
シリアルアントレプレナーとして複数の事業を立ち上げ、複数社を上場企業グループ入りさせてきた中野社長。コロナ禍でのM&Aによる事業承継をきっかけにワイン業界へ参入し、輸入販売からテクノロジーを掛け合わせた資産管理サービスまで、独自の事業を次々と展開しています。今回は、株式会社WineBankの事業内容から起業哲学まで、幅広くお話を伺いました。
弊社はワイン関連事業を幅広く手掛けています。主軸となるのは、フランスの生産者から直接ワインを輸入するインポーター業です。輸入したワインはインターネット通販や酒販店への卸売、レストランへの販売といった従来型の販売チャネルを通じてお届けしています。
それに加え、弊社が力を入れているのが「ワイン×フィンテック」=「ワインテック」という新しい事業領域です。
インポーター業ではお客様ご自身でワインを楽しんで頂くお手伝いをしていますが、ワインテック事業では、ワインの資産価値に着目し、楽しみながら資産形成ができる投資とワインを掛け合わせたサービスを展開しています。インフレの影響もあり、ワインは年々価値が上がっていく傾向があります。
WineBankサービスでは、市場に出回っているワインの価格データを独自に集約・分析し、お客様は所有するワインの時価をリアルタイムで確認できます。例えば1年前に10万円だったものが今は11万円になり、来年は12万円になりそうだという資産価値の変動を可視化することで、お客様の購入判断をサポートしています。お客様が最終的にワインを飲まなかった場合には売却できる仕組みも整えています。
ワインの資産管理も重要な柱のひとつです。現在約30億円分のワインを管理しており、専門倉庫での品質管理に加え、マネーフォワード社との連携により、ワインの資産をほかの金融資産と合わせて一元管理することもできます。
欧米では富裕層が資産の一部を金やアート、ワインといったオルタナティブ投資で保有するのは一般的ですが、日本ではまだ馴染みが薄い領域です。その文化を日本にも根付かせていきたいと考えています。
また、「WineBank Club」という月額8,800円からの会員制サービスも運営しており、会員の方は提携飲食店でワインをその時々の最安仕入れ値でお楽しみいただけます。価格が右肩上がりの中で少しでもお得にワインを楽しんでいただきたいという思いから生まれたサービスです。
事業形態は多岐にわたりますが、「すべての人にファインワインを」というビジョンのもと、良いワインを一人でも多くの方に届け、ワインを通じた特別な思い出づくりのお手伝いをしていきたいと考えています。
さらに、直近ではウィスキー事業にも着手しており、常温保存が可能で劣化しにくいという特性を活かした展開を進めています。
もともと大学生の頃からワインが好きで、社会人になってからはワインレストランを経営するなど、ワインとの縁は深いものがありました。川上の事業、つまりインポーターや酒販事業にもいつかチャレンジしたいと考えていたところで、札幌の老舗酒販店がM&Aに出ていることを知りました。
コロナ禍の緊急事態宣言中だったので、普通はオンラインで済ませるか、事態が落ち着いてから様子見するタイミングでしたが、逆にチャンスだと思って自ら札幌まで足を運んで交渉しました。それが功を奏し、信頼を得たことでご縁に繋がったのだと思います。
事業承継後、既存のインポーター業に付加価値を加えようと考えたときに思いついたのが、「ワイン×フィンテック」の掛け合わせでした。自社の在庫を見ながら「これだけのワインがあるのに、時価がわからない」という気づきが原点となり、資産管理サービスの開発に至ります。
社名も有限会社中村から株式会社WineBankへと変更し、「すべての人にファインワインを」という新たなビジョンのもとで事業を再構築しました。

仕事において最も大切にしているのは「嘘をつかないこと」と「逃げないこと」の二つです。
意図して嘘をつこうとしている人はあまりいないと思いますが、結果として顧客や従業員を裏切るような状況になってしまうことはよくあります。そうならないよう、常に誠実に向き合うことを意識しています。
また、困難な状況に直面したときこそ逃げずに向き合うことを信条としています。電話に出なくなる、返信が遅くなる、といった逃げの行動は一度取ってしまうと習慣化しやすいです。私自身も、コロナ禍で先が全く見えない状況でもとにかく前を向いてトライアンドエラーを繰り返したことが今につながっていると考えています。
仮に逃げてしまうと、ついてくるはずの人もついてこられなくなりますし、周りも助けようがなくなります。この姿勢、考え方は社内全体にも影響しており、困難を正面から受け止めてチームとして前向きに取り組むことが、弊社の土台となっています。
WineBankとして歩み始めてまだ5年ほどですが、私が最も苦労したのはフランスの生産者との関係性を維持しながらのキャッシュフロー管理です。
高品質なワインを生産するフランスの農家との取引は、長年の信頼関係の上に成り立っています。生産者の方は「あなただから契約する」という考え方の方が多いです。だからこそ景気が悪い年や不作の年でも、一定量を買い続けることが必要になります。
具体的には毎年数十%ずつ買い増していく必要があり、一度でも購入を止めてしまうと翌年の割り当てが大きく減らされ、信用を失います。ワイン業界はいわば狭い村社会のようなもので、悪い噂も良い噂もすぐ広まるのです。
調子がいいときだけ買う会社という評判が立ってしまうと、優良な生産者との取引が一気に失われかねません。売上の見通しが外れることもある中で、買い付けをやめるわけにはいかないという構造は、キャッシュフローの面で大きなプレッシャーとなります。
ただしワインには「在庫を寝かせるほど価値が上がる」という特性があるため、在庫を持つこと自体は必ずしもマイナスではないのが救いです。この事業ならではの財務管理の難しさが、創業以来の大きな課題となっています。

ワインへの本物の愛情を業界に言葉だけではなく態度で示し、確かな信頼と成果を勝ち得たことが、次へ進むための最大のモチベーションになっています。
弊社の大きな転換点となったのが、2024年に銀座の高級フレンチレストラン「アピシウス」をM&Aで事業承継したことです。客単価7万円のこの名店は、政財界の要人や芸能人が訪れることで知られており、その買収はワイン業界に衝撃を与えました。
老舗の伝統的なレストランを事業承継したことで、テクノロジーを活用した新興企業がワインを単なる商品として扱っているという印象ではなく、実際に楽しみ、味わうものとして本物の愛情を持っていると受け取ってもらえたのです。この一手によってワイン業界での信用が大きく高まり、フランスの生産者からも一目置かれる存在になりました。
社員の誇りとロイヤリティが向上したことも、大きな喜びでした。M&A後はレストランの売上が数十%増加し、利益は2倍以上に改善、従業員の給与や労働環境も改善しました。働くスタッフが喜んでくれる、自分たちの事業が伸びる、そして業界の見方が変わる。それが次へ進もうというエネルギーの源です。
弊社の目標は、日本・アジアのワイン業界でナンバーワンになるということです。その達成を測る3つの指標を設定しています。
一つ目は、ワインの在庫総額を現在の約30億円から100億円に拡大することです。これは大手酒類企業の在庫水準と並ぶレベルであり、業界トップクラスを意味します。
二つ目は、WineBankサービスでの二次流通総額を100億円にすることです。ワインの二次流通市場にはすでに実地オークションやネットオークションなど複数のプレイヤーが存在し、それぞれ数十億円規模の取引を行っています。その中でWineBankの二次流通総額を年間100億円台に乗せることで、業界ナンバーワンのポジションを確立することを目指しています。
三つ目は売上高100億円の達成です。ワイン専門業態のトップが約300億円規模であることを念頭に、まず100億円の壁を突破することを目指しています。
また、ウイスキー事業にも参入しており、常温保存が可能で劣化しにくいという特性を活かした資産運用商品として展開を進めています。ワインで作り上げた資産管理のモデルをウイスキーにも応用することで、より多くの人が良いお酒と長く付き合える文化を作っていきたいと考えています。

起業したいと思っているなら、1秒でも早く動いてください。勉強会や塾に通い続けながら「いつかは起業しよう」と準備を重ねている人は、結局一生起業しない可能性が高いです。
副業からでもいいので、小さく仕事を取り始めることが起業の第一歩です。大手企業と同じように時間とコストをかけて慎重に進んでいたら、ベンチャーが大手に勝てる部分はありません。やりながら考えるぐらいのスピード感が大切です。
一方で、全員に起業を勧めるわけではないとも言っておきたいです。悩んでいるならやめた方がいいです。起業家というのは、それだけやりたいことが強すぎる人たちです。強烈な意志とエネルギーがないと、コロナ禍のような逆境を乗り越えることは難しいと思います。
東洋大学を卒業後、総合不動産会社モリモトに入社。その後投資事業や富裕層向け資産コンサルティング事業を手掛ける株式会社Seven Signaturesにて、Donald Trump氏とハワイでTrump Tower Waikikiプロジェクトに関わり、1日あたりの売上高のギネス記録を樹立。2008年に株式会社あどばるを設立し、代表取締役社長に就任。現在は東証プライム上場企業ビジョングループ入り。2020年に創業50年を超える酒販店である有限会社中村(現株式会社WineBank)を事業承継にて100%取得し現職。株式会社あどばる、株式会社AbHeriを創業しながら2社共に上場企業グループ入りをさせ、現在シリアルアントレプレナーとして株式会社WineBank事業に邁進。
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法人名 |
株式会社WineBank |
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HP |
https://corp.wine-bank.co.jp/ |
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設立 |
1970年10月 |
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事業内容 |
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