
株式会社サイキンソーは、腸内フローラ検査を起点に、人々の健康を「見える化」するヘルスケアスタートアップです。2014年の創業以来、消費者向けの「Mykinso(マイキンソー)」、医療機関向けの「Mykinso Pro」、法人向けに細菌叢研究をトータルサポートする「Cykinso Research」、腸から始める「健康経営支援」を展開し、これまでに約25万人の検査データを蓄積してきました。腸内細菌と生活習慣の関係性を紐づけたデータを活用し、一人ひとりに最適な健康提案を届けることを目指しています。今回は、粒子線がん治療の研究者というキャリアから転身し、2022年12月にCFOとしてサイキンソーへ参画、2026年2月に代表取締役社長に就任した原洋介氏に、事業内容や今後の展望などを詳しくお聞きしました。
当社はBtoCとBtoBの両方で事業を展開しており、主軸となるのは「腸内フローラ」の検査と、そこから得られるデータの活用です。

腸内フローラ(腸内細菌叢)とは、私たちのお腹の中に住んでいる腸内細菌の集まりのことです。腸と脳の関連性や、腸内細菌叢が人の体質に影響を与えることは古くから知られていましたが、それを一般の方が手軽に可視化する手段はありませんでした。
当社は2014年の創業時に、この腸内細菌の「共生関係」を測定する腸内フローラ検査を世に送り出し、事業の起点としました。
検査をすると、たとえば大腸がんのリスクに関係する菌の存在や、免疫力に関わる菌の過不足、睡眠の質や肌荒れに影響する菌の状態などがわかります。検査結果はレポートとして提供し、「あなたにはこういう生活習慣の改善が効果的です」といったアドバイスも併せてお届けしています。
アドバイスを担うのは、腸内細菌叢の研究者、医療統計の専門家、管理栄養士など多様なプロフェッショナルチームです。
研究部門では論文執筆や学会発表も行っており、自社でエビデンスを構築できる点が大きな強みです。また、口腔内や土壌の細菌叢の測定にも対応しており、幅広い領域で細菌の「見える化」を推進しています。

もう一つの柱が、蓄積されたデータの活用事業です。検査の際には、食事内容や運動習慣、ストレスの有無など詳細な生活習慣アンケートにも回答いただいており、腸内フローラの解析結果と紐づけたメタデータとして保有しています。
これまでに約25万人分のデータが集まっており、たとえば「毎日キノコを食べている女性はある疾患の発生頻度が低い可能性がある」というようなこれからの研究の手がかりになるようなことが蓄積されております。
検査だけにとどまらず、この蓄積したデータを活かして一人ひとりに最適な提案を届けることが当社が本当に実現したいことであり、これからの事業の核となる部分です。
私は博士号取得後、放射線治療の一種である粒子線がん治療に関する研究所で肺がんなどを治療する大型の粒子線がん治療装置の開発や治療に携わる物理研究者として研究と治療の両方に約10年間従事していました。
その研究所時代に上司と共にスタートアップを起業し、研究を続けながら、資金調達や採用、IPO準備など管理部門のスキルを身につけていきました。転機となったのは、治療の普及について限界を感じたときでした。
がんにはさまざまな治療方法があり、放射線治療を受けるのはがん患者の約3分の1にすぎません。その中で、より効果が高いと言われる粒子線がん治療を受けるがん患者さんはごくわずかであり、よい治療でも身近ではないということにジレンマを感じました。
そうなると、よい治療を届けるためにはいち早く発見できる診断がより重要なのかと考えたのですが、趣味でCT検査を受ける人はいませんし、診断の機会も健康診断や発症後に限られます。
そのような中、「未病」や「予防」の段階でアプローチするということが大切ではないかとモヤモヤしていたときに、サイキンソーと出会いました。入社の決め手は、創業者が掲げていたバリューの一つである「Health」です。
「Health」は「健康」と訳されるのが普通かと思いますが、サイキンソーでは、「持続性」というように訳していたのです意味が込められていたことです。確かに、今、健康であっても、明日や10年後に不健康であれば意味がありません。
その「持続的な健康」という考え方に強く感銘を受け、2022年12月にサイキンソーへ参画しました。その後、2024年2月に取締役、2026年2月に代表取締役社長に就任し、創業者からバトンを受け継いで会社を次のステージへ導く役割を担っています。

常に心がけていることは、代表であろうと、CFOであろうと、部門リーダーであろうと、チームメンバーに会社の利益の最大化を求めている以上、自分自身が矢面に立ったときには絶対に引かないということです。
スタートアップで事業をしていると、大手企業との取引の際にそれぞれの「普通」の違いを感じ苦労する場面があります。当社はまだ50名ほどの会社で、設立から10年余りですから、相手からすれば小さな存在に映るかもしれません。
しかし、部下にはしっかり成果を求めている以上、自分が代表として出ていったときには、誰が相手であっても怯まず、絶対に負けて帰らないということを意識しています。
ベンチャーでは資金繰りも人材不足も、すべてが壁になり得ます。入社前にスタートアップを経営していた際や、治療の現場でもさまざまな困難を経験してきましたため、「想定外があること」を想定してこの会社に飛び込みました。
しかし、その想定をさらに大きく超える出来事がいくつもありました。たとえば資金調達ひとつをとっても、弊社のように10年の実績がある会社では「なぜ来年売上が倍になるのか」と過去の数字をもとに問われます。とはいえ堅実すぎる計画では、夢もないため当社に無関心な投資家の気を引けません。
それと同時にキャッシュがショートするタイムリミットは刻一刻と迫り続けるため、事業部には前向きなビジョンを示しながら、同時に現実的な数値目標も持たせなければなりません。どれか一つが崩れると全部が成り立たなくなるような、綱渡りの状態を3年から4年にわたって経験してきました。
自分が崩れれば全体が崩れるというプレッシャーの中でも踏ん張り続けてこられたのは、創業者の思いを引き継いでこの会社を大きくしたいという覚悟があったからだと思います。

「持続的な健康」というバリューを掲げた創業者たちと、その思いで作られた会社にコミットしたいというのが一番のモチベーションです。
辞めたいと思う瞬間は何度もありましたが、ここで結果を出せなければ他のどこへ行っても無理だろうという気持ちが根底にあり、これまで続けてくることができました。
また、自分が抜けたら会社全体が崩れてしまうかもしれないという責任感も大きくありました。私が入ったことで少しでも前に進む風が吹いているのなら、自分のせいでその勢いを止めるわけにはいかない、とにかくやり遂げるしかないという思いで走り続けてきました。
そして何より、この仕事には純粋な面白さがあります。未知の領域を切り拓いていく感覚が、私を前に進ませてくれていると感じています。
当社の創業者が目指していたのは、「ラーメンを食べても罪のない世界」です。
ダイエットや健康のためにラーメンを我慢するのではなく、食べた分を他の部分で補えるようにするという理想を腸内環境の見える化によって実現できれば、無理なく続けられる健康管理が可能になります。
今後は、蓄積してきたデータを活かして、一人ひとりの腸内環境に合った食事やサプリメント、生活習慣を提案できるサービスへと進化させていきたいと考えています。
その世代ごとのウェルビーイングを実現することが当社の目指すところです。20代なら美容、30代ならダイエット、40代なら更年期対策といったように、ライフステージに応じた最適な提案を届けたいと思っています。
最近はAIの活用も積極的に進めており、レコメンドや解析の領域での導入に加え、「AI管理栄養士」の開発にも取り組んでいます。ただし、AIが進化すればするほど、対面での人と人のコミュニケーションの重要性が増すと考えています。
腸活を続けているのに成果が出ないという方は、答えが欲しいのではなく同意や共感を求めている場合もあります。そうした場面ではやはり人の介在が不可欠です。AIを活用しながらも、人の力を大切にするサービスを構築していきたいと思います。
私がいつも大切にしている考え方は、「保険をいくつも持っておくこと」です。
保険とは、失敗したら別の業種に行くという意味ではなく、一つの計画がうまくいかなかったときにすぐ次の計画に切り替えられるよう、早めに準備しておくということです。10年後のイメージをつけるのは難しくても、1年後までの複数プランを思い描くことはできるはずです。
もう一つ、私が社内でよく言っているのは「甲子園型の目標にするな」ということです。
いつも地方大会一回戦負けのチームが甲子園出場を掲げること自体は素晴らしいのですが、もし一回戦で敗退した場合に、それまでの全ての努力が否定されるような目標設定をしてはいけません。目指すプロセスこそが大事であり、たとえ結果が伴わなくても、その過程で得たものは次に活かせます。
起業もこれと似ており、大きな夢を描くことは大切ですが、無理をして前に進み、止まれなくなるのもよくありません。かといってすぐに諦めてしまうのではなく、根気強く続けながらも、壁を感じたら素早く次のプランに移れる柔軟さを持つことが重要です。
私はこれを「ねじれの関係」と呼んでいます。平行線のように交わらないのではなく、一方がダメでも他方が生きるように、複数の計画を立体的に用意しておくことが大切です。この積み重ねが、起業を持続可能なものにしてくれると思います。

筑波大学大学院修了、博士(工学)。量子科学技術研究開発機構(QST、旧放医研)にて、粒子線がん治療装置の研究開発や治療業務に従事。研究所時代に研究所発ベンチャーを共同創業し、管理部門としてファイナンスや知財、人事、IPO準備を担当。2022年12月にCFOとしてサイキンソーに参画。2024年2月に取締役就任。2026年2月より現職。QST客員協力研究員。
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法人名 |
株式会社サイキンソー |
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HP |
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設立 |
2014年11月19日 |
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事業内容 |
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