
IPO準備で注目されやすいのは、
資本政策、予実管理、J-SOX、開示体制など、いわゆる「見えやすい論点」です。
しかし実際には、上場審査や内部管理体制の整備が進む中で、未払い残業、規程不備、ハラスメント対応の未整備、法改正対応の遅れが表面化し、想定以上に大きな論点へ発展するケースは少なくありません。
IPO準備企業にとって、労務対応の本質は「法律が変わったから修正すること」ではありません。
単なる制度整備だけでなく、「実際に運用されているか」「管理体制が継続的に機能しているか」まで確認されます。
重要なのは、
です。
ここまで整備できて初めて、法改正対応は“守り”ではなく、“企業価値向上”へ変わります。
2026年度の法改正は、単なる法令対応ではありません。
「この会社は、継続企業として労務リスクを統制できているか」を問う材料になっています。
2026年度に人事・労務実務へ影響する主要論点は、大きく5つです。
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法改正テーマ |
主な施行時期 |
主な対象 |
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労働安全衛生法・作業環境測定法 |
2026/1、4、10に段階施行 |
全企業 |
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女性活躍推進法 |
2026/4 |
従業員数101人以上~ |
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子ども・子育て支援金制度 |
2026/4 |
全企業 |
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障害者法定雇用率 |
2026/7 |
従業員数37.5人以上 |
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カスハラ・就活セクハラ対策 |
2026/10 |
全企業 |
1.労働安全衛生法・作業環境測定法の改正
2026年の安衛法対応は、単なる工場・現業部門の話ではありません。
「誰を対象に、どの場面で、誰が安全管理責任を持つのか」が細かく問われる改正です。
主な論点として、以下が挙げられます。
・個人事業者(フリーランス・一人親方等)への安全衛生対策の拡充
・化学物質対策の強化
・機械等による労働災害の防止の促進
・高年齢労働者の労災防止方針の明確化(努力義務)
(参考)厚生労働省_労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律
IPO準備企業で見落としやすいのは、業務委託・フリーランス・一人親方・常駐ベンダーなど、労働者ではないが同じ場所で働く人への配慮です。
開発、物流、施工、イベント運営、CS運営などで外部人材を使う企業は、契約管理だけでなく、安全衛生上の役割分担も整理しておく必要があります。
2.女性活躍推進法の改正
2026年4月1日から、常時雇用する労働者 101人以上300人以下の企業について、男女間賃金差異と女性管理職比率の公表が義務化されました。
さらに、この2項目に加え、機会提供または両立支援に関する実績から1項目以上を選択し、合計3項目以上の公表が必要です。
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企業規模 |
改正前 |
改正後(2026年4月~) |
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従業員数301名以上 |
男女間賃金差異(必須)+2項目以上 |
男女間賃金差異(必須)+女性管理職比率(必須)+2項目以上 |
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従業員数101~300名 |
1項目以上 |
男女間賃金差異(必須)+女性管理職比率(必須)+1項目以上 |
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従業員数100名以下 |
努力義務 |
努力義務(変更なし) |
(参考)厚生労働省_男女間賃金差異と女性管理職比率の公表について
3.カスハラ・就活セクハラ対策
2026年10月施行より、カスタマーハラスメント対策と、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策、いわゆる就活セクハラ対策が義務化されています。
【カスハラの防止のために講ずべき措置】
・方針の明確化と具体的な対処法の周知
・相談体制の整備
・悪質なケースへの備え
【就活セクハラの防止のために講ずべき措置】
・厳正な対処方針とルールの明確化
・相談体制の整備
・事後対応と不利益取扱いの禁止
参考:厚生労働省_令和8年10月1日から、カスタマーハラスメント対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます!
4.子ども・子育て支援金制度
子ども・子育て支援金制度は2026年度に創設され、2026年4月分保険料から段階的に徴収されています。
この制度は、一見すると「保険料項目がひとつ増えるだけ」に見えます。
しかし実際は、給与計算システムの設定、給与明細表示、従業員説明、問い合わせ対応まで網羅的な対応が必要となります。
特にIPO準備企業では、給与計算ミスや説明不足による従業員トラブルが内部管理上の問題へ発展するケースもあるため、早期対応が重要です。
5.障害者法定雇用率の引上げ
2026年7月以降、民間企業の法定雇用率は2.7%に引き上げられます。
あわせて、除外率は2025年4月から各業種ごとに10ポイント引き下げられています。
雇用義務を履行しない事業主に対しては、ハローワークから行政指導がなされます。
なお、常用労働者数が100人を超える企業が対象の障害者雇用納付金計算は、6月以前は2.5%、7月以降は2.7%で算定されるため、2026年度内で料率計算が変動する点にも注意が必要です。
IPOを目指す企業ほど、労務は「後で整える領域」ではありません。
重要なのは、「問題が起きてから対応する」のではなく、起きる前に潰すことです。
2026年度の法改正対応は、IPO準備企業にとって「法務論点」ではなく、ガバナンス論点です。
規程・運用・開示・教育を一体で見直し、必要であれば早期に抜本的な是正を行う。
この意思決定を先送りせず、早期にリスクを可視化・是正することこそが、IPOを確実に実現している企業に共通する成功パターンです。
複雑化する法改正への対応、未払い賃金の精算、
審査に耐えうる規程整備とその運用定着――
これらを自社のみで短期間に完遂するのは、現実的に容易ではありません。
社会保険労務士法人クラシコでは、IPO支援に特化した専門チームが、
最短2ヶ月の初期労務監査から、制度改修、未払い賃金精査、運用定着支援までを一貫して伴走します。
「今の労務体制で、本当に審査を乗り切れるのか。」
その問いに少しでも不安がよぎるなら、問題が顕在化する前に一度現状を可視化することをおすすめします。
厚生労働省_労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001497667.pdf
厚生労働省_男女間賃金差異と女性管理職比率の公表について
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001663919.pdf
厚生労働省_令和8年10月1日から、カスタマーハラスメント対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます!
https://www.mhlw.go.jp/content/001662630.pdf
社会保険労務士法人クラシコ 所長
特定社会保険労務士
井上啓文(いのうえ ひろふみ)
関西大学経済学部卒業。会計ファームで税務・経営の指導を経験。
財務・経営視点を踏まえた人事労務支援を強みとする特定社会保険労務士へ。
IPO準備企業や成長企業を中心に、労務監査、内部体制整備、コンサルティングなどを担当。
専門的な知見と現場経験を活かした的確なアドバイスを得意とし、顧客への手厚い対応が高い評価を得ている。2024年より所長に就任し、さらなる顧客貢献を目指す。
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法人名 |
社会保険労務士法人クラシコ |
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HP |
https://classico-os.com/ |
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設立 |
2013年12月 |
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事業内容 |
成長企業から中堅企業を中心に、人事・労務領域の戦略支援を行う全国対応の社会保険労務士法人。 年間約25社の上場準備企業をサポート。上場審査を見据えた体制整備や運用改善に取り組み、持続的な成長を支える組織基盤の構築を支援している。 |
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