株式会社三香堂 代表取締役 佐々木 基之

株式会社三香堂は、1926年の創業以来、薬草を原料とした基礎化粧品「薬用オパール」の製造・販売を手がけ、全国の化粧品専門店を通じた対面カウンセリング販売を貫いてきました。「声なくして人を呼ぶ商品作り」を信条に、宣伝に頼らず品質だけで支持を集め、親子三代にわたって愛用する顧客を持つ老舗企業です。2026年3月に創業100周年を迎えた同社の三代目・佐々木基之氏に、事業の歩みや対面販売へのこだわり、そして次の100年に向けた展望を伺いました。

祖父の想いから生まれた100年受け継がれる「素肌美の創造」

事業の内容をお聞かせください

当社は化粧品製造業として、薬用オパールをはじめとする基礎化粧品の製造・販売を行っています。全国の化粧品専門店に商品を卸し、対面でのカウンセリング販売を通じてお客様一人ひとりの肌に合わせたアドバイスを提供しています。

 

インターネット全盛の時代ではありますが、あえて地域密着型の専門店を通じた販売にこだわっています。お客様の肌の悩みに寄り添い、最適な使い方を丁寧にお伝えすることで、素肌美を創造していくことを大切にしています。

 

当社の主力商品である化粧水は、薬草を調合し、お酒のように1年間熟成させて作ります。薬草由来のため香りが独特だったり、肌のバランスが乱れているとしみることがあったりと、お薬に近い感覚の商品です。

 

そのため、お客様の肌の状態に合わせて、そのまま使うのか、コットンに含ませて使うのかといった使い方の指導が欠かせません。直接お顔を見て最適なアドバイスをすることが、この商品を正しく使っていただくために最も重要だと考えているため、対面での販売には特に力を入れています。

 

私たちは昔から、大きな宣伝は打つことはせず、利用者様のお声のみで認知を広めてきました。それは競合と比べた際の強みになっていると思います。

 

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

三香堂の歴史は、100年前に私の祖父が創業したことに始まります。祖父は福島県の会津若松出身で、当時は魚介類を扱う商売をしていました。当時は冷凍車がなかったため、夏場は移動中に魚が傷んでしまうこともありました。

 

質素倹約の時代ですから、傷んだ魚を捨てるわけにはいかず、従業員や家族が食べていたのですが、それが原因で皮膚疾患を患ってしまったのです。

 

祖父はそれを何とか治したいという一心で、東京の化粧品問屋で修行し、製造方法を学びました。

 

その後、会津若松に戻り、江戸時代から伝わる民間療法の薬草を調合して作ったのが、当社の原点となる化粧水です。使った方の肌の状態が良くなると評判になり、商品化して大阪で商売を始めたのが三香堂の始まりです。

 

 

宣伝ゼロを貫く。「声なくして人を呼ぶ」ものづくりの矜持

仕事におけるこだわりを教えてください。

先述した通り、創業当時から宣伝は一切しないという方針を貫いています。

 

祖父は声なくして人を呼ぶ商品作りと言っていました。良いものを作れば、使った人が大切な人に勧めてもらえます。爆発的な広がりはありませんが、親子三代で使ってくださるような、世代を超えたリピーターの方々に支えられています。

 

昭和の時代では、化粧品はテレビCMなどの知名度がすべてでした。しかし当社は、あくまで商品の品質そのもので勝負するという姿勢を崩しません。対面でのカウンセリング販売にこだわっているのも、商品の効果を最大限に引き出すためです。

 

そして、サンプルを配るだけでは顔にしみたと誤解されることもあります。お客様のお顔を直接拝見し、肌の状態に合った最適な使い方をお伝えすることが、信頼につながると考えています。

 

また、創業の精神にもありますが、商売は「金儲けではない」という考えが我々の根底にあります。「儲」という漢字は、人に信じると書きます。商売は目先の利益ではなく、信じてくださる方々を作ることで結果的に儲かるのだと祖父からも教えてもらいました。

 

 

社長就任から今までの最大の壁を教えてください

三代目として事業を継承する重圧が、最大の壁でした。私の場合、生まれた時から当社を継がないという選択肢はありませんでした。

 

父親がカリスマ的なリーダーシップを持っていたため、その後を継ぐのは大変でした。すべてが父の頭の中にあるため、マニュアルは存在せず、背中を見て学ぶしかありませんでした。その中で自分らしさを見つけるのは本当に難しく、幾たびも精神的なプレッシャーを感じていました。

 

転機になったのは、ある方からボランティアについてのお話を聞いた時です。ボランティアは他人のためにしているようで、実は自分の存在意義を確認するための行為だという言葉にハッとしました。

 

自分が成果を出そうと躍起になるのではなく、周りの人や社会のために何ができるかを考える。それが結果的に自分のやりがいにつながると気づいてから、気持ちが楽になりました。

 

「世のため人のため」社会貢献が原動力に

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

世のため人のためという考え方が、私のモチベーションの源です。先ほどお話ししたボランティアの気づきをきっかけに、自分の成果を追い求めるのではなく、お客様や社会にどう貢献できるかを軸に考えるようになりました。

 

当社の商品を通じて肌の悩みが改善されたお客様が笑顔になってくださる姿を見ることが、何よりの喜びであり、事業を続けていく力になっています。

 

祖父が皮膚疾患を治したいという想いから始めた事業ですので、その原点に立ち返ることが、自然とモチベーションにつながっています。

 

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

次の100年に向けて、後継者の育成に力を入れていきたいと考えています。親族も社員として入社していますが、親族に関わらず社員の中からも「社長」を目指せるような環境を作りたいです。

 

また、デジタル化やAIの活用も進め、遠方のお客様とも対面に近い形でコミュニケーションが取れる仕組みを構築したいと考えています。対面販売というこだわりを守りつつも、テクノロジーの力を取り入れることで、より多くの方に当社の商品を届けられる体制を整えていくことが目標です。

 

信頼を築くことが長く続く企業の条件

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

事業規模を大きくすることも大事ですが、その先に「社会にどういう価値を提供したいのか」という軸をしっかり持つことが、長く続く企業を作るポイントではないかと思います。

 

商売はお金が先ではなく、信頼を築くことが何より大切です。目の前の利益だけを追い求めるのではなく、お客様や社会との信頼関係を一つひとつ積み重ねていくことを考えるべきだと思います。

 

その結果として、100年続く事業の礎になると私は信じています。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

経営家データ:佐々木 基之 氏

1959年5月3日 大阪府東大阪市本町生まれ。100年続く家業の「三代目」としての教育を受ける。大学卒業後、1年間大阪のアパレル会社で勤務を経て、1983年 株式会社三香堂入社。2000年 副社長就任。2003年 代表取締役社長就任。2026年3月12日に創業100周年を迎える。

企業情報

法人名

株式会社 三香堂

HP

https://www.opal-co.co.jp/

設立

1926年3月12日

事業内容

「薬用オパール」をはじめとする基礎化粧品の製造・販売

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