株式会社YAMASTRO 代表取締役 清水 佑磨

航空宇宙・防衛・ロボットなど最先端産業を支える複雑形状の金属部品。株式会社YAMASTROは、その製造に長年つきまとってきた「リードタイムの長さ」と「熟練者依存」という構造的課題に、ソフトウェアとAIで真正面から挑みます。図面のアップロードを起点に、見積算出からGコード生成、マシン加工、検査に至るまでを人の介在なく自動実行する「ソフトウェア駆動の工場」の建設を目指している代表取締役の清水佑磨氏に製造業未経験という目線だからこそ描ける大きなビジョンと、それを実現するための覚悟についてお話をうかがいました。

熟練者の頭の中をソフトウェアとAIへ。「一気通貫」で製造業の構造を変える

事業の内容をお聞かせください

当社が取り組んでいるのは、航空宇宙・防衛・半導体製造装置・ロボットといった分野で必要とされる複雑形状の金属部品を、より速く・正確に届ける仕組みを作ることです。こうした部品は製造に時間がかかるため、ドローンやロボットの開発が「部品待ち」で止まってしまうという問題が現場では頻繁に起きています。

 

その根本的な原因は「熟練者の頭の中に依存した加工プロセス」にあります。図面を見て、どの工具を使い、どの順番で削っていくかといった「加工戦略」は、熟練者でなければ描くことができません。その戦略さえ決まれば、あとはGコードと呼ばれるマシン制御プログラムに落とし込み、加工機を動かすだけです。

 

しかし、出発点となる戦略設計が属人化しているため、量産やスケールが難しい状況が続いています。

 

さらに、既存のツールはあくまで「人が使うためのツール」に留まっており、過去の加工データが蓄積されていても参照するだけで終わっています。当社が目指しているのは、図面というインプットからマシン加工というアウトプットまでを一気通貫で繋ぎ、過去の加工実績をもとに次の加工戦略を自動提案・改善していく、「自律進化する工場」です。

 

まずはスコープを絞り、比較的シンプルな部品から実績を積み上げつつ段階的に対応領域を拡大していく計画です。将来的にはこの工場モデルを国内外に複製展開していくことを構想しています。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

新卒で外資・日系の金融機関に計5年間勤めましたが、仕事に夢中になれない自分がいました。「勉強を頑張れば幸せになれる」という価値観のもとで走ってきたものの、実際の働き方は、思い描いていた生き方とは大きくかけ離れていると感じました。

 

そんな中、転機となったのが東大出身者向けの起業家支援プログラム「FoundX」に参加したことでした。メンターからアメリカの製造業スタートアップ「Hadrian」を紹介してもらったのですが、複雑形状の金属部品の自動化工場というコンセプトに強く惹かれました。宇宙・防衛分野の部品需要が高まる一方で、製造体制が整っていないというギャップを埋める大きなチャンスがそこにあると直感しました。

 

もともと物理学科出身で製造業への関心はあったものの、業界経験はゼロです。だからこそ「当たり前」に縛られず、大きなビジョンを描けると感じました。「日本には製造業しかない」というくらいの確信を持ちながら、防衛省関係者や宇宙系企業、現場の熟練者たちに話を聞き続け、仮説を磨いていきました。

 

そして、自らの仮説に確固たる自信を持てた2025年10月にYAMASTROを創業し、複数のVCと会話する中で、最も強い共感と信頼を示してくれたインキュベイトファンドから1億円の資金調達を行いました。

 

 

「心から夢中になれているか」を問い続け、大きな思考スケールを保つ

仕事におけるこだわりを教えてください。

一番のこだわりは「心から夢中になれているか」を常に自分に問い続けることです。金融業界にいた頃は「早く仕事が終わらないか」と思っていましたが、今はまったく逆です。ジムに行くことや人に会うことさえ「一旦どうでもいい」と思えるほど、仕事のことが頭から離れません。その感覚が自分の中の確かな羅針盤になっています。

 

社会的に評価されるかどうかより、自分の本能が動いているかどうかを何度も自問自答しながら今の事業に向き合っています。パチンコにハマる人が毎日通うように、自分が夢中になれることがたまたま起業という形を取っているだけだと思います。この大きなエネルギーと熱量を使い切って何かを残したいと考え、製造業の未来の一部を担うという目標に向かって走り続けています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

最大の壁は「思考が小さくなってしまう」ことでした。現場の方々から生の課題を聞き、それを解決するソフトを作ろうとすると、確かにマネタイズは可能です。しかし、それでは自分が本当にやりたい大きなことに繋がりません。目の前の課題に引き寄せられるたびに、気づけば小さなビジネスを構想していたという状態に陥りがちでした。

 

そんな時FoundXのメンターがよく言っていた言葉に何度も救われました。「小さい山に登ろうとすると小さいことしか気にならない。頂上が雲で隠れているような大きな山を登ろうとすると、大きなお金も大きな人もついてくる」。この言葉を思い出すたびに、視野が広がる感覚がありました。

 

思考のスケールを大きく保ち続けることは今も継続的な課題です。目の前の情報を使いながらも、常に「大きな山」を見失わないようにする。その作業を一人でやり切ることは難しく、メンターの力を借りながら今日まで進んできました。

 

 

アスリートへの憧れと「大きな山」が、自分を突き動かす原動力

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

これまでずっとスポーツに打ち込んできた人間として、強く感銘を受けてきたのはアスリートと起業家でした。怪我したら終わり、契約が取れなければ終わり、資金調達できなければ事業も止まる。それでも自分の道を歩くと決めて突き進む人たちの姿に、ずっと憧れてきました。

 

小中学校時代のサッカーのチームメイトのうち2人がプロになっています。当時の自分は勉強もそこそこできたため、当たり前のように地元の高校に進学しました。県外のサッカーの強豪校に行って自分の力を試すなんて、そもそも選択肢として浮かばなかった。

 

それから15年経ち、彼らの選択と今の活躍を間近で見ているからこそ、「リスクを取ると人とは違った人生が歩めるし、少なくともその可能性が生まれる」ということを体感しました。

 

30歳でアスリートになることは現実的ではありません。でも起業家にはなれる。憧れた人たちと同じ場所に立って、若い世代の人たちに「こんな生き方もある」と思ってもらえる存在になりたいと思っています。少し大げさかもしれませんが、その目標が自分を前に突き動かす最大の原動力です。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

まずは「ソフトウェア駆動の工場」というコンセプトを形にすることです。AIのエッセンスを組み込み、製造すればするほど自律的に精度が上がっていく工場を複数構築していきます。さらに、それぞれの工場で蓄積されたデータを共有し、全体が同時に進化していく仕組みの実現を目指しています。

 

国内にとどまらず、東南アジアやアジア全域でも複雑形状の金属部品への需要は高まっています。早期に海外展開を進め、「複雑な金属部品ならYAMASTRO」というポジションを日本とアジアで確立することが目標です。

 

そのために今最も重要なのは、最初のソフトウェア開発を担うコアチームの構築です。ビジョンに本気で共感し、難しくても実現できると信じてくれるメンバーを集めることに、現在最もエネルギーを注いでいます。

 

 

テクノロジーは手段。「覚悟」を持って、大きな課題に挑め

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

スタートアップとして起業を志す方へのアドバイスは、「大きな課題を起点に考えること」と「覚悟を持つこと」の2点です。

 

「AIが流行っているからAIで何かしよう」という発想は、個人的には悪手だと思っています。テクノロジーはあくまで手段です。「こういう課題がある」という起点が先にあり、それをソフトウェアで解決できるならソフトウェア、AIが必要ならAIを使えばいいといった、課題を中心に据えた思考を持ち続け、できるだけ大きなことに挑んでほしいと思います。

 

そして何より、「勇気」や「決意」といった言葉では生温いような、「起業家として生きていく」という覚悟を持つことが全てだと思います。覚悟があれば、どんな壁にぶつかっても前に進み続けられます。まずその覚悟を固めてから、大きな山を目指してほしいと思います。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:清水 佑磨 氏

東京大学卒業後、外資・日系金融機関に計5年間勤務。その後、東大出身者向け起業家支援プログラム「FoundX」への参加をきっかけに、製造業の課題解決に取り組む決意を固める。2025年10月、株式会社YAMASTROを創業。複雑形状の金属部品製造を自動化・高速化するソフトウェア駆動の工場建設を推進している。

企業情報

法人名

株式会社YAMASTRO

HP

https://yamastro.jp/

設立

2025年10月

事業内容

図面アップロードを起点に、見積算出、DFM、G-code生成、マシン加工、検査までを人の介在なく自動で実行する、AIを備えたソフトウェア駆動の工場建設

 

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