事業をやっています。

 

もともとは、コインパーキングの上部空間(空中)が使われておらず「もったいない」というところからビジネスを始めた会社です。現在コインパーキングは日本全国に10万箇所あると言われています。コンビニが5万〜6万と言われているので、その約2倍のコインパーキングが日本にあるわけです。その上部空間を活用しませんかという話を、地主様にご提案させていただいています。

 

フィル・パークの特徴は、コインパーキングの上部空間を使うというユニークさもそうですが、「商業用途」に特化している点にあります。商業ビルの企画・設計・施工はもちろん、飲食店・美容室・クリニックといったテナント誘致・建物管理まで、全て自社で一貫して手がけており、それが強みです。

 

大型商業ビルは大手デベロッパーが担いますが、コインパーキング5台分ほどの小規模なスペースの商業ビルを建築を請け負う企業は多くありません。現在は仙台から福岡まで展開していますが、これを本業とする競合他社はほとんど存在しないのが実情です。

 

また、もう一つ「プレミアムガレージハウス」という事業もあります。1階がガレージ、2階が1LDKの賃貸住宅になっており、こちらも企画・設計・施工・入居者募集まで一貫して行っています。プレミアムガレージハウスの面白さは、一般的な賃貸住宅とは違う評価軸で優位性を築ける点にあります。

 

通常の賃貸住宅では「駅から徒歩何分か」が、入居率や賃料を大きく左右します。しかし、車利用を前提とするガレージハウスは、駅からの利便性以上に、幹線道路やインターチェンジへのアクセスの良さが競争優位になります。


主なターゲットは年収1,500万円前後の富裕層であり、そうした方々に向けてマーケティングを展開しています。

 

 

グループ内でのフィル・イノベーション・ラボの立ち位置を教えてください。

もともとフィル・カンパニーには新規事業を担う「事業開発室」がありましたが、それを法人化する形で「株式会社フィル・イノベーション・ラボ(以下、当社)」を設立しました。私は現在、フィル・カンパニーから出向という形になります。

 

当社の役割は大きく2つあって、一つは既存事業との相乗効果を狙う「拡張領域」、もう一つは全く新しいビジネスを創出する「挑戦領域」です。

 

フィル・カンパニーが築いてきた信頼と実績を基盤に、グループ全体のポートフォリオを最適化し、企業価値を最大化させることが私たちのミッションです。パーパス(Purpose)に沿うものであれば、「既存の枠組みにこだわらず何でもやる」という精神です。

 

あえて別法人とした理由は、新規事業の創出と、既存事業の効率的な運用では、求められる思考が全く違うからです。意思決定機関を分離することで、新たな取り組みに特化した機動力のある動きが可能になります。

 

私たちのパーパスは『まちのスキマを、「創造」で満たす。』こと。フィル・パークとプレミアムガレージハウスという2つの商品だけで、私たちが目指すパーパスが実現できるとは考えていません。課題を抱える地主様や、未開拓の入居者ニーズに応える新しいサービスを創造することこそが、グループ内での当社の役割です。

 

既存の「建物」概念に縛られない、新しい空間ソリューションへ

新規事業の挑戦について、現在の構想を教えてください。

一つ目は「借地スキーム」の新たな展開です。これは、地主様から土地をお借りして、私たちが建物を建築・運営するモデルです。自治体や宗教法人、学校法人など「土地は所有しているが自ら投資に踏み出すのが難しい」という方々に向けたソリューションです。

 

実際、静岡県沼津市では、官民連携まちづくりプロジェクトとして昨年採択され、現在着工を進めています。

 

二つ目は「トレーラーハウス」での暫定的な土地活用です。建築費がこの5年で倍以上になる中、建築投資を躊躇される地主様は少なくありません。トレーラーハウスは、法的に「車両」扱いのため、建築コストの高騰影響を比較的抑えられます。固定資産税の負担のみが生じている遊休地に対し、短期間からでも収益化を図れる有効な手段として、その可能性を探っています。

 

また、プレミアムガレージハウスの幅を広げる試みも進めています。具体的には、事務所利用や短期滞在、ペット共生といった、従来のプロダクトでは十分に捉えきれなかった多様なニーズへの対応です。

 

私たちが大切にしているのは、あえてひらがなで表現する『たてもの』という考え方です。 「必ずしも建築物である必要はない」という意思表示で、挑戦を続けるうえでは、 建築という枠に縛られる必要はないと思っています。

 

テクノロジーの進化によって、全く新しい「空間」の形が生まれるかもしれない。本質は、地主様と入居者様のニーズを、「同時」に「最大限」に満たすこと。そのためなら、手法は何だっていい。そんな柔軟で自由な発想を、当社のカルチャーとして一番大切にしています。

 

 

新卒2期目・7年目で執行役員へ――スポンジのような吸収力を育む文化

若手が挑戦できる文化とはどのようなものでしょうか?

当社グループには「若手だから」というブレーキは一切ありません。社歴や年次ではなく、『何をしたいか』という意志を尊重するカルチャーがあります。これまでの慣習に縛られない柔軟な発想こそが大切だ、という考えが浸透しています。

 

私は新卒2期生としてフィル・カンパニーに入社しました。上場直後、社員30名ほどの規模で始まった新卒採用は、持続的な成長を見据えた会社としての大きな「投資」であったと思います。

 

入社1〜3年目の社員が、すぐに大きな成果を出せるとは限りません。しかし、業界の常識に染まっていない彼ら・彼女らは、経営陣の掲げる理念やビジョンの本質を、まっさらな状態で吸収できる「スポンジ」のような存在です。

 

パーパスの背景にある志を深く理解し、体現してくれる新卒(若手)の成長は、組織のDNAをより濃く、強固なものにしていくと感じています。

 

「株式会社フィル・イノベーション・ラボ」のミッションは、社名の「ラボ(研究所)」という言葉が示すように、仮説を立て、実験し、検証するプロセスをグループ全体に体現することです。失敗を恐れず打席に立ち続けることを組織として実践していくことが、私たちに課せられた役割だと思っています。

 

「第三創業期」の挑戦。カルチャーの浸透と100人超えの組織づくり

社内文化の浸透度と、急成長に伴う組織課題への取り組みを教えてください。

フィル・カンパニーグループは、今まさに第三創業期とも言える段階にあります。この時期に既存の価値観にとらわれない新たな視点を持つことは不可欠です。当社はグループ内でその役割を担う存在として、取り組みの内容や進捗を積極的に社内発信しています。

 

「挑戦=新規事業を立ち上げること」というイメージを持つかもしれませんが、私たちの既存事業自体がクリエイティブな挑戦の連続です。

 

土地活用の企画・提案には決まった正解がありません。『この土地の地主様は何に困っているのか』『このまちにはどんな建物があれば喜ばれるのか』など、地主様はもちろん、まちの小さな声に耳を澄ませ、ゼロから形にしていくことが私たちのビジョンにある「オーダーメイド型のまちづくり」です。

 

組織規模の面では、2025年度末時点で従業員126名となり、前年同時期比で42名増、約50%増という急拡大が続いています。これに伴い、特にマネジメント層の育成と研修に注力しています。また「目標管理システム」の構築や「評価と報酬体系の整備」も並行して進めており、拡大する組織を支える仕組みづくりの段階にあります。

 

具体的な取り組みとして印象に残っているのが、ミドルマネジメント層向けの研修です。単なる『マネージャーの心得』のインプットではなく、現在地の軸と未来の軸を2軸で考えるプログラムで、隣の部署との連携課題も、お互いの未来像を共有することで新しい答えが見えてくる。そういう発見がありました。

 

また、形式的な場だけでは日常のコミュニケーションは生まれません。オフィス4階の窓側に「白樺」が生えているエリアがあるのですが、週1回、新卒から役員まで業務後に集まって、少しのお酒とともに雑談する取り組み(通称:しらかバー)も続けています。

 

仕事の話は特になくて、流行りの漫画の話とか、他愛もない会話です。トップダウンからボトムアップまで、さまざまな取り組みが同時並行で動いているのが今のうちの会社です。

 

 

他社がやらないサービスを世の中に広める。多様な動機が集まる場所

貴社で働く上での魅力ややりがいを教えてください。

一番の魅力は「グループの未来を、自分次第で塗り替えられる」ということだと思っています。新卒7年目で執行役員を任せていただいたことがその象徴で、意志があれば会社の未来を左右する重要な決断に直接関われる。自分が開発する新規事業が将来のグループの柱になるかもしれないという緊張感と、自分のアイデアが形になっていくワクワク感が、日々の大きな原動力になっています。

 

現場レベルでも同じことが言えます。小さな駐車場の一角に、どんな建物を作り、どんなテナントを誘致するかを考えるのは「0から1を生む」挑戦です。新卒1年目のメンバーからベテランまで、『自分の提案ひとつで、まちが少し変化する』というワクワクしたマインドが当たり前のように浸透しています。

 

入社する方のモチベーションは本当に多様です。フィル・パークを一棟でも多く世の中に建てたいという人もいれば、これまでにないサービスやプロダクトの考え方を地元に持ち帰りたいという人もいる。不動産・建設業界に限らず、さまざまな背景を持つメンバーがいるのが特徴です。

 

 

ひらめきより、失敗確率を下げる地道な積み重ねを

新規事業を生み出そうする企業へのアドバイスやエールをお願いします。

新規事業というと、誰かの天才的な一発のひらめきで生まれるイメージを持たれがちです。しかし、いざやってみるとそうじゃないと分かります。

 

成功にも失敗にも、必ず理由があります。しっかり分析して試行回数を地道に積み上げていけば、失敗する可能性を極力減らすことができます。それでも失敗の方が多いこともザラです。4割成功するなら3つやれば1個は成功するといった確率の考え方で最近捉え直しています。

 

もう一つは外部の知識・知見を積極的に入れることです。私は、会社の補助を受けて、働きながら社会人大学院に通っているのですが、全く違う業界の事例が自社の課題解決のヒントになることがあります。たとえばトヨタの組織構造が、当社グループの組織設計のヒントになることも起きる。

 

新規事業の創出や挑戦を後押しする文化を作るには、組織としてそういった学びの機会を創ってあげることも大切だと感じています。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

担当者データ:村川 裕一郎 氏

2019年4月にフィル・カンパニーへ新卒2期生として入社。土地活用コンサルティングセールスに従事後、東北エリアに現地常駐で単身赴任営業を経験。2021年4月にプライベートブランド開発室マネージャーに就任。2022年12月に株式会社ストラボ 代表取締役社長に就任し、京都・福岡で自ら店長として店舗運営を行う。2025年1月より株式会社フィル・イノベーション・ラボ 執行役員を務める。

企業情報

法人名

株式会社フィル・カンパニー / 株式会社フィル・イノベーション・ラボ

HP

https://philcompany.jp/

設立

2005年6月3日(フィル・カンパニー) / 2022年12月1日(フィル・イノベーション・ラボ)

事業内容

  • 空中店舗「フィル・パーク」、ガレージ付賃貸住宅「プレミアムガレージハウス」等の空間ソリューション事業

  •  まちづくりのための空間ソリューション事業の開発

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