rayout株式会社 代表取締役 吉田 壮汰

rayout株式会社は、プロジェクトマネージャーがスポットで企業に伴走し、決めた施策を社内で「やり切る」までを支援するサービス「スポットPM」を展開しています。コンサルが担う「設計」ではなく、社内主導のプロジェクトを最後まで前に進める遂行支援に特化し、その市場に競合がほぼいないことが強みです。今回は、代表取締役である吉田壮汰氏に、事業を始めた経緯や今後の展望について伺いました。

「やり切る」に課題を抱える企業へ、PMがスポットで伴走する

事業の内容をお聞かせください

当社は「スポットPM」というサービスを展開しています。PM(プロジェクトマネージャー)がスポットでプロジェクトに入り、事業推進をお手伝いするサービスです。

 

多くの企業をご支援する中で感じるのは、施策を設計することよりも、決めたことを社内でやり切ることに課題が集中しているということです。コンサルティング会社が立派な計画を描いても、それを社内で遂行できる担当者がいないため、計画だけで止まってしまうケースは少なくありません。

 

だからこそ私たちは、月額でPMの料金をいただきながら、人事や経営企画、DX、新規事業といったプロジェクトを進め切る部分を支援しています。 よくご相談いただくのは、担当者がいないふわっとした施策のご相談です。

 

たとえばMVVを刷新したものの社内に定着しない、社内広報を強化したいが担い手がいない、既存顧客向けの新規事業を立ち上げたいが一人では進め切れない、といったご相談があります。また、M&A後のツール統一や給与水準の調整など、大手コンサルティング会社の支援が終わった後に残る細かな統合作業をお手伝いすることも多くあります。 

 

サービス品質を人によって左右させないため、私たちは研修に最も力を入れています。コンサルティング会社のように専門知識そのものを提供するのではなく、「キャッチアップする」「計画を立てる」「プロジェクトを前に進める」という3つのステップに特化しているのが特徴です。

 

毎週月曜日には、WBSを使って「誰が・いつまでに・何をやるのか」までタスクを分解する訓練や、30分以内に合意形成するためのファシリテーション研修を実施し、実践的なスキルを磨いています。 

 

当社の強みは、私たちが定義する市場に競合がほぼ存在しないことです。企業のプロジェクトには、外部へ任せた方がよいものと、社内が主体となって進めるべきものがあります。DXやデータ基盤の構築、クラウド移行などはコンサルティング会社やSIerに依頼するのが適しています。一方で、人事制度の定着や新規事業の立ち上げ、マーケティングの内製化などは、社内が主体となって進める必要があります。

 

しかし、そのようなプロジェクトではPMが構造的に不足しています。コンサルティング会社は戦略まで、制作会社やベンダーは依頼された業務までが役割であり、社内に入り込んで最後まで伴走する存在が市場にはほとんどいません。強いて競合を挙げるとすれば、社内でプロジェクトを何とか進めようと奮闘しているコーポレート部門の担当者かもしれません。 

 

これまでに500社を超える企業をご支援してきました。例えば、とある大手企業様では、新卒技術者、特に女性から第一志望として選ばれにくいという採用課題を抱えていました。採用力向上のためにオウンドメディアを立ち上げたいという構想はあったものの、広報・経営企画・人事など複数部署が関わるため、社内だけではプロジェクトを進めることが困難な状況でした。

 

そこで当社がPMとして参画し、まずは現状と課題の整理、ペルソナ設計、自社独自の魅力の言語化といったキャッチアップとゴール設計から着手しました。詰まりがちな部署間調整も円滑に進めることで、約4か月半という短期間でのオウンドメディアのローンチを実現しています。

 

意思決定に時間がかかりがちな大企業のプロジェクトにおいて、外部の立場からスピード感を持って推進できることが当社の提供できる大きな価値だと考えています。 導入時には、「現状をキャッチアップする」「計画を立てる」という部分までは無料で伴走しています。「AIを活用して会社をもっと良くしたい」といった、まだ具体化していないご相談でも問題ありません。

 

料金の目安は、プロジェクトにアサインするPMの人数や規模感にもよりますが、ゼロからプロジェクトを設計・推進する場合は月額50万円から、すでに進行しているプロジェクトを中継ぎとして推進する場合は月額30万円からとなっています。

 

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

これまでもPMに対して対価をいただく事業は続けてきました。今回「スポットPM」と名付けましたが、事業そのものが大きく変わったというよりは、サービスを分かりやすく言語化したという感覚です。 

 

創業当初は、ブランディングや広告といったクリエイティブ領域が中心で、ITではないPMを強みとしていました。制作物の請負・受託という形で仕事を受けており、自社で制作するのではなく、プロジェクト全体を管理・推進する役割を担っていました。

 

その後、コロナ禍などを経て事業領域を広げ、人事や経営企画などのコーポレート領域にも携わるようになると、企業が抱える課題の根深さを実感しました。

 

自分たちでPMをやろうとすると、誰かにお願いする前の段階でプロジェクトそのものが頓挫してしまうケースが多かったのです。実際に制作物をご提案しても、「まず社内で話をまとめるので少し待ってほしい」と言われ、プロジェクトが前に進まないことがよくありました。そこで、「そのプロジェクト自体を私たちが進めましょうか」とご提案したところ、お客様から非常に喜ばれました。

 

コーポレート部門には、人事制度の見直しや社内広報、新規事業の立ち上げなど、担当者はいるものの推進役が不足しているプロジェクトが数多くあります。そうした案件をKPIに沿って着実に進めていくことで、大きな価値を感じていただけることが分かりました。

 

私たちは、このような「まだ仕事として明確に定義されていない課題を見つけ、形にしていく仕事」に大きな可能性があると考えています。決められたタスクをこなすだけであれば、今後はAIが担う場面も増えていくでしょう。一方で、曖昧な課題を整理し、関係者を巻き込みながらプロジェクトを前に進める役割は、これからも必要とされ続けるはずです。

 

ただ、「PM」という言葉には、IT開発の現場でエンジニアを率いるような、少し重たいイメージがあります。私たちは、もっと気軽に必要なタイミングで活用できるサービスであることを伝えたいと考え、「スポットPM」という名前を付けました。

 

すると、サービス名を打ち出した途端にお問い合わせが大きく増えました。事業内容は変わっていないのに、名前を付けたことで価値が伝わりやすくなったのだと思います。その経験からも、サービスを適切に言語化することの重要性を改めて実感しました。

 

「伝え方」にこだわり、自らの器を広げ続ける

仕事における軸を教えてください

日々のコミュニケーションには特に気を配っています。私たちの仕事は社内外のさまざまな関係者の認識をそろえ、プロジェクトを前に進めることです。そのためには、単に情報を伝えるのではなく、「相手が何を理解し、次に何を行動すればよいか」が伝わるコミュニケーションが欠かせません。

 

だからこそ、私たちは「伝え方」そのものを重要なスキルとして磨いています。伝えたいことが10個あったとしても、相手に本当に覚えてほしい部分は1つか2つしかないことが多いものです。たとえば学校で「明日は台風で休校の可能性がある」と連絡する場合、振替授業の日程や休校の判断基準などさまざまな情報がありますが、生徒に最初に伝えるべきは「明日は休校の可能性がある」というシンプルな一文です。

 

人は大量の情報を一度に受け取ると混乱してしまいますが、伝えるべき核心を明確にし、その他の補足は状況に応じて付け加えていくことで円滑にコミュニケーションを取ることができます。これは社内のコミュニケーションでも、プロジェクトを前に進めるうえでも同じだと考えています。

 

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

経営者としての「自分の成長」が最大の壁であり、永続的な課題だと感じています。

 

経営者の器が、会社の限界を決めてしまうと常々感じています。ある程度お金を稼いで満足してしまうと、その時点で会社の成長も止まってしまいます。「スタートアップ」から「普通の中小企業」になってしまい、志を同じくする仲間たちも離れていくかもしれません。その怖さもあって、「もっと成長しなければ」「自分の器を大きくしなければ」という意識を常に持ち続けています。

 

楽しさと使命感を原動力に、守りたいものを守る

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

一番のモチベーションは、やはり仕事そのものの楽しさです。私は、自分がやりたいと思ったことに挑戦できる環境にいるので、とても恵まれていると感じています。もしかすると、社内で一番自由に仕事を楽しめているのは私かもしれません。

 

一方で、最近は楽しさだけではなく、使命感も大きくなってきました。社員が増え、新卒も14人入社し、外部から資金もお預かりしています。会社を信じて集まってくれた社員や投資家の期待に応えなければならないという責任を、以前より強く感じるようになりました。

 

みんなを勝ち馬に乗せたい、会社に関わる人たちがこの会社を選んで良かったと思えるような結果を出したいという気持ちが、今の自分を前に進める大きな原動力になっています。 

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください

PMを「明るくて責任感のある人なら、誰でもエントリーできる仕事」にしたいと考えています。AIの台頭によってホワイトカラーの仕事はなくなっていくと言われますが、関係者を巻き込み、プロジェクトを前に進めるPMの役割は、これからますます重要になるはずです。

 

また、産休・育休中の方や、身体的・時間的な制約、居住地の制約がある方の中にも、高い能力を持った方はたくさんいます。そうした方々が、自分のライフスタイルに合わせながら、さまざまな企業の事業推進に関われる仕組みをつくりたいと考えています。

 

現在はすべて内製で対応していますが、今後ワークフローが確立すれば、より多くの人が活躍できる形に広げていきたいと思っています。私は、PMの素養は特別なものではないと考えています。

 

例えば旅行や飲み会で幹事を務める人は、行き先を決め、日程を調整し、参加者に連絡を取り、お金を集めるなど、自然とプロジェクトを進めています。PMの仕事も本質的にはそれと同じで、人を巻き込みながら物事を前へ進める役割です。

 

そうした力を持つ人が、企業のさまざまなプロジェクトでも活躍できるようになる。PMという仕事をもっと身近なものにし、その力が社会のさまざまな場面で発揮される状態をつくっていきたいと考えています。

 

 

原体験を糧に、ロマンチックな社会をつくる

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

「早くやったらいい」というのは、常に思っていることです。むしろ、一度やってみて失敗した方がいいくらいに思っています。

 

もう一つ伝えたいのは、できるだけ多くの「原体験」を積んでほしいということです。仕事だけでなく、遊びや恋愛など、さまざまなことに思い切って挑戦してみる。そして、時には恥ずかしい思いや悔しい思いをする。その経験が、後になって自分を動かす大きなエネルギーになります。

 

新しいことに挑戦すると、失敗することもあります。しかし、その経験こそが人を成長させます。恥ずかしがらず、失敗を恐れず、まずは一歩踏み出してみてほしいですね。 

 

本日は貴重なお話ありがとうございました。

起業家データ:吉田 壮汰 氏

新卒でメディア会社に入社し広告営業に従事。その後ベンチャー企業の事業立ち上げに参画し、執行役員を務める。2019年4月にrayout株式会社を設立。創業時はブランディング・広告など非IT領域のプロジェクトマネジメントを強みに制作物を受託し、その後は人事・経営企画・DX・新規事業の支援へと領域を拡張。現在は社内プロジェクトを推進する「スポットPM」と、PMのためのSaaSツール「CheckBack」を展開している。 

【企業情報】

法人名

rayout株式会社

HP

https://rayout-inc.com/

設立

2019年4月16日

事業内容

  • スポットPM事業(プロジェクトマネージャーによる事業推進支援)
  • プロジェクト管理ツール「CheckBack」の開発、運営

 

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