株式会社Neautech 代表取締役社長 水本 明宏

美容皮膚領域に特化したオンライン診療サービス「ANS.(アンス)」を展開し、患者一人ひとりに寄り添った治療継続の仕組みづくりに取り組んでいます。単に医薬品を届けるだけではなく、継続的なサポートを通じて、より良い医療体験の実現を目指している点が特徴です。今回は、代表取締役社長の水本明宏氏に、サービスの内容や起業の経緯、そして今後の展望についてお話を伺いました。 

 

薬を届けるだけじゃない。「治療継続」を中心に設計された、ANS.の体験価値

事業の内容をお聞かせください。

当社は、美容皮膚領域に特化したオンライン診療サービス「ANS.(アンス)」を運営しています。シミ・肝斑やニキビなどのあらゆる肌悩みを持つ方が、スマートフォンから医師の診察を受け、自分に合った治療を自宅で受けられるサービスです。

 

オンライン診療は通院しなくても診察を受けられる便利なサービスとして語られることが多いですが、私たちが重視しているのは治療を継続できる環境づくりです。

 

個人差はありますが、シミや肝斑の治療は半年程度、ニキビ治療では1〜2年かかることもあり、継続して治療に取り組むことが改善への重要なポイントになります。

 

そのため当社では、単に診察や薬を提供するだけではなく、患者さんが安心して治療を続けられる医療体験の提供に力を入れています。

 

具体的には、オンライン診療後も医師の指導を受けたスキンアドバイザーとチャットで相談できる「HADA相談室」で、治療中の不安や疑問に寄り添いながらサポートしています。

 

さらに、資本提携をしているパナソニックと共に「AIスキンちゃん」というサポートAI機能も開発しました。こちらはANS.で取り組んでいる、治療の継続支援機能の1つなのですが、AIが患者様自身では気づきにくい微細な変化を見つけ出し、チャット機能を通じて自然な言葉で励ましを届ける機能です。

 

このようにお客様に対して「心に寄り添う励まし」を提供することは、治療継続率を高める鍵となります。

 

開発時に注意した点としては、AIで医療的な判断は行わないように設計をベースとし、医療行為に抵触しないよう、全件自動監査システム、AIによるAI評価、禁止ワード監視、規制適合まで繰り返し自動評価する多重チェック体制を導入し、治療の判断や指示は行わず、あくまで継続支援に特化した形で開発しました。

 

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事業を始めた経緯をお伺いできますか?

私は法学部を卒業後、人材業界でキャリアをスタートしました。職業安定法や労働基準法などの法律を踏まえながら、新しいサービスや価値を生み出す仕事に携わっていました。

 

その後、2019年末にオンライン診療関連の事業に関わる機会があり、さらに2020年のコロナ禍をきっかけにオンライン診療が急速に普及したことで、この領域に本格的に取り組むようになりました。

 

振り返ると、人材業界でも医療業界でも本質的にやってきたことは変わりません。法律や制度を正しく理解した上で、その中で実現できる新しい価値を考え、形にしていくことです。

 

私がオンライン診療に携わる中で、クリニックに来院できる方にしか価値を届けられないという対面診療の課題を解決することで、幸せになる方が多くいると感じ、弊社が創業時から携わっていた定額制美容皮膚科の価値をさらに多くの方に届けるために、ANS.を立ち上げました。

 

起業そのものが目的だったわけではありませんが、自分が実現したいサービスを形にするためには会社を作るのが最適だと考え、起業という選択をしました。

 

「正しさ」を追求する組織。バリューが生み出す文化とチームの多様性

仕事におけるこだわりを教えてください。

私が特に大切にしているのが、高い志を持ち続けることです。

 

事業を運営していると、日々の課題対応に追われ、目の前のことだけに意識が向いてしまうことがあります。そうした時こそ視野を広く持ち、会社として目指す姿や社会に提供したい価値を見失わないよう心がけています。

 

組織づくりでは、多様な考え方や経験を強みに変えることを重視しています。医療業界をはじめ、異なる専門領域で経験を積んできたメンバーが集まっており、それぞれの知見や視点を持っています。

 

意見がぶつかることもありますが、どちらかが正しい・間違っていると考えるのではなく、議論を通じてより良い答えを導き出すことを大切にしています。

 

もう一つ大切にしているのが、「Do the right things(正しいことをする)」という考え方です。患者さん、社会、そして事業のすべてにとって価値のある選択を追求することを重視しています。

 

常に患者さんを中心に考えながら、長期的に価値を提供できるサービスづくりを目指しています。

 

 

起業から今までの最大の壁を教えてください。

最も印象に残っているのは、2023年8月に代表へ就任した時期です。当時の会社は資金的に余裕がある状況ではなく、このままでは数か月後に資金が不足する可能性がありました。

 

資金調達の見込みはありましたが、予定通りに進めることが非常に重要な状況だったため、売上の成長と資金管理の両方に向き合う必要がありました。その数か月間は、経営者として特に集中力が求められる時期だったと思います。

 

ただ、不思議と大きなプレッシャーは感じていませんでした。資金調達については実現できるという確信があったため、あとはやるべきことを一つひとつ進めていくだけだと考えていました。

 

壁だったことは間違いありませんが、気持ちが落ち込んだり迷ったりすることはなく、目の前の課題に集中しながら乗り越えることができました。

 

自分たちが信じる価値を、より多くの人へ 

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

個人的には、自分の人生で何を成し遂げるのか、社会にどのような影響を与えられるのかを常に考えています。そこはモチベーションというよりも、自分にとって当たり前の価値観になっています。

 

もう一つは、自分たちが提供しているサービスが患者さんや社会の役に立っているという実感です。自分たちの価値を広げていくことが、社会にとってプラスになると確信しています。

 

医療業界には多くのサービスが存在しています。その中で、本当に患者さんのためになるサービスが広がっていくべきだと考えています。自分たちが信じる価値を追求し、より多くの方に届けていくことが、日々の大きなモチベーションになっています。

 

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください。

弊社のミッションは「医療・ヘルスケア体験を変革する」ことです。皮膚の領域だけでなく、保険診療も含めたオンライン診療全体で、この体験変革を進めていきたいと考えています。

 

祖父母の時代から、病院に行って薬をもらって家で飲むという医療体験はほとんど変わっていません。

 

ネットショッピングや様々なサービスが進化している中で、医療だけが取り残されています。オンラインだからこそできることは無数にあるはずで、それを実現していくのが弊社の役割だと思っています。

 

AIの活用についても、1点だけをAIで解決するという発想ではなく、診療記録・個人の医療データ・治療経過といった弊社が積み上げてきた情報を包括的にAIに組み込むことで、他社では出せない体験価値を生み出せると考えています。

 

患者さんだけでなく、医師や医療従事者の体験も変えていくことが、次の展開の大きなテーマです。

 

自分の心に嘘をつくな。AIが変えた起業のリスクと、稲盛和夫の言葉

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします。

自分の心に嘘をつかないことが、一番大切だと思います。やりたいと本気で思えるなら、踏み出せばいいと思います。

 

今の時代はAIの発展で1人でできることの幅が格段に広がり、起業のリスクは10年前・20年前と比べて大きく下がっています。最初の一歩は以前よりずっと踏み出しやすくなっています。

 

私が意識してきた言葉に、稲盛和夫さんの「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に行動せよ」というものがあります。

 

スタートは楽観的に、しかし計画は最悪の事態も見据えて悲観的に、そして実行は楽観的にといったように、この三段階を上手く使い分けることが重要です。

 

勢いと感情だけで動くのでも、リスクを恐れて動かないのでもなく、論理と感情を適切に組み合わせながら、自分の心に従って行動することが、起業家に必要なものだと思っています。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:水本 明宏氏

中央大学法学部卒業

WEBマーケティング・開発PM・プロダクトマネジメントを経験後、社内外の新規事業開発に従事

2020年より美容・AGA・ピルなどのオンライン診療サービスや検査サービスの新規事業開発を実施

2022年2月 株式会社Neautechを設立、代表取締役社長に就任
水本明宏|Neautech (@aki_mizumoto) / Posts / X 

 

企業情報

法人名

株式会社Neautech

HP

https://neautech.jp/

設立

2022年2月15日

事業内容

  • オンライン診療プラットフォーム事業(ANS.):スマホで医師によるオンライン診療を受け、肌悩みに応じた美肌薬が自宅に届くサービス
  • 化粧品開発事業:15万件の肌診断実績をもとに、医薬品から機能性化粧品までを独自開発・販売
  • 医療DX事業:テクノロジーの力で治療継続の仕組みや医師とのコミュニケーションシステムを開発
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