エヌエス・テック株式会社 取締役 高橋 広也

製造業を中心に人材派遣・請負・紹介を手がけるエヌエス・テック株式会社は、創業50年を超える歴史を持ちながら、この5年間で制度・環境を大きく変革してきました。今回は取締役である高橋広也氏に、無期雇用化の推進や休暇制度の変革など、同社が社員とともに築いてきた働く環境の詳細を伺いました。

 

リーマンショックを乗り越えた「特化しない」強みと、制度変革が変えた雇用の形

事業の内容をお聞かせください。

エヌエス・テック株式会社が展開するのは、製造業を中心とした人材派遣・請負・紹介の総合人材サービスです。

 

従業員は千数百名で、そのうち8〜9割が全国各地の製造メーカーへ派遣社員として就業しています。残りは本社含む全国24拠点の事業所に勤務する社員です。

 

当社の大きな特徴は、半導体・デバイス・自動車といった特定の業種に特化せず、幅広い製造業と取引していることです。

 

この多様性が経営の安定を支えており、リーマンショックの際に売り上げが75%減まで落ち込みながらも事業を継続できた大きな要因となっています。

 

輸出業が打撃を受けても、国内向け軽自動車や国内市場に特化した製品の製造ラインは影響を受けません。特化しないことが、当社の強みであり特徴です。

 

 

社内制度の変革についてお聞かせください。

この5年間で当社が最も注力してきたのが、雇用形態の改革です。

 

5年前は派遣社員の8割強が有期雇用(契約社員)でしたが、安定雇用と定着率向上を目的に無期雇用化を積極的に推進してきました。現在は無期雇用者の割合が有期雇用者を上回り、離職率も11〜12%から4%へと大幅に改善しています。

 

当社の本社・営業所で働く社員たちの評価制度も刷新されました。定期昇給に加え、年間の評価結果に連動して手当が増減する仕組みを導入。こうして賃金規定を整備したことで、2年後3年後5年後と、将来のキャリアと給与の見通しが立ちやすくなりました。

 

休暇制度では、年々変化する育児休暇や看護休暇などの諸制度に対して柔軟に変更を繰り返しており、規定日数などに関して法定を上回る形での導入を行っております。

 

また、今期からボランティア休暇制度を新設し、参加証明書が発行される社会貢献活動であれば積極的に参加できるようになりました。当社は創業以来様々な自然災害等で少なからず影響を受けてきましたので、少しでも意識を向け行動にうつすきっかけになればと考えています。

 

これら休暇制度は派遣社員含め全社員対象であり、社労士による年1〜2回のウェブセミナーと独自パンフレットで社内周知を図っています。

 

社員への浸透度と変化についてお聞かせください。

浸透度についてはまだ道半ばだと率直に思っています。自分に関係ないと思っている間は気にもしないので、例えば育休も、部下や自分が当事者になって初めて調べるというのが今の実態です。

 

一方で、変化の兆しも見えています。男性育休の取得者は毎年出ており、育児休業からの職場復帰率は100%に近い数字を維持しています。

 

浸透を高めるために重要視しているのが、「自分が当事者でなくても語れる状態にすること」です。

 

採用面接で制度を問われた時に自信を持って答えられること、身近な同僚の事例として話せることが本当の意味での浸透だと考えており、社労士によるセミナーと独自パンフレットの整備を続けています。

 

 

仕事の「前後を繋ぐ」文化と、自転車の分解から始まる成長の仕組み

会社が目指す幸せのカタチについてお聞かせください。

当社が描く働くことの幸せは、「仕事を通じてしっかりとした対価を得て、自分の人生を謳歌すること」です。個人の多様性を認め合いながら、モノづくりに関わることへの誇りを大切にしています。

 

私たちが派遣している社員が工場で働くことで、街を走る車が、家庭にある冷蔵庫が、手に持つスマートフォンが完成していく。直接そのメーカーに勤めているわけではなくても、確実に関わっているという誇りは必ずあります。

 

社員に繰り返し伝えているのが「仕事の前後を繋ぐ」という思想です。

 

過去から受け取った仕事を自分が何をして次に渡すのかを意識することで、全体として1つのものが成し得ていく感覚を持って仕事ができます。今の自分だけよければいいという姿勢では未来も次の仕事も疎かになるという考え方を、組織に根付かせています。

 

入社後3ヶ月・1年・3年の壁を、どんな仕組みで乗り越えていますか?

新卒社員には入社後1ヶ月間、本社での座学研修が用意されています。前半は社会人としての基礎、後半は名古屋・仙台のトレーニングセンターでの実技研修です。工具の名前や操作方法、安全教育を実践的に習得します。

 

研修の目玉は自転車の完全分解と組み立てです。戻さなければならない前提で壊さなければいけないので、どの順序で部品を外してどこに置くかを考えながら作業します。電動ドライバーを握ったことがない学生も多いですが、できるようになるまで丁寧に教えます。

 

5月の配属後は専任担当が相談対応にあたります。1年ごとにアンケートを実施し、本人の希望・評価結果・上司の推薦・異動先管理職との面談という段階を経て、納得したうえでのキャリアチェンジが実現する仕組みです。

 

「慣れた環境でこのままでいい」という選択も尊重されており、社員一人ひとりの意思が起点になっています。

 

 

離職率4%の秘密。製造キャリア正社員制度と国家資格支援

定着率を高めるために、特にこだわっている制度はありますか?

定着率向上の柱の一つが「製造キャリア正社員制度」です。

 

35歳以下の中途採用者を対象に、正社員として採用・研修したうえで製造現場に派遣する仕組みで、賞与・年1回の昇給・退職金制度も完備しています。現在は全体の14%を占めるまでに拡大しており、雇用の安定と所得向上の両立につながっています。

 

もう一つが機械設備保全の国家資格研修です。製造ラインを支える設備保全業務には国家資格(1〜3級)があり、当社は2級合格レベルまで育成するプログラムを名古屋のトレーニングセンターで実施しています。

 

講師は取引先メーカーで設備保全の実務を担ってきた55〜65歳のOBが6名在籍しており、今年3月には愛知県知事から職業訓練校として認定を受けました。

 

3年前に入社した新卒社員が保全研修を受けて国家資格2級に合格し、今は取引先の保全部署で働いています。技術を身につけることで付加価値が上がり、給与も上がっていく仕組みを作りたいです。

 

また、キャリアの停滞感を防ぐための施策としてeラーニングを活用しています。派遣社員には年2回、正社員には役職就任時の新任研修と階層別の年間カリキュラムを提供しています。

 

AI時代のモノづくりへ。今後の展望と求職者へのメッセージ

今後の展望、課題をお聞かせください。

今後の課題として、AI活用と労働人口減少への対応があります。

 

ホワイトカラーの業務はAIに置き換わっていく一方で、工場の手仕事は機械への代替が難しいものが多く残ります。だからこそ製造現場で働くことの魅力を発信し続け、技術スキルの習得を会社が投資として支援していく体制を整えることが急務です。

 

営業資料の作成に2〜3日かけていたものが、AIを活用すれば10分でたたき台が作れるようになりました。そういった業務効率化を進めながら、生まれた時間を人にしかできない仕事に充てていく。その両輪で会社を成長させていきたいです。

 

社員に対しては、スキルを身につけていただくための環境への投資を惜しまない方針を継続します。技術を身につけることで付加価値が上がり、給与も上がる。そのサイクルを会社全体に広げていくことが、今後の展望です。

 

 

読者へのメッセージ、求職者へのPRをお願いします。

50年を超える歴史の中で、良かったこと・悪かったこと、さまざまな経験を会社として積み重ねてきました。その経験をもとに制度を整え、社会に貢献し続けることが私たちの使命です。

 

製造業は未経験という方でも、工具の使い方から丁寧にお教えします。暑い・汚い・重いというイメージはもう過去の話で、今はきれいで働きやすい工場がほとんどです。製造現場は、あなたが手をかけたものが実際に世の中に出ていくという達成感を得られる仕事です。

 

長く安心して働ける環境づくりを続けているエヌエス・テック株式会社で、ぜひその一員として活躍してほしいです。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

ご担当者様データ:高橋 広也氏

1999年4月 エヌエス・テック株式会社入社、北上事業所配属

2002年2月 郡山事業所配属。同年4月、主任へ昇格

2003年4月 郡山事業所所長へ昇格

2005年4月 掛川事業所配属、第一業務部第5課 課長へ昇格

2008年4月 本社配属、第一業務部 次長へ昇格

2012年4月 業務部 部長へ昇格

2019年4月 執行役員へ昇格

2021年6月 取締役就任、現在に至る

 

企業情報

法人名

エヌエス・テック株式会社

HP

https://www.nstec.co.jp/

設立

1973年11月

事業内容

  • 製造業を中心に人材派遣・請負・紹介を行う総合人材サービス事業
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