株式会社ProFan 代表取締役CEO 八田凌雅

株式会社ProFanは、プロスポーツ選手向けのSNSブランディング支援と、スポーツ選手の発信力を活用した企業向けマーケティング支援を展開しています。「インフルエンサー疲れ」が進む中、顔と名前を明かして発信するスポーツ選手を「本物のインフルエンサー」と位置づけ、独自のコーチング形式でその発信力を育成している点が強みです。今回は、代表取締役CEOである八田凌雅氏に、事業を始めた経緯や今後の展望について伺いました。

スポーツ選手の発信力を、社会とつながる「本物の影響力」に

どのような事業を展開されていますか?

私たちは大きく2つの軸で事業を展開しています。

 

1つ目は、プロサッカー選手を中心としたプロスポーツ選手向けのブランディング支援事業「BeyondPro」です。選手のSNS発信力を高めるため、3カ月間のマンツーマンコーチングを提供しています。 

 

2つ目は企業向けのマーケティング支援事業「ProDrive」です。スポーツ選手を起用したインフルエンサーマーケティングに加え、選手を起用しない一般的なマーケティング支援や、AI活用支援も行っています。

 

これまで多くのクラブチームは選手個人のSNS発信を規制する傾向にありましたが、2026年からはその規制が緩和される流れが出てきています。J2・J3クラスの選手であっても、すでに1,000人から1万人規模のフォロワーを抱え、一定の影響力を持つケースは少なくありません。

 

一方で、投稿頻度は月に1〜2回程度にとどまり、その力を十分に活かせていないのが実情です。 選手が継続的に情報を発信し、自身の考え方や人柄を知ってもらうことは、ファンとの関係を深めるだけでなく、キャリアの選択肢を広げることにもつながると考えています。 

 

企業側の視点では、インフルエンサーマーケティングが一般化するにつれて、いわゆる「インフルエンサー疲れ」が起きています。その中で、顔と名前をさらけ出して発信するスポーツ選手は、企業にとって「本物のインフルエンサー」として貴重な存在になっていくというのが、私たちの事業の着眼点です。

 

BeyondProでは、3カ月間を通じて、SNS発信の習慣化から実践的なマーケティング、自己ブランディングまでを段階的に学びます。 

 

1ヶ月目に毎日投稿する習慣づけを行い、2ヶ月目以降は契約企業の商品を実際に発信してコンバージョンを生み出す実践に取り組みます。

 

例えば、海外挑戦を目指す選手であれば「語学コーチングサービスで英語学習を始めた」と発信し、栄養や食事に関心のある選手であれば、宅配食サービスを自身の生活や競技と結びつけて紹介したりと、個々の選手の目標や特性に合わせたアプローチで実践的な販売プロセスを学びます。

 

更に3ヶ月目には、これまでの経験や強みを棚卸しし、自分の価値をいつでも示せる営業資料として、ポートフォリオを作成します。ピッチの中だけでなく、社会やビジネスとのつながりを持てるよう、SNSアカウントとポートフォリオを連動させるワークショップを実施し 、卒業を迎えます。

 

バズを狙うのではなく、既存ファンとのコミュニケーションを通じたエンゲージメントの向上を重視しているのが特徴で、「スクール」ではなく「コーチングサービス」と位置づけている点もBeyondProのポイントです。

 

企業向けのProDriveでは、スポーツ選手の影響力を活用したインフルエンサーマーケティング支援と、選手の起用に限らず、企業の課題に応じたマーケティング支援を展開しています。

 

スポーツ選手を起用した支援では、選手とともにリールなどのショート動画を制作し、企業とのパートナーシップ広告機能を活用して配信します。

 

一般的なインフルエンサーとの違いは、スポーツ選手が競技を通じて実績やストーリーを積み重ねている「本物のインフルエンサー」であることです。動画の冒頭で「僕はJリーガーです」と伝えるだけでも、「Jリーガーがこの商品を紹介しているのか」という意外性が生まれ、広告を見た人の手を止めるきっかけになります。

 

さらに、選手の目標や競技生活と商材を結びつけることで、発信に強いストーリー性を持たせることができます。例えば、スポーツドリンクや食品などについても、選手の競技や身体づくりと結びつけることで、商材との高い親和性を打ち出せます。

 

こうした選手ならではの意外性やストーリー性と、商材との相性を掛け合わせ、コンバージョンにつながる広告を設計することがProDriveの特徴です。将来的には、広告分析ツールのランキング上位にJリーガーを起用した動画が並ぶような、新しい広告表現を生み出すことを目指しています。

 

また、マーケティング施策を設計する際には、「商品のコンセプト」と「マーケティングのコンセプト」を明確に分けて考えることを大切にしています。

 

例えば、美容液であれば、「ビタミンCが配合されている」「小分けのパッケージで使いやすい」といった要素は、商品そのものの特徴です。しかし、同じような機能を持つ商品が多い中で、その特徴をそのまま広告で訴求しても、消費者の関心を引くことは容易ではありません。

 

そこで広告では、「初回価格で美容液に加えてシートパックや化粧水もセットになる」といった、消費者が魅力を感じる切り口をマーケティングコンセプトとして設計します。まずはお得感や利用するメリットによって関心を引き、その先で商品の機能や価値を理解してもらうという考え方です。

 

商品の特徴を整理するだけでなく、「消費者にどのような切り口で届ければ行動につながるのか」まで設計し、広告やキャンペーンに落とし込むことで、購入や登録につながるマーケティング支援を行っています。

 

 

事業を始めた経緯を教えてください

元々は学校の先生を目指しており、サッカー部の顧問として全国優勝をねらうことが夢でした。

 

その後、さまざまな可能性を模索するために上京し、役者や芸能関係の仕事に挑戦した時期もあります。しかし、自分の将来について考える中で、先生として働く姿も一般企業に就職する姿も、もちろん芸能界で生きていくイメージもできないと感じるようになりました。

 

そんな時、偶然の出会いをきっかけに、大学在学中からサッカーに関わるコミュニティの運営を始めました。そこで初めて、何もないところから新しい価値や仕組みを生み出す、ビジネスの「0から1をつくる面白さ」に触れたことが、起業を意識する原点となりました。

 

一方で、事業を続ける中では、自分自身のスキルや市場の広がりに限界も感じるようになりました。そこで一度コミュニティ事業を離れ、広告業界へ転職します。

 

その後、役員としてヘッドハンティングされた企業では、インフルエンサーマーケティングの知見を深めるとともに、大企業向けのソリューション営業やマーケティング戦略の全体設計を身に着けました。最終的にはAIの開発事業や、研修事業のカリキュラム構築なども担当しています。 

 

現在展開している事業は、これまで培ってきたサッカー、コミュニティ運営、インフルエンサーマーケティング、法人営業、AIといった経験を組み合わせたものです。それぞれの領域を個別に捉えるのではなく、自分が持つ強みを掛け合わせることで新たな価値を提供できるのではないかと考え、事業を立ち上げました。

 

私にとって、ビジネスはサッカーによく似ています。攻撃と守備が明確に分かれているわけではなく、状況に応じていつでも攻めることも、守ることもできます。努力が必ず報われるとは限らない一方で、予想を超える大きな成果が生まれることもあります。

 

ただ努力するだけではなく、正しい方向に力を注ぐことや、チームで力を掛け合わせることが重要である点も、スポーツと共通しています。そうした不確実性とチームで挑戦する面白さが、今も事業を続ける原動力となっています。

 

二項対立ではなく、常に「ニュートラル」であること

仕事におけるこだわりや、譲れない軸を教えてください

会社のバリューの一つに「ニュートラル」という言葉を掲げています。物事はどうしても二項対立になりがちですが、結局はバランスが大事であり、そのバランスを保つには両方の立場を経験しておく必要があると考えています。

 

私自身、起業やサービスの立ち上げの経験がある一方で、組織の一員として働いた経験もあります。また、執行役員として経営と現場の間に立ったこともあれば、経済的に余裕がある時期と、まったく余裕のない時期の両方を経験してきました。

 

激務な環境も、ホワイトな環境も両方経験しているからこそ、フェーズに応じて必要な価値観を自分なりに判断できると思っています。事業や組織が成長しても、このバランス感覚だけは失わず、常にニュートラルな視点を持ち続けたいと考えています。 

 

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

自分自身を律し続けることです。

 

独立すると、何をするか、いつ働くか、どこを目指すかをすべて自分で決められます。自由である一方、誰かから仕事を与えられたり、期限を設定されたりするわけではありません。

 

何もしなくても注意されないため、気を緩めればいくらでも暇になれてしまいます。その自由さは、想像していた以上に難しいものだと感じました。

 

私自身、どちらかといえば、追い込まれなければ動けないタイプです。自由な環境の中で、いかに自分を律し、行動し続けられるかという課題は一度乗り越えれば終わるものではなく、これからも向き合い続ける壁だと考えています。 

 

「やらざるを得ない」環境から出会う、想像もしなかった自分

進み続けるモチベーションは何ですか?

いわゆる前向きなモチベーションというよりも、追われて「やらざるを得ないからやる」という状態から、結果的に想像もしなかった自分に出会えることが、進み続ける原動力になっています。

 

また、お金やリソースに対するモチベーションも明確にあります。それは自分がお金持ちになりたいという意味ではなく、大きなものを手にして、自分が想像しなかったことをしたいという発想です。イーロン・マスクが本気で「月に行く」と言えるような発想に近いと思っています。

 

今後の展望や野望をお聞かせください

具体的な目標としてIPOやエグジットを考えていますが、それを絶対的な目標にするのではなく、「それが可能な会社にする」ことを目指しています。

 

まずは時流に乗った事業で年商数十億円規模をつくり、私が現場を離れても事業や組織が回る状態を実現したいと考えています。特定の個人に依存せず、持続可能で健全な経営基盤を築いた結果として、IPOを目指せる状態にすることが理想です。 

 

また、事業の成長を通じて十分なリソースを得た先には、教育や子どもに関わる取り組みにも挑戦したいと考えています。

 

私は東京学芸大学出身で、もともとは教師を志していました。サッカーのコーチをしていた経験もあり、教育業界への関心は今も強く持っています。将来的には、共同創業者と構想している子ども向けのサッカー大会をはじめ、スポーツと教育を掛け合わせた取り組みを実現することが一つの夢です。

 

 

特化した強みがあれば、起業は有効な選択肢になる

起業しようとしている方へアドバイスをお願いします

私自身、「起業をしよう」と強く決意して踏み出したわけではなく、会社員としての働き方が自分に合わないと痛感したことが起業の起点でした。元々は35歳で起業する計画でしたが、それが前倒しになった形です。

 

安定した収入に慣れると頑張らなくなる自分をよく自覚していたので、出力せざるを得ない環境に、自ら身を置く必要がありました。

 

会社員として本当にダメだったと自覚していますが、特化した強みがある人にとって、起業は有効な選択肢の一つになると思います。現代はAIの活用によって、定款作成をはじめとする会社設立のハードルも大きく下がっています。

 

起業への一歩を踏み出す上で役立ったのは、学生時代にサッカーの授業を立ち上げた経験など、自分自身で何かの事業をつくった経験があったことです。

 

また、執行役員として会社の経営、売上報告やPLの理解、法務対応、採用といった実務に携わってきたことも、起業の土台になったと感じています。学生時代など早い段階で、何らかの事業をつくる経験をしておくことをお勧めします。

 

本日は貴重なお話ありがとうございました。 

起業家データ:八田凌雅 氏

東京学芸大学教育学部在学中に、サッカー指導者向けの月額1万円コミュニティ事業を開始。現役JリーガーやJリーグスタッフと連携しながらサービスを構築し、約3年で250名規模へ拡大させた。その後、SNS広告代理店にて法人営業・クリエイティブディレクション・広告運用・チームマネジメントを経験。さらに大手インフルエンサーマーケティング支援会社に執行役員として参画し、アカウントプランニング部を管掌、主にエンタープライズ企業向けにSNSマーケティングのソリューション営業を担った。同社のAI駆動開発(AIDD)事業部では最大手通信会社のCRMツール開発のPM業務を担い、エンタープライズ向けAIDD研修プログラムの構築から講師までを担当した。

企業情報

法人名

株式会社ProFan

HP

https://profan.co.jp/

設立

2025年11月

事業内容

  • プロスポーツ選手向けブランディングスクール「BeyondPro(ビヨンドプロ)」の運営
  • 法人向けマーケティング支援「ProDrive」(戦略立案から組織体制の構築・運用までを一気通貫で支援する伴走型マーケティング支援)
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